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模倣犯 映画 ネタバレあらすじ・感想批評ガイド

   

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映画「模倣犯」あらすじ・ネタバレ・感想

中谷美紀・坂口健太郎【ドラマ版】模倣犯ネタバレあらすじはコチラ

原作:宮部みゆき「模倣犯(もほうはん)」

模倣犯/宮部みゆき

【小説のあらすじ】

第一部では事件の被害者・警察・関係者サイドに主点をおいて物語が進行する。
1996年9月12日早朝、一家惨殺事件の唯一の生き残りである塚田真一は、犬の散歩中に、大川公園で女性の右腕を発見する。
同じ公園からは、失踪したOL・古川鞠子のハンドバッグが発見され、マスコミが大騒ぎするなか、犯人を名乗る人物はテレビ局に「右腕は古川鞠子のものではない」という内容の電話を掛ける。
さらに、古川鞠子の祖父の有馬義男のもとにも、犯人から電話があり、孫娘を心配する有馬の心を弄ぶかのように、有馬を翻弄していく。
やがて、犯人の指示で有馬あてのメッセージを届けた女子高生の死体が発見され、古川鞠子の白骨体も第三者の会社に送り届けられる。
死者を冒涜するかのような犯行やマスコミに対する不敵な挑戦。
そして、有馬をはじめとする被害者遺族に対するあまりにもむごい仕打ちに、犯人に対する捜査員や一般市民の怒りは日に日に強くなっていた。
11月5日、群馬県の山中で一台の自動車が崖下に転落し、事故車のトランクから1人の男性の死体が発見される。
自動車を運転していた栗橋浩美と助手席に座っていた高井和明の2人も事故のために死亡していた。
連続女性拉致殺害事件の犯人たちはこうして死亡したものと思われた(犯人の行動から、犯人は2人組であることが分かっていた)。

第二部では栗橋浩美と高井和明、及び彼らの同級生だったピースを中心に物語が進行する。
時は少し遡る。栗橋浩美は職に就かず、同級生だった高井和明にたかる生活を送っていた。
あるとき、山間の廃墟で、栗橋は過去のトラウマから衝動的に恋人と見ず知らずの女子高生を殺害してしまう。
栗橋は同級生だったピースに事件を打ち明け、対処について相談する。
やがて栗橋とピースは、連続女性殺害事件を引き起こす。
残酷な通り魔的な殺人者を作り上げ、山中で殺害した2名のこともこの犯人に因るものであると、見せかけるよう仕組んだのであった。
やがて、栗橋の異変に気づいた高井は、行動を起こそうとする。
高井のことに気づいたピースと栗橋は、連続女性殺害事件の罪をすべて高井に着せて、高井を殺害してしまうことを思いつく。
そして11月5日、高井を呼び出した栗橋は、高井の車に自身が殺害した会社員の死体を積み込み、山中へと向かった。
山中で高井を自殺に見せかけて殺し、事件の幕引きとするつもりであった。
しかし、予想外なことに、高井は栗橋を説得し、自首するように促し、栗橋の心は大きく傾いた。
そして、動揺した栗橋はハンドル操作を誤り、転落事故を起こしてしまい、栗橋と高井は絶命する。

第三部では再び事件の被害者・警察・関係者サイドに主点をおいて物語が進行する。
警察は栗橋浩美と高井和明の自宅の家宅捜索を行う。
すると、栗橋の自宅から右腕を切り取られた女性の死体と、監禁された女性達の写真が発見され、捜査本部は栗橋・高井が連続女性拉致殺害事件の犯人として捜査を進める。
栗橋の部屋から発見された写真から、一連の事件で殺されたと認められる女性以外の姿を見つけ、捜査本部はその女性の特定、栗橋・高井が殺人を行っていたアジトの発見に向けて捜査を進める。
しかし、和明の妹・高井由美子は捜査本部の報告に納得がいかず、兄の無実を主張し続け、「栗橋主犯・高井従犯」説を唱えるルポライター・前畑滋子や有馬義男などに接触をはかるようになる。
そんな由美子の後見人に、かつて浩美・和明と同級生だった”ピース”こと網川浩一が名乗りをあげ、マスコミに華々しく登場してくる。
「栗橋主犯・高井従犯」説に真っ向から逆らって「高井は犯人ではなく、真犯人Xが存在する」そう主張する網川。
だとすると真犯人Xは誰なのか? 真犯人Xをめぐって事件はクライマックスを迎える。

[出典:模倣犯(小説)(Wikipedia > https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%A1%E5%80%A3%E7%8A%AF_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC) ]

【小説の登場人物】

網川浩一 / ピース
29歳。進学塾講師。
秀才で学生時代は常にトップの成績を誇り、また運動神経も抜群、好青年のためクラスの人気者であった。
彼が考案し、練り上げた一連の連続殺人事件を「社会が求める独創的なストーリー」と評し、殺害された女性たちを「女優」と例えている。
狡猾で計算高いが、自分を非難されたり、自分の誤った点を指摘されると態度を豹変させる(栗橋でさえ、そんな彼の姿にビビっていた)。
栗橋浩美と高井和明とは小学校・中学校の同級生。
和明の妹である由美子に付き添って、事件の遺族の代弁者として「和明は無実だ、犯人は別にいる」と主張し、テレビ番組に出演。
次第にカリスマ的人気を集めていく。

栗橋浩美 / ヒロミ
29歳。無職。
網川浩一と高井和明とは小学校・中学校の同級生。
網川には劣るものの、非常に頭がよく、運動能力も高い。
自尊心が高く、自分より下等とみなした相手には容赦なく陰湿ないじめをしたり、使いっ走りにしたりするが、唯一自分より秀でたピースに対してはこびへつらっていた。
自分が生まれる前に死んだ姉の幻覚に度々襲われる。
外見的には人当たりの良い青年に見られるため、女性にもてる。

高井和明 / カズ
29歳。蕎麦屋「長寿庵」の跡取り息子。
網川浩一と栗橋浩美とは小学校・中学校の同級生。
少年時代からヒロミやピースにいじめられており、現在でも金品をたかられている。
学習能力が低いと思われていたが、実は視覚機能の障害によるものだった。

高井由美子
26歳。和明の妹。栗橋の本性に気がつき警戒している。
兄の気の弱さを気に病み、なんとか栗橋から引き離そうとする。
和明が事故死した後は、和明の無実を訴えようと篠崎や滋子にコンタクトを取る。

有馬義男
72歳。豆腐店経営。古川鞠子の祖父。
鞠子の失踪後、精神を病んだ娘の真智子の面倒をみながら突然の不幸に精一杯立ち向かおうとする。
犯人の挑発に対しても冷静に対処する。

古川鞠子
20歳。OL。有馬義男の孫娘。
謎の失踪を遂げ、連続女性誘拐殺人事件の被害者となる。

前畑滋子
32歳。ルポライター。前畑昭二の妻。
事件の第1発見者である塚田真一に取材し、事件の全貌に迫る。
塚田真一や有馬義男と関わるうちに、自分はこの事件のルポを書くべきなのかどうか、被害者たちのことをどう思っているかなどの疑問に苛まれる。

前畑昭二
34歳。鉄工所経営。前畑滋子の夫。
結婚当初は滋子の仕事を応援していたが、次第に滋子と対立するようになる。

塚田真一
17歳。休学中。
教師一家惨殺事件の生き残りで、家族を殺された事件のきっかけを作ってしまったのは自分ではないのかと苦悩する。

水野久美
16歳。高校生。
真一とともに大川公園で右腕を発見し、それが縁で真一と友達になる。
一連の事件でうちひしがれた真一を勇気付けようとする。

樋口めぐみ
17歳。教師一家惨殺事件の加害者の一人娘。
生意気で我侭な性格。
真一につきまとい、「自分の家族を殺した犯人の減刑嘆願書に署名しろ」と理不尽な要求をする。
網川に自分の父親について本を書いてほしいとお願いする。

坂木達夫
45歳。東中野警察署生活安全課刑事。
古川鞠子の失踪事件を担当する。
有馬義男の良き相談相手。

武上悦郎
警視庁捜査一課第四係刑事。
主に捜査資料の整理などを担当する。
栗橋・高井犯人説に疑いを持つ。

篠崎隆一
28歳。墨東警察署刑事。
捜査本部で武上の部下として配属される。
事件が起きなければ、高井由美子とお見合いをする予定だった。

岸田明美
ヒロミの友人が開催する展覧会で受付をしていた令嬢。
たまたま来ていた浩美と意気投合し、浩美と交際することになる。
男に対する警戒心が欠けていたため、ヒロミの正体に気づくことができず、お化けビルでヒロミに殺害された。

