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獄門島NHKドラマ ネタバレあらすじ・感想

   

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ドラマ「獄門島」あらすじ&ネタバレ&感想

2016年11月19日(土)NHKBSプレミアム よる8時放送

ドラマ視聴ガイド・キャスト相関図はこちら

オープニング

千光寺の部屋に一人いる金田一耕助(長谷川博己)のアップ。
了沢(りょうたく)(岡山天音)が入ってきて、「ずっと起きていらっしゃったんですか?」
時刻は朝6時前。

金田一は一人苛立ち、屏風を蹴り上げ、声を荒げる。
「くそっ、なんなんだ!」

和尚と金田一の出会い

昭和21年9月。
船に乗って酔ってしまい、吐いている金田一。

千光寺の了然(りょうねん)和尚(奥田瑛二)は、釣鐘が戻ってくることを喜んでいる。
和尚は、復員兵が鬼頭 一(きとう ひとし)が帰ってくることを早苗に伝えたこと、「あとは千万太(ちまた)(石田法嗣)が帰ってくれば」と話す竹蔵(たけぞう)(谷田歩)の言葉に、一言つぶやく。
「そうか、一(ひとし)は無事か…」

金田一は、二人の会話に口を挟む。
「『ちまた』とは、鬼頭千万太(きとう ちまた)のことか」と。
「いかにも」と和尚は答える。

金田一は、鞄の中から手紙を取り出し、和尚に手渡した。
そこには「了然和尚 荒木村長 幸庵先生」と書かれている。

金田一は、その紹介状を書いたのは鬼頭千万太で、八月までニューギニアの同じ部隊にいたこと、復員したが東京に戻る家もないので、千万太の紹介状を頼りに島で静養したいと船に乗ったと話す。

和尚は、当の本人・鬼頭千万太はどこにいるかと金田一に聞く。
金田一は言いにくそうに、復員船の中で亡くなったことを伝える。
実家に向かい、自分の口で伝えたいと思っていることを和尚に言う。

和尚は千万太の死を聞き、遠くを見つめ、「ああ、是非もない」と金田一に答えた。
いよいよ獄門島が見えてきた。

千万太の三人の妹

島に上陸し、和尚の後をついていく金田一。
鬼頭家の門をくぐった。

庭で和尚を出迎えたのは、一(ひとし)の妹・鬼頭早苗(仲里依紗)だった。
鬼頭家では、本家と分家が一緒に暮らしている。
千万太(ちまた)は本家の長男、一(ひとし)は分家の長男で、いとこ同士。
鬼頭嘉右衛門(きとう かえもん)は二人の祖父で、一代で鬼頭家を瀬戸内有数の網元に育てた豪気な男。
まもなく嘉右衛門の一周忌。

村長の荒木真喜平(あらき まきへい)(菅原大吉)と、医師の村瀬幸庵(むらせ こうあん)(綾田俊樹)が来た。

障子戸を開けて、千万太の三人の妹の長女・月代(つきよ)(堀田真由)、次女・雪枝(ゆきえ)(秋月成美)、三女・花子(はなこ)(吉田まどか)が覗いていた。
和尚に怒鳴られ、顔を出す三姉妹は、あまり賢そうには見えなかった。

本鬼頭と分鬼頭

逗留一日目、和尚の勧めで千光寺に宿泊する金田一。
寺は、和尚と弟子の了沢(りょうたく)の二人きり。

逗留二日目、島を見て廻る。
島民のほとんどが漁師。
網元から漁業権をもらい、魚と引き換えに網元から日当をもらう。
ゆえに島の実質的支配者は、網元の鬼頭家。

しかし、一年前の、統領の鬼頭嘉右衛門の病死を境に、状況は変わり始めた。
千万太と三姉妹の両親、一と早苗の両親は共に他界。
嘉右衛門亡きあとの鬼頭家は、和尚・荒木村長・幸庵医師の三長老に託されている。
千万太と一の生還は、家の存続のみならず、島の命運をも左右する重大事なのだ。

島の者は、鬼頭家を指して本鬼頭(ほんきとう)と呼ぶ。
そして谷を隔てた場所に、もう一つの網元が。
分家ではないが、古い親戚筋の分鬼頭(わけきとう)である。

千万太の死が確定

逗留三日目、長い一日となった。
寺の釣鐘が、船に乗ってやってきた。
それを、山の上の寺まで運ぶ。
釣鐘を待って海岸にいる和尚、了沢、金田一の元に、荒木村長がやってきて手紙を渡した。

鬼頭家。
和尚の元に早苗がやってきた。
早苗が和尚から受け取った手紙には、千万太の死亡告知書が入っていた。

「これではっきりした。分家が残って本家が死んだ。今夜のうちに通夜を行う」
和尚はそう言って、鬼頭家を後にした。

金田一は、「せめてもの救いは、一くんが残ったことですか」と早苗に声をかけるが、早苗は残された三姉妹のことを思うと胸が痛むようだ。
金田一は、三姉妹は今後どうなるのかと早苗に問いかけると、「全力で守っていく」と早苗は言った。

分鬼頭に行く金田一

寺の金田一の部屋。
布団に寝転がり、今日見聞きしてメモしたことを読み返す。
ふと、横にあった屏風に目をやると、俳句が書かれてあった。

和尚が部屋に入ってきた。
「金田一さん、通夜の前に一つ、頼みたいことがあるんじゃが…」

金田一は、和尚の使いで分鬼頭に行く途中、道端で竹蔵に出会った。
竹蔵は、和尚を迎えに行くところだった。
金田一が釣鐘のことを聞くと、葬儀が落ち着くまで天狗の鼻に借り置くという。

