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「人生まだ負けたわけじゃねえ」竹原ピストルインタビュー

      2018/05/23

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俳優として日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞し、紅白歌合戦に初出場を果たしたシンガーソングライター・竹原ピストルさん。
彼の魂のインタビューです。

「まだ俺はこんなもんじゃねえ」竹原ピストルの不屈の精神と仕事観

行動が「答え」を出してくれる 2018.03.30
提供:伊藤忠商事

「歌うたい」としての不屈の精神

昨年、紅白歌合戦に初出場を果たしたシンガーソングライター、竹原ピストル。
俳優としても活躍し、映画『永い言い訳』で「第40回日本アカデミー賞」の優秀助演男優賞を受賞した。
印象的なCMソングもあって40代で遅咲きのブレイクを果たした彼は、しかし今の状況を「全然満たされていない」と語る。

2003年にフォークデュオ「野狐禅」の一員としてメジャーデビュー。
作品を重ねる中で熱烈な支持を集めるも、2009年に野狐禅は解散。
ソロ活動に転じた後は、一人で全国を旅して回り、年間250本から300本のライヴを繰り広げてきた。

2017年には「俺たちはまた旅に出た」が伊藤忠商事のCMソングに採用され、映像と楽曲が織りなす世界観が話題となった。
2018年4月には伊藤忠商事のCMソング「どーん!とやってこい、ダイスケ!」を含むニューアルバム『GOOD LUCK TRACK』がリリースされる。

6月から10月にかけては初の武道館公演を含む全国弾き語りツアーのスケジュールがぎっしりと埋まっている。
彼は自らの職業を「歌うたい」と表現する。
不屈の精神を持って歌い続ける彼の仕事観を訊いた。
(取材/文・柴那典、写真・三浦咲恵)

「まだ俺はこんなもんじゃねえから」

――昨年には紅白歌合戦に初出演、今年12月には武道館公演が決まりました。活躍の場が広がっている状況をどう捉えていますか?

竹原 紅白に出たのも武道館が決まったのも、それはもちろん嬉しいですよ。
応援してくれてるお客さんが喜んでくれるのがとりわけ嬉しいです。

ただ、自分としては、それでも全然満たされていない気持ちがありましたし、ちゃんと「それがどうした?」って思えました。
そこが個人的には嬉しかったです。

――自分が満たされるかどうかは、実際にそういう状況を経験してみないとわからないですもんね。

竹原 まさにそうなんです。
ひょっとしたら全てを成し遂げたような、やりきったような気持ちになったりするのかなって思っていたんです。

でも、近しい人から「紅白出場おめでとう」とか「受賞おめでとう」と言われても、前と同じく「まだ俺はこんなもんじゃねえから」という気持ちが色褪せずにあったんです。

ああ、こういう時に俺はこう思うんだって、いろんな自分を知ることができた。
それが大きかったですね。

――竹原さんの「まだ俺はこんなもんじゃない」とか「今に見ておけ」という気持ちって、振り返るといつ頃からあるものですか?

竹原 ステージに上がるようになってから、ずっとですね。
野狐禅をやってた頃から、壁にぶつからない時期、挫折を味わない時期なんて、一度たりともなかったですから。
しくじっては「これじゃだめだぞ!」って向上心を持って「今にいいとこ見せてやる!」って思う。ずっとその連続です。

――野狐禅を解散した後、竹原さんはレコード会社も事務所も離れて、たった一人で全国をまわってライブをやっていたんですよね。その時は特にそういった思いが強かったんじゃないかと思います。

竹原 それはありましたね。
野狐禅を解散して一人で改めてやり出した時は、衝動に似た、理屈では言えない推進力みたいなもので「ウオー!」って走っていた気はします。

――その時期の自分が考えたことや思ったことは、今の自分の糧になっていると思いますか?

竹原 基本的には自分自身をブレブレの人間だと思っていて。
この時期はこんなことを考えてたけど、今はそんなこと思ってないなんて、沢山あるんですよ。
でも「今に見ててくださいよ!」みたいなのはブレずに持ってますし。

あとは、「俺、あの時ああ言っちゃった以上こうしなきゃな」とかは、多少は思いますね。
あんまり過去に縛られたくはないとは思いますが、何かに挑戦することをビビって躊躇してる時とかに「いや、お前、『躊躇せずに行けよ!』って歌ってきただろ」とか思ったりしますし。

すべての職業で共通すること

――再び現在の事務所に所属してからのここ数年、特に前作の『PEACE OUT』をリリースした頃から、竹原さんは自分の立ち位置やミュージシャンとしてのあり方はどう変わってきたと思いますか?