日高千秋
恵まれない家庭環境で育ったため家庭的愛情を満足に得られず、様々な男性と付き合うことで家庭で得られなかった愛情を充足する。
容姿は抜群でテレクラを通して男性とお付き合いする。
ヒロミの巧みな誘導によって、何も知らないままホテルに義男宛の封筒を持っていく。
カメラマンを自称する浩美にスカウトされ、ピースの山荘へと連れていかれることになる。

[出典:模倣犯(小説)(Wikipedia > https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%A1%E5%80%A3%E7%8A%AF_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC) ]

2002年公開の映画「模倣犯」

【原作と映画版の相違点】

人物設定
原作でのピースは知能が高いものの、自分の誤りを指摘されると思考が停止する精神的に幼い人物として描写されている。
映画版のピースは冷静沈着かつ冷酷な天才犯罪者としてスマートに描写されている。
なお、ピースの職業は原作では『進学塾講師』で、映画版では『経営コンサルタント』となっている。

映画版ではヒロミは4か国語を操る語学の天才という設定になっている。
原作にはそのような設定はなく、むしろ自堕落に生きる青年として描写されている。
また、原作で詳細に描写されている母との葛藤や死んだ姉の亡霊に悩まされているという設定は映画版では捨象されている。
ヒロミの実家は原作では『薬局』だが、映画版では『美容院』となっている。
また原作では浩美の母は育児ノイローゼを患うという設定だが、映画版ではそのような設定はなくごく普通の美容師となっている。

原作ではカズは一見愚鈍に見えるが、ヒロミの身を真剣に案ずる度量の広い人物という描写がされている。
映画版ではピースとヒロミに利用されてしまう気の弱く優しい男という設定になっている。
映画版のカズは中学生の頃、集団でいじめられていたところをヒロミに助けられた旧友となっている。

高井由美子は原作では自殺するが、映画版ではピースに(半ば騙される形で)心身を救われたのか自殺しない。
また原作ではお見合いする予定だった篠崎との接点がない。

映画版では古川鞠子は祖父と同居しているが、原作では別々に住んでいる。
また、映画版ではある秘密を隠す見返りに自ら殺されたように描写されている。
原作では鞠子殺害に関して鞠子側にまったく落ち度がなく、犯人に対して最後まで抵抗したと書かれている。

映画版では前畑昭二は殺害されてしまうが、原作ではそのような事はない。
また、昭二の職業は原作では『鉄工所経営』だが、映画版では『畳職人』になっている。
崖下に転落したヒロミとカズの車のトランクに入っていた遺体は、映画版では前畑昭二だが、原作では木村庄司という男である。

原作の有馬義男は終盤で豆腐屋を辞めて隠居してしまう。
だが映画版では、行く当てが無い塚田真一と共に豆腐屋を営む際、ピースの子供を拾い、愛無く育ったピースの代わりに育てる決意をする場面を描写している。

原作のカズは太っているという設定だが、映画版でカズを演じた藤井隆はやせ気味である。

その他の設定
映画版のみ登場する人物(ゲスト)、映画版では登場しない主要人物もいる。
塚田真一の一家殺人事件の犯人は別だが、映画版ではピースが仕掛けたとされる描写がある。
女性の右腕を塚田真一が発見したのは、原作ではまったくの偶然。
しかし映画版では、ピースが事件をセンセーショナルなものにする為、わざとそうなるように仕向けた事にされている。
ヒロミとカズの事故死は、原作ではまったくの偶然だが、映画版ではピースが謀殺した事になっている。
この物語の結末は、原作ではピースは逮捕されて一連の犯行を自供するが、映画ではピースが被害者家族も出演したテレビの生放送番組の出演中に自殺(爆死)する。

【キャスト(映画)】
網川浩一(ピース):中居正広、橋本康栄(中学時代)
有馬義男:山崎努
古川鞠子:伊東美咲
前畑滋子:木村佳乃
前畑昭二:寺脇康文
高井和明:藤井隆、蓑輪裕太(中学時代)
栗橋浩美:津田寛治、植田健(中学時代)
武上悦郎:平泉成
塚田真一:田口淳之介
高井由美子:藤田陽子
岸田明美:小池栄子
古川真智子:中村久美
古川茂:小木茂光
栗橋寿美子:由紀さおり
篠崎刑事:モロ師岡
木島アナウンサー:城戸真亜子
ウェイトレス:松本志のぶ
記者:福澤朗
アナウンサー:井田由美、小倉淳、若林健治、大杉君枝、豊田順子、藤井貴彦
山田花子
佐藤江梨子
坂下千里子
グレーテル・ウエゴニスタ1世
爆笑問題(太田光・田中裕二)
PUFFY(大貫亜美・吉村由美)

[出典:模倣犯(小説)(Wikipedia > https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%A1%E5%80%A3%E7%8A%AF_(%E5%B0%8F%E8%AA%AC) ]

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映画「模倣犯」 あらすじ&ネタバレ

豆腐屋の朝は早い。
店主の有馬義男(山崎努)は、出来上がった豆腐を四角く切っている。
夫がずっと帰らない娘の古川真智子(中村久美)は精神を病んでいる様子。
孫娘の古川鞠子(伊東美咲)は朝食の準備をしている。

”鞠子の姿を見るのが今日で最後とは夢にも思わなかった”(有馬)

夜、有馬が寝ていると、真智子が部屋に入ってきて鞠子が帰ってこないことを告げる。
鞠子にも遊ぶ時ぐらいあるだろうと思う有馬に、8時に「すぐに帰る」と電話があったと真智子は言う。
真智子は、大したことないと思っている有馬に「警察に行って」とお願いする。

★・・・・・★

10ヶ月後、塚田真一(田口淳之介)が犬のロッキーを散歩させていると、急にロッキーが立ち止り吠えだした。

そしてテレビの報道。
「今日 午前9時頃、東京台東区にある大川公園で、切断された女性の片腕が発見されました。発見された片腕は、女性もののショルダーバッグと共に、銀色の保冷シートのようなものに包まれ、公園内のイベント広場にある花壇に置かれていました。犬の散歩で通りがかった少年が発見し、警察に通報したものです」

台東警察署を出てくる塚田真一を呼び止める、刑事の武上悦郎(平泉成)。
武上は、真一の家族が殺された「佐和市教師一家殺人事件」の捜査をしていた。

真一たちの横を、タクシーに乗って警察署にやってきた有馬義男と古川真智子が通り過ぎる。

★・・・・・★

出版社編集部。
前畑滋子(木村佳乃)は、以前に「佐和市教師一家殺人事件」の唯一の生き残りである塚田真一をルポしていた。
滋子は、編集長から「佐和市教師一家殺人事件」についてのDVDを渡された。
「あの時、自ら家族惨殺の第一発見者となった少年が、またも第一発見者だ。少年はトラウマがよみがえり、自分の不幸を嘆くかも知れないが、ある人に幸運を投げかけた。君だよ。君のルポがより肉厚になってくると僕は見たがな。どうだ?」
DVDを見た滋子に、編集長は「またこの少年に会ってみないか? いや、君には会う責任がある」と言う。

★・・・・・★

古川真智子は、娘の鞠子が心配で入院してしまった。
ベッドの横には、父の有馬義男と夫の古川茂(小木茂光)が立っていた。
廊下に出た二人、茂は有馬にお金を渡すが、「こんなことより顔を見て話しかけてやれ!」と怒る。

★・・・・・★

畳職人の前畑昭二(寺脇康文)は滋子の夫である。
昭二は、前畑畳店の2階に塚田真一を住まわせるという滋子の意見に賛成した。
「滋子は偉いよ、本当に彼のことを考えてる。仕事の道具にしてない」と昭二は言う。
それに対し、「自分のこと考えてるだけかも知れない、もっと話を聞こうと・・・」と滋子は答える。
「そうだとしても、今の彼には有り難いはずだよ。滋子が社会的に意義ある仕事してるから、僕も誇りに思う」と昭二は言う。
滋子は、自分を応援してくれる夫に、原稿料で買った時計をプレゼントした。
「欲しかったやつだ。有難う」と昭二は喜ぶ。

★・・・・・★

テレビの生放送中、木島アナウンサー(城戸真亜子)に「大川公園で見つかった片腕とショルダーバッグは別の人間のもの。ショルダーバッグは古川鞠子という女」という電話がかかってきた。