金田一が分鬼頭に着くと、女性が一人座っていた。
彼女は、分鬼頭の当主・鬼頭儀兵衛(きとう ぎへえ)の妻、鬼頭志保(きとう しほ)(山田真歩)。
金田一が、和尚から頼まれた千万太の通夜の話をすると、志保は、昼間すでに早苗から話を聞いており、今は夫が寝込んでいるので良くなったら挨拶に行くと伝えたという。

すると、奥から男が出てきた。
彼は鵜飼章三(うかい しょうぞう)(柳俊太郎)、分鬼頭の居候で復員軍人である。
鈴の音で夫に呼ばれた志保は、奥へと引っ込んでいった。

金田一が戻ってくる途中で、和尚、了沢、竹蔵に出会った。
金田一は早苗が先に伝えていたことを和尚に報告し、共に鬼頭家へ向かった。

千万太の通夜の夜

鬼頭家で通夜が始まった。

金田一は、復員船の中で千万太から、故郷の島で静養するよう勧められ、紹介状と、一人でも辿りつけるよう詳しく書いてもらっていた。
そのとき、千万太が金田一を獄門島に送りたかった真意を知る。

「殺される…妹が、殺される…俺が帰らんと…」

和尚に、花子が消えたという報告が入る。
月代も雪枝も知らないという。

金田一は、花子の姿を最後に見たのは誰かとみんなに聞いた。
「私です」と言ったのは早苗だった。
時間は午後6時半。
姿を消して4時間近く経っていた。

早苗が探してくると言って部屋を出た。
悲鳴が聞こえ、金田一が行こうとしたので和尚が止め、竹蔵に行かせる。

幸庵医師が、来る途中で分鬼頭の鵜飼を見たと言い、鵜飼が花子を呼び出したんだと荒木村長が言う。
鵜飼が花子を相手にするはずがないと、月代も雪枝も気に入らない様子。

戻ってきた早苗に「大丈夫か」と和尚が聞くと「いつものことですので」と答えた。
早苗が花子はいなかったと言うので、和尚は竹蔵と了沢を分鬼頭に行かせ、村長は村へ、和尚は寺へ行く、早苗には月夜と雪枝を見ていてくれと言い、金田一には酔いつぶれた幸庵医師を見ているように頼んだ。

金田一は、寝ている幸庵医師だけが残った部屋を出て、屋敷の奥に行ってみる。
奥からは、男のうめき声と二人の姉妹のはしゃぐ声が聞こえる。
金田一は、昼に村人から千万太や三姉妹の両親は亡くなっていると聞いたことを思い出していた。

「きちがいじゃが、しかたがない」

金田一は、了沢と竹蔵の元にやってきた。
了沢に聞くと、分鬼頭では花子は知らないと言われたらしい。

すると、遠くで和尚らしき提灯を了沢が見つけた。
竹蔵が提灯で和尚に合図する。

金田一たちが寺に向かうと、大きな声がした。
あわてて三人は声の方へ急ぐ。

そこには提灯を持った和尚が立っていた。
「わーっ!」っと竹蔵が悲鳴を上げる。

四人の目の前には、逆さになって木からぶら下げられた状態の、息絶えた花子の姿があった。

「きちがいじゃが、しかたがない」と和尚がつぶやく。

現在、駐在は不在。
和尚は竹蔵に、早苗に「花子が見つかった」と伝えてくるよう指示。

雨が降ってきたので、金田一は証拠が流れるのを恐れる。
雷とともに、雨が強くなってきた。

「三姉妹の父親も、ですか?」

寺の小屋には、まだ新しい足跡が残っていた。
軍靴のようだった。
「まだいるかも知れない」と周囲をさぐる金田一たち。

金田一が見つけたのは、英語の字引きで作ったタバコの吸い殻。
了沢に聞くと、本家では誰もタバコを吸わないという。

「三姉妹の父親も、ですか?」と聞く金田一。

和尚は、金田一が鬼頭与三松(きとう よさまつ)(山崎銀之丞)の事を何故聞くのかと尋ねる。
金田一は、本鬼頭の座敷牢に閉じ込められている与三松を見たことを和尚に話し、詫びる。
和尚は、三姉妹の父・与三松は心の病ゆえに、外部の人間には「いない者」としていると説明する。

金田一は、さっき和尚が言った「きちがいじゃが、しかたがない」は、与三松のことを言ったのではと確認する。

「金田一さん、この世には、あんたの思いも及ばぬ、恐ろしいことがある」

金田一はその意味を尋ねるが、和尚は教えてくれなかった。
そのとき、幸庵医師と荒木村長がやってきた。

鵜飼からの手紙

幸庵医師が花子の検死をする。
直接の死因は絞殺で、首に絞められた跡がある。
その前に、何かで殴られていたようで、頭に裂傷があった。
殺されて5~6時間経っている。
午後6時半から7時半の間。

金田一は、その時間に、寺と本鬼頭の間を常に誰かが行き来していたのを見ていた。
しかし、花子を目撃したのは誰もいない。
花子は寺に来る前に、どこに立ち寄ったのか、何故花子は寺に向かったのか、その二つが金田一の疑問だった。

幸庵医師が、懐に入っていた手紙を見つけた。

「今宵7時、千光寺境内にて相待ち候、寺は無人となるはずにつき、こころおきなくつもる話を。月代様。  御存じより」

鵜飼のやり口だと荒木村長が言う。
幸庵医師は、鵜飼が寺に上るところを見ていたので間違いないという。

金田一は、月代あての手紙を何故花子が持っていたのか気になった。
そこへ了沢が、米飯が盗まれていたことを報告にきた。

与三松のタバコの吸い殻

和尚と金田一は早苗に、千万太の本葬を先延ばしすることを伝える。
誰が花子を殺ったのかはわからないという和尚に、「今この島にいる人間がやったに決まっている」と早苗は叫ぶ。
「滅多な事を言うもんじゃない!」と和尚が一喝。

