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ドラマ「火花」第10話【最終話】結末ネタバレあらすじ

   

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ドラマ「火花」第十話(最終回)・ネタバレあらすじ

徳永太歩(林 遣都)「スパークス」のボケ担当
山下真人(好井まさお)「スパークス」のツッコミ担当

神谷才蔵(波岡一喜)「あほんだら」のボケ担当
大林和也(村田秀亮)「あほんだら」のツッコミ担当

緒方健治(染谷将太)日向企画社員
西田英利香(菜葉菜)日向企画社員
日向征太郎(田口トモロヲ)日向企画社長

渡辺(小林 薫)吉祥寺「武蔵野珈琲店」の寡黙な店主

百合枝(高橋メアリージュン)スパークス山下の恋人

あゆみ(徳永えり)徳永の昔のコンビニバイト仲間、今は美容師

宮野真樹(門脇 麦)神谷の彼女

ロクさん(渡辺 哲)徳永が暮らすアパートの住人

熱海の居酒屋の店員・山本 彩(NMB48/AKB48)

最後の漫才

スパークス最後の舞台、「爆笑お笑いLIVE」が始まった。
同じ事務所のプー・フブーブ、後輩芸人たちも出演する。
神谷は、客席の一番後ろで立って見ていた。
そして、彼らの最後の舞台がスタートする……

「どうもー!」
「どうも!」

「いやー、仰山入っていただいてね、嬉しいっすよねー」
「ありがとうございますー。それではみなさん、いつものいきますよー、スパー……」

「やったことない!やったことない、それ初めてや。ラストでこのイカみたいなん、やたことない」
「あの人ほら、やりたそう……」

「なんで!?即興やで」
「まあまあ、そんなことでございました!今日なんのネタする?」

「ここで言うことちゃうから。袖で言うことやから」
「今まで100個ぐらい漫才作ってきたやん、そん中で、今日なんのネタする?」

「袖、袖なん!?決めていくもんやから」
「最初、コンビニのネタやって、最後、不動産屋のネタの後半やろか?」

「内訳を!?ネタの内訳を今言ってらっしゃる?やめたほうがええで」
「ちょっと時間もろうていい?」

「なんやねん……」
「僕ねえ、世界の常識を覆すような漫才するために、この道に入ったんですよ」

「そうよ」
「でもねえ、僕が覆せたのは、努力は必ず報われるという素敵な言葉だけです」

「いや、あかんがな!めちゃくちゃ寂しいこと言うやんけ」
「考えてしまうよな」

「いや、寂しい、寂しいお前」
「ふー……」

「寂しいわ、お前、変やで」
「なんかさ、感傷に流され過ぎて、思ってることうまく伝えられへんことあるやん」

「まあ、あるな」
「だから考えてみてんけど、あえて、反対のことを言うって宣言したうえで、思ってることと逆のこと全力で言うたら、相手に明確に想い伝わるんちゃうかな思うて……」

