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湊かなえ望郷【海の星】 ネタバレあらすじ&感想

      2016/10/01

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湊かなえサスペンス「望郷【海の星】」あらすじ&ネタバレ&感想

2016年9月28日放送 ドラマスペシャル 湊かなえサスペンス「望郷」

【海の星】
浜崎洋平(伊藤淳史)は高校時代の同級生、美咲から葉書を受け取った。
25年前、洋平の父・秀夫(橋本じゅん)が忽然と姿を消す。
事故か事件かそれとも…。
毎夜、母の佳子(若村麻由美)と一緒に父の行方を捜す洋平は、ある日、漁師の真野幸作(椎名桔平)と親しくなる。
頻繁に洋平の家を訪れるようになった幸作だったが、あることがキッカケで疎遠になってしまった。
その娘の真野美咲(平山あや)が、最近、幸作に明かされた話を伝えたいという…。

【海の星】
浜崎洋平……伊藤淳史
幼い頃に父が失踪し、母子家庭で育った島出身の会社員

浜崎佳子……若村麻由美
洋平の母。夫の失踪後、毎日、朝から晩まで働き、洋平を一人で育てた。夫を探すため、毎晩歩き続ける。

浜崎洋平(回想)……加藤清史郎
洋平少年期。

真野美咲……平山あや
洋平のかつての級友。島で小学校の教師をしている。幸作の一人娘。

浜崎友美……紺野まひる
洋平の妻。

浜崎秀夫……橋本じゅん
洋平の父。20年前に、突然姿を消してしまう。

真野美咲(回想)……平祐奈
美咲少女期。

浜崎家大叔父……モト冬樹
洋平の大叔父。

真野幸作……椎名桔平
洋平が「おっさん」と呼んでいた漁師。ある日、釣りをしている洋平と出会う。

同級生からのハガキ

海辺で父・浜崎秀夫(橋本じゅん)を捜す、母・浜崎佳子(若村麻由美)と息子・洋平(回想)(加藤清史郎)。
洋平の父が失踪したのは小学六年生の秋だった。

東京。
洋平(伊藤淳史)が自宅に戻ると、妻の友美(紺野まひる)が「今日は早かったね」と声をかける。
食卓を見て「アクアパッツアか!」と洋平はつぶやいた。

”こんなちっこい魚、何匹食っても腹にたまんねえだろう”

少年時代に釣りをしていた場面を思い出していた。

「パパ、早く食べてよぉ、この魚、僕が釣ってきたんだからぁ」と息子が言う。
「大地が?」
「三階の斉藤さんが、家族で釣りに行くのに一緒に連れてってくれたの」

「僕、一人でに二十匹も釣ったんだよ」
「へえー、サビキで釣ったのか?」

「そうそう、サビキ。パパも釣りした事あるの?」
「子どもの頃にな」

友美は洋平宛のハガキを差し出した。
差出人は《真野美咲》。

”ご無沙汰しています。お元気ですか?”

「昔の彼女とか?」
「高校時代の同級生だよ。彼女より、彼女のお父さんと親しい…」

”仕事の関係で上京するのですが、一度お会いする事はできませんか?お父さんの事でどうしてもお伝えしたい事があります。”

父の失踪

白綱島 二十年前。
洋平が爪を切っていると、「夜に爪きるんじゃないの」と母・佳子に怒られた。
父・秀夫が出かけようとしているので、どこに行くのと尋ねると「ちょっとタバコ買いに行ってくるわ」と答えた。

”そのまま父さんは、夜が明け、朝になっても、帰ってこなかった。”

洋平の大叔父(モト冬樹)たちが心配して自宅に来た。
職場にも出勤しておらず、警察でも事故の報告は上がってないと佳子は告げる。

「佳子ちゃん、よく思い出してくれよ。ここんとこ秀夫、なんか様子がおかしかったとか、何かに悩んでたとか…」

佳子は「ちょっとタバコ買いに行ってくるわ」と言った秀夫の言葉を思い出し、急いで立ち上がった。
「タバコが売り切れて遠くの自販機まで行って、脇の畑に倒れこんでいるのかも」と佳子が言う。