警視庁の捜査会議で、テレビ局の電話オペレーターに犯人は、他のイタズラ電話と区別させるためにキーナンバーを伝え、それが本庁のパソコンのシリアル番号と一致したとの報告があった。
篠崎刑事(モロ師岡)は、犯人は従来のボイスチェンジャーではなく、リアルタイムに音をデジタル化していたと説明。

捜査会議のモニタ―に、手錠をはめられ監禁された女性たちの写真が映しだされる。
「各局それぞれ違う女の写真を送っている。みんな僕の所有するキャストだ。夜のニュースで流すことを約束すれば、あらたな事実を話す。写真は勝手に修正しろ。そこまで考えてやってるんだ、やさしいだろ。僕のキャストたちの感想はどうかな?ネットでせいぜい話し合ってくれよ。この画像がどこから送られてきたか探しても無駄だ。わかるようなサーバーから発信してないからね。僕のキャストになりたい人は、とびきりのオシャレして街を歩け」

★・・・・・★

有馬義男の自宅に電話がかかってきた。
「もしもし、じいさん。有名になって、豆腐屋繁盛してる?日本人は悲劇の主人公好きだから、がんばってね」
「あんた、テレビ局に電話した人かい? 少し違う気がする」

「背中にホクロがある鞠子さん、心配かあ・・・」
「心配に決まってるだろ。鞠子をどうしたんだ!?」

「じゃあ腕を切られた人は?自分の孫だけ心配してるのは社会性に欠けるよ」
「その人にも、夜も眠れないほど心配している家族がいるだろうから、鞠子のことと同じように気になるよ」

「無理するな。他人の娘なんかこの際どうなったっていいはずさ」
「鞠子はどこにいるんだ? あんたが本当に鞠子の居所を知っているという証拠をくれないか? 俺に何かしてほしくて電話してきたんだろ? 何をしたらいいんだ?」
「横浜のベイシアターホテルに7時、フロントにメッセージを届けとくよ。くれぐれもオシャレしてきてよ。高級ホテルなんだから」

有馬義男は、ホテルのフロントで手紙を受け取った。
「このホテルのバー『ベイ・ビュー』で待て」と書かれていた。
有馬義男は28階のバーに向かった。

テーブルで待っていると、スタッフから「こちらへどうぞ」と案内され、電話にでた。
「もしもし」
「じいさん、華麗なホテル体験はどうだった?」
「緊張したよ」
「何飲んでんの?」
「・・・水割りだ」
「ただ水割りって。スコッチとか、バーボンとか、何の銘柄の何年モノだって言えたの?」
「言えない。そんなことより、どうするんだ?」
「今の時代は、格好良くスマートでなかったら生きていけないってことさ。水割り一つ頼むのにも、何でもいいからってのはバカだよ」
「ああ、わかった。結論を急げ。こんなところにこんなジジイが立ってるだけでも、店の雰囲気を壊す」
「やるねえ。じいさんバカじゃない。家に帰ればわかるよ。郵便箱に入れといた」

自宅に戻り、郵便箱を確認すると、裏に「MARIKO.F」と刻印された鞠子の時計が入っていた。
「これで僕が本物だってわかったろ?」とメッセージが同封されていた。

★・・・・・★

翌日、有馬義男の自宅に電話がかかってきた。
そばには、逆探知をするために警察が待っていた。

「もしもし、有馬豆腐店」
「ハロー、ユー スピーク イングリッシュ?(こんにちは、あなたは英語はできますか?)」
「もしもし、誰だ?」
「英語で(変なことしてると、こっちも変なことして分からなくするよ。同時通訳できる警官もおいとくんだな)」(電話を切った)
「もしもし・・・もしもし!」

★・・・・・★

テレビの生放送中、犯人から電話がかかってきた。
「もしもし」
「英語で(今から古川鞠子の遺体のある場所を教える。これから画像を送りヒントを出す。場所探しを警察よりも先に見つけられる人もいるだろう」
「あなたね、嫌がらせ止めて日本語で言いなさい、日本語で」

★・・・・・★

そして、「遺体が見つかった」というテレビ報道を、有馬義男は自宅で見ていた。
有馬は、鞠子がカナダからハガキを書いたように鞠子のマネをして書いた。
そして、そのハガキを病室の真智子に見せた。
”お母さん、じいちゃん。鞠子の勝手を許してください。今、大好きな人とカナダにいます。とても空気がよく、幸せです。”
有馬は真智子に「幸せならどこにいてもいいじゃないか、そうだろ真智子」と言う。

★・・・・・★

警視庁捜査会議。
鞠子の遺体にシールが貼ってあり、大川公園で採取したものと一致した。
そのことから、シールマニアの田川一義を第一容疑者に設定。
しかし、武上刑事は異論を唱える。

★・・・・・★

有馬の自宅に電話がかかってきた。
「もしもし」
「元気か、じいさん」
「俺に今さら何の用だ?」

有馬の家で電話を聞いている刑事が、田川を張り込んでいる刑事と連絡をとる。

「こそこそしてないで顔を見せろ。警察に捕まる前に俺の前に顔を出せ。大豆と一緒にこねてやるよ!」

★・・・・・★

テレビの生放送で、すりガラス越しに田川が「重要参考人T氏」として生出演し、その様子を刑事たちも見ていた。
田川が、犯人は自分ではないと否定したところで、真犯人からテレビ局に電話が入った。
「フランス語で(そこにいるのは、CだっけTだっけ)」
「申し訳ありませんが、せめて英語でお願いします」

「そこにいるのは、CだっけTだっけ、それとも田川だっけ?」
「Tです」
「Tくん、そうやってテレビに出て、あのガラスの向こうにいたのは僕だったんだよと自慢したいのか?」
「ちがうよ、正義を証明したかったんだ」
「出てこい、顔を出せ。有名人好きの女がキャーキャー言って、おまえの好きなことをしてくれるぞ。犯人は僕だ、Tじゃない。そうだろT。罪を着せられた悲しい男の顔を見せるんだ」

犯人に挑発され、田川は表に出てきた。
その後CMを流し、放送を中断。

★・・・・・★

CMの後、放送を中断したことを謝罪する司会者。
すると、犯人から再び電話がかかってきた。
犯人は、殺人現場をライブストリーミングする、生で犯罪を送信すると言ってきた。
その映像をテレビでも見れるようにする、携帯でのサイト提供はCDフォンだけにする。
CDフォンに対し、1週間の売り上げの5%をユニセフに寄付、1%は地雷撲滅キャンペーンにするように指示する。

★・・・・・★

前畑昭二が、滋子の本の愛読者に「別荘の畳の見積もり」を頼まれたから出かけるという。
出かける昭二を、滋子と真一は見送った。

★・・・・・★

ライブ殺人の中継が間もなく始まると知らせる木島アナウンサー。
8時になり、テレビ、CDフォンで中継が始まった。
女性が襲われる映像が流れる。

★・・・・・★

その頃、山梨県のグリーンロードで、乗用車がガードレールを突き破り 崖下に転落して炎上する事故があった。
その車のトランクには、前畑昭二の遺体が入っていた。
テレビ報道で、車に乗っていた栗橋浩美(津田寛治)と高井和明(藤井隆)が、何らかの関係があるとみて警察が捜査していることを伝えた。

★・・・・・★

警視庁から記者に報告。
栗橋浩美のマンションから、事件に関係する写真が数十点発見され、テレビで公開されたものと一致した。
そのマンション付近で、栗橋浩美と高井和明が2人でいるところが目撃されていた。
この2人が、前畑昭二殺害と女性バラバラ殺人に関わっている模様と報告。

★・・・・・★

ここで第一部が終了です。
ここまでは、まだ犯人の顔は出てきていません。
古川鞠子と、もう一人の女性、そして滋子の夫・前畑昭二が殺害されました。
「誰が」「なんのために」「どうやって」事件を起こしたのかは、次の第二部で明らかになります。

ここからは事件の核心に迫っていきますので、ネタバレを見たくない方はここで止めておかれることをお勧めします。
続きを知りたい方は、自己責任でお願いします。

★・・・・・★

2年前。
高井和明(藤井隆)の店、蕎麦屋「長寿庵」の開店祝いに、胡蝶蘭を持ってきた栗橋浩美(津田寛治)。
栗橋が「俺には?」と言うと、高井は「ごめん、少ないけど」と言ってお金を渡した。
赤いオープンカーには、栗橋の彼女・岸田明美(小池栄子)が乗っていた。
高井の妹・由美子(藤田陽子)が、「何やってるのお兄ちゃん、忙しいんだよ」と呼びにきた。
由美子がまたお金をあげたことを怒ると、「あいつはかけがえのない友だちなんだ、だからあいつが困っているときは何でもする」と高井は言う。

