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湊かなえ 往復書簡十五年後の補習 ドラマネタバレあらすじ&感想

      2016/10/03

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湊かなえ×TBS ドラマ特別企画【往復書簡十五年後の補習】あらすじ&ネタバレ&感想

2016年9月30日「往復書簡~十五年後の補習」

OLの万里子(松下奈緒)は、恋人の純一(市原隼人)が突然、辺境の国へ旅立ってしまったことに戸惑っていた。
国際ボランティアに志願し、発展途上国の子ども達に勉強を教える任に就いた純一は、あと2年は帰ってこない。
そんな大事なことを、純一は自分にも家族にも相談せずに決めてしまった…その理由は何なのか。
電話も通じず、万里子は純一に宛てた手紙に不安な思いをつづることしかできない。

あくる日の朝、材木倉庫で女性の焼死体が発見される。
現場を訪れた刑事の亀山(鹿賀丈史)の脳裏によぎったのは、15年前に同じ倉庫で起きた放火殺人だった。

15年前――。
出火した材木倉庫の中に、当時中学生の万里子(西畑澪花)と、同級生の一樹(篠田諒)が閉じ込められた。
万里子は駆けつけた純一(福山康平)に救出されたが、一樹は死亡。
倉庫に外からかんぬきがかけられていたことから、放火殺人の線で捜査され、万里子たちの同級生である康孝(今井悠貴)に疑いがかけられた。
だが、康孝は事件翌日に自殺。真相は解明されないまま、捜査は打ち切られたのだった。担当刑事だった亀山は、その結末をとても悔やんでいた。

死んだ女性の身元は、康孝の母親・綾子(大沢逸美)だと判明。
その報道に驚く万里子のもとに、亀山が訪ねてくる。
「15年ぶりですね。万里子さん、記憶は?」…実は万里子は、15年前の事件の直後、ショックで事件の記憶を失っていた。
そして記憶の扉は、いまでも開かれていなかった。

数日後。綾子の告別式に、15年前の事件に関与した子どもたちの親が揃った。
一樹の母親・百合(多岐川裕美)は、息子の死の真相を知りたいがあまり、記憶を取り戻そうとしない万里子を責める。
「純一君は万里子さんが思い出したら困ることでもあるのかしら?」

そんな中、海外の純一から手紙の返事が届く。
そこには万里子の知らなかった、純一のある告白が書かれていた。
次第に不安に押しつぶされていく万里子は、15年前の記憶が断片的に蘇るようになる…。

岡野万里子……松下奈緒
中学生の頃に同級生間で起きたある事件に巻き込まれ、ショックで事件前後の記憶を失った。
子どもの頃から正義感が強く、一本気な性格。
事件から15年が経ったある日、昔の事件と関連した新たな殺人事件が起こり、失ったはずの記憶が断片的に蘇っていく。

永田純一……市原隼人
万里子の恋人。
15年前の事件で万里子を救い、以降万里子をずっとそばで支えてきた。
だが、ある日突然、国際ボランティアとして海外へ旅立ってしまう。
新たな殺人事件が起こり戸惑う万里子と、遠く辺境の地から手紙のやりとりを交わす。

岡野万里子……西畑澪花
中学時代の万里子。

永田純一……福山康平
中学時代の純一。
15年前に材木倉庫が出火した際、万里子を助けた。

大島一樹……篠田 諒
万里子の中学時代の同級生。
15年前に材木倉庫が出火し、死亡。

久保田康孝……今井 悠貴
15年前の材木倉庫火災事件で疑われたが、事件の翌日に自殺。

亀山隆三……鹿賀丈史
15年前の事件と現在の事件を共に担当する神奈川県警の刑事。
事件解決の糸口を探るため、万里子から封印された15年前の記憶を引き出そうとする。

都築健治……森永悠希
神奈川県警の刑事。

永田恵一……山崎銀之丞
純一の父。

永田頼子……長野里美
純一の母。

久保田 進……梨本謙次郎
康孝の父。

久保田綾子……大沢逸美
15年前の材木倉庫の火災事件で疑われ、翌日自殺した康孝の母。
その15年後に同じ倉庫で焼死体として発見された。

大島百合……多岐川裕美
15年前に材木倉庫が出火し、死亡した一樹の母。

阿部智也……鈴之助
万里子と純一の同級生。
万里子とは会社の同僚。

坪井由美……朝倉あき
万里子の職場の後輩。
夫のDV被害に遭っている。

ナイフで刺され、放火

夜の木材倉庫。
久保田綾子(大沢逸美)が刺されて絶命。
犯人は、綾子の体に灯油をかけ、マッチに火をつけた。
すぐに炎は大きくなる。

どんな数字でも、0をかけると、答えは0

岡野万里子(松下奈緒)は、恋人の永田純一(市原隼人)に手紙を書いている。

親愛なる純一さま
純一さん、あなたが突然、ガールーン共和国に行ったのは、やはり、十五年前のことが原因だから。
生きる上での計算は、数学教師のあなたでも、苦手だと言ったけれど、どんな数字でも、0をかけると、答えは0。
1×0=0 2×0=0 のように。
正直私には、0をかけるということが、どういうものなのかわかりません。
全部なしにするってことですか?
教えてほしい。
本当は、あの時何があったのか。
あなたが、私から遠ざけ、隠している過去のことを。

「十五年か…」

神奈川県警が木材倉庫に来ている。
鑑識が指紋を採取している。
一台のパトカーが着き、中から白髪の亀山隆三刑事(鹿賀丈史)が降りてきた。

昨日の深夜一時に火事の通報。
消火の後、消防隊員が遺体を発見した。
胸をナイフで一突きされた後、燃やされた。

都築健治刑事(森永悠希)が、亀山に報告する。
遺体にかけられていたシートをめくると、異様な臭いがした。

亀山と都築は倉庫の外に出た。
「十五年か…」と亀山がつぶやく。
亀山は「調べたいことがある」と言って、都築と共に署に戻った。

十五年前の放火事件

万里子の職場。
「万里子、ちょっと来て。久保田のお母さんが…」と阿部智也(鈴之助)に呼ばれた万里子。
ネットニュースで、久保田康孝(今井悠貴)の母・綾子が焼け跡から見つかったことを知る。
十五年前にも焼死体が見つかっていて、県警が関連性を調べているとの報道。