洋平は急いで上着をとって走り出した。
その拍子で、家族三人で写っている家族写真が床に落ち、ガラスが割れた。

佳子は自販機を確認したが、売り切れてはいなかった。
その他の自販機も捜してみた。

”次の日も、次の日も、その次の日も、母さんと僕は、夜の道を歩き続けた。”

「浜崎秀夫は、もう死んでいる」

洋平が学校から帰ってくると、佳子が通りの掲示板に秀夫の写真を張り出していた。

家の近くまで来て、電話が鳴っている事に気づいた佳子は、急いで電話に出た。

「浜崎です」
「浜崎秀夫は、もう死んでいる」

驚いた佳子は電話を切ってしまった。

「…母さん」
「…いたずら電話よ…ご飯にしようね」

”ポスターに家の住所と電話番号を載せていたせいだろう。その電話は何度もかかってきたし、同じ文面の差出人不明の手紙も繰り返し届いた。”

秀夫がいなくなった翌月から、佳子は勤めに出始めた。
勤めの経験がなかったにも関わらず、早朝から休日まで働き続けた。

今日の昼食代として三百円が置いてあったのを見て、洋平は思いついたように外へ出た。
洋平は、海釣りをして、何匹かの魚を釣った。

「遅かったじゃない。どこ行ってたの」と怒る佳子に、「ジャジャーン、今日の晩飯」と言って魚を見せた。
そして「おつり」と言って百円玉を渡した。

「洋平!」と言って、佳子は喜んだ。
魚は天ぷらにして食べた。

あの人が自殺なんかするはずがない!

チャイムが鳴り、佳子が出ると、洋平の大叔父が立っていた。
玄関先に腰かけて話し始めた。

「あんたが働き始めたって聞いてね。佳子ちゃん、あんた元々、いいとこのお嬢さんだろう。洋平を連れて、実家のほうへ戻るという選択はないのかい?」
佳子は驚いた顔をする。

「こんな事は言いたくはないんだけど、事故の形跡はねえし、秀夫のやつ、自分で海に飛び込んじまって…」
「あの人が自殺なんかするはずがない!だって、理由がないじゃない。借金だってないし、病気だってしてない、洋平と東京ドリームランドに行く約束だってしてたんだから……。お引き取りください」