★・・・・・★

夜、人気のないところでオープンカーを止める栗橋。
由美子のことで文句を言う明美に腹を立て、助手席のガラスに頭を何度もぶつけて殺してしまう。
栗橋は明美を抱え、森の中へ入って行った。
「バカな女に俺の一生を台無しにされたくない、誰にも邪魔されたくない。ピース、助けてくれー!」と叫ぶ。

★・・・・・★

沖縄。
白いオープンカーを運転する網川浩一”ピース”(中居正広)。
「人間の役割は生まれたときから決まっている、不幸だと思ったらもう負けだ」と助手席の栗橋に言う。

ピースこと網川は、明美の親に手紙を書いていた。
「明美の親も、こうして手紙さえ書いておけば放っておくやつだ」
栗橋はピースの頭の良さを感心する。

「人間はなんで、進化、してると、思う?事故、戦争、病気、犯罪、それらを克服するために生きているんだ。だからこそ、人為的な犯罪は教養のあるやつがやるべきなんだ。凡庸な犯罪は何の役に立たない。誰もやったことのない犯罪、それが僕たちの役割なのさ」
「日本の警察は優秀だ」と言う栗橋に、「奴らにわかるわけないさ。木を隠すには森の中だ。そしてアナログの意識を捨て、デジタルになれば、僕たちを捜せやしない。僕たちは無臭だ」とピースは言う。

★・・・・・★

中学校のクラス。
網川浩一”ピース”は、栗橋と高井の中学校に転校してきて同じクラスになった。
網川は黒板にピースマーク(ニコちゃんマーク)を描き、右手でピースサインをして微笑んだ。

★・・・・・★

店から出てきた女性の手をいきなりつかむ栗橋。
女性が嫌がると、白いオープンカーに乗ったピースが声をかけた。
「やめろヒロミ! その女、背が高すぎる」

それでも手を離さない栗橋は女性に「その10円くれよ! お前の10円がほしいんだ。それで許してやるから、黙ってくれよ」と言う。
恐る恐る10円を渡すと、栗橋はその10円を口の中に入れた。
女性は急いで車に乗って逃げた。

ピースは栗橋に言った。
「さあ、そろそろ別荘に戻ろうか。僕たちの女たちが待っている」

★・・・・・★

東京。
「今から帰る」と電話をする古川鞠子。

電話を切ると、鞠子の携帯にメールが来た。
「どうしても話したいことがある すぐ来てほしい!!」

殺害現場にやってきた鞠子。
車の中からピースが見ている。

”私を殺してもかまわない。ただ一つだけお願いがあるの。私がどこへ行こうとしていたか、情報だけは消して。おじいちゃんにだけは、それをわかってほしくない。”

★・・・・・★

別荘で食事をするピースと栗橋。
「ヒロミは本当に、アニマルだ」
網川が微笑む。

「鳥の声を聴き分けるように、外国語も理解している。僕もそれは、敵わなかった」
「外国の女も知りたいと思っただけだよ。裸にさせるにはまず、言葉だろ」

「だからさ、会話も上手い。ヒロミは広報担当だ。僕らの犯罪をマスコミに知らしめすのは、ヒロミの役割だ。いいね」
「わかったよ。僕の才能を駆使してやるよ。マスコミを、女のように舐めてやるよ」

この別荘には、手錠で拘束されて監禁されている女性たちが何人もいた。

「君は死にたくないって命乞いするけど、今の君みたいにちっぽけな存在のまま生きていたってしょうがないじゃない。でも僕たちの作る連続殺人の被害者という形で、この一大イベントに参加したならば、君の名前は日本中で有名になって、みんなが君のことを知るようになって、みんなが君の名前や顔を覚えてくれて、みんなが君の死を悼んでくれるよ。これって、すごく素晴らしいと思わない?」とピースは言う。

★・・・・・★

有馬豆腐店の前を通り過ぎるピースと栗橋。

ピースが「あれが鞠子のじいさんだ」と言う。
「スケベそうなじいさんだ。おそれいりやす」と栗橋は答える。

公園にやってきた2人。
ピースは言う。
「ここが第一のステージだ。あの鞠子の家からも近い。そして、おあつらえ向きの奴らも何人かいるだろ。カモフラージュは長くはもたない。しかし、もたせたほうがいい。犯人を仕立てあげるのさ」

ピースがおあつらえ向きの奴と言ったのは、ゴミ箱から缶ジュースのシールをとっていた、シールマニアの田川一義だった。
「そして行動パターンを犯罪に合わせるんだ。彼を容疑者に仕立てる証拠を何気なく置く」

ピースは犬を散歩させていた塚田真一を見ていった。
「犬を連れた少年がいるだろ。彼は佐和市の一家殺人で、唯一人生き残った男だ。当然 家族の地獄絵を見ている。なあ、前畑滋子の『地獄絵を見た人々』という本を知ってるか?」
「ああ、あれ、残忍事件の被害者の遺族をルポしてるやつだろ!?」

「ああ。ただ事実関係をルポしたお涙頂戴ものだけど、その一家殺人で一人生き残った男が、僕らの犯罪の第一発見者っていうのはどうかな!?」
「ああ・・・」

彼らの目の前には、風景をカメラに収めていた男性がいた。
「さあ、写真に撮られる前に退散だ」

★・・・・・★

森の中で穴を掘るピースと栗橋。
「暑っつ。こんなことまでして汗をかく人間て、なんなんだ」という栗橋。
「今まで人間は感情で人を殺した。これからは理性で人を殺す。神が人間を殺してきたように」とピースは答える。

穴を掘り続ける2人。
「さあ、そろそろショータイムの始まりだ」と笑うピース。

★・・・・・★

大川公園で女性の片腕が発見されたテレビ報道を見ている美容師の栗橋寿美子(由紀さおり)とその客。
「殺された女にも問題がある。ろくな女じゃない」と言う寿美子。

「ろくな女じゃないのはお前だよ」と、その店のソファーでつぶやく息子の栗橋。
CMになって話題が変わる母親に「もっと事件に驚けよ、お前の息子がやってるっちゅうに」と思う栗橋。

★・・・・・★

鞠子の遺体が見つかったとの報道が流れる蕎麦屋「長寿庵」。
高井和明が奥の部屋で新聞を見ていたところへ、妹の由美子が入ってきた。

「この頃おかしいよ、お兄ちゃん」
「何が?」
「だって、バラバラ殺人のニュース、極端に反応するし」
「みんな関心あるよ、今度の事件は。由美子だってそうだろ。気をつけろよ、ほんとに」
「まさか、事件に関係してるとか?」
「そんな勇気、あるわけないだろ」
「なに、勇気ってそんなことにも使う言葉?」
「使わない・・・」

★・・・・・★

有馬義男の自宅に、ピースから電話がかかってきた。

「じいさん、久しぶりだね。落ち着いたか?孫娘より長生きして恥ずかしくないのか?」
「お前ら、あせってるな。最低の人間がどうなるか、見届けてやるよ」

「失うものがないから強気だねえ、くそじじい。お前らってどういう意味だ?」
「2人でやってるんだろ。俺にはわかる、歳をとっても耳はいいんだ。お前ら一人じゃ何にも出来ない。弱い女しか殺せない。そうだろ?」

「じいさんみたいに男を殺せってか。ボルネオであんたに殺されたサンダース軍曹は僕の親父だ」
「なんだって!?」

「いくら戦争したって、お前が殺した男にゃ妻も子どももいるんだ」
「俺が行ったのは、満州だ!」
「冗談だよ。安心しろ。ともかく男を殺したら、じいさんのせいだからな。覚えてろよ」

★・・・・・★

栗橋と川釣りをしているピース。
「じいさん電話したら、僕たちは2人だろってさ」
「うらら、鋭いじゃないか」
「それだけじゃない。僕たちは女しかやれないって、男をやってみろってさ」
「男をやったら じじいのせいだ」
「それは僕も言った。戦争じじいのくせになあ」
「もうあのじじいには構わないほうがいいかもな」

ピースは魚を釣り上げ、まじまじと見た。
「綺麗な色だ。どの芸術も出せなかった色だ。動物も魚も鳥も、人間より綺麗だ。それら殺していいなんて観念がある以上、戦争はもちろん、人間同士の殺人なんてなくならないさ」