竹原 ざっくり言うと、プロフェッショナルなスタッフの集まったチームに、素直に甘えたり頼ることができるようになりました。
「この人がいなくなったら俺は負けるぞ」って思える人だけでチームが構成されているから、こっちはステージに上がって歌うだけに専念できる。
活動の成果が出ればみんなで喜べる。

それはすごく幸せだと思います。
それは最近になってようやく構築できたものですね。

――以前はそうじゃなかった?

竹原 野狐禅でデビューした時は、チームを組んでいる仲間たちがどういう仕事をしてくれているか全く理解できないまま、地に足つかないままで活動していたんです。
その後、解散して全部を一人でやるようになってから、それが全部わかった。あの人がいたからライヴのブッキングをしてもらってた、あの人がいたからラジオやテレビに出れたって、自分がいかに恵まれた環境でやっていたかが初めて身に染みてわかった。

だから同じ事務所にもう一度拾ってもらった時には「この人はこういうことをやってるんだ」っていうことをちゃんと把握した意識でチームを組めたんです。
で、テレビやラジオの出演、ライヴ、いろんな現場を戦ってきた。
それを経て「これはやらない」という美学とか、一番合理的な戦術とか、そういうものを全部共有できる仲間たちのチームになったというのが、ここ最近だと思います。

――アルバム『PEACE OUT』に収録された「俺たちはまた旅に出た」は伊藤忠商事のCMソングとしてオンエアされました。これはCMの話があって書き下ろした曲でしょうか。

竹原 そうです。

――最初に話があった時は、どういう印象でした?

竹原 これ、素直に話をすると、まずはCMの監督が西川美和監督だったんです。
西川美和監督の『永い言い訳』という映画に出させていただいて、さんざん楽しく充実した日々を過ごさせてもらって。

でも、上映が一区切りして、しばらくお会いすることはないのか、さみしいなと思っていたんですね。
そうしたら西川監督からお話をいただいたので、まずそれが嬉しくて。
それで伊藤忠商事様のCMソングだ、と。それも嬉しい話でした。

――どういう風に曲を作っていったんでしょうか。

竹原 「お仕事をテーマに曲を作ってください」っていうリクエストをいただいたんですね。
でも、自分の感情や体重がちゃんと乗りやすい歌じゃないと説得力がなくなっちゃう気がしたんです。

だから、何曲か提出したけど、全部が歌うたいの歌だった。
自分が知ってる景色の方が気持ちをぎゅっと込めやすいから。
で、ああいう歌ができたんです。

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――「仕事をテーマに」と言われて、まず自分の現場をイメージした。

竹原 そうですね。
だって、世の中に仕事なんて数え切れないくらいあるし、その仕事に取り組んでる人の気持ちもそれぞれじゃないですか。
そういう万人を納得させる曲を作れるスキルは僕にはないんです。

たとえば「世界が平和だったらいいな」って僕は思ってるんですけど、「世界が平和でありますように」って歌っても何だかふわふわして、逆にわかりにくいんじゃないかなって。
それだったら、個人名あげて「誰々くんよ、俺たちは仲良しでいようぜ」って言った方が、ピースが伝えられる気がする。
それと同じことで、自分にはこういうことしか言えないんですよね。

――それでも、西川監督が撮影した伊藤忠商事のCMを実際に見ると、「俺たちはまた旅に出た」は竹原さんだけでなく、それぞれの仕事の現場を持ったいろんな人に当てはまるような曲になっていると思います。完成形を見てどう思いましたか?

竹原 そこはやっぱり意識しているんです。
多くの人に歌に込めた気持ちをわかってもらうために、個人的な気持ちを描写しているから。

たとえ個人的な情景であってもきっと伝わるだろうと。
(完成した伊藤忠商事のCMを)初めて見たときはホラねと、バッチリだと思いました。

僕が好きなCMのシーンが、車の中でみんなでパンをかじりながらちょっとした作戦会議をするところなんです。

お客さんの満足のためや、自分が暮らしてくために、あの手この手を尽くす。
必死になって全力以上のものを出すというのは、全職業で共通のことなんじゃないかなって思っていたので。
だから、きっと伝わるだろうと思ってました。

同じ道を歩み始めた人がいる

――新作アルバムの『GOOD LUCK TRACK』に収録された「どーん!とやってこい、ダイスケ!」も、同じく伊藤忠商事のCMソングとなっています。この曲はどういう風に生まれたんでしょうか。

竹原 ざっくばらんに話しますと、最初にCM制作にまつわるスタッフ会議があったんです。
西川監督もいらっしゃって。それで「CMソングは『俺たちはまた旅に出た』で行きましょう」ということになった。

その場で、ちょっと失念しましたが、会議の終盤でスタッフのどなたかが「もうちょっと軽く手拍子できる曲があってもいいかなと思いましたけどね」ってぽつんと言ったんです。
それで「やってやろうじゃねえか!」って思いまして(笑)。

――なるほど。

竹原 それで、手拍子ができるようなリズミカルな曲にしたんです。
やっぱり書いているのは自分が見てきた景色ですね。
ダイスケって、モデルになってる歌うたいがいるくらい生々しい描写ではあるんで。

――この歌に描かれている「ダイスケ」のモデルは、実在する人物なんですか?