金田一がハンカチを差し出すのに「結構です」と断る早苗。
「いえ、これは千光寺の境内で見つけたものです」と言って見せたのは、さっきのタバコの吸い殻だった。

「誰のものかわかりますね?会わせてもらえませんか、与三松さんに」
「見知らぬものを見ると興奮します」(和尚)
「早苗さん、お願いします」
「金田一さん!」(和尚)

早苗は一呼吸おいて、「今、眠ってらっしゃいます」と答えた。
早苗の後をついていく金田一。

途中、庭の中にある小屋について尋ねると、祈祷所だと和尚が答えた。
和尚が笑ったことを不思議に思う金田一。

金田一は庭先で、足跡を見つけた。
軍靴の足跡が、たった一つだけ残っていた。

与三松は眠っていた。
早苗は、タバコの吸い殻入れを引き寄せた。
金田一は、そのうちの一本を手に取り、寺に落ちていたものと比べると、同じものだった。
ここから持ち出された可能性が限りなく高いと、金田一は言う。

すると、与三松が体を起こした。
金田一が「ここだタバコは、ほら!」と言うと、与三松が叫んで身を乗り出してきた。
和尚は金田一に、何故興奮させるようなことをしたのかと一喝。

幸庵医師と荒木村長が島の駐在・清水巡査(山中崇)を連れてきた。
金田一は、落ちていた吸い殻と与三松のタバコが一致したことを清水巡査に見せるが、彼は有無も言わさず金田一の腕を縄で縛って連れて行き、牢屋に閉じ込めてしまった。
清水巡査は、金田一が来てから事件が起きたので、金田一が犯人だと決めつけていた。

「むざんやな 冑の下の きりぎりす」

朝になり、牢屋で金田一が眠っているところへ、清水巡査が駆け込んできた。
清水巡査に連れられ、金田一は釣鐘の前に集まっている和尚たちのところにやってきた。
釣鐘の中から、雪枝の振袖が見えていた。
金田一は、「殺される、妹が」と言った千万太の言葉を思い出した。

「むざんやな 冑の下の きりぎりす」とつぶやき、和尚は手を合わせた。

そこへ、早苗が駆け付けた。
「早く出してください」という早苗に「櫓の準備をしています」と言う竹蔵。

「櫓?」
金田一は、釣鐘の横に棒が刺さった跡があるのを見つける。
そして、その横には高さ30cmくらいの岩。
金田一は、丈夫な棒を持ってこさせる。

港に船をつなぐための丸太が置いてあった。
「見つかっても、問題はないというわけか」と金田一はつぶやく。

櫓を組む必要はないと言い、金田一は竹蔵に、てこの原理を応用して棒と岩を使い、釣鐘を上げさせる。
手伝おうとする村人に「手伝わないで!一人で出来るものか確かめてる」と言う。

「竹蔵さん、その棒をこの枝に引っ掛けてください」

すると、釣鐘の中から雪枝が倒れて出てきた。
「はっ」と息をのむ早苗。

覗き込む和尚。
すると、「ははは!」と志保が笑い出した。

「さすがは女役者の娘。道成寺の鐘入りとは大した見世物じゃわ。あっはっはっは。ええ?何の酔狂じゃ、これは?いくらあれが茶人じゃからて、人騒がせも大概にしてくれんかね」
志保は金田一に近寄る。

「ええかヨソもん、この島には悪魔がおるぞ。海賊や罪人が連れてきとる悪魔の島じゃけんな!あっはっはっは」
笑い続ける志保を鵜飼が連れて行く。

逃げた海賊

釣鐘の現場に残った金田一と清水巡査。
清水巡査が金田一に話をする。

分鬼頭の志保は、小さな網元の出身。
千万太と一に言い寄ったが嘉右衛門に反対され、敵対する分鬼頭に嫁いだ。
30歳も年の離れた夫に嫁ぎ、節操がないと島中の笑いもの。
実家の網元も潰れ、親も早くに亡くなった。

金田一はわからないと言う。
なぜ犯人は、梅の木に死体を吊るしたり、釣鐘に押し込めたりするのか。
清水巡査は、金田一がこの事件に関わることを不思議に思う。

「金田一さん!」と声をかけたのは磯川警部(小市慢太郎)。
警部と金田一が知り合いなことに清水巡査は驚いていた。

獄門島駐在所。
警部は、おとといこの周辺の海賊の一斉捜査をした話をする。
そのときに一人、海に逃げた者がいて、この獄門島に流れ着いた可能性が高いという。

金田一は立ち上がって、気になることを警部に話す。
花子が殺害された晩、和尚は確かに何かを目撃している。
その賊が花子を殺して和尚に見つかったとしたら、不自然なほど長く現場にいたことになる…。

「とすると?」(警部)
「せかさないで!」(金田一)

金田一は事件を思い返してみる。
屋敷の庭の靴跡を思い出す。
「誰かが消したが、一つだけ消し忘れた…」

金田一は清水巡査に、竹蔵を呼ぶように頼んだ。

雪枝殺しの犯人は誰だ?