「最後の最後まで、なにややこしいこと言うてんの?」
「いや、やってみたらわかる」

「わかる?じゃ、やってみよう」
「いくぞ」

「うん」
「おい山下!」

「なんや」
「お前はほんまに漫才がうまいなあ」

「いや喜びかけたけど。これ逆のこと言うてんにゃろ?」
「一切 噛まへんし、顏も声もいいし、実家も金持ちやし、お前、最高やんお前!?」

「むっちゃ言うやん!」
「天才!天才!……」

「やめろ」
「天才!……」

「やめろ!……めちゃくちゃ言うやん。最後の最後にめっちゃ言うやん」(山下の目に涙と、鼻水が……)
「せやけどなあ、山下!いや、ごめん、山上!」

「山下でいいやろ。下でいいから」
「どんな大天才のお前でも、いくつか大きな欠点があるぞ!」

「ええとこ?ああ、言うてよ」
「部屋汚い」

「しょぼい。しょぼい」
「体かたい」

「いや、柔らかいけども、めっちゃしょぼいやんけ俺」
「小食の遅食いな!」

「いや、大食いで早食いやけど。けっこうおかわりするけど」
「ご飯いっぱい食べるもんな!」

「うん!俺アホみたいやわ。そんなんちゃうから俺」
「あと、犬さわれない!」

「僕、犬さわれるんですよ。いや、ほとんどの人や!大概さわれるわ!」
「犬、めちゃくちゃさわれない!」

「めちゃくちゃさわれるんですよ。いや、ほとんどの人さわれるから!」
「犬、さわらなすぎて、警察を呼ばれたことがない!」

「さわりすぎて警察呼ばれた、そんなことないから」
「犬、めっちゃさわってて……」

「通報してない!?犬さわりすぎる奴、通報してない!?おかしいから。あるやん、俺のいいところあるやん」
「えー、性欲ない」

「変やで。あるやん!俺の、俺のええところ」
「性欲、めちゃくちゃない!」

「性欲め……おい!ちゃうこと言えお前!」
「性欲なさすぎて、警察を呼ばれたことが……」

「性欲シリーズ……」
「なんか、なんかおかしい……」

「通報すな!すぐ通報するやん。変やでお前!あるやろ、なんかほかに俺のええところ!」

「……彼女がブス!」
「彼女がかわい……いや、俺んことちゃうやん。かわいいけど……」

「彼女がお前のためになんもしてくれへん、やさしくない、最低の女!」
「いや……」

「ほんで多分、生まれてくる双子も、ブス!」
「いや、めっちゃかわいいでしょ、多分……」

「あと、相方が素晴らしい才能の持ち主!」
「……なに言うてんのお前」

「そんな素晴らしい才能持って、この天才の相方に、お前はこの10年間、文句ばっかり言うて、ぜんっぜんついてきてくれへんかったな、お前!」
「……なに言うてんのお前」(泣けてしかたない山下)

「そんなお前やから、この10年間、ほんま楽しくなかった!……ほんまに楽しくなかった……」
「……」(涙が出て下を向き、言葉が出ない山下)

「お前と漫才してんのが楽しくなかった……」
「……」

「俺は、世界で一番……不幸じゃお前!」
「……」

「ほんで客ー! お前ら、ほんま賢いな! こんな売れてて将来性のある芸人のライブに、いっさい金も払わんと連日通いやがって。お前らほんま賢いわ! おかげで俺らな、毎日苦痛やったボケー! ボケー!」
「逆のこと言うてますから……」

神谷も泣いていた。

「僕の夢はね、子どもの頃から、漫才師になることじゃなかったんですよ。絶対に漫才師にならんとこ思うてたんですよ。それがね、この相方と小学校の頃出会うてしまったせいで、僕は漫才師になってもうたんですよ。ほんま最悪ですわ!こいつのせいでね、僕は死んだんです。こいつが、僕を殺したようなもんなですよー!よう人殺し!」
「言いすぎやろお前。言い過ぎやお前……」

「いや、たまにね、僕らのことすっごい褒めてくれる人がいてね、それがほんま嬉しくてね、なんかこう……人生を……肯定してくれてるような、喜び得られるわけですよ。もう、それがほんま嬉しくてね。もう・・嬉しくて嬉しくて……。でもね、そこに水を差すような奴がいるんですわ。それがお前らー!もう嫌いやでお前ら……。大っ嫌い!嫌いじゃ、お前らなんか! お前らは、『スパークスは最低だ、もう見たくもない』とか言うて、僕らの人生否定するわけですわ。もうそれがほんま腹が立ってね……。ほんま腹立って、もう大っ嫌いやねんお前ら!大っ嫌いや!嫌いじゃお前らなんか!嫌い!」

神谷は痛いほど泣いている……

「僕たちスパークスは、今日が漫才をするのが最後ではありません!これからも毎日、皆さんと会えると思うと、嬉しくてたまりません!僕はこの10年を糧に生きていけません!だから、どうか皆さんも、もう適当に死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!……」

