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世にも奇妙な物語2016秋の特別編 完全ネタバレ!あらすじ

   

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世にも奇妙な物語’16 秋の特別編 あらすじ&ネタバレ

2016年10月8日(土)放送

「シンクロニシティ」主演【黒木メイサ】

逸見栄子…黒木メイサ
川島朱美…藤井美菜

壊れた腕時計

8月7日、逸見栄子(黒木メイサ)は小物の店に来ていた。
ちょうど腕時計をはずしたとき、店員に呼ばれて振り返ったはずみで別の客とぶつかり、腕時計を落としてしまい、壊れてしまった。

喫茶店で「はい、これ!」と恋人に、昇進祝いのプレゼントを渡された。
中を開けると腕時計が入っていた。
さっき時計を壊したばかりなのにプレゼントされ、「こんな偶然ってあるんだね」と栄子は喜ぶ。

栄子は、腕時計のベルトを調整しに時計店を訪れた。
すると偶然、高校時代の同級生・川島朱美(藤井美菜)にばったり出会った。
神戸で仕事していた朱美は、先月からこちらに異動になったのだ。
実は、朱美がこの店に来たのは、栄子と全く同じ理由だった。
「ええっ、ウソ!?こんなことってあるんだね」と栄子は笑う。

朱美との再会

バーのカウンターに座って飲んでいる栄子と朱美は、マスターに今日の出来事を話した。
そして「偶然はそれだけじゃなかった」と説明する。
実は、彼氏の名字も《篠塚》で同じだった。
さらには、11月13日、二人とも全く同じ日に彼と付き合い始めていた。
「やばいでしょ、この偶然の一致!」と朱美が笑う。

するとマスターが「それは、シンクロニシティかも知れません」という。
因果関係では説明できない偶然の一致をシンクロニシティと呼ぶ。
「ちょっと怖い話を…」とマスターが話し始める。

イギリスであった実話。
1817年5月27日、イギリス中部の小さな田舎町で、一人の女性がソーントンという男に暴行されて絞殺された。
それから157年後の1974年5月27日、同じ日に同じ町で、また一人の女性が、まったく同じ殺され方をした。
しかも、その容疑者の名前がソーントン。
偶然の一致はそればかりでなく、殺された二人の女性はどちらも20歳で、誕生日まで同じだった。

シンクロニシティでは、一見何の意味もない年月日が、特別な意味を持つことがよくあるとマスターは話す。
「お二人が今日再会したのも、実は何かの意味があるのかも知れません」

二人にとって8月7日とは

今日、8月7日は、二人にとって意味のある日だった。
12年前の8月7日、那須高原ロッジでの高校のテニス部の夏合宿でのこと。
クラスメイトのえりなは、先輩からいじめられていた。
栄子と朱美も先輩たちにいじめをするよう強要され、森の中に落とし穴を掘った。
二人はえりなを散歩に誘うために部屋を訪ねた。
すると、えりなは手首を切って部屋で自殺していた。
「いじめのこと、誰にも言うんじゃないよ。あんたらにも責任があるんだからな」と先輩に口止めされる。

「これって、えりなの呪いじゃないよね!?」と栄子が口にする。
栄子は、ただの偶然の一致とは思えなかった。
すると突然、店内が暗くなった。
栄子がおびえていると、クラッカーの音とともに店内が明るくなった。
別の客が花束を受け取っていた。
思わず安心して、二人は笑った。
「呪いなんてあるわけないでしょ」と朱美が言う。

高校時代の担任の先生との再会

すっかり酔った朱美は、タクシーを止めようと手を挙げる。
しかし、せっかく止まったタクシーは、別の男性が先だった。
「最悪!」と嘆く朱美に、男性が声をかける。
「逸見と川島か?」
「先生?」
男性は、二人が高校時代の担任の先生だった。
途中で降ろしてあげるよと、一緒に乗せてくれることに朱美は喜ぶが、偶然過ぎることに不安を感じた栄子は「迷惑なんで大丈夫です」と断る。
しかし、「遠慮するなって」という先生と、「早く」と手を引っ張る朱美によってタクシーに同乗することになった。

先生との再会を喜ぶ朱美だったが、栄子は12年前を思い出していた。
えりなが自殺して警察が来ているなか、先生に「お前たちはクラスも一緒で仲も良かったよな。知ってることがあれば正直に話してほしいんだ」と言われた。
しかし「いいえ。私たちは何も」と二人は答えていた。

「それにしても、栄子とばったり会った日に、まさか先生ともばったり会うなんて」と朱美が言うと、「恐ろしいほどの奇遇だよなあ」と先生も笑った。
「こういうの何て言うか知ってます?シンクロニシティって言うんですよ」と、朱美はバーで聞いたばかりの言葉を使った。