竹原 いますね。

――どういう人なんでしょう?

竹原 そいつは福島県のいわきにいる歌うたいなんです。
自分が何年か前までやってたようなスタンスで、個人で細かくあちこち歌って歩いてるやつで。
もともとは僕のライヴを観に来てたお客さんだったんです。

その後久しぶりに会ったら「ギターを始めた」って言って。
しばらくしてまた会ったら「ライヴ活動を始めたんで、ピストルさん芸名考えてください」って言うから、それを考えて。

で、その名前で活動を始めてからまたしばらくして会ったら、立派な旅芸人になっていた、という。
そういう、可愛い後輩なんです。
だから、相当上からな物言いの歌なんですけど、それくらいの関係性ではあるんです。

――そういうダイスケさんのような、竹原さんに感化されて同じ道を歩み始めた人が出てくるというのは、嬉しいことですか?

竹原 嬉しいというより、「悪い気はしない」くらいな感じですね。
自分で自分の未熟さは十分わかってるつもりなので、俺ごときに感化されたりすんなとは思います。

人生の勝ち負け、どっちが多い?

――曲にはどんな思いを込めたんでしょうか。

竹原 歌のまんまですけど、「躊躇なく行動に移そうぜ!」ってことですね。
「自分に才能があるのかな? ないのかな?」とか「この努力はあの目標に届くだろうか?」って考えることって、誰しもあるとは思うんです。
でも、それは行動が答えを出してくれることだから、行ってこい!みたいな気持ちで書きました。

――歌詞に《“努力は必ず報われる”ってほど世の中甘くはないけれど/才能の有り無しで勝ち敗けを決められちゃうほど 世の中厳しくもないんだ》とあります。この一節は曲の中でも印象的なんですけど、これってどういうところから思い浮かんだんでしょうか。

竹原 まさにそのままです。頑張って努力しても届かないラインは経験してきたし。
ライヴ活動の中でも「こんなことやられたら勝ち目ねえよ」っていう歌うたいはいっぱいいるんです。
この分野においてこの人に届くことは無理だろうと諦めることもある。

でも、その部分における向上を諦めたからって、別に歌を諦める必要はないわけで。
その一方で、俺には才能がないと思ってたけど、こんなすげえライヴができたじゃねえかってこともあるし。

それの繰り返しでやってきた気がしているんですね。
だからまあ、続けろやって話です。歌い続けろよって。

――曲の中に《勝ち敗け》という言葉があります。今の時代、どんな仕事をしている人でも、何が勝ちで何が負けなのかという明確な基準は無くなってきていると思いますが、竹原さんがご自身の尺度で考える勝ち負けの基準はどんなものですか?

竹原 それはもうシンプルですよ。
「今日はすげえいいライヴできたぞ!」って自分自身が思えたら勝ちだし、「んなことやってたらやめちまえ!」みたいなライヴをやってしまった時は負け。

それを自分の中でシンプルに判断してます。
負けるときも多いですよ。
共演した方の人の実力とか才能に強烈に嫉妬すると、「ああ、俺の負けだ」って思うし。

――どうでしょう、今までの人生を振り返って、勝ちと負けはどちらが多いでしょうか?

竹原 どっこいどっこいだと思いますね。
ライヴをしてても「もう負ける気がしねえや!」って時もあれば、調子こいてクソ滑る時もある。

でも、人生ということで言うなら、自分にとってはステージに立って歌うことが、唯一の生きがいだし、唯一の収入源なんですよ。
そうやって唯一の生きがいで暮らしているわけですから、人生においては今のところ判定では勝ってるんじゃないかって思います。

[出典:「まだ俺はこんなもんじゃねえ」竹原ピストルの不屈の精神と仕事観(伊藤忠商事)現代ビジネス(講談社 > http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54788 ]

人生の勝ち負けって、人が決める事じゃないんだなと思いました。
自分が諦めなければ、まだ負けたわけじゃないのかなと…。

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