★・・・・・★

ピースの別荘。
栗橋は、田川一義がガラス越しにテレビ出演中に電話をかけ、顔を見せるように迫った。
そして田川が顔を見せると、すぐにCMに変わった。
それに対し栗橋はひどく腹を立て、電話を切った。

「冷静になれヒロミ。掛け直すんだ」
「嫌だね!」
「バカな相手にバカになるなよ」
「・・・クソしてくる!」

★・・・・・★

今度はピースが電話をかけ、殺人現場をライブストリーミングすると宣言した。
その後、落ち着いた栗橋が部屋に戻ってきた。

「残りのセリフを代わりに言っといたよ。ヒロミと違って、少しあがったけどな」

★・・・・・★

自宅マンションの前に立っていた高井に声をかけ、「上がってこいよ」と言う栗橋。
屋上で缶詰のパイナップルを食べていた栗橋の元に、高井が走ってきた。

「おい!アポイントもなしに来るなっていったろ!? 変な翻訳の仕事でもしてるかと思って心配なのかよ」
「そんなことじゃなくて、ヒロミのことが心配なんだよ」
「あっははは」
「大丈夫か?」
「なにが心配なんだよ? 女と途中だったらどうするつもりだったんだよ、しょうがねえなあ」
「ヒロミ・・・俺になにか隠してないか?」
「・・・・」

栗橋は高井をぐっと抱き寄せた。
「お前には隠せないよな。やっぱりお前は友だちだ」
「・・・」
「実はな、ある奴に脅されてるんだ。僕に罪を着せようとしてる。だから、なんとかそいつの証拠をつかもうと思ってな」
「やっぱり・・・助けになるから、なんでも言ってくれ」
「わかったわかった、話すよ。だからこうやって勝手に来るな。タイミングってのがあるんだよ、人間には。それを間違えて、お前が巻き添えで殺されでもしたら、泣くに泣けないだろ 和明」
「・・・はい。俺、お前が犯人なのかもって思ってたんだ。ごめんよ」
「ははは、食うか?」(高井にパイナップルを食べさせる)

★・・・・・★

ピースに高井のことを話す栗橋。
「和明には参ったよ。あいつなりになにか、感じているようだ」
「和明を利用するか」
「どうしたらいいんだ!? あいつはバカだから何するかわからない」
「わかってるさヒロミ、心配するな。この事件の犯人を演じるのは、高井和明だ。あいつの無能は、才能だ」

★・・・・・★

ピースの別荘にやってきた畳職人の前畑昭二。
ピースはコーヒーを出す。

「奥さんはルポライターでしたね?」
「ええ」
「僕、奥さんの本、『地獄絵を見た人々』、何回も読み直しました。犯罪の傷跡が人間にどう影響するのか興味深く、とても感動しました」
微笑む前畑。

「僕はそのおかげで、福祉ボランティアをやっているんです」
「はあ・・・」

「ま、そういうわけで、どうしても畳を頼むんだったら、前畑さんにお願いしたいと。ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ。妻のおかげで仕事貰ったの、初めてですよ。いやあ、嬉しいなあ。ほんと、とても嬉しい」

「良かったです。それより、見積もりだけでこんな遠くまで、すいません。なにしろ何畳っていうのがわからなかったもので」
「しかし、広い別荘なんですね。羨ましい」

「いや、お恥ずかしい。親の遺産ですよ」
「それより、いい時計してますよね。僕が欲しかったやつだ。すごく頑丈なんですよね、それ。核戦争でも残るってやつでしょ」

「女房が買ってくれたんです。この時計のように生きてくれって」
「頑丈にですか、いいな」
「ところで、畳はどこに・・・」

★・・・・・★

栗橋と電話で話す高井。
「父親が高血圧で倒れて病院に行った」と言う高井に、「だけど、命に別状があるってわけじゃないだろ。僕のほうは、命が危ないかもしれないんだ。お願いだから、一人にしないでくれよ」と栗橋は言う。
「一人にしないでくれ」と言われ、「わかった行くよ」と返事をする高井。

★・・・・・★

栗橋に話すピース。
「カズを別荘に入れ、前畑昭二の衣類や所持品に指紋をつけさせる。前畑昭二の死体をレンタカーのトランクに積む。飛鳥の森でカズは、レンタカーの排気口からガスを引き込み、自殺をする。遺書は僕が作る」

★・・・・・★

氷川高原駅前の喫茶店で、窓際の席に座る栗橋。
ウエイトレスの女性がチラッと見て「私の好みのタイプ」とつぶやく。
栗橋は微笑みながら「タイプじゃないっつうの」と心で思った。

★・・・・・★

ピースと話す栗橋。
「自殺!?」
「破壊衝動というのは、外側ばかり向かうものではないという事さ。その動機の説明は、心理学的にもつく」

ピースは栗橋の顔を見た。

★・・・・・★

ウエイトレスの女性に話しかける栗橋。
3時になり、喫茶店の前に車が止まり、高井が出てきた。
店の外に出た栗橋。

「遅いよお前」
「ごめん・・・」
「あの喫茶店の鳩時計になるかと思ったじゃないか」
「鳩時計!?」
「あるんだよ、あの店には」
「いやあの、ごめん。俺なりに汗かいて急いだんだ」
「かいてないじゃないか、汗なんか」
「いや、あの・・・」
「もういいよ、行くぞ!」
「はい」
「いいや、俺が運転する」
「はい・・・」

栗橋が運転し、車は走っていった。

★・・・・・★

ピースの別荘に来た栗橋と高井。

「なんだ、ヒロミが連れてくる友だちって、高井君だったのか。しばらくぶりだね、僕のこと覚えてるかい?」
「ピース君だよね!?」
「そう、網川浩一、転校生の。さあ、中へ入って落ちついてくれ」

★・・・・・★

食事をする3人。
「はははは、あれには参ったよなぁ。あ、あと週刊誌のグラビアに出てた3組の山崎奈々子、あいつ、ピースに自分の下着まで送ったんだぜ」
「へーすげぇ、ピースが転校してくるまでは、何でもヒロミが1番だったのにな」
「まあ、勉強はな。でも、笑わせてくれるのは高井君だよ。ほら、プロ野球の選手のモノマネ、あれは面白かった。なあヒロミ」
「そうそう。あ、バットもあるしさ、やってくれよ、久しぶりに」
「いやー、いいよ・・・」

2人にみつめられて「じゃあ」と立ち上がる高井。
高井は清原のモノマネをして、「似てる?似てない?」と反応をうかがう。
ピースは「ははは、似てる似てる」と手を叩く。

続いて、中村ノリのモノマネをする高井。
栗橋が笑っていると、ピースはその場を離れた。

★・・・・・★

ゆっくりと、バットを持って戻ってきたピース。
「止めろ、ピース」と制止する栗橋。

「何を止めるんだよヒロミ!?」
「ヒロミに手を出すな!」と高井が詰め寄る。

バットを落とし、ピースは床に座った。
「ははははは。どうして僕のレベルに来てくれないんだ。僕はいつも、普通の奴に計画を邪魔される。はははは」
「普通の人間、バカにするんじゃないぞピース」と高井は言った。

★・・・・・★

中学時代の高井が、数人の同級生にマットを巻かれていじめられていた。
そこへ「何やってんだよ!」と栗橋がやってきて止めた。

「大丈夫か、和明」
「ヒロミ・・・ありがとう、こんな僕のために」
「何言ってんだよ」

★・・・・・★

ピースの別荘。
高井は床の上に1人、倒されていた。
ピースと栗橋はいなかった。

「ヒロミ・・・ありがとう、こんな僕のために」と高井はつぶやく。

★・・・・・★

2人は、車のトランクに保冷シートに包まれた荷物を積んだ。

栗橋に話をするピース。
「8時には携帯サイトでニセの殺人ライブだ。その始末は僕がつける、安心してくれ。その反応のニュースは、全局録画しておく。タンカレでも飲みながら見よう」
「冷やしたギムレットか、楽しみだな」
「Good Luck!」

栗橋は車を走らせた。

★・・・・・★

木島アナウンサーが、ライブ殺人の中継が間もなく始まると知らせる。
栗橋は、夜の山道を運転していた。

すると、後部座席から手が伸びてきて、高井が顔を出した。
「うわっ」と驚く栗橋。

「びっくりするじゃないか! お前はゾンビか!?」
「ヒロミ、僕は全てわかってる。ヒロミが人を殺してるって、初めから思ってたんだ」
「じゃ、なんで来たんだよ、重ね重ねの男だな まったくー」
「ヒロミ、こんなことを重ねちゃいけない。ヒロミは誰よりも純粋なんだ。たとえヒロミが人殺しだって、僕は味方さ。ヒロミは何でも出来て、僕の憧れなんだ。ピースはヒロミを利用してるだけだ。このままじゃ2人とも、ピースに殺されちゃうよ。トランクの人もやられたんだろ!?」