「潮見ヶ丘木材倉庫出火死亡事故 平成十三年九月二十日」と書かれた捜査資料を亀山が出し、都築に説明する。

殺された綾子は、十五年前の放火事件の被疑者・久保田康孝の母。
亀山がこの署に赴任してまもなくの九月二十日の夕方、あの倉庫から出火。
中には、当時中学生の岡野万里子(西畑澪花)と、同級生の大島一樹(篠田諒)が閉じ込められていた。
駆け付けた永田純一(福山康平)によって万里子は救出されたが、一樹は焼死。
外から閂をかけていたことから放火殺人の疑いあり。
亀山は万里子に話を聞くが、万里子は事件前後の記憶を喪失していた。
万里子のスカートの中からメモが発見された。
《岡野さんへ 一樹と仲直りがしたい。不安だから立ち会ってほしい。材木倉庫で待ってる。康孝》
それと、亀山が純一に三枚の写真を見せ、康孝の写真を指差したため、容疑者とした。
しかし、康孝は事件の翌日に校舎から飛び降りて自殺した。
康孝の自殺によって真相は解明されずに捜査は打ち切られた。
少年犯罪の増加によって叩かれていた当時の警察上層部が、少しでも件数を減らしたいとするためだった。

亀山は、中学時代と現在の純一の写真を手にとり、「行くぞ」と都築に言って部屋を飛び出した。

横浜市立水の宮小学校。
亀山が教頭に純一の写真を見せると、「永田先生は半月前、退職しました」
アフリカのガールーン共和国に行った。

「これは偶然でしょうか?」

純一さん。
今度、あなたと会えるのは二年後。
電話で声を聞いたら悲しくて、電話口できっと泣いてしまう。
いつもそばにいてくれたあなたの存在がどれほど大きかったのか。

万里子が手紙を書いていると、インターホンが鳴った。
「十五年振りですね、岡野万里子さん」
亀山と都築の二人が立っていた。

二人を部屋にあげて話をする。
亀山は「記憶は?」と尋ねるが、万里子は「いえ」と答えた。
純一との関係について「お二人はおつきあいしてるんですよね?」と尋ねる。
教頭によれば、純一は担任クラスを放りだして急に海外赴任したと。

「純一くんは、あなたにも黙って志願したんですか?」
「…」
「大事なことなんです」

純一は、綾子が殺された直後に日本を発っていた。
「これは偶然でしょうか?」

亀山は、十五年前の記憶を思い出してほしいと万里子に迫る。

万里子は亀山たちが帰ったあと、純一に電話をするが、英語の音声。
純一は、万里子にも《国際ボランティア隊》に行くことを内緒にしていた。
”あなたは、巧妙に隠していた…”

「もしかして、十五年前のあのことが…」

二週間前。
食事の席。

「アフリカに二年赴任!?」
「うん。来月から、向こうの小学校で算数を教える」

「えっ…どういうこと?」
「国際ボランティア隊に応募したんだ。来週、ガールーン共和国に発つ。二年帰ってこれない」

「はっ、ははは。冗談。純一さん、海外旅行さえしたことないくせに。だいたい、パスポートだって持ってないじゃない!?」
純一は、万里子をじっと見つめている。

「まさか…本当なの?」
「ごめん。黙ってて…」

「それって、私たち、今日で終わりってこと!?」
「違う!そういうことじゃなくて…」

「だって、そんなこと突然言い出すから」
「勝手なこと言うかも知れないけど、待っててほしい…」

「……いつ応募したの?来週赴任てことは、だいぶ前から決まってたってことだよね!?」
「すまない。僕自身、ほんとに行くかどうか決めきれなくて」

「でも、行くことにしたんでしょ?二年も…私に相談もしないで」
下を向いている純一。

「もしかして、十五年前のあのことが…」
「……万里子…」
純一は、そっと万里子の手を握る。
純一の右手には、やけどの痕が残っていた。

「あんたのせいよ!」

阿部は、警察が来たことを万里子に話す。
同級生に聞き込みをしているのだ。
阿部は万里子のことを心配する。

万里子は坪井由美(朝倉あき)に声をかける。
「由美ちゃん!どうしたの、なんども電話したんだから」
「…」

「まさか…ご主人が!?」
「どいてください!」
由美は万里子を睨んだ。
万里子は固まって動けない。

由美は阿部に声をかける。
「阿部さん。これ、部長に渡しといていただけますか?」
「坪井、お前辞めるのか?」

「由美ちゃん、会社辞めるの?えっ、ねえ、どうして?」
「あんたのせいよ!」
万里子を睨んで立ち去る由美。

「なんかあったのか?坪井の奴、先輩、先輩って、お前のこと慕ってたのに」
万里子は立ち尽くすだけだった。

「純一くんはどうしていないんです?」

綾子の葬式。
万里子は焼香を終えると、純一の母・永田頼子(長野里美)に声をかけられた。
純一の父・永田恵一(山崎銀之丞)が、「札幌のご両親も心配してらっしゃるんじゃないかね。突然、あんな僻地に行くなんて」と気遣う。
「うちの両親は、純一さんのこと信頼してますから」と答える。

三人が待合所に通されると、一樹の母・大島百合(多岐川裕美)が座っていた。
百合は万里子に近づいてきた。

「万里子さん。大きくなって…。見違えったわ」
頼子が一樹の母だと教える。
万里子は十五年前を思い出す。
一樹は万里子と共に木材倉庫で倒れていたが、亡くなってしまった。

「失礼しました」
万里子は驚いた表情をして謝った。

「覚えてなくて当然よ。もう、十五年も前のことだもの…」

康孝の父・久保田 進(梨本謙次郎)が来た。
「皆様、今日はお忙しいところ、ありがとうございます。」
その後ろには、亀山と都築も来ていた。

亀山が口を開く。
「皆さん、この機会にお集まりいただきすいません。久保田綾子さんの死因が十五年前を思い起こさせるものがありまして。この機会に、皆さんに一堂に会して、お話を伺いたかったものですから」

恵一が前に出る。
「十五年前に関係しているのって、ここにいる人とうちの純一でしょ!?疑われてるみたいで、不愉快だなあ」

「十五年も経ったのに、なんで今さら」と頼子。

「純一くんはどうしていないんです?」と百合が尋ねる。

「海外に仕事で行ってるんです」と恵一。

「残念だわ。純一くんと万里子さんには、いろいろと聞いてみたいと思ってたんです。あのころはまだ子どもで、遠慮して聞きにくかったし…」

「それは私もです」と進が言うと、百合は進の顔を睨む。
思わず進は顔をそらす。
百合は万里子に「思い出したことは?」と聞くが、「申し訳ありません」と答える。

「純一くんからは、なにか聞いてない?つきあってるんでしょ!?」
「純一さんから、あのときのことは二人の間で話すのはやめようって言われてて…。話したことがないんです」