竹蔵が来た。
花子殺しの聞き取りに清水巡査が本鬼頭に来たのは午後6時半。
雪枝の姿が見えないことに気づく。

午後8時半に手分けして探すことに。
清水巡査と荒木村長が分鬼頭に、了沢と竹蔵は寺に、和尚は本鬼頭に残り、早苗と月代を見ていた。
幸庵医師は酔いつぶれていた。

清水巡査と村長が分鬼頭に向かうには、途中、天狗の鼻を通過する。
そこには釣鐘があり、懐中電灯で巡査が異常がないか確認していた。
振袖は、はみ出ていなかった。

巡査と村長が分鬼頭に着いた頃、幸庵医師の叫び声が谷の方向から聞こえた。
「自分も捜す」と言って、幸庵医師も飛び出していたのだ。

巡査、村長、志保、鵜飼が声のする方向へ向かった。
みんな疑心暗鬼で、一人でいるのが怖かったのだ。

釣鐘の側を通過したが、そのときは改めて確認はしなかった。
そのころは、雨が本降りになっていた。
二度目の釣鐘に近づいたのは、最初から数えて15分後のこと。

幸庵医師は、谷の途中で引っ掛かって呻いていた。
骨が折れて身動きが取れなかったのだ。
見知らぬ男と格闘したという。

男の顔は見えず、わかったことは靴を履いていたこと、風呂敷包みを持っていたこと、本鬼頭の方角からやってきたこと。

その後、幸庵医師を本鬼頭の屋敷に連れて行く際、分鬼頭の志保と鵜飼も本鬼頭に泊まった。
翌朝、雨が上がったところで、分鬼頭の志保と鵜飼が屋敷を出た。
そしてすぐに、血相を変えて二人が戻ってきた。

雪枝の振袖は、表に出ていた部分以外、ほぼ濡れていなかった。
つまり、雨が降る前に釣鐘の中に押し込められた。
仮に、雨が上がって入れたなら、それまでどこかに遺体を隠しておかなければならない。
しかし、釣鐘があったところに隠せる場所はない。

警部は村人を集め、島に逃げてきているはずの海賊をあぶり出しに行く。

「誰も無事に、逃げおおすことはできないでしょうね」

和尚たちは、新たに亡くなった姉妹たちのためにお経をあげていた。

警部が、村人たちに指示を出しているところへ部下がやってきた。
昼間、山に入った漁師が、風呂敷を拾ったという。
その風呂敷には、本鬼頭の家紋が入っていた。

屋敷で外を見つめていた早苗に、「まもなく山狩りが始まります」と金田一が声をかけた。

「誰も無事に、逃げおおすことはできないでしょうね」(金田一)
「そうですか…」(早苗)
「良いんですか?」(金田一)
「なんのことでしょう?」(早苗)

そこへ、祈祷師の装束を着た月代が、鈴を鳴らしてやってきた。

「早苗ちゃん。ほなあて行くわ。あっはっは。驚いてとる。あっはっは」
「月代さん、どちらに?」(金田一)
「御祈祷よ。あての御祈祷よう効くんよ。雪、花、殺しとる。呪い殺しとるんじゃ。ついでに、山狩りがうまくいくよう、御祈祷こいとるわ、あっはっはっは」

そして山狩りに出発した。
金田一が「僕も参ります」と言うと、早苗は「…お気をつけて」と言った。

祈祷所では、月夜の祈祷が始まった。

与三松が座敷牢に入るまでの経緯

暗い山の中、それぞれ松明に火を灯して歩いている。
警部が警察隊を前に行かせる。

金田一は、そばにいた清水巡査に質問した。
志保が釣鐘の前で言っていた言葉。
「茶人とは誰のことなのか?」と。

清水巡査は、鬼頭嘉右衛門のことだという。
嘉右衛門は風流を気取り、俳句や芝居に入れ込んでいた。
あるとき、お小夜(おさよ)(中西美帆)という女役者の一座を島に呼び寄せた。
お小夜は、道成寺の踊りが得意だった。
そして与三松がお小夜に入れあげた。
当時の与三松はまだ正気だった。
先妻を亡くし、独り身だった。
すでに千万太は生まれていた。
与三松はお小夜を後妻にと願ったが、嘉右衛門に強く反対された。
島の人間は、他国の人間と縁組することを好まない。
お小夜は祈祷師を自称していた。
独自の加持祈祷だ。
しかし、不思議とその祈祷は効いた。
島の人間は、病気のときや漁が不漁のとき、お小夜にすがった。
それに腹を立てたのが了然和尚だった。。
それまで、何かにつけて寺に駆け込んでいた島民が、見向きもしなくなったからだ。
了然和尚と嘉右衛門は同盟を結び、お小夜を孤立させた。
旗色が悪くなるにつれ、お小夜は妙なことを言い出す。
「山が割れ、火の雨が降る」と島民を脅かし、性根を直すためと、幼子に火箸を押し付けた。
やがて、誰もお小夜に寄り付かなくなる。
嘉右衛門は屋敷に座敷牢を作り、そこにお小夜を閉じ込めた。
このころには、お小夜は与三松との間に、月、雪、花の三姉妹を授かっており、娘にも会えない苦しみが、憔悴しきった体に追い打ちをかけ、やがてお小夜は牢の中で命を絶った。
愛する女を失った与三松は、泣き、喚き、のたうち回り、やがて我を失った。
これが、彼が座敷牢に入れられた経緯だ。

屋敷には、幸庵医師と了沢が残っていた。
和尚は寺に、村長は山狩りに行った。
幸庵医師に酒を頼まれ、了沢は早苗を探すが早苗が見当たらない。
二人は早苗を探すことにした。
了沢が外に出ると銃声が鳴り響いた。
兵隊風の男と遭遇との声。
了沢は山に向かってお経を唱える。

殴られた男

警部が威嚇射撃を許可。
男が銃を撃ってくる。
金田一は、千万太の亡霊に怯えていた。

警察の撃った弾が男に当たったのか、男が倒れた。
みんな駆け寄る。
警部に「弾は当てちゃダメって言ったでしょうが」と金田一が言うが、「弾は当たっていない」と警部。
男の後頭部に裂傷があり、後ろから殴られ、崖から転落したのだった。