佳子と洋平は秀夫を捜して歩いていた。

「洋平、ジュース飲もう」
二人は海に向かって立ち、ジュースを飲んだ。

「お父さんも、タバコ買った後、ここで一服したかもしれないね」
そう言って、佳子は腰を下ろした。

「きれいねえ…。この向こうに行ってみたいと思っても、おかしくないよね」
佳子は、海を見ながらそうつぶやいた。

「……母さん、明日のアジは、何味?」
洋平の顔を見上げる。

「なんちゃって」
思わず笑みがこぼれる佳子。

「アジは、アジ味……。ふっ、ふふふ」
二人は笑った。

東京の自宅。

「それからも、母さんは毎晩歩き続けた」
洋平は、妻の友美に言った。

「あなたも、ずっと一緒に?」
「半年ぐらいは毎日一緒に歩いてたけど、だんだん行かなくなって、中学の後半からは全く…」

「思春期だもんねえ。お母さんと二人で歩くなんて、恥ずかしくなる頃よね」
「いや、たぶん、おっさんのせいだ…」

「なんだ、あのおっさん!?」

洋平が釣りをしていると、おっさん(真野幸作【椎名桔平】)が近づいてきた。

「あーあ、こんなちっこいアジ、釣りやがって」
おっさんは、持っていたクーラーボックスを下ろした。

「こんなちっこい魚、何匹食っても腹にたまんねえだろう。海へ戻して、もうちっと大きくなったの釣り戻せ」
そう言って、バケツの中の魚を海に投げた。

「なにすんだよ!」
「はっはっはっは、悪い悪い。お詫びにな、これをやろう」
そう言ってクーラーボックスを開けると、大きな真アジが何匹も入っていた。

「フライにしても刺身にしてもうめえぞー」
「…いや、でも、こんなに…」

「家族みんなで食えばいい。遠慮せずに持って帰えれ」
洋平の肩をポンと叩き、おっさんは歩いていった。

「なんだ、あのおっさん!?」

洋平が釣りをしていると、またおっさんがやってきた。

「よーう!」

「…またきた」と洋平はつぶやく。

「今日はマシじゃねえか」
カサゴが一匹入っていた。

「まあ…」
「塩振って焼くとうめえぞ。ジャーーン!」
おっさんはクーラーボックスを開けた。

「アオリイカだ。まだ生きてる」
「えっ!?」

「刺身にすると最高だぞぅ。おめえ、母ちゃん、イカさばけるか?」
「見た事ないけど」

「よし、じゃあ、俺がさばいてやろう。ちょっくら、台所を貸してくれ」
「えっ!?」

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「お金はいりません!」

洋平は、おっさんと歩きながら話をした。

「そうかぁ、母ちゃんと二人暮らしかぁ」
「おじさんは?」

「ああ、俺か?俺はなぁ、嫁さんが二年前に死んじまって、今は娘と二人暮らしだ。島の南の上部町で漁師をやってる」
「漁師なのに釣りもするの?」

「いやぁ、商売になんねぇかなと思ってなぁ」
「えっ、それじゃあ…」

「ん…。はっはっは、心配すんな、子どもから金はとらねぇよ」

洋平の家でイカをさばくおっさん。
声がするのを聞き、佳子が急いで家に入った。

「あのぅ…」と声をかける佳子に洋平が「おかえり」と言う。

「ああ、この間アジくれたおじさん」
おっさんが佳子のほうを振り向いた。

「ああ…その節は」
「いえ…」
おっさんは頭を下げた。

テーブルの上には、山盛りのイカの刺身。

「だめです、タダでいただく訳には」
「いやぁ、結構です…」

「いえ、お支払いします」
「お金はいりません!」
おっさんは大声を出した。

「ああ、すいません。そのぅ…」
おっさんは謝った。

「あの、それじゃあ」
そう言って、ニンニクの入った袋を手渡す。
断ろうとするおっさんに「そう言わずに持ってってください」と言って手を握りしめた。

急いで手を引っ込める佳子。
「お言葉に甘えて」と言って、おっさんは受け取った。

「良かったね、新しいお父さんできて」

”それからおっさんは、二週間おきにうちに来るようになった。”

「娘が焼いたんです」
クッキーを持ってきた。

洋平に釣りを教えた。
大きな魚が釣れて「上出来だ」と洋平の頭をかきむしる。

「痛ぇよ、おっさん」
洋平は笑った。

洋平がトイレに行こうとすると、「洋平くん」と、佳子の友人の女性が声をかけてきた。

「良かったね、新しいお父さんできて」
「……」
洋平は秀夫を思い出していた。

昼食を食べながらおっさんが話しかける。

「なあ、洋平」
「ん…」

「お前の母ちゃん、元々、島の人間なのか?」
「ううん。結婚してから島に来たって」

「そうか…。お前の父ちゃんの噂を聞いたんだが…」
「…父さんは……俺の父さんは行方不明になってるだけで、離婚したわけでも、死んだわけでもないから」

「…」
「だから母さんは、父さんが帰ってくるのをずっと待ってるんだ」

「……うーん。そうかぁー」
「今日は帰る」

「なんで受け取っちゃうの?」

洋平は自分の部屋で勉強していた。

「こんばんはー」と、おっさんが家に来た。
外は雪が降っている。
佳子が玄関を開けた。

「今日は、スズキが余っちまって…」
「寒いのに…」

コートを取りにきた佳子に、洋平は部屋から出てきて言った。

「なんで受け取っちゃうの?」
「ええっ!?」

「貧乏人が食べもん恵んでもらってるみたいじゃん。恥ずかしくないの?断れよ!」
「だって、受け取ると喜んでくれるでしょう」

「なんでおっさんを喜ばせないといけないんだよ!」
「…なに怒ってるの?…さあ、行こう」

「行かない!」

少しの間、母さんを一人にしてくれる?