「どうして!?」と百合は驚く。
亀山も、話をしていないことに驚いた。

「それは、無責任なんじゃないですか!?」と進が言う。

「純一くんは、万里子さんが思い出したら困ることでもあるのかしら?」と百合。
「ちょっと待ってください!」と恵一が詰め寄る。

「ごめんなさい。でもそう思わずにいられなくて。私、一樹がどうして死ぬことになったのかわからないまま、どう気持ちの整理をつければ良いのかわからなくて」

「うちもそうでした。妻(綾子)は生前、うちの康孝が一樹くんと万里子さんを閉じ込めて火をつけたなんて信じられない、口癖のように言ってました。綾子が、十五年前の犯人に殺められたのなら、万里子さんのなくなった記憶だけが頼りなんです!」

百合は、万里子が純一と付き合うことで、記憶が戻るきっかけになると期待していた。

「いいわね、生きてるって。あんなことが縁結びになるんだもの」
この言葉をきっかけに、親同志の言い合いになってしまう。

恵一は、純一にとって事件のショックは大きく、あれ以来、純一は声を立てて笑うことはないという。
「言葉が過ぎた」と進が謝ると、「いいえ、私が悪いんです」と万里子が言う。

「覚えてたら良かったのに…何度そう思ったことか。でも、あの前後のことは、思い出そうとしても全然だめなんです」
頼子が万里子の背中に手を添える。

僕も同じ目になりたい

万里子がマンションに戻ると、エアメールが届いていた。
純一からだった。

親愛なる万里子へ
電話が通じないようで心配をかけてすまない。
先週、サイクロンが直撃したせいで、村は停電が続いている。
康孝のお母さんのこと、驚いてる。
君のことが心配だ。
また眠れない夜が増えているのではないか。
君は、僕がここにきたのが十五年前のことと関係があると思っているようだが、それは違う。
しかし、もしかしたら、きっかけを作ったのは君かも知れない。
二人で映画に行く約束をしていたのに、君が来られなくなった日のことを覚えてる?

★回想シーン★

万里子が服を選んでいると、インターホンが鳴った。
由美だった。
口から血が出ている。
「どうしたの!?」

万里子は部屋にあげた。
腕にも傷があり、万里子は薬を塗る。

「こんなになるまで、旦那さんが殴ったって言うの?」
「でも先輩、誰にも言わないで。主人はストレスを抱えてて…」
「いくらストレス抱えてたって!」
「悪い人じゃないんです。今晩、一晩だけ泊めてもらえたら、あの人も反省すると思うし」
「泊めるのはいいけど、ダメよ、こんなこと。あまりにもひどすぎる」
「私がグズだからなんです。あの人は、私を鍛えようと思って…」
「由美ちゃん、第三者に入ってもらったほうが良い。DV専門の弁護士さん捜すから…」
「お願い、大げさにしないで」
「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないでしょ。これは犯罪よ。弱い者は声を上げないとつけこまれるよ」
そう言って、万里子は携帯電話をとった。
純一に、映画に行けなくなった、これから弁護士のところに行くと告げる。
万里子が電話を切った後、純一が目にしたのは【国際ボランティア説明会】のポスターだった。

《世界がアナタを、待っている》との文字。
その下の写真には、《500×0=0》と教えている教師の姿があった。

僕は、途上国の子どもでも、こんな勉強をするのかと驚いた。
どんな数字であろうと、0をかければ0だと。
僕たちは当たり前のように習ってきたが、果たして、それは限られた環境の中でしか勉強ができない子どもたちに教えなければいけないことなのか?
僕は、君にすっぽかされた寂しさを紛らわせたくもあって、説明会に参加した。
由美ちゃんがそんな暴力受けていたのなら、なぜ今まで僕に相談しなかったんだ?
次第に不満が込み上げてきた。
そして思い出した。

あれは中学二年の、あの事件が起きる二か月前のことだった。

★回想シーン★
康孝が一方的に、馬乗りになった一樹から殴られている。
万里子(西畑澪花)は純一(福山康平)に「どうして止めないの?」と聞くが、純一は答えない。
万里子は殴ることをやめさせ、周囲の男子たちにも「どうして止めないの?」と強く非難した。

あの時、この中で一番君に軽蔑されているのは、僕だと、確信した。
君はこの頃のことを、忘れているかも知れないが、僕に助けを求めても仕方がないと軽蔑したことは、頭の奥のどこかに、残っているのではないか。
だから、由美ちゃんが暴力を振るわれたことを、僕に相談しなかった。
ボランティア隊の人は、どの人も、あの時飛び込んでいった君と同じ目をしていた。
僕も同じ目になりたい。
その気持ちだけで願書を出した。
二年間、自分の限界に挑むことができれば、僕は君を一生守ることができる。
康孝のお母さんのことで動揺してる君のそばにいられない、そのことだけが心残りだ。

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一樹が康孝を殴った理由

万里子は、阿部に誘われていた英語サークルに出席した帰りに、由美に会った。
「由美ちゃん!?」と駆け寄ろうとする万里子の足が止まった。
由美は、右手にナイフを持っていた。
両手でナイフを構えて、万里子に突進してくる由美。
間一髪で、都築が由美を取り押さえた。
亀山が万里子の前に出る。

「あんたのせいで、あんたのせいでー!」と泣きわめく由美。

万里子は警察署に来ていた。
都築に由美のことを尋ねると、拘留され傷害未遂で起訴されるとのこと。
万里子は、「被害届は出さないので起訴はどうか」と懇願する。
由美は、万里子が勝手に動いたせいで離婚になったと恨んでいた。

「自分が正義の味方になって、自己満足したかっただけだと」
「そんな…」

亀山は口を開く。
「それを聞いて思ったんです。似てるなあって」
「えっ!?」

「久保田康孝くんと大島一樹くんの時と」
「どういう意味ですか?」

「あの時も、あなたが正義漢で介入して事件が起きた」
「…」

「久保田綾子さんの殺害される前、純一くんと言い争う姿が目撃されていました」
「純一さんが、康孝くんのお母さんと?どうして!?」

「わかりません。純一さんは、十五年前の事件のあと、しきりと後悔していました」

★回想シーン★

中学校の職員室で、亀山が純一に聞いてる。
「なんでそんなことしたのか、わかるか?」
「でも、康孝は、一樹からずっと殴られていました。僕が止めなかったばっかりに…」