「あの暗がりに、誰か潜んでおったということか」(警部)
後ろから音がしたので、金田一は後を追う。

途中、金田一は枝で腕を切った。
その枝には、赤い服の切れ端が引っ掛かっていた。

了沢は、祈祷所の月代に声をかける。

「変なんです。誰もいない。早苗さんも。月代さん!」
鈴が鳴る。
そして了沢は悲鳴をあげた。

「あなたはあのとき、海賊に出くわしていたんです」

金田一は祈祷所の前に立っていた。
目の前には、月代が倒れていた。
鈴は猫につながれていた。
月代の上には萩の花が置かれていた。

凶器は日本手ぬぐい、鬼頭家の家紋が入っていた。
切れ端が新しく、切り取ったばかりのようだ。
祈祷に熱中しているところを後ろから絞められた。

山で死んだ男は、島の人間ではなかった。
海賊の一味のようだ。

金田一は、座敷牢の方から出てきた早苗を待っていた。
通り過ぎようとする早苗を止め、「あなたの服の切れ端です。藪の中で発見しました」と言った。

金田一は、早苗がわざわざ山狩りの現場に駆け付けた執念で確信した。
「あなたはあの海賊のことを一さん、お兄さんだと思い込まれていたんですね?」

花子が亡くなった夜に早苗が悲鳴をあげたとき、みんなは与三松が暴れたものだと思っていたが…。
「あなたはあのとき、海賊に出くわしていたんです」

島で一番大きな屋敷に目を付けた海賊がタバコを見つけたとき、早苗が見つけて悲鳴をあげたのだった。
そのとき早苗が真実を伝えなかったのは、あの男が一だと思い込んだからだった。
一がまもなく復員すると聞いていたので、復員兵姿の男は一にしか見えなかった。
しかし、男は早苗を見て逃げ出した。
なぜ逃げたのか?
なぜ、ひそかに帰ったのか?
兄の事情を思って、早苗はとっさにウソをついた。
寺で花子が殺されたとき、現場で軍靴の跡が見つかった。
「それであなたは確信する。兄がひそかに帰った理由は、あの三姉妹を殺すためだったと」

だから早苗は、庭に残っていた足跡を消した。
そして、ラジオの復員頼りを聞くこともやめた。
消息を確かめる必要がなくなったからだ。
「あの男に、風呂敷包みを渡したのはあなたですね?」

早苗は、何の縁もない男をかばっていたのだ。
そして金田一も、何の関係もない男を追いかけてしまった。
「花子さんや雪枝さんを殺したのはあの男じゃない。奴には死体を木に吊るす必要も、鐘の下に伏せる必要もない。いわんや月代さんが殺されたとき、我々と銃撃戦を繰り広げていたんだ」

金田一は、「あの海賊が、この事件と何の関係もないとは言い切れない」という。
海賊の男は、何者かに頭を殴られて死んだ。
花子と同じ傷口だった。
つまり、同じ人間が同じ凶器を使って海賊を襲ったのだ。
たった三日で、三姉妹と一人の海賊を始末したのは、早苗が言った通り「この島の人間」だった。
志保が言う通り、この島には悪魔がいる。
早苗もこの島の人間もみんな、「三姉妹が死ぬことを予感していたのでは?」と金田一が言う。
「だからあなたは必死で兄を匿い、島中がこの事件を受け入れようとした。どうしてあの三姉妹は殺されなければならなかったんですか?何なんですか、この島は!」

早苗はようやく口を開いた。
「あなたにはわからない…。私にだってわからないんですから!」
そう言って早苗は立ち去った。
金田一は立ち尽くしていた。

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「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月か…」

逗留六日目。
オープニングのシーンと同じ。
了沢が金田一の朝食を持ってきた。
「ずっと起きてらしたんですか?」
「何時ですか?」
「間もなく朝の6時です」
「そう…」

了沢は障子戸を締めて部屋を後にした。
金田一はしばらくして立ち上がり、障子戸を開いて廊下に出た。
三姉妹のことを思い出したあと、おもむろに屏風を蹴飛ばした。

「くそっ、なんなんだ!」

金田一は分鬼頭に来た。

「当主の鬼頭儀兵衛(きとう ぎへい)(古田新太)です。こんな格好でご無礼をお許しください」
儀兵衛は布団の上に座り、寝間着を着ていた。
傍には鵜飼が座っている。

金田一は、花子の懐にあった「月代さまへ」と書かれた鵜飼の手紙を差し出した。
金田一が鵜飼に確かめると、鵜飼は自分が書いたことを認めた。
つづらおれの坂の下に大栗の木があり、その木の穴の開いたところに、鵜飼と月代は手紙を入れ合うようにしていたのだ。
花子もそのことは知っていた。
「では、花子さんが手紙を横どりした?」
「ええ、おそらく」

そのとき、志保の悲鳴が聞こえた。
三人が上を見上げると、志保が「ははは」と笑っていた。
「ははは、悪魔、悪魔や。ははは」
儀兵衛の指示で鵜飼は志保の元に向かった。
鵜飼は志保を連れて奥に引っ込んだ。

儀兵衛は口を開いた。
この手紙を書かせたのは志保だろう。
鵜飼と月代をくっつけるためだった。
鵜飼は、この島に駐留していた復員兵だ。
島のてっぺんにある防空監視所に派遣された一兵卒だった。
監視所の兵隊たちは、物資の調達と言っては麓に降りてきて食べ物を強奪していた。
漁師たちは腹に据えかねていたが、鵜飼が来たときだけは、女たちが進んで食べ物を渡していた。
やがて、鬼頭の三姉妹が鵜飼に入れあげた。
それを知った嘉右衛門が鬼のように荒れ狂ったが、それに手を差し伸べたのが志保だった。
鵜飼に三姉妹を操らせ、本鬼頭を骨抜きにするためだった。
嘉右衛門が卒中で倒れたのも、鵜飼が分鬼頭に寝泊まりするようになってすぐだった。
志保はもともと、千万太と結ばれるはずだった。
今、志保が生きている理由は、本鬼頭への復讐だけだと儀兵衛は言う。
釣鐘の事件以来、志保もおかしくなり、本鬼頭も大変だが、分鬼頭も大変なのだ。