栗橋は高井の顔を見る。
「お前、そんなこと知ってて じっとしてたのか」
「じっとしてた方が、利口だと思って。睡眠薬を歯茎の間に入れといたんだ」

バカだと思っていた高井が、意外に頭が切れる奴だと驚く栗橋。
「お前ってやつは・・・。よくそんなこと考えるなー。どうするんだよ、そんなに大好きな俺がお前のこと 殺そうとしてたら!?」

その時、後で何か物音がした。
顔を見合わせる2人。
「なんだ?」
「気のせいだよ。警察へ行こう、ヒロミならやり直せるよ。そのために僕は、いくらでも助けるから、お願いだ!」
「うっ、和明、ブレーキが利かない!?」

車が蛇行して制御できない。
「ハンドルもおかしいんだ、ファック!」

そのまま車はガードレールを飛び越えていった。

★・・・・・★

クレーンで引き上げられる車。
車は黒焦げだった。

★・・・・・★

ここで第二部が終了です。
事件の犯人は、ピースこと網川浩一と、栗橋浩美でした。
ピースは、完全犯罪を完成させるために、同級生の高井和明と栗橋浩美に罪を被せ、殺害することに成功しました。
ピースの完全犯罪は成功するのか、それとも失敗に終わるのかは、次の第三部で明らかになります。
ネタバレを見たくない方は、ここで止めておかれることをお勧めします。
続きを知りたい方は、自己責任でお願いします。

★・・・・・★

喪服の前畑滋子は、前畑畳店の仕事場で「在りし日の夫」を思い出していた。
各局のリポーターが、入れ替わり立ち替わり前畑畳店の前で、カメラに向かって話している。

「一連の殺人事件に巻き込まれて殺害された・・・」

「前畑昭二さんのご自宅の前に来ています」

「普段なら黙々と・・・」

「作業をしている昭二さんの姿を見ることが出来ましたが・・・」

「現在 店には、忌中の張り紙が張られ、その姿を見ることは出来ません」

★・・・・・★

塚田真一は、2階のカーテンを閉め、荷物を持って部屋を出る。
テーブルには、置手紙を残していた。

前畑滋子さんへ
ありがとうございました。
頑張って僕も生きますから、前畑さんも頑張ってください。
いつか、僕が前畑さんを助けられる日が来ると思います。
さようなら。
連絡先わかったら、お知らせします。
ロッキーは置いていきます。
今まで通り可愛がってください。
塚田真一

★・・・・・★

高井和明の自宅前にリポーターたちが来て、入れ替わり立ち替わり マイクに向かって話している。

「高井容疑者の自宅は、昔から蕎麦屋を営んでおり、2年前に新装開店をしました。高井容疑者も働いていましたが、事件発覚した現在、ご覧のような・・・」

「止めてください!」と、由美子は店の中から叫んだ。

★・・・・・★

JR亀有駅前のバス路線案内図を見ている塚田真一に、バスを待っていた有馬義男が声をかけた。

「警察で会ったね」
「はい。僕も覚えてます」

2人は、駅前の喫茶店に入った。
有馬が話し始める。

「それは大変だったね。それで、どこへ行くとこだったのかね」
「どこか、住み込みの所でも探そうと思って。ここら辺のパチンコ屋でも行こうと思って・・・」
「・・・良かったら、うちへ来ないか?」

★・・・・・★

出版社に来て 座っている滋子に、編集長が言葉をかける。

「なんと慰めたらいいのか・・・」
「取材の無神経さも、身に染みました」
「そうか・・・。時間を置いてでも良いから、今回の事件 書いてみないか? 無神経なマスコミの事 含めて」
「・・・今はとても」
「他人の不幸は密の味。それを高く売れるのは本人が一番だろ!?」
「編集長、言葉が過ぎませんか!?」
「何を言ってるんだ。君のことを思って言っているんだ。他に誰がこんな慰めを言う・・・」

★・・・・・★

警視庁捜査会議。
監禁された女性たちの写真、氷川高原駅の写真をスライドで見ている。

「えー、容疑者2人を、氷川高原駅近くの喫茶店のウエートレスが確認しております。2人は、栗橋浩美、高井和明の2人で間違いないとのことです」
「被害者が目撃された氷川高原の別荘が 犯人たちのアジトと考えられ、ローラー作戦を開始したいと思います」
「それでは、捜査会議を終わります」

立ち上がる刑事たち。

★・・・・・★

ホテルの部屋に入る高井由美子。
そばにはピースが立っていた。
ピースは、黒いカバンから数冊の週刊誌を取り出し、鏡の前に置いた。
由美子はピースに礼を言う。

「ありがとう。こんなことまでしてくれて・・・」
「僕は事実を訴えたいんだ。和明は、人を殺せるような人間じゃない」
「お兄ちゃんは絶対犯人なんかじゃない。人間的にどうとかいうんじゃなくて・・・本当に犯人じゃないの」
「わかってるさ。僕は絶対、由美ちゃんが正しいと信じてるし、確信してる」

ピースは週刊誌の1冊を手にした。
「由美ちゃんは、雑誌なんか読める状態じゃなかったかも知れないけど、ほとんどは兄さんを犯人扱いをした酷いものだった。日本人は家族っていう単位には、絶対的な信仰を抱いてるから、死んだ兄さんに負わせることの出来ない責任を、由美ちゃん達に負わせようとしてるのさ。『家族は一緒くた』だって・・・。僕は、そんなバカな大衆の攻撃から、由美ちゃんを救い出したいんだ」
「本当に、ありがとう」

由美子はピースに抱きつく。
「これからはいつも、僕がそばにいてあげる」
「死んだ兄さんと、こうして抱き合ったことがある?」

由美子はピースの顔を見つめ、首を横に振った。
「お互いこうして慰められることで、人は、不幸を避けられるんだ」

由美子はピースの胸に顔をうずめる。

★・・・・・★

ビルの大型スクリーンに映るピース。
テレビ番組に出演し、木島アナウンサーに話をするピース。

「僕自身、友人として、忍びないものがありました。それ以上に、高井君の遺族の苦しみを見ていると、本当に気の毒で、このまま黙ってはいけないと言う気持ちが、どんどん強くなってきたんです」
「網川さん、栗橋浩美容疑者のほうは、どうお考えですか?」
「栗橋については、残念ですが、一連の犯人であることは間違いないと思います。ただし、彼には別の共犯者がいたんでしょう」
「それでは、高井和明容疑者は犯人ではないと言うことですか?」
「そうです。犯人は別にいると思います」

★・・・・・★

大型スクリーンに映るピース。
「人を殺したいという気持ちそのものが、既に犯罪なのです。気持ちを友愛に向け、コントロールするのです。どんな人間でも、愛されたい、愛したいんです。素直にそれを表現すればいいのです。僕は君が好きだよという気持ちを持つこと。犯罪なんて誰も犯したくないものなのです。罪のない人間に罰を与える事は許せない。僕は、正義を追求します」

ネットでは、ピースの話題で持ちきりになった。

★・・・・・★

有馬豆腐店。
有馬は、塚田真一に仕事を教えている。

★・・・・・★

病院の真智子の部屋に来ている有馬。
「虫眼鏡とって」と有馬にささやく真智子。

有馬は、虫眼鏡を真智子に渡した。
真智子は、絵はがきを虫眼鏡で見ながら、鞠子を捜した。

「お父さん、鞠子どこにいるの?」
「ああ、どっかよそで買い物でもしてるんだろう。鞠子は日本にいるより幸せそうだな」

★・・・・・★

有馬が病室を出ると、夫の茂がやってきた。

「あ、丁度良かった。離婚届・・・」
「今、休んだばかりだ」
「実は、僕の百合子が妊娠したんですよ。ですから、急がないと・・・」
「真智子のことも考えろ・・・」
「お金ならちゃんと・・・」
「そうじゃなくて・・・」
「何人もの人のことは考えられません。僕は今、百合子のことで精一杯なんですよ。百合子のことは僕が考えます。お父さんは、真智子のことを考えてください」
「・・・」(下を向く有馬)

★・・・・・★

有馬が病院の庭を歩いていると、ピースが声をかけてきた。
「有馬義男さんですね」
「あなたは?」
「網川浩一です。一度 お会いしたいと思っておりました。気丈なお姿を、テレビで拝見していたものですから・・・」

