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日本の未来は明るくない、という話

      2018/06/04

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「未来の年表」著者の河合雅司氏が、続編の「未来の年表2」を刊行しますが、その一部が公開されています。

日本をじわじわ蝕んでいる「静かなる有事」に気づいてますか

2043年、ついにこの国は… 2018.05.08

河合 雅司 産経新聞社論説委員 大正大学客員教授

発売1年も経たずして、45万部を超える大ベストセラーとなった『未来の年表』。
その著者でジャーナリストの河合雅司氏が、いよいよその続編『未来の年表2』を刊行する。
今回のウリは、人口減少で起きることを年代順に追った「人口減少カレンダー」ではなく、あなたの身の回りで起きることを一覧にした「人口減少カタログ」だ。
発売に先立って、『未来の年表2』の一部を特別に先行公開する。

街は高齢者だらけ

日本が少子高齢社会にあることは、誰もが知る「常識」である。
だが、自分の身の回りでこれから起きることをわかっている日本人は、いったいどれくらいいるだろうか?

日本は劇的に変わっていく。
例えば、25年後の2043年の社会を覗いてみよう。

年間出生数は現在の4分の3の71万7000人に減る。
すでに出生届ゼロという自治体が誕生しているが、地域によっては小中学校がすべて廃校となり、災害時の避難所設営に困るところが出始める。

20~64歳の働き手世代は、2015年から1818万8000人も減る。
社員を集められないことによる廃業が相次ぎ、ベテラン社員ばかりとなった企業ではマンネリ続きで、新たなヒット商品がなかなか生まれない。

高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は36・4%にまで進む。
高齢者の数が増えるのもさることながら、80代以上の「高齢化した高齢者」で、しかも「独り暮らし」という人が多数を占める。
こうした高齢者が街中に溢れる社会とは、一体どんな様子だろうか?

いま、東京や大阪といった大都会では、ラッシュアワーには5分と待たずに電車やバスがやってくる。
なぜ、そんな過密ダイヤで運行できるのかといえば、乗客の大多数が人の流れについていける「若い世代」だからだ。

たまに、杖をついた高齢者が、駅員の手を借りて乗降する場面に出くわす。
ただ、それはあくまで少数派であり、駅員の手際よい作業でそんなに多くの待ち時間を要するわけではない。

しかし、2043年とは、総人口の7人に1人が80歳以上という社会だ。
独り暮らしであるがゆえに否応なしに外出する機会は増えるが、若い世代の「流れ」についていける人ばかりではない。
こんな過密ダイヤはとても続けられない。

80代ともなれば、動作は緩慢になり、判断力も鈍る人が増える。
こうした高齢者が一度に電車やバスを利用するのだから、駅員は乗降のサポートに追われ、ダイヤ乱れなど日常茶飯事となるのだ。

新幹線や飛行機だって同じだ。
現在でも空港の保安検査場に長い列ができているが、機内への移動も含め、スムーズな移動は年々期待できなくなる──。

ダチョウの平和

残念ながら、皆さんが生きている間は、人口減少や少子高齢化が止まらない。
過去の少子化の影響で、今後は子供を産むことのできる若い女性が激減していくためだ。

人口減少のスピードは凄まじい。
国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の推計によれば、2015年の国勢調査で約1億2700万人を数えた総人口は、わずか40年後には9000万人を下回り、100年も経たずして5000万人ほどに減少する。
われわれは、極めて〝特異な時代〟を生きているのである。

ただ、こうした数字を漫然と追いかけ、社会の変化を大くくりに把握していたのでは、少子高齢化や人口減少問題の実像はつかめない。
ましてや、それが自分の暮らしにどう関わってくるのかを理解できないだろう。