泣きだして言葉が出ない。

「死ね!死ね!死ね!……お前も、死ね!」
「……」

「家族と別々に死ね! 家族みんなで、死ね、不幸になれ! 俺の知ってる人の中で、お前が一番不幸になれ!」
「やかましいわ、お前! やかましいわ、お前。 どんだけ暴言吐くねん。 お前、なんやこの漫才、客泣かしてお前……。相方だいぶ序盤に泣かしてお前……。お前、漫才ってな、笑かすもんやでお前、なんやこの漫才! おかしいやろ、この漫才」

「最後の最後に、常識覆す漫才出来たっちゅうことやんけ」
「いや、やかましいわお前。やかましいわ」

「お前は、なんかないんか!? おい!この最後の漫才を、最後になんか言うことないんかいお前」
「相方、お客さん、僕は、みなさんに、全然感謝してません!」

「お前はほんまに、最低な奴やな」
「いや、逆のこと言うた、逆のこと言うたんや、わかるやろお前。みんなわかってるわ」

「一個だけわかった」
「なにわかってん!?」

「お前ほんまに、漫才が上手いなあ」
「いや、もうええわ。ありがとうございました」

会場の拍手は、いつまでも止まなかった。

別れの日

山下と百合枝が大阪に帰る日。
タクシーに荷物を乗せた2人。

「徳ちゃん、ごめんな」
「なに言うてんの?」

「ありがとう」
「ほな、いくわ」

「徳ちゃん、元気でな」
「うん。じゃあ」

徳永は、タクシーの後を追って走った。

山下も百合枝も、タクシーの中で泣いていた。

笑いでどつきまくったれ!

神谷と歩く徳永。

「お前までやめんの、もったいないで」
「……すいません」

「気持ちは変われへんの?」
「……はい」

居酒屋に入った2人。

「やめてどうすんねん?」
「事務所の社長の紹介で、不動産屋で働くことになりました」

「……そうか……徳永」
「はい」

「俺なあ、芸人には、引退なんてないと思うねん。『もし世界に漫才師が自分だけやったら、こんなにも頑張ったかなあ』思うときあんねん」
「……」

「周りにすごい奴がいっぱいおったから、そいつらがやってないこととか、そいつらの続きとかを、俺たちは考えてこれたわけやろ?ほならもう、共同作業みたいなもんや」
「そん中で、売れる人間と売れへん人間は、明確に分かれてますよ」

「この壮大な大海には、勝ち負けがちゃんとある。だから面白いねん」
「……」

「でもなあ、徳永、淘汰された奴らの存在って、絶対に無駄じゃないねん」
「……」

「一回でも舞台に立った奴は、絶対に必要やってん。これからの全ての漫才に、俺たちは関わってんねん!」
「……」

「徳永は、面白いことを10年間考え続けたわけや。ほんで、ずっと劇場で人を笑わせてきたわけやろ!?」
「……たまに、誰も笑わへん日もありましたけどね」

「ふふっ……あっ、たまにな」
「……」

「でも、ずっと笑わせてきたわけや。それはもう、とてつもない特殊能力を身につけたということやで。ボクサーのパンチと一緒や」
「ボクサーですか……」

「無名でもあいつら簡単に人殺せるやろ!?芸人も一緒や。ただし、芸人のパンチは、殴れば殴るほど人を幸せに出来んねん」
「……」

「だから、事務所やめて他の仕事で飯食うようになっても、笑いでどつきまくったれ! お前みたいなパンチ持ってる奴、どこにもいてへんねんから」
「……ありがとうございます」