金田一が帰ろうとすると儀兵衛がつぶやく。
「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月か…」

嘉右衛門がよく詠んでいた句だという。
月代の死に様を鵜飼から聞き、すぐに思い出したのだ。

張り子の釣鐘

獄門島駐在所。
金田一、清水巡査の前には、竹蔵に連れてこられた漁師の男が言う。
「釣鐘が歩いたとしか思えんのじゃ、おとといの晩」
雪枝が殺された夜のこと。

漁に出て、沖から島を見たとき、釣鐘が崖の上ではない場所にあった。
変だと思って船を漕いで移動すると、今度は天狗の鼻の上に釣鐘があったという。

釣鐘が二つあるのではという金田一に、昔、小夜が道成寺を踊ったときの張り子の釣鐘なら見たことがあると清水巡査が言う。
突然、金田一は駐在所を飛び出した。

分鬼頭の儀兵衛のところに来た金田一。
儀兵衛は、張り子の釣鐘は本鬼頭の蔵にあるはずだと。
「凝った造りで、真ん中から二つに割れるんです。そこからお小夜が飛び出してきて。あれが一番の盛り上がりでした」

「探偵さんも大変じゃ」と言う儀兵衛に、「なぜそれを?」と金田一は聞く。
村長が新聞記事で調べ、みんな知っているという。

清水巡査、竹蔵と共に海岸に来ている金田一。
海の中に、張り子の釣鐘があった。

竹蔵が本鬼頭の庭にある祈祷所を「一つ家」と呼んだことで、金田一はあることを思い出した。
そして「あー!」と大声をあげ、「磯川警部を千光寺へ!今すぐ!」と言い残し、走っていった。

「なんという異常な…。この島の人間はみな気が…。きが…」

金田一は、千光寺の自分の部屋に来た。
蹴飛ばして倒れていた屏風を見ると、「一つ家に…」

磯川警部、清水巡査もやってきた。
屏風に、松尾芭蕉の句「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」が書かれている。

そして、もう一つの松尾芭蕉の句「むざんやな 冑の下の きりぎりす」と、宝井其角の句「鶯の 身をさかさまに 初音かな」も書かれていた。
清水巡査によれば、俳句好きの嘉右衛門の影響で、付き合いのある者は皆、俳句に詳しいという。

「すべてはここに記されていた…」(金田一)

「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」…月代
「むざんやな 冑の下の きりぎりす」…雪枝
「鶯の 身をさかさまに 初音かな」…花子
三つの殺人は三つの句に見立てられていた。

「なんという異常な…。この島の人間はみな気が…。きが…」
ここで金田一は、和尚の言った「きちがいじゃが、しかたがない」を思い出す。

「そうか!」と頭をかかえ、「くっそー!」と髪をかきむしる金田一。

この一連の事件のあらまし

逗留七日目。
金田一は、和尚が来るのを待っている。
そこへ和尚がやってきた。

「お話とは?」
「あなたを縛りに参りました」
「何の咎で?」
「鬼頭花子さんを殺し、山狩りの際、海賊の男を殺した咎です」
「雪枝と月代は?」
「雪枝さんを殺したのは荒木村長、月代さんを殺したのは幸庵先生です。三人が一人ずつ、三姉妹を殺しました。逆さづりにされた花子さんは当然、千光寺の境内で殺したんだと思いました。殺してすぐに、梅の木に吊るした、そう考えていたんです。しかし、その間違いが僕を真相に辿りつかせませんでした。そう、花子さんは別の場所で殺され、そして寺へ運ばれたんです。地神様の祠の裏で発見しました。花子さんのかんざしです。あの晩、僕が和尚にお使いを頼まれ、文鬼頭に向かったときには既に、花子さんは祠の裏にいた。あなたが鵜飼を餌に、誘い出したんでしょう。月代さんを出し抜きたい花子さんにとっては、またとない機会ですからね。寺を出たあなたは、一人きりになる瞬間を作った」

金田一は、了沢と竹蔵に確認していた。
通夜へ向かう道中、和尚・了沢・竹蔵がいっしょに千光寺を出て、金田一と合流するまでの間に、和尚の側を離れなかったかと。
了沢は、和尚の忘れ物を取りに寺に戻っていた。
竹蔵は途中まで一緒だったが、和尚が草履の鼻緒が切れたから先に行ってくれと言い、竹蔵だけ先に行ったという。
そして和尚は祠で花子を襲った。
その後、了沢を待ち、竹蔵に追いつき、やがて金田一に合流した。
金田一にしてみれば、三人が寺を出たときからずっと一緒だったと思うしかない。
こうして花子殺しは成就した。
しかしまだ仕事は残っている、むしろここからが本番だと金田一は言う。
梅の木に逆さづりにすることが和尚の本懐なのだから。

みんなが花子の捜索に出たとき、和尚は自ら寺に戻ることを選んだ。
そして、和尚はわざと金田一たちに、坂を上る自分の姿を見せた。
正確には、金田一たちは和尚の姿を見ていない。
見たのは提灯の明かりだけ。
そのとき和尚は、背中に花子の遺体を担いでいた。
闇がすべてを包み、金田一たちの目を欺いた。
まさかそこに遺体があるとは思いもしなかった。
程よい間隔を保ちながら、和尚は山門をくぐり、花子を梅の木に吊るした。