それでは、いつまで経っても真の危機意識が醸成されないではないか。
もっと、リアリティーをもって、「未来」を想像する力が求められている。

人間というのは〝不都合な真実〟に直面したとき、往々にして見て見ぬふりをするものだ。
それどころか、気休めにもならない楽観的なデータをかき集めて、〝不都合な真実〟を否定しようとする人さえ出てくる。

皆さんは、「ダチョウの平和」という言葉をご存じだろうか?
危険が差し迫ると頭を穴の中に突っ込んで現実を見ないようにする様を指した比喩だ(実際のダチョウの習性とは異なるとの指摘もあるようだが)。

日々の変化を把握しづらい人口減少問題こそ、この「ダチョウの平和」に陥りがちな難題である。
それは切迫感が乏しいぶん、どこか人ごととなりやすい。

何から手を付けてよいのか分からず、現実逃避をしている間にも、状況は時々刻々と悪くなっていく。
そして、多くの人がそれを具体的にイメージできたときには、すでに手遅れとなってしまう──。

どこかズレている

「ダチョウの平和」ですぐ思い起こすのが、他ならぬ安倍晋三首相の発言である。
2017年10月の総選挙に際して行った記者会見で、少子高齢化を「国難とも呼ぶべき事態」と位置づけ、突如として、増税される消費税の使途変更を宣言した。

国の舵取り役たる総理大臣の言葉は重い。
首相の発言を耳にした私は、「ようやく、少子高齢化への対応に本腰で取り組むことにしたのか」と期待を抱かずにはいられなかった。

だが、それが全くの「ぬか喜び」であったことを思い知らされるのに、多くの時間を要しなかった。
安倍首相の口から続けて飛び出した対策が、幼児教育・保育、高等教育の無償化だったからである。

「国難」と大上段に構えた割には、スケールがあまりに小さい。
スケールの大小だけでなく、「どこかズレている」と感じた人も多かったのではないだろうか。

深刻な少子化にある日本においては、子育て世代が抱える不安を解消しなければならない。
だから、教育・保育の無償化について、「全く無意味だ」などというつもりはない。

だがしかし、今後の日本社会では高齢者が激増する一方で、少子化が止まる予兆がない。
このままでは勤労世代が大きく減り、社会システムが機能麻痺に陥る。
日本という国自体が無くなってしまうことが懸念されるからこそ、「国難」なのである。

その対応には、ダイナミックな社会の作り替えが不可避だ。
私が首相に期待したのは、人口が激減する中にあっても「豊かさ」を維持するための方策であり、国民の反発が避けられない不人気な政策に対し、真正面から理解を求める姿であった。

「具体的な変化」に置き換える

「ズレ」は、首相や議員だけでなく、イノベーション(技術革新)や技術開発の現場にも見つかる。
少子高齢化に伴う勤労世代の減少対策として、人工知能(AI)やロボットなどに期待が高まっているが、開発者たちは本当に少子高齢社会の先を見据えているだろうか?

その典型が、話題の超高精細映像システム「8K」だ。
鮮明な画像で楽しみたいと心待ちにする人も少なくないだろう。

「8K」技術そのものに、ケチをつけるつもりは毛頭ない。
むしろ、厳しい開発競争に打ち勝った技術者たちの努力には賞賛の拍手を送りたい。

ただし、超高齢社会を睨んだとき、追い求めている技術が果たして、超高精細映像システムでよいのかが疑問なのである。
今後どんなにクリアな画像を実現したとしても、老眼鏡ではせっかくの性能を楽しめない。

高齢者たちが求めているのは高画質ではなく、むしろ「音」にある。耳が遠くなり、ボリュームを大きくしてテレビを見ている人は多い。
聞き取りやすい小型スピーカーを搭載したテレビを安く手に入れたいという声は少なくないはずだ。

技術開発とは、社会の課題克服のためにある。
ならば、開発者たちは高齢者のニーズをもっと聞くべきであろう。

「ズレ」といえば、最近普及してきたインターネット通信販売(以下、ネット通販)もそうだ。
〝買い物難民〟対策の切り札の如くに語る人も少なくない。

だが、ちょっと待っていただきたい。
ネット通販が本当に切り札と言えるのだろうか?