神谷がいなくなった

2010年。
徳永は不動産屋で働いている。

4万のアパートに客を連れてきた徳永。
客の2人の青年は、芸人を目指していた。
家が決まれば、来春に越してくる予定だ。

「僕ら必ずビッグになります、応援よろしく!」

徳永が喫茶店にくると、大林が待っていた。

「久しぶりやな。ちゃんと働いてんねんな。社会人やな」
「えっ、話ってなんですか?」

「いやー、ちょっと、あいつどこ行ったか知らんかな?」
「あいつて、いつも連れてた犬ですか?」

「犬?」
「あれ!?浴衣着てないし……」

「誰が西郷隆盛やねん」
「下駄も……」

「もうええてそれ、西郷隆盛ちゃうねんもう。そないイジリ方すなお前は……」
「……」

「ちゃうねや。神谷……うそうそうそ!?」

強面の2人の男が近づいてきた。
ガラス板を挟んで横のテーブルに座った。

「まじか横かい、横座る!?」
「なんなんすか?神谷さん!?」

「そうや神谷やんけ。神谷のせいでこんななってんねん。仕事にも来えへんし、連絡もつかへんねや」
「三宿のアパート……」

「おるかいな、そんなところ。とっくに夜逃げしとるわ。あいつ今、1000万ぐらい借金でかなってんねん」
「えー!?」

「もう勘弁してほしいわ。なんかもう、いろんな噂あんねん、マグロ漁船で働かされてるとか、ガテン系のホモビデオ出てるっちゅう噂やでお前」
「……」

「たまらんわこれ。なんで俺、こんな目に遭わなあかんねん。生きてるかどうかわかれへんらしいで。なんか東京湾であいつのサンダル見つかったいうてる、トトロやないねんからな」
「ちょっ、行くわ。これ……」

会計を徳永に頼む。

「ごめんな」

大林が店を出ようとすると、男たちが追いかけていった。

 

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真樹さんの人生は美しい

徳永は会社で、大林からもらった馬券を見ていた。

徳永は車を借りた。

神谷と昔行ったところに行ってみる。
途中、ロクさんがいた。

昔ネタ合わせした公園にもいった。
高円寺駅前には、誰かが弾き語りをしていた。

井之頭公園にも来てみた。
パフォーマーがたくさんいる。

真樹が子どもを連れていた。
徳永は木の陰に隠れる。
真樹は振り返り「あほんだら」とつぶやく。

”あの子は世界で一番幸せになる。誰がなんと言おうと、真樹さんの人生は美しい。僕はとても幸せな気持ちになった”

徳永は、渡辺の店、吉祥寺「武蔵野珈琲店」に来た。
「娘さんに」と、傘をプレゼントした。

飲み屋で飯を食べていると、非通知で電話がかかってきた。
神谷からだった。

「……なにしてんねん……」

待ち合わせの居酒屋に着くと、神谷が待っていた。

「今日な、事務所に謝りに行ってんけどな、もうアカンらしいわ」
「そらそうですよ」

「借金でかなってな、ほんまにどうしようもなくなって、大阪帰って走り回って金作ってんな」
「返せたんですか?」

「結局、自己破産して、危ないとこだけなんぼか返した」

神谷は、おもむろにセーターを脱ぎ、Tシャツになった。
何故か、両胸が巨乳になっていた。

「なんですか、それ?」
「……Fカップです」

徳永はあきれたように吐き捨てる。

「なにしてんねん!?」
「どうせなら大きいほうが面白いと思って、シリコンめっちゃ入れてん」

「……」
「あんな、俺ずっとキャラクターというものを否定してたけどな、それも違うと思って。キャラクターに負けるような面白いことは全然面白いことじゃないねん」

「……無理、無理……だって胸にしか目いかへんもん」
「なんでやねん、面白いやんけ。これで、テレビ出れると思って、へへ」

徳永は泣いていた。

「出れるわけないやろ……、30代のおっさんの巨乳、誰が笑うねん!?」
「……お乳入れたときなあ、自分でもめっちゃ面白くてなあ、一人でずっと笑っててん。でもな、唯一仲良かった社員に会いに行ってな、『これでテレビ出たい』って言ったら、めっちゃ引いててな……」