ところがたった一つ、筋書きにないことが起こった。
そのとき、金田一は、和尚が知っている人間を見たのだと思った。
何も言わないのは、その男をかばったのだと思った。
しかし、逆だった。
その男は、事件とは何の関係もない逃亡中の海賊だった。
そしてその男に、自分の仕業を見られた可能性があった。
そう察した和尚は、その場をごまかし、逃がし、そして殺す機会を待った。
そして山狩りの際、後ろから海賊を殴った。

金田一がここまで真相に辿りつけなかったのは、和尚のあの言葉のせいだった。
「きちがいじゃが、しかたがない」
金田一は、与三松のことを言ったと受け取った。
与三松が事件に関わっていると思い込まされた。
しかしあの言葉には本当の意味があった。
「鶯の 身をさかさまに 初音かな」
これは明らかに春の句、しかし今は秋。
つまり、季節は違っているが仕方がない。
「き」とは俳句の「季」、季題のことだった。

雪代の事件の鍵は、いつ釣鐘の中に押し込められたかということ。
清水巡査によれば、8時40分頃にはまだ振袖は出ていなかった。
そして雨が降った。
雪枝の体は濡れていなかったので、雨が降って押し込めたとは考えにくい。
つまり、清水巡査と村長が遺体を確かめるずっと前に、中に押し込められていた。
なのになぜ、振袖は出ていなかったのか?
あの晩、もう一つの釣鐘が坂の途中にあった。
それは、三姉妹の母親・小夜が道成寺の踊りで使った張り子の釣鐘だった。
金田一は、その張り子の釣鐘を和尚の前に持ってきた。

犯人はあらかじめ、釣鐘の中に遺体を押し込め、わざと振袖をはみ出させておいた。
そしてもう一つの張り子を本物の釣鐘に被せた。
あの晩、清水巡査が見た釣鐘は張り子の釣鐘だった。
なぜこんな手の込んだことをしたのか?
それは、現場にいた村長のアリバイ作りのためだった。
清水巡査によれば、あの時村長は、小便をすると言って一回離れていた。
張り子の釣鐘に重石をつけておき、割って海に落としたのだ。

月代の事件。
あの日、本鬼頭に残っていたのは、与三松・早苗・了沢・幸庵医師の四人。
その中でも一番疑われないのは、左腕の使えない幸庵医師だ。
なぜなら、月代は絞め殺されていたから。
では幸庵医師はどうやったのか?
答えは手ぬぐいの切り口にあった。
おそらく、祈祷所の吹き流しに、手ぬぐいをまぜておいたのだろう。
それなら片腕で首を絞められる。
そして月代が死んだ後、手ぬぐいを切り、鴨居に掛けてある部分を持ち去った。
これが三つの事件のあらましだ。

「終わりですかな?」
「いや」
「ほかに何か?」
「鬼頭嘉右衛門…。あの男こそ、このおぞましい一連の殺人事件の真犯人だ」
「…ふっふっふ、はっはっは、何を言っておる。嘉右衛門さんはこの世の人ではない」
「あなたがた三人は、嘉右衛門に操られた殺人機械だ」

千万太が金田一のためにしたためた紹介状の宛名が、当主の嘉右衛門ではなく、和尚・村長・幸庵医師の連名だったことに大きな意味があった。
千万太は恐れていた。
嘉右衛門こそ、三姉妹を殺す元凶だと知っていたから。

「あの鐘さえなければ…」

和尚は重い口を開いた。

嘉右衛門の最期が、いかに哀れであったか。
跡継ぎの息子は、馬鹿を尽くした挙句、檻の中。
大事な孫は戦争に取られて、女ばかりが残った。
しかも、本家の娘は三人揃ってあのザマ…。
挙句、分鬼頭の志保は鵜飼を使って家を乗っ取ろうとしている。
嘉右衛門は、終戦後すぐに卒中で倒れ、左半身不随になった。
そんなとき、和尚たち三人が呼ばれた。

「昨夜、不思議な夢を見てな。月代と雪枝と花子を殺す夢じゃ。ひっひっひ。それが何とも、美しい殺し方で…」

和尚たちは、悪い冗談だと思って聞いていた。
嘉右衛門は語り終えたあと涙を流し、枕元の色紙を取り出した。
そこに三つの句を書いた。

「頼む。志しを継いでくれ。千万太が無事ならそれで良い。千万太が死に、一だけが生きて帰ってきたときには、あの三人を…当家の姉妹を……殺してくれー!」

「頼まれたから殺した?何の罪もない人間を殺した理由が、頼まれたから?」
金田一の辛辣な言葉に、和尚は天を仰いでつぶやく。
「あの鐘さえなければ…」

嘉右衛門は、鐘が戦争に取られたことを忘れていた。
釣鐘がなければ、細工は成り立たない。
和尚は、そう高を括っていた。
しかし、釣鐘は潰されず戻り、千万太は死に、一が戻ると復員兵から知らされた。
嘉右衛門の言う条件がすべて揃ったのだ。

和尚は、幸庵医師と村長の同意を得ずに、遺言を守った。
嘉右衛門の念と、和尚の覚悟に追い詰められて、二人は事を起こしたに過ぎない。
和尚が金田一の床に枕屏風を置いたのは、金田一が探偵だと知ったからだった。