”そして、父さんの失踪から丸三年が経った秋の日…”

チャイムが鳴り、洋平が玄関を開けると、スーツを着たおっさんが花束を持って立っていた。

「おっさん…」
洋平の後ろから佳子が出てきて、「わあ…」と驚いている。

「ちょっと、よろしいですか?」

おっさんは家に上がり、テーブルの上に花束を置いた。

「佳子さん、あんた、三年間、ずーっとご主人を待ち続けた。立派な事だ。だが、それももう、今日で終わりにしねえか?」
佳子はおっさんの顔を見上げた。

「ご主人は、死んだと…、ちゃーんと自分の中で区切りをつけて…。もっと楽に生きれる方法、考えてみねえか?」
「…」

「洋平だって、そのほうがしあわせ…」
「やめて!」
佳子はテーブルを叩いて叫んだ。

「なんの権利があってそんな事言うんですか?主人は生きてます。かならずここへ帰ってきます」
「…」

「だから私はここで、この島で、この家でずっと待ってるんです。三年かかろうが五年かかろうが構いません。そんなの関係ありません。」
「…」

「もう二度と来ないでください。これまでお世話になりましたけど…、こんな事言われるくらいなら…何も受け取るべきではなかった…。あなたとは、金輪際、お会いしません」
「…」
洋平はおっさんの顔を見る。
おっさんは、座布団をおりて後ろに下がり、頭を下げた。

「申し訳ねぇ。かんにんしてくれ」
おっさんは、深々と頭を下げた。
そして帰っていった。

「洋平、悪いけど…。少しの間、母さんを一人にしてくれる?」
洋平が出たあと、佳子は声をあげて泣いた。
洋平は、玄関の外で聞いていた。
思い立ったように、洋平は釣りに出かけた。

「海の星だ!」

もう夕方になっている。
おっさんが座っているところへ洋平がやってきた。

「今から釣りかぁ?」
洋平は立ち止まる。

「今日はやめとけ。赤潮だ」
洋平は、釣竿とバケツを置いて、防波堤に寄りかかる。

「なあ洋平。嫌われついでに教えてくれ。もしお前の親父が、失踪してたんじゃなくて、死んだとわかってたら、今頃、お前と母ちゃんはどうしてた?」
「さあ。じいちゃんばあちゃんとこ戻って、今よりは楽してたんじゃないかな」

「じゃあ、母ちゃんは、あんなに手がボロボロになるまで働く事もなく、良い再婚相手に出会えたかもしんねえな」
「それは…わかんない。母さん、親の反対を押し切って、この島に来たみたいだから、再婚はしてないんじゃないかな」