「……」
「ほんで……ほんで……俺もう、急に怖くなってきて……」

「……なにしてんねん……」

徳永は泣いた。
神谷も泣いた。

「どえらい事してもうたと思って……怖くなって……ほんで……徳永やったら笑ってくれると思って……」
「……笑うか……」

「徳永……どないしよう……。テレビ、無理やんな……」
「神谷さん、あのね、神谷さんはね……なんも悪気ないと思ってます。おっさんが巨乳にしたら面白いっていう……そんぐらいの感覚やったと思うんです。でもね……世の中にはね、性の問題とか社会の中でのジェンダーの問題とかで、悩んでいる人がたくさんいるんですよ。そういう人らが、こういう状態の神谷さん見たらどう思います!?」

「不愉快な気持ちになる……」
「そうですよね。神谷さんに一切そんなつもりなくても……そういう事で悩んでる本人とか、家族とか、友人とか、存在してるんですよ。神谷さんのこと知らない人は、こんな神谷さんを、そういう人らをバカにする変な人やと思うかも知れないんですよ」

「徳永ー!もう言わんといてくれ。俺は、ほんまにあほやー!どないしよう?」
「男が巨乳にしたら面白いって発想と、性別の問題と、全然違うわかってますよ。でも、それは一緒やと思われるんですよ。神谷さんのその行為は、許されへんものになるんです!」

「ううう……すまん……俺な、俺なー!もう何年も、徳永以外の人に面白いって言われてないねん。だからな、そいつらにも面白いて言われたかってん。でも……ああ、でも……そのやり方がわかれへんかってん……ほんで、いつの間にか俺、巨乳になってて、今ではほんまに後悔してる……あああ……ほんま、ごめん!」