「『自分が一樹くんと康孝くんの二人の間に入っていれば、あんな事件は起こらなかったのに』と。一樹くんが康孝くんを殴っているのを、教師も知りながら止めようともしなかった。あなただけが、康孝くんを一樹くんから守ろうとした。あなたは、純一くんが一樹くんを止めなかった理由を知っていますか?」
「……いえ」

★回想シーン★

中学校の体育館。
「純一!」
「ん?」

「お前にだけ教えてやるけど、俺には特殊な能力があってね」
「なんだそれ?」

「ねじ伏せてやりたい奴の、一番傷つく言葉がわかるんだ」
「…」

「一樹のこと、幼馴染みで我慢してやってるけど……追放してやってもいいかな?」

「その一週間後だったそうです」

★回想シーン★

渡り廊下にいる康孝。
一樹が帰ろうとしていた。

「一樹くーん。君のお母さま、男に貢がせてんだって」
一樹の動きが止まった。
純一は近くで見ている。
笑いながら康孝が近づく。

「その制服も、鞄も、自転車も、母ちゃんが体で稼いでんだろ?」
一樹は持っていた鞄を投げ捨て、康孝の胸倉をつかむ。
「もう一回言ってみろ!」
康孝は純一のほうに振り向いて言った。
「ほらな、ど真ん中命中だ」
純一が「おい」と近づく。
「可哀想に、アバズレの息子だったんだな、お前」
そう言って笑う康孝を「ふざけんじゃねえ」と地面に叩きつけ、馬乗りになった殴る。
何度もアバズレと繰り返す康孝を、一樹は何度も殴った。
気づいた男子たちが近づいてきた。
純一はじっと立っていた。
そこへ、バスケットをしていた万里子が駆け付けた。

「康孝くんは、女手一つで水商売をして、一樹くんを育てていたお母さんを愚弄して、一樹くんを傷つけていたそうなんです」
「そんなことが…」

「やっぱりご存知でなかった…」
「私…私は…」

「万里子さん。記憶を取り戻す努力はしたことあるんですか?」
「…えっ」

「あなたは、純一さんに嫌なことは忘れていたほうが良いと言われて、その偽物の安寧の中で暮らしてきた。だが、偽物は偽物だ。本物の安寧はやってこない。私もそうだ。事件を解決しない限り、胸に巣食った悔恨は、常に重い錘のように腹にあるんだ」

「お前のせいで死んだんだ」

万里子の夢の中で、由美が「あんたのせいで」と責め、康孝や一樹が「お前のせいで死んだんだ」と責める。
うなされて目を覚ました万里子。
起き上がり、記憶の断片が蘇る。

下校になり、友だちと別れた万里子は、下駄箱の中に入っていた康孝の手紙を見つけた。
《岡野さんへ 一樹と仲直りがしたい。不安だから立ち会ってほしい。材木倉庫で待ってる。康孝》

万里子が材木倉庫に入ると、中で一樹が待っていた。
すると、突然康孝が扉を閉めて閂をかけた。

スナック百合

万里子は、一樹の母・百合のスナックを訪ねた。
「いらっしゃいませ。…万里子さん」
その声に振り向いたのは、カウンター席で座っていた純一の父・恵一だった。

「ああ…万里子ちゃんも来たんだ」
「おじさん!?」
「私もなんだか落ち着かなくて…。百合さんから電話もらって、久しぶりに来てみたんだ」

「この前、言い過ぎちゃったから…。それにしても、よく来てくださったわ」
「…」
「さ、どうぞ」
万里子は恵一の隣に座った。

「なに飲みます?」
「私は…」

「純一とは、連絡取れた?」
「手紙が来ました」

「手紙?」
「停電で、電話もメールも使えないそうなんです」

「なら良かった。二人がうまくいってるか、心配だったんだ」
「…」
「純一の奴、この半年の間、なにか悩んでるみたいだったから」
「…純一さん、私にはなにも…」
「…そう…」
「あの、純一さんは康孝くんのお母さんとお付き合いがあったんですか?」
「…いや、ずっと疎遠だった。なんで?」
「あ、いえ」

「もう行かなきゃ、百合さん、会計頼む!」
恵一の帰り際、百合が言葉をかける。
「また寄ってくださいね、昔みたいに…」
「……ああ…また」

百合と万里子

「ちゃんとお話しするの、初めてね」
百合が万里子に話しかける。

「ここに来たら、なにか刺激になって思い出すと思ったんですけど」
「私も困ってるの。十五年前のこと刑事さんに聞かれても、何もわからなくて…。万里子ちゃんは、一樹の最後を知ってる唯一の人だから、なんでもいいから教えてほしい」
「…申し訳ありません。なにも、思い出せないんです」
「一樹が、康孝くんをいじめてたって聞いて、信じられなかった。あの子は、訳もなく人を殴ったりする子じゃなかった。あとから、康孝くんが私の悪口を言ったのがきっかけだったって聞いて…。あの子、私をかばうためにあんな目に遭ったかと思ったら、いたたまれなくて…」

★回想シーン★

「ねえ、一樹」
「え?」
「私が夜の仕事してるせいで、辛い思いとかしてないの?」
「はは、するわけないじゃん」
「だってさあ、偏見持ってる人多いから」
「大丈夫だよ、心配しなくても。…俺、母ちゃんのこと誇りに思ってっから…ふふふ」

「あの子たち三人、ちっちゃいころから仲が良かったの。私たち親も、キャンプに行ったり、しょっちゅう、ここで飲んでたのよ。あれから、すべてが変わってしまった」
「…」