「でもまあ、どっちにせよ、死んだとわかっていたら、今よりも幸せだったんだろうなあ」
洋平は立ち上がって叫ぶ。

「父さんは死んでない!」
おっさんは立ち上がって洋平のほうを向いた。

「本当に、すまなかった」
そう言って、おっさんは歩き始めた。

子どもたちが叫んでる。
「わー、きれい。海の星が浮かんでる」
「海の星だ!」

その声を聞いて、おっさんが言う。
「何が海の星だ。ただ光が反射してるだけの《にせもん》じゃねえか。はっは」
後ろを向いたまま、洋平は叫ぶ。

「じゃあ、おっさん!」
おっさんが立ち止まった。
洋平は振り返った。

「おっさんは、本物を見た事があるの?」
おっさんは洋平に近づいてくる。

「なんだ洋平、お前、見た事ないのか?」
「…」

「よし」と言って、おっさんはかごを海に投げ、引き上げた。

「いいか、よーく見とけ。一瞬だからな」
そう言って、かごの中の海水を海に投げた。
暗くなった海に、きれいな光が反射している。

「じゃあな!」
おっさんは歩いていった。

東京。
「それが最後?」と友美が聞く。

「ああ、それからおっさんには会ってない」
「そっかぁ。おっさんのお嬢さんが話したい事ってなんだろうねぇ」

「それも気になるから、会おうと思うんだけど、いいかな?」
「うん、当たり前じゃない」

「ボランティアって!?」

十六年前。
洋平のクラスメイトの真野美咲(回想【平祐奈】)が文化祭を仕切っている。

二人は浜辺に来ていた。

「浜崎くん、これ。準備頑張ってくれたから」
「開けていい?」

「うん」
紙袋の中にはクッキーが入っていて、洋平は食べ始めた。
そのとき、「娘が焼いたんです」のおっさんの言葉がよみがえった。

「久しぶりに作ったから、ちょっと粉っぽかったかなあ?」
「……美咲の名字って、真野だったよな!?」

「なに言ってんの、今頃。いいよ、おいしくなかったら無理しないで」
美咲は紙袋を取り上げた。

「あーあ、失敗かぁ」
「…」

「お父さんがボランティアに通ってた家の人たちからも好評だったから」
洋平は美咲のほうを向いた。

「ボランティアって!?」
「旦那さんが死んで、母子家庭になった人たちに、月に二回、お魚とか私の作ったお菓子とか届けてあげてたの」

「お父さんが言ってたの?」
「うん。魚より、お前の作るお菓子のほうが喜ばれるから、じゃんじゃん作れって」

「おっさんが魚やクッキーを持ってきてたのは…俺んちだよ」
「…」

「…ボランティア!?笑わせんなよ。母さん目当てにせっせと通って、こっぴどくフラれたくせに!」
「……そんなのウソ!お父さんが他の人を好きになるはずなんかない!だってお父さん漁に出てて、お母さんの死に目にあえなかった事、すっごい悔やんでて」

「でも、おっさんの偽善につきあわされて、こっちはいい迷惑だったよ!」
「…」

「それに…、俺のお父さんは死んでない!」
洋平は駆け出した。

「浜崎くん!」

美咲との再会

東京。
雨の中、洋平は立っていた。

「お待たせ!ごめんね、少し会議が長引いちゃって」
美咲が走ってやってきた。

「久しぶり」
「(うなずいて)じゃあ、行こうか」

喫茶店でコーヒーを飲む二人。

「お母さん、亡くなってたんだね」
「ああ、就職して五年目かな」

「そっか…」
「お父さんの事だって書いてあったけど、おっさんに何かあったの?」

「実は、半年前にお父さん、肝臓がんで手術受ける事になって、『墓場まで持ってくつもりだったけど、それが正しい事なのかどうか今でもわからないから、お前に話しておく』って…。浜崎くんのお父さんの事…」
「俺の父さん!?」

「そう。浜崎くんのお父さんは、亡くなってるの」
「…」

「行方不明になった、二十年前に…」

本当に、ごめんなさい

「浜崎くん、知ってる?瀬戸内海は静かで穏やかな海だけど、年に数回、漁師の網に死体がかかる事があるの」
「新聞で、そんな記事を見た事あるけど、それは父さんじゃなかったし。年に数回と言うより、数年に一回だろ?」

「それは警察に届けられた件数。網に引っ掛かっても、そのまま海に戻してしまう人がいるの」
「どうして、そんな事?」

「私が四年生の時、お父さんが、遺体が網にかかったって通報しただけで、丸一日拘束されたの。それで、お母さんの死に目にもあえなかった。それに、遺体と同じ網にかかった魚を食べたいと思う?」
「…」

「通報したって…こっちが痛い目に遭うだけ…」
「なにが…言いたいんだ!?」

「あなたのお父さんの遺体を引き上げたのに、そのまま海に戻してしまったうちのお父さんは、二十年間も悔やみ続けなきゃならないほど、罪深い事をしたのかな…」

「浜崎秀夫は、もう死んでいる」と電話したのもおっさんだった。

「亡くなった事を何度も伝えようとしたけど、ポスターは剥がされるどころか、町中に貼られていって…。名乗って事情を説明しなきゃ信じてもらえない、ポスターにあった住所を直接訪ねたら…(洋平が釣りに行くところを見た)」

「今日こそは言おう、今日こそは言おうって、浜崎くんの家までの道で、毎回そう、自分に言い聞かせていたって…。でも、言えなくて…。ちゃんと伝えていれば、お葬式を挙げる事も、お墓を作る事も出来たし、何より…」
美咲は立ち上がって、洋平の前に立った。