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荷物を運ぶ人手は少子化に伴って減りゆく。
〝買い物難民〟対策だと言って普及させればさせるほど需要が掘り起こされ、トラックドライバー不足はより深刻になる。

無人のトラックが走り回る時代も遠くないとされるが、トラック自らが荷棚から個別のお届け物をより分け、重い荷物を玄関先まで運んでくれるわけではあるまい。
少子高齢社会において、ネット通販が遠からず行き詰まることは簡単に想像できよう。

こうした「ズレ」をなくすには、少子高齢化や人口減少によって起こる大きな数字の変化の意味を、想像力を豊かに働かせて、あなたの身の回りに起こる「具体的な変化」に置き換えるしかない。

全く新しいアプローチで

『未来の年表2』は、タイトルでもお分かりのように、ベストセラーとなった前著『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』の続編である。
今後続く私の「未来シリーズ」の第2弾という位置づけだ。

ベストセラーの続編というのは、大概が前著の余勢を駆った〝二匹目のどじょう狙い〟である。
しかし、本書に限っては決して二番煎じをしようというものではない。

前著において私は、少子高齢社会にあって西暦何年に何が起こるかを「人口減少カレンダー」を作成することで俯瞰した。
こうしたアプローチは多くの読者の支持を得た。「人口減少の危機をかなり具体的にイメージできた」という感想も多く頂いた。

他方、私は限界も感じていた。
前著では、少子高齢化や人口減少を、全体の姿をなかなか現さない巨大なモンスターにたとえたが、「人口減少カレンダー」だけでは、モンスターの全貌をとらえきれないと思ったのだ。

安倍首相や8Kテレビ開発者の「ズレ」も、モンスターの図体が大き過ぎるからこそ、生じたのだろう。
ならば、今回は全く新しいアプローチで迫ろうと思う。

そのヒントは、読者の皆さまから頂いた。
私はかねて講演に招かれる機会が多いのだが、前著『未来の年表』を刊行して以降、その数は激増した。
はるかイギリスのテレビ局をふくめ、バラエティ番組やラジオ番組、月刊誌や週刊誌などさまざまなメディアからインタビューを受ける機会も増えた。

数多くのお便りも頂戴した。
その中でとりわけ多かったのが、「自分の日常生活で何が起こるのかを教えてほしい」というリクエストである。

ある講演会が終わったときのことだ。
数年後に定年を迎えるという女性会社員に呼び止められた。
そしてこう言われたのである。

「私が聞きたかったのは、政府や国会議員にならなければできない政策ではなく、自分の定年退職後にどんな社会が待っているのかということです。
私たちがいま備えておくべきこと、これからできることは何なのかを知りたいと思っている人は多いはずです」

また、年配の中堅企業経営者からのお便りにはこう綴られていた。

「人口減少の深刻さはよく分かりました。
企業レベルとしてもできることはあるはずです。
どこから始めればよいのかを知りたい」

前述した電車やバスの乗降問題などはほんの一例だが、人口減少や少子高齢化をより正確に、より深く理解しようと思うならば、個人の身の回りで起こり得ることを、より具体的にイメージする必要がある。
少しばかり想像力を働かせてみることが、「ちょっと方向違い」な政策や商品開発を減らすことに間違いなくつながってゆく。

ギフトカタログのように

そこで『未来の年表2』は、あなたの身近なところで起こる変化を、より具体的にイメージするための手助けをしようと思う。
今回は、少子高齢化や人口減少が人々の暮らしにどのような形で降りかかってくるかを、あなたの生活に即しながら明らかにする。
言うなれば、これからあなたに起きることを、お中元やお歳暮のギフトカタログのように一覧してみようというのだ。