「いや、重要参考人に指名するのはまだ早い」

亀山はホワイトボードに関係者の写真を貼っていた。
都築が報告に来た。
殺された綾子が、半年前から純一に、何度も電話していたことがわかった。

「永田純一を重要参考人として帰国させますか?」
「いや、重要参考人に指名するのはまだ早い」

亀山は万里子の写真を睨んだ。

「十五年前、あなたと付き合っていなかったら…」

万里子は、忘れ物に気づいて百合の店に戻った。

「十五年振りですね、あなたがこの店に来るの」
百合の前に男性が立っている。
二人とも下を向いていて、万里子には気づかない。

「何度も、表までは来たんだ。でも、何度君に詫びていいのかわからなかった…」
「十五年前、あなたと付き合っていなかったら…」
万里子は驚き、陰に隠れた。

「あんなことにはなっていなかったんじゃないかって、悔やまない日はなかったわ」
男性が振り向くと、康孝の父・進だったので、万里子は目を大きく広げて驚いた。

「うちのから、綾子から連絡はなかったですか?」
「どういう意味?」

「警察が、何度も君のところに事情を聞きに行ってると聞いたもんだから」
「……まさか、私が綾子さんを殺したと思ってるんじゃないでしょうね?」

「いや、そんなことは」
「ほかに、心当たりないの?」

あの事件に君の非はない

万里子は、自宅のベランダから夜景を眺めていた。

純一さん。
知らないことを知っていくことは、なんと勇気がいることなのでしょう。
でも、たくさんあった辛い出来事を、なかったことにするのはもうなしです。
0をかければみんな0になる。
でも人生は、そうはいかないのだから。

純一は手紙を書いていた。

万里子。
あの事件に君の非はない。
どれだけ事実を探り集めても、君の非がないことは変わらない。
一樹の母親と康孝の父親のことは、十五年前、康孝から聞いていた。
言うなれば、一樹も康孝も、大人の世界の犠牲になったのだ。
僕は、そんな子どもたちを救ってやりたい。
そう思って教師になった。

木材倉庫に来た万里子

万里子は、事件現場の木材倉庫にやってきた。
しかし、いたたまれずにその場を立ち去る。

「岡野さん!」
木材倉庫から出てきた亀山が声をかけ、万里子は立ち止まった。

「どうして、ここに?」
「この十五年、ここには近づかないようにしてきました。この付近に来ることさえできなかった。でも、私が逃げることで、今度の事件が起こったんだとしたら、いたたまれないです。それに、どうしても信じられないんです。康孝くんが火をつけて、私と一樹くんを殺そうとしたなんて…」

「出火場所は、倉庫内の一樹くんが倒れていたところ。火は倉庫の中からだということはご存知でしたか?」
「…ええっ!?」
亀山と万里子は倉庫の中に入った。

「ずーっと疑問だったんです。康孝くんが火をつけたんだとしたら、彼は倉庫の中に、どうやって火をつけたのか?彼はあなたがたを閉じ込め、倉庫の外にいたんですよね」
「ええ」

「倉庫の出入り口は一つ…。あの窓から火のついた何かを投げ入れたとかですかね?」
都築は壁にある長細い窓の下に移動する。

「いや、康孝くんの身長は百六十センチ。その窓には手が届かない。もし足場を用意していたとしたら、計画的犯罪ということになる。」
「…そんな…そんなこと考えられません!康孝くんは、一樹くんに殴られても、一切反撃しなかった。そんな人が、急に殺そうなんて」

都築が推理する。
「康孝くんは一樹くんに殴られて、恨みを募らせていたんじゃないんですか?」
「もし、そうだったとしても、どうして私まで殺そうとするんですか?」
「あなたはいつも、康孝くんのことを助けていたんですよね?女のあなたに助けられることで、康孝くんのプライドを傷つけていたのかも!?」
「…」

あの時、一樹くんはタバコを吸っていた…

万里子の会社。
万里子は、阿部からプレゼン資料を渡された。
それを見ながら、万里子の脳裏に一樹の姿がよぎった。
「どうして、また一樹くんが…」

万里子は、資料に鼻を近づけて臭いを嗅いだ。
振り返って、阿部の臭いを嗅ぐ。

「なに、この臭い?」
「えっ!?ちょ、ちょっと」
阿部は自分の臭いを嗅ぎだす。
思い出したようにポケットからライターを取り出した。
「あっ、オイルライターに替えたんだ。」

万里子は思い出していた。

★回想シーン★

万里子が倉庫に入ると、中で一樹はタバコを吸っていた。

「なんだ、お前かよ」
万里子は康孝の手紙を見せた。

一樹は立ち上がって康孝からの手紙を見せた。
「お前が母親とは違うとわかったから、今までの暴言は謝りたいって」

《あの時、一樹くんはタバコを吸っていた…。タバコの吸い殻がおが屑に引火して火事になったのかも知れない。康孝くんが私と一樹くんを閉じ込めたのは、私が一樹くんを説得できると思ってくれたから…。康孝くんは、火をつけてなどなかった。悪意はなかったと信じたい。》
純一は、そう書かれた万里子の手紙を読んでいた。

「毎年来てくれてたの、万里子ちゃんだったのね」

万里子は、一樹の墓参りに来ていた。
そこへ、百合がやってきた。

「毎年来てくれてたの、万里子ちゃんだったのね」
「…はい」

万里子は歩きながら百合に話しかける。

「あのぅ、私、思い出したんです」
「…」
「あの日、倉庫の中で、一樹くん、タバコを吸ってました」
「…」
「もしかしたら、その一樹くんのタバコの吸い殻から、火がついたんじゃないでしょうか?」
「一樹がタバコを吸ってたのは知ってたわ。だから、その可能性は何度も考えた。だけどあの子、ああ見えて慎重なの。あんなおが屑がいっぱいのところで、火の不始末なんかするはずがない。それに、火をつけた可能性がある人物は、他にもいるでしょ?」
「…」
「一樹のライターを使えば、万里子ちゃん、あなたにも火をつけることはできたのよね」
「…そんなこと!」
「…そうよね。そんなことしたら、閉じ込められてたあなたも、焼け死ぬことになる。そんな危険なことするはずがない」
「…」
「だけど、鍵を外して入ってきた純一くんならどうかしら?」
「…ええっ!?」
「康孝くんが火をつけたってみんなが思ったのは、純一くんが証言したからよ。康孝くんに罪をなすりつけたのかも知れない」
「…どうしてそんなこと!?」
「亀山刑事も、純一くんが今回の綾子さんの事件に関係してるんじゃないかって疑ってる。十五年前、火をつけたのは純一くんだとしたら…。そのことを綾子さんに知られて、殺したのかも知れない。それで、海外に逃げ出した…」
「純一さんは、人を殺したりできる人じゃありません。それに、彼が火をつける理由がどこにあるんですか?」
「私だって、純一くんが犯人だなんて思いたくない。あの子たち三人、とっても仲が良かったの。できることなら、あの頃に戻って、何もかもやり直したい」
「やり直せたら、同じことは選びませんか?」
「えっ!?」
「もう一度生き直せたら、康孝くんのお父さんと…」
「………」
「私、いつも思ってるんです。あの時、あの輪の中に飛び込まなければ、あの日、倉庫に駆け付けなければ…。そうしなかった未来があったのに…。私がした選択は、間違ってたんじゃないかって」
「私も、思いつくしたわ。来る日も来る日もそればかり。でも、やっぱり同じ過ちを犯したかもしれないと思う」
「私も、記憶を失ったことをいいことに、ちゃんと過去と向き合っていなかった。前を向いて生きようと思っても、清算してない過去はどこまでも追ってくるんです」
万里子は、頭を下げてその場を立ち去った。