★・・・・・★

池の前のベンチで話す2人。

「私は、鞠子を殺した犯人をもう、何十回も殺しましたよ。火あぶりにしたり、殴ったり、ナイフでやったり・・・。それでも足りないくらい憎んでいます。ただ、いつも想像する犯人は 顔が違う。真犯人が見つかったら、そいつの顔を思い浮かべられる。それだけのことですよ」
「それでは、あの2人の顔が浮かびますか?」
「あなたが言うように、別にいるんですか?」
「それを有馬さんに聞きたいんです。有馬さんは、どう思いますか?」
「時が経つに連れて、犯人はどうして鞠子や他の人を殺す人間になったのかを考えるようになったんです。どんな父親だったのか、母親だったのか。何か子どもの頃にいやなことがあったのか。生まれてきた時から悪人なんて1人も居ないはずです。何かが彼をそうさせた。そして、もしかして鞠子も、なにか方向を間違えて、その犠牲になる運命に・・・」
「有馬さんがいらっしゃる家庭で、そんな間違いがあるだなんて」
「私の家族のどれだけ、あなたは知っているんです?」
「有馬さんだって、僕の家庭などわからない」

ピースの顔をじっと見つめる有馬。
「失礼しました。僕は有馬さんの為にも、真犯人を見つけます」
「私は、その犯人と、とことん話がしてみたい」

★・・・・・★

真一が豆腐店の前で水を撒いていると、前畑滋子が訪ねて来た。

「こんにちは」
「あ、こんにちは!」
「良かった、元気そうで」
「はい、頑張ってます!」

★・・・・・★

テレビ番組に出演し、木島アナウンサーと話すピース。

「心の闇ですか?」
「人間は誰でも、心に闇を持っています。彼らが何故 恐ろしいことをしたのか、大勢の人が知りたがっている。どうしてかと言ったら、みんな自分の中に、殺人者に似た部分が隠されていることを知っているからです」

有馬と滋子と真一は、ピースが話すテレビを見ていた。

「本能的な悪の要素は、人間 誰でも持っているのです。ですから、その悪の要素をいかに、善の要素に昇華させるか・・・」

滋子に話しだす有馬。
「私はやっぱり、前にこの男を見たことがあるんだ」

驚く滋子と真一。
「しかも、栗橋浩美と歩いていた所を・・・」

有馬は、店の前をピースと栗橋が歩いているところを、仕事をしながら見ていた。
ピースは少し微笑んでいた。

真一は滋子に話しかける。
「前畑さん、この人のことを調べてみたら?」
「・・・」(滋子はうつむいている)

「こういう奴が、大手を振って、嘘八百 並べて、俺たちを騙そうとしているんだ。冗談じゃないだろう!?やっつけてやろうじゃないか。あんたなら出来るさ」と有馬は言う。

滋子は真一を見つめた。
「真一君、私はもう疲れたのよ・・・」
「僕のことを書いた時は、疲れてなかったの?僕と同じ立場の人に、前畑さんは力を貸してくれたんでしょう?自分がその立場になったら、ダメなわけ?」

滋子は何も言えなかった。

★・・・・・★

以前、栗橋が声をかけてきた女性に話を聞く滋子。

「私がこうやって店から出てきたら、あっちから浩美がナンパしてきて、急に手を掴んだんです。私が逃げようとしたら、あっちの方から『浩美止めろ!その女は背が高すぎる』って、言ったんです」
「網川浩一の顔は、確認出来なかったのですか?」
「顔は見てないのですが、『浩美』って言った、彼の声や言い方が、テレビに出ている網川と同じなんです。その時のことは、良く覚えています」

★・・・・・★

警視庁捜査本部。
ホワイトボードには、人物相関図が書かれている。
それを指しながら、説明する武上刑事。

「えー、網川浩一は、千葉県市川市で網川啓介と網川聖美の第1子として誕生している。しかし 彼の誕生後1年で両親は離婚。母親の聖美は、世田谷区在住の天谷英雄という人物と養子縁組をして養女となり、天谷性に改姓。ま、普通ならば、清美の実子である網川浩一も母親と同じ性になるのだが、網川姓のまま」

★・・・・・★

編集部でパソコンに打ち込む滋子。
”聖美は天谷の愛人だった可能性が高い。すると、浩一もどちらの子供であるかわからない。網川浩一は生まれた時から居場所のない、どこへ行っても誰かの邪魔になるという役割を押しつけられた子どもだったのだ。”

★・・・・・★

警視庁捜査本部。
武上刑事の説明が続く。
「浩一の母 聖美は、天谷から、氷川高原の別荘を貰い受けていた」

★・・・・・★

編集部でパソコンに打ち込む滋子。
”そして、驚くべきことに、浩一の母は、天谷から氷川高原の別荘を貰い受けていた。”

★・・・・・★

滋子は、ピースの別荘に夜 来ていた。
雪が残っている庭を、懐中電灯を照らして歩いている。
滋子が入り口に近付くと、「何してんだ!?」と声がして、刑事たちがやってきた。

「誰!?」と滋子が叫ぶ。

「警察だ、あなたは、何故ここに?」と聞く武上刑事。
「あなた達こそ、なんで?」

「なんだ、あんた前畑さんか」
「はい・・・」

「警察に任せて貰えんかね!?」と、武上刑事は強い口調で言った。
「・・・」

★・・・・・★

テレビ番組に出演しているピース。
「本日は、いつもの網川さんに加えて、この前 夫の前畑昭二さんを亡くされたばかりのルポライター、前畑滋子さんをお迎えしました。まず前畑さん、仰りたいことは・・・」
「はい」

滋子は、一冊の本を手に持って話し始めた。
「これは、10年前にアメリカで出版されたノンフィクションです。著者は元ニューヨークタイムスの記者で、実際の犯罪を元に多くのノンフィクションを書いているライターです。これもその一つで、原書です」

ピースは滋子のほうを見る。
滋子は話を続ける。
「この中で、最初に犯人と思われていた人物が死亡した後で、『彼は殺人者ではない、無実だ』と主張する人物が出てくるんです。その意見には非常に説得力があり、州警察も再調査に乗り出したりするんですが、実は、その男こそが犯人だったんです」

カメラがピースをアップにする。
「強力な物証がいくつも発見されて逃げられなくなった彼は、どうしてそんな事をしたのかを問われ、『だって、面白かったからさ。正義の振りをして、みんなの注目を浴びるのが、愉快だったからだよ』と答えています。今度の事件は、完全にこれを真似た『模倣犯』です」

カメラがピースに寄っている。
そしてピースが話し始める。
「模倣犯なんかじゃない。世界で初めての事件ですよ。前畑さんが先ほどから仰っている本というのは、存在しません」

滋子は言葉が出ない。
「単なる僕を引っかけるブラフに過ぎません。僕の言ってる事が正しいことは、ネットで検索をすればすぐにわかります。前畑さん、何の為にやったんですか?」

ピースは、前を向いて話す。
「この事件は、僕のオリジナルですよ。全て、僕が考えたことです」

ピースを睨む滋子。
刑事たちも見つめている。

男性司会者が話し始める。
「ただいま、網川浩一さん宛に電話が入りました。網川さん、どうぞ」

ピースは電話の相手に話しかける。
「もしもし」
「お前は、人間に犯罪の怖さを教えるキャストに過ぎない」(ボイスチェンジャーの声)

戸惑うピースに、有馬が話しかける。
「もしもし、有馬義男と申します」

ピースが有馬に話す。
「有馬さん、どんな用件でしょうか?」

有馬はスタジオから電話をかけていた。
「そんな事していて楽しいか?」

「楽しいかどうかというよりも、使命感で突き進んでいるだけです」
「もっと他で その頭を使えなかったのか?みんな、みんな自分の能力の限り、精一杯、一生懸命生きているんだ。もっと幸せになりたい、金は欲しい、愛されたい。人間の欲望は誰しもある。しかし それを抑えながら、人に迷惑を掛けないよう、分をわきまえ、人生をそれなりに楽しんでいるんだ。普通の人はそうだ。そんなささやかな運命を弄ぶ事が楽しいか!?」

「弄ぶ・・・」
「そうだ。お前は自分の思うとおりにやってきた筈だった。頭が良いか悪いか知らないが、世間のびっくりする犯罪をやってきた。しかしな、どんな方法をとったにせよ、お前のやってきた事は最低の人殺しに過ぎない。世間はそんな事すぐ忘れるさ。人を驚かして記憶に残るヒーローになりたければ、普通の人を感動させろよ。愛を与えろよ!そんな事はお前には出来ない。何故だかわかるか?お前には、そのことを教える大人がいなかった。人を愛したり、大事に思う事も知らない、哀れな人間だ。これからお前は、自分のやった事の虚しさに、苦しむだけだ」