「待ち続けなくても良かったのに……。本当に、ごめんなさい」
美咲は深々と頭を下げた。

「……ありがとう。海の星を、見せてくれて」

洋平は、雨の中、花束を持って海岸沿いを歩いていた。
かつて住んでいた自宅は《売り物件》となっている。

”ご主人は死んだと、ちゃんと自分の中で区切りをつけて”

”死んだとわかっていたら、今よりも幸せだったんだろうなあ”

”すまなかった”

おっさんの言葉を思い出す洋平。

”ねえ、洋平。私の骨はぜーんぶ、海に流してちょうだい。ひとりぼっちのお墓なんていらないから。そうして、ね、お願い”

病室で佳子に言われた言葉を思い出す。

防波堤に花束を置く洋平。
網にかかった秀夫の事を思い出す。
そして、持ってきた花束を海に投げた。

歩こうとした洋平は、遠くで何かを見つけた。
それは、網を持って仕事をしているおっさんの姿だった。
おっさんは、洋平を見つけて網を離した。
洋平は、黙って頭を下げた。

「美咲に聞いた。手術、成功したんだって?」
「…」

「心配してたよ。さっそく漁に出てるって」
「…ああ…。立派になったなあ…洋平」

「…」
「お前には、本当に取り返しのつかねえ…」

「ひでえよなー。この歳になるとは。さすがに父さんも、生きちゃいねえだろうなあって思ってたけど…。でも時々、馬鹿な事考えてた…」
「…」

「どっかで、記憶なくした父さんが、新しい家族や孫に囲まれて、今も静かに、幸せに暮らしてるって…」
「…」

「母さん、最後に言ってた。海に散骨してほしいって。もしかしたら、父さんが海で死んだ事、知ってたのかもしれない…。父さんと同じ場所で眠りたいって、そう思ったのかも…。でも、本当のところはわからない。父さんが死んだ理由も」
「…」
洋平は、おっさんのほうを向いた。

「あのころ、おっさんがうちに来るようになって、俺と母さんが笑顔になれたのは本当だから…」
おっさんは洋平を見つめる。

「おっさん…」
洋平は立ち上がった。

「これだけは言わせてくれ」
「…」

「……ありがとう。海の星を、見せてくれて」
おっさんは、首にかけていたタオルで顔を覆い、泣いた。
おっさんは立ち上がり、洋平の前に立ち、昔のように頭をくしゃくしゃにした。

「痛ぇよ…」
おっさんは笑い、二人は並んで海を見ていた。

総括&感想

二十年目にして、洋平はようやく父の死を知った。

父は海で死に、おっさんが遺体を引き上げたが通報しなかったため、行方不明となってしまった。
おっさんが警察に届けなかったのは、妻の死に目にあえなかったという苦い経験と、《遺体をあげてしまった網》という風評被害を防ぐためだった。

その行為は、漁師であれば特別な行為でもなく、おそらく同じようにしている人は多いのだろう。
なにも、佳子や洋平を苦しめるためにした事ではなかったのだ。

しかし、結果的に、二人を苦しめる事になってしまった。

おっさんは、三年間、佳子と洋平の家に通った。
求婚したのも、お互いの苦しみから逃れるためだったのだろう。

しかし、佳子は断った。
おそらく、佳子は早い段階で、《秀夫が海で死んだ》と気づいていたのかも知れない。
でも、親の反対を押し切って結婚したという思いもあって、再婚は考えていなかったのだろう。
おっさんの申し出を強く断ったのも、自分の決意を揺るがせないためだったのではないかと思う。

人はだれでも、昔を振り返って「…たら」「…れば」と思いがちだが、過ぎた時間は戻ってこない。
この物語は、なんとも切ない話だが、《切ないからこそ美しい》ように思えた。
それはまるで、一瞬で消えてしまう『海の星』のように…。

 

望郷【みかんの花】 ネタバレあらすじ

望郷【雲の糸】 ネタバレあらすじ

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