「純一さんが康孝くんのお母さんの口座に?」

万里子は、純一の母・頼子に電話で呼ばれた。

「純一さんが康孝くんのお母さんの口座に?」
「ええ、ガールーンから送金したみたいなの。でも、綾子さん亡くなってるでしょ。口座が凍結してるみたいで、送金できないって、ほら」
頼子が通知を見せた。
五万円を振り込んでいる。

「ご香典なら、私が持っていきましょうか?」
「それがね、純一、今までもずっと送金してたみたいなの」
「ええっ!?」
「あの子が就職してからずーっと。毎月五万もよ」
「…」

踏切の前に立つ万里子。
点滅する光を見ながら、記憶がフラッシュバックする。
頭から血を流して倒れている一樹のそばには、血のついた角材を持った純一が立っている。
万里子はおもわず、踏切の手前で座り込んだ。

僕もまた、一樹を憎んでいた

亀山と都築はガソリンスタンドで聞き込みをしていた。
「灯油を買った人物はこの人間ですか」と亀山が見せたのは、純一の写真だった。

万里子は純一の手紙を読んでいる。

万里子へ。
君が見たのは夢ではない。
君があの日、現実に目にしたことだ。
いつかこういう日が来るのではないかと思っていた。
僕もまた、一樹を憎んでいた。
理由は康孝と同じ、僕の父親も一樹の母親に入れ込んでいた。
あの日、僕が駆け付けたとき…

★回想シーン★

純一が倉庫に入ると、万里子が倒れていた。
そばに一樹が立っていた。
「何をした?」
「窓から逃げようとして落ちたんだよ。くそ!康孝の野郎、タタじゃおかねえ」
「岡野さん!」と純一が叫ぶ。
一樹が話し出す。

「康孝の親父、知ってるか?毎晩うちの店に来て、金でおふくろの気引こうと必死なんだよ。ははは。みっともねえったらありゃしねえよな」
「なあ、一樹、そんなこと話してる場合じゃねえだろ。救急車呼ばないと。岡野さん」
「あーあ、お前の親父もおんなじだったな」
純一が一樹を睨む。
「おふくろの関心引きたくて、うずうずしてたぞ。ひゃっはっは、エロ親父が」
純一は落ちていた角材を拾って一樹を殴った。
一樹の頭から血が流れている。
純一は、タバコの吸い殻を見つけ、一樹のポケットからライターを取り出した。
おが屑に火をつけると、炎は瞬く間に広がった。

康孝が自殺したのは、出火原因がなんであれ、自分が倉庫に閉じ込めたことにより、一樹が死んでしまったことを、自分が殺してしまったように感じたからだろう。
一樹を殺したのは…この僕なのに…。
康孝が死んだのも、僕のせいだ。
僕は、仲の良かった幼馴染みの命を奪った……最低の人間だ。
君と付き合っていたのは、記憶が戻るのを見張るためだ。
しかしもう、わずらわしくなってしまった。
ここに来たのは、君から逃れるためだった。
これが君への最後の手紙になる。
どうか、お幸せに。

万里子は、手紙を読み終わって座り込んでしまった。

エンジニアの仕事で、インドネシアにいたんだ

純一の実家に来た万里子。
頼子と恵一が快く迎え入れた。
「座って、座って。よく来てくれたねえ」
恵一は万里子の対面に座った。

「おじさん。おばさん。私、来週ガールーンに行ってこようと思います」
「まあ、それは純一も喜ぶわ」
「なにか、あったの?」
「…」
「万里子ちゃん?」
「…十五年前のことを、ちゃんと一度純一さんと話すべきなんじゃないかと思って…」
「…そうだねえ。綾子さんのこともあって、こんなときにそばにいられないことを、純一も気に病んでいるだろうしね。私も十五年前、日本にいられなかったことを、どれだけ悔やんだか…」
「あのときほど、一人が心細かったことはなかったわ」
「十五年前の事件のとき、おじさんは日本にいらっしゃらなかったんですか?」
「エンジニアの仕事で、インドネシアにいたんだ。事件を聞いて帰ろうとしてたんだけど、プロジェクトが佳境で、どうしても無理だった」

万里子は純一の手紙を思い出していた。
『僕の父親も一樹の母親に入れ込んでいた』

《純一さんのお父さんは、ずっと海外だった。一樹くんのお母さんと浮気してたなんて、ウソじゃないの?どうしてそんなウソを?……純一さんは犯人じゃない》

いや、ごちそうしてやるって言ってんの

「万里子、メシ食べいこ」
阿部が声をかける。
「いや、ごちそうしてやるって言ってんの」
「阿部くんが奢ってくれるなんて、珍しい」
「なんだよ、俺がすげえ、ケチみたいに言うなよ。お前最近、嫌なことばっかだったろ。俺は同期が元気なかったら、慰める良い奴なの」
「ふっ、自分で言ってるし」
「知らなかったのかあ。まあ、万里子は、純一以外目に入んなかったからなあ。こんなに良い男がそばにいたのに。ふっふふ」

割烹でワインを勧める阿部。
「私はもう」
「そう言わずに、明日休みなんだし。たまには羽目外してリフレッシュしないと。万里子は生真面目過ぎんだよ」
「…そうね」
「純一となんかあったのか?」
「えっ!?」
「いや、この間、純一にメールしたんだよ。そしたら、停電がたまたま直ったって返事があって、『万里子と自分はもう、関係ないから』って…」
「…」
「万里子?」
「…いただきます」
そう言って、グラスを口に運んだ。