神谷は徳永に土下座した。
徳永は泣いた。

「なんでや……なんでやねん……」

店内に、神谷の泣き声だけが響いていた……

熱海にきた2人

熱海にやってきた徳永と神谷。

「徳永、一緒に風呂入られへんくてすまんなあ……て言うか、俺どっちの風呂入ったらええの?」
「男風呂に決まってるでしょ!」

「ええ!?でも……俺入ったらお客さん、パニックになるんちゃうか? 俺、人に迷惑かけるの嫌いやねん」
「人に迷惑かける天才でしょ!」

「あああ……あああ……あああ……」

夜になり、2人は花火を見ていた。

花火でプロポーズしているカップルがいた。

「花火言うんはあれやな、前向きにきっちり生きとる奴らのためにあるもんなんやな」
「……行きましょか?」

「おう……」

昔 寄った居酒屋に来た2人。
神谷が店員に声をかける。

「全然変わってませんね。僕ら、10年前にも来たんです。覚えてはります?」
「ああ、そうですか……観光ですか?」

「土地の神です」
「……」

彼女は無反応だった……

「おかしいなあ、10年前は爆笑やったのになあ」
「そうでしたっけ?」

「そうやったやろが」
「そうしときましょ」

「82番!」
「なんですの?」

「意味なんかあるかい!」
「8と2、8月2日生まれじゃないし」

「おいちょかぶやったら、8と2でブタや」
「最悪ですね」

さっきの店員が話に入る。
「でも、おいちょかぶって、もう1枚引けますよね!?」

「あ、そっか、3枚目も引けんやった」
「はい」

「ブタなら、これ以上悪くならん……。引く一手や」

神谷はハイボールを飲み干した。

「お姉さん、おかわり!」
「はい!」

彼女は店主に言った。
「神様にハイボール一つ!」
「はいよ!」

神谷は嬉しかった。

トイレに立った神谷は、素人参加のお笑い大会「優勝賞金10万円 熱海お笑い大会」のポスターを見つけた。

「おい徳永!どえらいこっちゃで!」
「なんすか?」

「明日、大会あるらしいわ」
「あ、ほんまや」

「一緒に出よ!」
「えっ!?」

「はは……一緒に出よ!」

神谷さんはここにいる

夜の商店街を歩く2人。

「ええやろ、俺ら素人みたいなもんやし」
「無理です、締切り過ぎてましたから」

「平気やって。出ようや!」
「無理です」

「わかった。今から俺、ネタ考えるし。なっ!」
「……」

「これは使命なんや、土地の神としての」
「その設定、まだ続いてたんですか?」

「なあ、なっ、頼むわ!お願い!」
「すいません」

「わかった、(胸)さわってええから、ほら!」

旅館に戻ってきた2人。
ここではCDのレンタルが出来る。
神谷の借りたいものは貸し出し中だった。

夕食を食べている2人。

「俺、漫才作るわ」

神谷は焼酎を手に持ち、裸になって、部屋に備え付けの露天風呂に入る。
徳永は、神谷伝記のノートを取り出し、書き始めた。

”神谷の頭上には泰然とした満月がある。その美しさは平凡な奇跡だ。”

神谷は露天風呂に入りながら、自分の豊満な胸をまじまじと見て、声を殺して泣いた。
そして、涙を湯船のお湯で拭いた。

「太鼓の太鼓のお兄さん 太鼓の太鼓のお兄さん 真赤な帽子のお兄さん 龍よ目覚めよ太鼓の音で……」

神谷は、何度もこのフレーズを繰り返す。
だんだんと気持ちが高揚してきた神谷は、徳永に向かって何かを叫んでいたが、サッシの向こうの徳永には声は聞こえなかった。
大きな胸を揺らしながら裸で踊っている神谷を、徳永はじっと見ていた。

”神谷さんはここにいる。存在している。心臓は動いていて、呼吸をしていて、ここにいる。神谷さんは、やかましいほどに全身全霊で生きている。生きている限り、バッドエンドはない。僕たちはまだまだ途中だ。”

2001年の夏から徳永が書きはじめた神谷伝記は、もう10になっていた。

熱海の綺麗な夜景を最後に、全10話のドラマは終わった。

第十話(了)

総括・感想

大ヒットした芥川賞受賞作品「火花」のドラマ、全10話を見終わりました。
役者の演技、映像、音楽、全てが満足できるものでした。

徳永役の林 遣都さんの声が、どことなく又吉さんに似ていると感じたのは私だけでしょうか?
最初、又吉さんが徳永役をするのかと思いましたが、今回の林さんでイメージがピッタリでした。

神谷役の波岡一喜さんも、難しいキャラクターに完璧に成りきって、見事だと思いました。

芸能界に限らず、どの世界でも、「コミュニケーション能力の高い人間」が成功します。
このドラマでは、鹿谷のような芸人。

山下も社交的で、業界ウケする芸人でしたが、徳永がそういうタイプではなかったことが、スパークスが業界に生き残れなかった原因の一つだったと思います。
ましてや神谷は、徳永以上に「浮世離れ」していました。

万人とは違った着眼点を持つ者が「天才」であるなら、神谷は間違いなく天才でしたし、徳永もそうなりたいと目標にしていました。
しかし、この世は、天才は生きづらい世の中です。
「やすきよ漫才」で一世を風靡した横山やすしさんも、間違いなく「漫才の天才」でしたが、世間から叩かれて、失意のまま亡くなっていきました。

このドラマは、全体を通して、季節は「冬」が、時間帯は「夜」が多かったように思います。
「お笑い」の世界を描き、漫才でネタを披露するシーンも多かったのですが、見ていた私の感情としては、「笑うこと」よりも「泣くこと」のほうが多かったように思います。

徳永と神谷の姿に「痛々しさ」を感じることが多く、自分の人生と重なったりして、胸が痛くなりました。

でも、「冬」が過ぎれば「春」になり、「夜」が明ければ「朝」になります。
2001年から始めた神谷伝記のノートは、1年毎に増えて10冊目になり、徳永と神谷が過ごした10年間が、「冬」であり「夜」であったとすれば、再び訪れた「熱海の花火大会」を合図に、「春」・「朝」を迎えることを暗示しているような、そんな気がしました。

10話、一気に見ましたが、「見て良かった」と思えるドラマでした。(S.A.)

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