もちろん、それは個人的な妄想や願望、思い込みではいけない。
データや知見に基づいた精緻な予測を前提とする必要がある。

人はいろいろな顔を持って暮らしている。
職場や地域社会、家庭といったどの生活シーンにおいても少子高齢化や人口減少の影響を避けられない。

しかも、その人の年齢や住む場所、性別などによって、見える未来も、降りかかる影響も大きく異なることだろう。
この問題を真に理解し、うまく立ち回っていくためには、さまざまなシーンを「あなた自身の問題」として具体的に置き換えなければならない。

したがって第1部では、少子高齢化や人口減少によって起きるであろうことを、家庭、職場、地域社会といったトピックスに分けてカタログ化する。
若い読者にもわかりやすく内容を理解してもらうために、「人口減少カタログ」を各トピックに載せた。

第1部目次(抜粋)
◎伴侶に先立たれると、自宅が凶器と化す
◎亡くなる人が増えると、スズメバチに襲われる
◎東京や大阪の繁華街に、「幽霊屋敷」が出現する
◎高級タワマンが、「天空の老人ホーム」に変わる
◎80代が街を闊歩し、窓口・売り場は大混乱する
◎オフィスが高年齢化し、若手の労働意欲が下がる
◎親が亡くなると、地方銀行がなくなる
◎若者が減ると、民主主義が崩壊する
◎ネット通販が普及し、商品が届かなくなる
◎オールド・ボーイズ・ネットワークが、定年女子を「再就職難民」にする

前著『未来の年表』が年代順というタテ軸を用いて俯瞰したのに対し、本書は「人口減少カレンダー」で起きる出来事を「ヨコ軸」、すなわち面としての広がりをもって眺める。
そうした試みによって、人口減少社会とはどんな姿なのかをより立体的に把握できると考えたからだ。

もちろん、すべての生活シーンを再現できるわけではない。
「これから儲かるビジネスは何ですか?」などというストレートな質問を頂くことも少なくないが、私はジャーナリストであり、ビジネスコンサルタントやマーケットリサーチャー、ましてや予言者ではない。
人口動態から社会の変化の兆しを先読みすることはできても、あまたある職種に今後起こりうることをすべて知る術を持っているわけではない。

しかし、主だった生活シーン、ビジネスシーンへの影響をデータの裏付けをもって疑似体験できるように描けたならば、それが結果として、ビジネスチャンスや個々人のライフプランづくりに役立つことになるだろう。
小さな子供を持つ親御さんならば、「子供の将来」への不安も小さくないだろう。
『未来の年表2』はそれを考えるヒントにもなる。

第2部では、個々人や会社などで「今からでも始められる対策」を中心に選択肢としてメニュー化した。
どこかズレている政治家や官僚、古い体質の企業経営者の変化を待っているだけでは、もはや遅い。
地域や一般社員、個々人のレベルで「今できること」を着実に進めることが極めて重要となってきている。

一人ひとりの取り組みが日本社会の価値観や〝常識〟を変え、いつか世論となり、社会ニーズとなっていく。
われわれが政府や企業を動かしていかなければ、この国は衰退の道を歩み続ける。

私は少子高齢化を「静かなる有事」と名付けたが、近年の出生数の減り幅の拡大ぶりを見ると刻々と進んでいる印象だ。
人口減少のスピードは思ったより速くなるかもしれない。
まさにいまが日本の正念場ともいえる。

時間はさほど残されているわけではない。
過去の成功体験にしがみつき、人口減少や少子高齢化対策に逆行するような愚行は許されないのである。
『未来の年表2』が、あなたを救う一助にならんことを願う。

[出典:日本をじわじわ蝕んでいる「静かなる有事」に気づいてますか(河合 雅司)現代ビジネス(講談社 > http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55466 ]

今の子どもたちが住み良い社会を作ってあげたいですが、なかなか難しい話ですね。
悲しい話が多くてつらいです。

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