「これから果たす、世にも恐ろしい行いを、あなたに気づいてもらうために…。どこかで止めてもらうために…。じゃが、まったくの無駄じゃった。申し上げたでしょう?あなたの思いも及ばぬことがあると…」
「…ふっ、ふふふ、はっはっはっは」笑い出す金田一。
「何が可笑しい?」
「だって、あなたご存じか?村長は昨夜のうちに島から逃げました。幸庵も事実を突きつけた途端、我を失った。二人とも嘉右衛門の祟りに怯え、あなたがたとの約束にも怯え、もはや死んだも同然の状態で…」
「もういい!」
「これからも何かに怯えて生きていかなければならない」
「もういいー!」
「何も知らないからそんな事が言えるんだ!」
「何を言いたいんだ、あなたはー!」
「じゃあ教えてやろう。本署から巡査のところに連絡があった。神戸で復員詐欺の男が捕まったそうだ。ビルマから復員した男だ。いいかおい!復員詐欺だ!戦友の家を片っ端から廻り、家の者たちから息子は生きていると語り、家族から飯やら土産やらを巻き上げる手口だ!死んだ戦友のことを、生きていると語ってな!はっはっはっは!その顔!幸庵と同じ顔だ!はっはっはっはっは!いいかおい!鬼頭一はな、死んでいたんだ!戦死していたんだよ、本当は!はっはっはっは、みんな死んだんだ!」
「あーーーー!」
「御破算だ!果たさなくても良い約束を、必死で果たして!ムダムダムダムダー!」
「あーーーー!」
「無意味ー!ご苦労様でしたー!ざまあみろだー!ははははは!」

放心状態の和尚を、嘲り笑い続ける金田一。

「見ろー!全部解いてやったぞー!思いも及ばぬこと?そんなものはない!ない!ない!そんなものはない!ははははは!」

思わず座り込む和尚と、狂ったように笑い続ける金田一。
笑いが止まった金田一は、目を見開いてばったりと床に倒れた。
そして仰向けのまま、声にならない泣き声をあげた。

磯川警部と清水巡査がやってきた。
磯川警部は和尚の首の脈をみたが、ゆっくりと手を引っ込めた。

「さて…どこに参りましょうか?」

本鬼頭の屋敷では、早苗が仏壇に向かって拝んでいた。
早苗が立ち上がって振り返ると、金田一が立っていた。
早苗が一礼すると、金田一も頭を下げた。
カバンを持って後ろを向く金田一。
そして再び振り返って早苗を見る。
「一緒に行きませんか?僕と…。出ましょう、島を。あなたなら、どこへ行ってもやっていける」

早苗はしばらくして口を開いた。
「お断りいたします。私が留まらなければ、この島は終わってしまいます。本鬼頭を守り、育てていくのが私の役目です」
「守るほどの島でしょうか?」
「すべては…定めです。逆らうつもりはございません」
「戦争は…戦争は、本当にひどいものでした。目の前で、たくさんの人間が死にました。たくさんという言葉では言い表せないほどたくさんです。何もできないまま、ただ死んでいきました。それが今さら、娘の二人や三人を救うために、こんなに必死になるなんて…。妙な話ですね。本当は…本当は、救う気なんかなかったのかも知れません。僕はただ、ワケが欲しかったんです。今日を生きるワケが…」
「……そう…」
「はい」

早苗はその場に正座した。
「どうか、お元気で…」
そう言って頭を下げる早苗に、金田一も頭を下げ、屋敷を出た。

金田一は船に乗っていた。
東京からの手紙を船頭から受け取る。

金田一の前に、鵜飼が座った。
「お払い箱ですか?」と声をかける。

鵜飼は驚いた顔をしたが、その後口を開いた。
「もとより、長くいるつもりはありませんでした」

「その細腕では、兵隊を務めるのも大変だったでしょう?」
「あなたこそ、よく生きてこられたこんだ」
その言葉に、金田一は笑う。

「どうして私なんかが生き残ったのか…」と鵜飼はつぶやく。
「世の理とは妙なもんです。これからどちらへ?」
「くにに帰ります。何もありはしませんが…」
「おくにがあるだけ羨ましい」

寺の鐘が鳴り「了沢くんか」と金田一がつぶやく。
「あなたはどちらへ?」と鵜飼が聞く。

金田一が持っていた電報には「アクマガキタリテ フエヲフク タスケコウ トドロキ」と書いてあった。

「さて…どこに参りましょうか?」
そう言って金田一は立ち上がり、遠ざかる獄門島を見つめていた。

(了)

総括&感想

どうしても、1977年(昭和52年)の市川崑監督映画と比べてしまいます。
映像としての美しさは、今回のドラマが素晴らしいと思いましたが、全体的な作品の美しさ・完成度としては、1977年(昭和52年)の映画に負けるかなあと思ってしまいます。
それは、主人公とヒロインを対比してみても言えるかなあと…。
私の中では、石坂浩二さんの金田一が一番好きなので。
そして、大原麗子さんの早苗…。

このドラマの一番の見どころは、寺の本堂で金田一と和尚が対峙する場面。
まるでCMになりそうな構図で座る二人と、バックの景色が綺麗に画面に収まっています。

そして金田一の長台詞。
主演の長谷川博己さんの鬼気迫る演技に圧倒されます。
狂ったように笑い続ける場面が、これでもかというぐらいに長く感じました。

「戦争」の悲哀をテーマにしている今回のドラマ。
たびたび金田一の前に幻となって現れる千万太。
嘉右衛門が三姉妹殺害を思い立ったのも、二人の孫を戦争にとられたから。
釣鐘が戻ってこなければ、和尚は殺人を実行しなかった…。
金田一自身の戦争に対するトラウマが、大きく前面に描かれたドラマでした。

今回のロケは、新潟県佐渡で行われました。
最初と最後に映し出される日本海を見て、懐かしい昔が思い出されます。
高校時代は学校から日本海が見えて、部活の練習では浜辺を走ったりしました。
遠くに見える佐渡を見ながら、一度は行ってみたいなあと思ったものでした。
今は遠く離れた場所に住んでいますが、機会があれば佐渡に行ってみたいなあと思います。(S.A.)

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