ベロベロに酔った万里子を、阿部は家まで送ることにしてタクシーを停めた。

「ウソつき…。私を守るために…十五年も…」

万里子はソファーの上で目を覚まし、そばにいた阿部に聞いた。
「ここは?」
「うちだよ」
「…いつの間に。あっ、ごめんなさい、私、酔っぱらってたみたい。帰るね」
「待って!」
帰ろうとする万里子の腕を阿部が掴んだ。

「もう遅いから…」
万里子は驚く。
「万里子、俺じゃダメか?中学ん時からお前が好きだった」
「ちょ、ちょっと、阿部くん」
「こんな大変な時にお前一人にする純一なんて忘れろよ」
そう言って阿部は万里子を抱きしめた。
逃げようとする万里子は床に倒れてしまい、阿部はその上から覆いかぶさる。

その時、万里子の脳裏に、倉庫で襲われた場面がフラッシュバックした。
「いやー!」と叫び、阿部を押しのけてドアを飛び出した。
万里子は夜の街を走った。
万里子は立ち止まり、あの日を思い出していた。

★回想シーン★

倉庫の中で、一樹が万里子を肩車して、万里子は窓に手を伸ばそうとしている。
「もうちょっと上げれる?」
一樹は万里子の太ももを見て、思わずスカートの中に手を入れた。
バランスを崩してしまい、万里子は地面に叩きつけられた。
一樹は倒れた万里子に馬乗りになり、服を破いて襲い掛かる。
万里子は必死に抵抗し、そばにあった角材で一樹を殴った。
一樹は頭から血を流して倒れる。
そのまま、万里子は気を失ってしまった。

万里子は一樹を殴ったのは自分だったと思い出し、その場に座り込む。

《一樹を殺したのは…この僕なのに…。》

《僕も同じ目になりたい。その気持ちだけで願書を出した。》

《二年間、自分の限界に挑むことができれば、僕は君を一生守ることができる。》

《あの事件に君の非はない。どれだけ事実を探り集めても、君の非がないことは変わらない。》

《僕は、仲の良かった幼馴染みの命を奪った……最低の人間だ。》

《君と付き合っていたのは、記憶が戻るのを見張るためだ。》

《これが君への最後の手紙になる。どうか、お幸せに。》

「ウソばっかり…純一さん…」
万里子の目から涙が流れている。

「ウソつき…。私を守るために…十五年も…」

《僕がそばにいるから、僕が、過去から君を守る。》

一樹くんを殺したのは…私です

万里子は、一樹の墓に手を合わせていた。
純一、一樹、康孝が遊んでいた公園の木を見ている。

万里子は、木材倉庫に百合を待っていた。

「どうしたの、こんなところに呼び出して」
百合がやってきた。

万里子は百合に頭を下げる。
「すいませんでした」

「思い出したんです。全て…。一樹くんを殺したのは…私です」
「…ウソ!?」
百合は驚く。

「純一くんを庇って…」
「いえ。庇ってくれてたのは、純一さんのほうだったんです。私のために、ずっと嘘をついてきたんです。…本当なんです。一樹くんを殺したのは……私です」
「どうして、あなたが一樹を!?…話して」
「…」
「あの子を失った日から、死にながら、ただ息をしているような毎日だった。お願い、教えて。知らないことは、辛すぎる」
なかなか言えない万里子。

「僕が話します」
由美が振り返ると、亀山、都築とともに、純一が来ていた。

「純一さん!」
純一は百合の前に立つ。

「僕が、本当のことを話します。万里子も誰も知らない、あの日の真実を…」

純一の告白

「十五年前のあの日、一樹は康孝から謝りたいと言われて、ここに呼び出されました。僕は、二人の帰りが遅いのが気になって、来てみたんです。一目で何が起こったのかわかった。何が何でも万里子を人殺しにしたくないと思った。正義感の強い万里子が、自分がしたことを知ったら、壊れてしまうに違いない…」

★回想シーン★

純一は、はだけた万里子のシャツのボタンを留め、吸い殻を見て一樹のポケットからライターを取り出した。

「永田くん…」
純一は万里子のほうを振り返った。

「助けて…」

「その時、僕は気づいたんです。万里子が僕に助けを求めていたことに。輪の中に一人で飛び込んだときから、ずっと…」

★回想シーン★

純一はおが屑を集め、ライターの火をつけた。
あっという間に火は燃え広がった。
純一は万里子を抱えようとするが、倒れてきた木材が右手に当たり、やけどしてしまう。
純一は万里子を抱きかかえて外に出た。

「なんてことを…」と由美はつぶやく。

「それから僕は、康孝を放課後の教室に呼び出しました」

★回想シーン★

康孝が純一に言う。
「僕のせいじゃないからな」
「お前が二人を呼び出したんだろ?証拠がある」
「証拠?」
「お前が二人に渡した手紙、倉庫に来てくれって書いてあったぞ」
「あれは…二人を閉じ込めただけだ」
「お前、まさか…。一樹が岡野さんを襲うのを狙って…」
「それが最も一樹を貶められる方法でしょ!?」
「…」
「あいつ、絶対岡野さんに手出したぜ。だって、同じクラスになってからずっと彼女のこと見てたもの。岡野さんに止めてほしくて、俺の挑発に乗ってたんだ」
純一が康孝の胸倉を掴む。

「だけど、女がみんな自分の母親みたいにやらせてくれると思ったら大間違いだ」
「黙れ!」
純一は康孝を机にたたきつける。

「人殺し!お前が火をつけた証拠もあるんだからな」
純一はタバコの吸い殻を見せた。

「倉庫の裏に落ちてたぞ。いつ吸ったんだ?」
「…二人を待ってる間だよ。倉庫の裏で二人を待ち伏せして、中に入るのを確認してから、鍵締めて家帰ったんだよ」
「ちゃんと火を消したって言いきれるのかよ?」
康孝は呆然とする。