「ありがとう、有馬さん」

ピースは、スタジオにいる有馬のほうを見て言った。
「すっきりしましたか?」

有馬は、その場でゆっくりと立ち上がった。
ピースを睨む滋子。
ピースは正面のカメラに向かって微笑を浮かべ、Vサインをした。

すると、ピースの身体が真っ赤になり、首が上空に飛んでいった。
粉々になって空中から降ってくるピースの肉体。

大きな音をたてて時計が落ちてきた。
それは、滋子が夫にプレゼントした時計だった。
滋子の目から涙がこぼれた。
その時計を握りしめ、滋子ははらはらと泣いた。

立ちつくしていた有馬は、うつむいて悲しみをこらえていた。
そしてその場を後にした。

★・・・・・★

別荘を現場検証する警察の様子を、テレビが報道している。
「今日、網川容疑者らが事件に使用していた氷川高原にある別荘を調べた所、一連の事件で殺害されたとわかっている女性以外に、多数の女性と、母親の遺体が発見された事などから、網川容疑者らは、複数の誘拐殺人事件に関与しているものと見られています。今回の事件に関与していたと思われていた高井和明さんの指紋は検出されていない事などから、高井さんは、網川容疑者らに利用されていたものと見られ、今回の事件では被害者の立場であったと判明しました。網川、栗橋両容疑者は既に死亡し、事件の動機は謎のままですが、これで、ようやく事件は、解決に向かいそうです」

自宅でテレビを見ている有馬がつぶやく。
「これで、解決に向かう? 解決なんか何にもしてないだろう!?終わらせるつもりか、ふざけるな!」

真一が語りかける。
「でも、終わらせてください。そうしないと、何も自分は始まりません」

真一の言葉に、有馬はうつむいた。
有馬は、「わかった。私が悪かった」と言い、真一を抱きしめた。

「もう、僕に家族はいません。ひとりぼっちです。でも、生きたいんです。何かしたいんです」
「こうして君と出逢えたのも、何かの運命だ。決して君をもう、悲しい事には遭わせない。こんなじじいで良かったら、思い切り頼りなさい!」

むせび泣く真一を抱きしめがら、有馬も泣いていた。

★・・・・・★

滋子は、ボイスレコーダーに声を録音しながら、雪の上を歩いていた。
”もう、こんな事件があってはならない。そのためには、何故こんな事件が起きたのか、もう一度検証してみようと思う。”

滋子は、ピースの別荘にデジカメを向けた。
ファインダーの中で、夫が手を振って笑っていた。
滋子のカメラを持つ手が、ガタガタと震える・・・。

★・・・・・★

氷川高原駅を、警笛を鳴らした列車が通過する。
滋子は、駅前の喫茶店でパソコンに向かっていた。

”編集長の言葉じゃないが、私はこのために犠牲を払い、仕事をしているのかも知れない。運命だとしたら、積極的にそれを引き受ける気持ちが出来たのかも知れない。私の文章によって、何かが好転する事を信じて・・・。”

「お代わりいかがですか?」とウェイトレスが声を掛ける。

「お願いします。あなたは、栗橋浩美に誘われませんでした?」
「好みじゃなかったみたいです」

彼女は苦笑いを浮かべた。
「いいですか?」
「ええ」

★・・・・・★

有馬豆腐店にバイク便が来た。
有馬が封を開けると、中には手紙が入っていた。
それはピースからのものだった。

”有馬さん、元気ですか? 僕は最高のショーが成功して、天国にいる事でしょう。有馬さんに頼みがあります。この世に残された僕の子どもを今日、引き取ってくれませんか?僕の遺書に忠実であれば、大川公園の花壇に置いてあるはずです。”

有馬は走って大川公園にやってきた。

”早く行ってください。誘拐されたり、殺されたりしないか心配です。”

有馬は辺りを捜した。
真一も遅れてやってきた。

草でカモフラージュされていたペットゲージが置いてあり、開けると赤ん坊がいた。
有馬はその赤ん坊を抱き上げた。

”有馬さんの手によって、善人になってくれたら幸いです。僕のような人間には、決してならない筈です。血よりも、環境が大事だと言う事を、証明してください。”

有馬は赤ん坊を抱いたまま、しばらくの間 空を見上げていた。
真一は、ゆっくりと有馬の方に歩いていった。

ここで映画は終了。

 

総括・感想

原作の小説は読んでいません。
今さらながら この映画を観たのは、中谷美紀さん主演でドラマ化されると発表されたからでした。

私、昔から映画は好きで良く観ていたのですが、洋画を好んで観ていました。
去年ぐらいから、日本の映画やドラマを観るようになり、昔 話題になった作品を観たりしています。

映画を観終わって、ネットでレビューを検索してみると、酷評の感想が大部分でした。
しかも、原作者の宮部みゆきさん自身が、映画の出来に立腹されてたというのを、今回初めて知りました。

原作では、ピースは逮捕されたようですが、映画ではスタジオで自爆していました。
爆死の描写が、リアルさに欠けて変な感じになったのが、とても残念に思いました。

そもそも、どうして爆死させる必要があったのか?
スタジオに入る時点で爆発物を用意していたので、追いつめられたらいつでも自爆できるように準備していたということでしょうか?
女性の犯人なら毒を飲んで自殺するでしょうが、爆死することで、汚れた存在である自らを自分の手で粉々にしたかったのかも知れません。
そして、私の推測ですが、滋子が夫にプレゼントした「爆破しても壊れない頑丈な腕時計」を見せたかったのではないかと思います。

滋子の夫はとても優しい男性で、何の非の打ちどころもない人物でした。
そもそも、ピースの思い描いていた連続殺人事件の中には「男性」は必要なかったのですが、有馬義男の「女しか殺せない」という言葉に反発して殺したのでした。
また、ピースが欲しかったその時計を持っていたことも、動機になっていたかも知れません。

ピースは、自分の母親も殺害しているようです。
天谷英雄の愛人だった母親、そして自分が網川か天谷かどちらの子かはっきりしていないことに対する苛立ち・・・。
母親に対する憎悪が、女性に対する憎悪につながり、自分自身に対する憎悪に行き着いたのかなと考えます。

女性に対する憎しみはあったピースでしたが、滋子の夫を殺したことは後悔していたのかも知れません。
最後にピースの子どもが登場しますが、誰が産んだのかは出てきません。
おそらく、ホテルで一緒の部屋に泊まった高井由美子が産んだのではないかと推測されます。

ピースの心の中に、由美子との恋愛感情があったのかどうかはわかりませんが、子どもが生まれた時点で、心境の変化があったのだと思います。
ピースは、自分が犯罪に手を染めるようになったのは、出生時に問題があったからだと考えていたはずです。
そして、あの母親に歪んだ愛情を注がれて育てられたからだと考えていたでしょう。

しかし、鞠子や滋子の夫の死を見て、「人間の一生は最初から決められていたものではない」と気づいたのではないでしょうか。
鞠子は愛のある祖父がそばにいたし、滋子の夫は真面目で優しい男だった、だけど殺されてしまった。

子どもが出来て親になり、汚れのないその子を見たとき、「幸せになってほしい」と思ったはずです。
それゆえ、汚れた自分は消し去ることにして、有馬に育ててくれと頼みました。
また、罪ある自分を爆死させ、その場に「頑丈な腕時計」を残すことで、せめて滋子に、夫の思い出の形見を残してあげたかったのではないかと思います。
”罪深いものは滅び去るが、汚れのないものは永遠に残る”というメッセージを残したのでしょう。

と、勝手に推測していますが、それが監督の意図することであったかどうかはわかりません。

印象的だったのは、最初に大川公園で見つかったのは、女性の片腕とショルダーバッグで、最後に大川公園で見つかったのは、ピースの子どもでした。
最初が「死」を暗示し、最後が「生」を暗示していました。
滋子、有馬、真一それぞれが、新しい未来に向かって進んでいくように見えて、最後は救われたような気がしました。

最後に、有馬が赤ん坊を抱いたまま空を見上げていたのは、「天国にいる」と言ったピースに語りかけていたのだと思います。(S.A.)
中谷美紀・坂口健太郎【ドラマ版】模倣犯ネタバレあらすじはコチラ

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