「お前は二人を閉じ込めただけじゃない。火事もお前のせいだ。お前は放火殺人犯だ!」
康孝はうつむいている。

「たとえ未成年でも、かなり重い罪に問われるだろうよ。生きてる間じゅう、罪を償わないといけないんだ!」
震える康孝。
純一は康孝を残して教室を出た。

「僕が康孝を追い詰め、死に追いやったんです。あとになって、康孝が一樹に書いた手紙の内容がわかったんです。康孝は、僕には虚勢を張ったあんな言い方をしたけれど、本当は、賭けをしていたんじゃないかって…。一晩、閉じ込めて、一樹が万里子に何もしなかったら、一樹に謝ろうって…。嫌味を言って、わざと一樹に暴力をふるわせて、そんな自分を康孝自身が嫌になってたんだと思う。一樹もそうです。いじめなんか早くやめたいって、康孝ともとのように仲良くなりたいと思ってた。あいつらは、親のせいで傷つけあってただけなんです」
その言葉に、由美は動揺している。

「一樹が言ったことがあるんです。昔に戻りたいって…。あの、いつも遊んでいた公園にある木を見ながら…」
「一樹くん…」

「私…」
由美は膝から崩れ落ちる。

「私が康孝くんのお父さんと関係を…」

亀山が声をかける。
「大島由美さん。久保田綾子さんを殺害したのはあなたですね?」
「綾子さんを刺したナイフが、かろうじて燃え残っていました。そこから検出された指紋が、あなたのものと一致しました」

「…本当なんですか?どうして?」と万里子が問いかける。

「死んで謝ってよ…」

★回想シーン★

木材倉庫にいる綾子と由美。

「なんて人なの、夫とデキてたなんて。被害者面して、十五年も私を騙し続けてきたのね」
「綾子さん。あのことは、ほんとに申し訳ないと…」
「火をつけたのは康孝じゃないわ。自分じゃないと書いた遺書を見つけたの」
「ええっ!?」
「あの子は、無実の罪を背負わされたまま死んだの。この十五年、殺人犯の汚名を着せられてきたのよ!」
「それじゃ、だれ?一樹を殺したのは!?」

綾子は由美を睨んだ。
「あなたとうちの人よ。あなたたちが変な関係にならなければ、あんなことは起こらなかった!」
そう言って、綾子は鞄からナイフを取り出した。

「死んでよ…」
「…」

「死んで謝ってよ…」
ナイフを持って近づく綾子。

「あ、あ、綾子さん…」
「康孝に謝ってよー!」
綾子は由美に向かっていき、二人は揉み合う。
そして、由美はナイフで綾子を刺してしまった。

「灯油をかけて燃やしたのは、十五年前の事件と似せるためですか?」
亀山の問いかけに、由美は口を開く。

「もう一度、調べ直してほしかった。誰が、一樹をあんな目に遭わせたのか、どうしても知りたかった…」
都築は「行きましょうか」と由美を立たせる。
亀山と都築が由美を連れていったあと、純一と万里子が残った。
万里子は力尽きて座り込む。

「万里子」
「ごめん。ごめんなさい。私が、あなたにまで罪を…」

「いや、悪いのは僕だ。君に、ウソを…」
「私が、純一さんの十五年を…。あんなに好きだった笑顔を…。あなたから奪った…。ごめんなさい。…ごめんなさい」

「万里子。僕は、後悔してない。どれだけ罪を背負っても、君だけは、君の心だけは守りたかったんだ」
泣き崩れる万里子を、純一がしっかりと抱きしめる。

「私は、刑を負うこともできないんですか?」

万里子が会社から出てくると、亀山が待っていた。
二人は歩きながら話をする。

「永田さんはガールーンに戻って、教師を続けられてるそうですね」
「ええ。それが、今の彼にできる罪の償いだと思ってるんだと思います」

「彼の罪は、死体損壊罪と、非現住建造物等放火罪…。これは、時効が成立してますからねえ」
万里子が立ち止まる。

「私への、処分が出たんですよね!?」
「検察は、大島一樹くんの死因が、あなたに殴打されたからだと証明するのは困難だと、不起訴になりました。もしそうだとしても、正当防衛だった」

「私は、刑を負うこともできないんですか?」
「…」

「私は、人を殺めたうえに、大切な人にまで、罪を犯させてしまったのに…」
「万里子さん、もういいじゃないですか。自分を許してやっても。過去から卒業する一番の方法は、《自分を責めることをやめること》です」

「私が、余計なことしなければ…」
「坪井由美さんのご両親が言ってました。あなたが助けなければ、由美さんは死んでいただろうと。あなたに、心から感謝してると伝えてほしいと」
万里子は、黙って頷いた。

《0をかける》ということは、そういうことじゃないのだ

万里子が自宅マンションに帰宅すると、純一からのエアメールが届いていた。
万里子は、マンションの屋上で手紙を読む。

万里子。
君の罪も、僕の罪も、決して0にはならない。
命を奪ったという重い罪に嘘をかけても、時間をかけても、《なかった》ということにはならない。
《0をかける》ということは、そういうことじゃないのだ。
だけど、なぜだろう。
今までよりも、ずっと君を近くに感じる。
十五年もの間の、どの瞬間よりもだ。
君を愛してる。
今日の手紙に嘘はない。

万里子は、純一の手紙を胸に抱きしめて泣いた。

純一は、昼の空に浮かぶ半月を見ていた。
万里子も、夜空の半月を見ていた。
ちょうど、合わせれば丸い形になる。
純一が子どもたちに教えていた黒板に書かれていたのは…。

1×0=0
2×0=0
3×0=0
4×0=0
5×0=0
6×0=0
7×0=0
8×0=0
9×0=0
0×0=0
1×0=0
1×2=2

総括&感想

万里子の同級生で会社の同僚の阿部智也が、ちょくちょく顔を出していたので「こいつが犯人か?」と思っていたが外れてしまった。
でも、阿部が万里子を襲ったせいで、万里子が記憶を取り戻すきっかけになったのだから、彼の役割はある意味大きい。

《親の因果が子に報い》という言葉があるように、康孝の父・進と一樹の母・由美の犯した罪は大きい。
この不倫がきっかけで、仲の良かった息子たちは仲違いをし、結果二人は死んでしまった。

”どんな数字でも、0をかけると、答えは0”という意味を考えてみた。
度々出てくるこのキーワード。

「0になる」ということは、「無になる」ということ。
たった一度の過ちで、今まで築いたものが無になる。
友情も、信頼も、すべてが無になってしまう。

一方で、「0をかけて0にする」とも解釈できる。
忌まわしい記憶を忘れる、0にするという意味もあるのではないか。

純一は、黒板の最後に1×2=2と書き残している。
これは、犯した罪をなかったことには出来ないけれど、二人で乗り越えていこうという純一の強い気持ちが込められているように感じた。

(了)

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