「先生もそんな経験あったりしません?」
「俺にとっては、まさに今日の再会がそうかもな」
その言葉に、栄子は先生のほうを見る。

「俺な、ずっとお前たちに会いたかったんだよ」
「あの、それってどういう意味ですか?」

「お前らなら、当然今日が何の日か知ってるよな」
「……」
「12年前の今日、渋谷えりなが、那須高原の合宿所で自殺した日だ。俺はどうしても自殺の原因が知りたかった。それで探り続けていたんだよ。ずっとな。ようやく一人の卒業生が打ち明けてくれたよ。事実を知って驚いた。お前たちテニス部の連中が、えりなをいじめてたんだろ?」
そう言って、先生は後ろを振り返った。
外は土砂降りの雨と雷。
二人は声が出ない。

「ずっと、お前たちを捜してたんだよ」

「彼女を無視したり、大事なものを壊したり、自殺した日には、お前らが落とし穴にはめようとしていたらしいじゃないか」
「違うんです先生」
「なにがだ?」
「私たちはただ…」
「先輩の命令に従わなかったら、私たちが標的に」

「でも、お前らがいじめに加わっていた事実に変わりはないだろ?」
「……」

「俺とえりなはな…つきあってたんだよ」
「…」

「もちろんいけないことだとはわかっていた。でも俺はえりなのこと、真剣に愛していたんだ。卒業したら正式に結婚することも、ご両親に認めてもらっていた。なのに…。俺は憎んだ。えりなを裏切ったお前たちを、心の底から憎んだ。ずっと、お前たちを捜してたんだよ」
栄子が前を見ると、先生は折り畳みナイフを開いた。
雷の光にナイフが光る。
思わず栄子が「キャー!」と叫ぶ。

「いや、来ないで!」

「停めて、早く停めて!」
朱美の声に、あわてて運転手はブレーキを踏んだ。
栄子はシートベルトを外して外に出ようとするが、なぜかドアが開かない。
左に座っていた朱美の側のドアが開き、降りしきる雨の中、朱美が外に飛び出すと「待て!」と先生も飛び出した。
栄子があわてて外に出ると「おい待てよ!」とナイフを持った先生につかまった。

「やめて!」
「待てって!」
「やめてください!」
「おい!」
運転手が傍で見ているなか、栄子は転んでしまった。
右手にナイフを持ったまま、先生は立っている。

「いや、来ないで!」
「違うんだよ」
「来ないで!」
「誤解だ!誤解だ」
そう言って先生は両手を挙げ、ナイフを地面に落とした。

「お前たちを殺すつもりはない。話には、まだ続きがあるんだ」

「あの子の自殺に、いじめは関係なかったんです」

★回想シーン★

えりなの自宅に来て、両親の前に座る先生。

「今日来て頂いたのは、こんなものが見つかったからなんです」
えりなの父はそう言い、一冊の日記を出した。

「あの子の自殺に、いじめは関係なかったんです」
「ええっ!?」

「実はあの子、先生の子を妊娠していたんです」
「そんな…」

「そこには、『産みたい。けど不安。先生には嫌われたくない』と、一人思い悩んでいた様子が綴られていました」
「……申し訳ありませんでした………申し訳ありませんでした………申し訳ありませんでした…」
先生は泣いて両親に謝った。

やっぱり偶然なんかじゃないと思う

「えりなが自殺したのはお前たちのせいじゃない。悪いのはすべて俺なんだ」
そう言って、先生は落としたナイフを拾った。

「俺は自分の罪を一日たりとも忘れずに、一生抱えて生きていくつもりだ」
「……」

「長い間十字架を背負わせてしまったことを、本当に申し訳なく思っている。今日は、お前たちと話せて本当に良かったよ」
そう言って、先生は歩いていってしまった。

「私たちのせいじゃなかったんだね」
「…うん。私、胸を張れる人生なんて一生送れないと思ってた」
「私もそう」
「やっぱり偶然なんかじゃないと思う。今日のことは、運命的な出来事だったんだね」
「そうだね」
二人は「ご迷惑をおかけしました」と運転手に謝り、タクシーに乗り込んだ。

タクシー運転手のシンクロニシティ

タクシーを再び走らせ、運転手が話しかけてきた。

「お客さん、シンクロニシティには、幸運をもたらす一面もあるんですね」
「ええ」と栄子が答える。

「実は私も、お客さんと同じように、偶然とは言えない、とても運命的な出来事のおかげで、救われたんですよ」
「へー、どんな出来事ですか?」と栄子が尋ねる。

「もともと私は、娘がぜんそくだったこともあり、大自然に囲まれた田舎で暮らしていました。娘が5歳の時です。一人で遊びに出かけていくと、しばらくして、今日のような強い雨が降り始めてしまったんです。すぐに娘を捜しにいったのですが、なかなか見つからず、ようやく発見した時には、足を骨折して意識を失っていました。急いで病院に運び込んだのですが、長い間雨に打たれていたせいでしょう、肺炎を悪化させて、娘はそのまま…」
「それは、さぞお辛かったでしょう」と栄子が言う。

「これはすいません。お気を遣わせてしまって…。ここからは明るい話になりますので」
その言葉に笑みがこぼれる二人。

「私の妻は、娘の死後、病気になってしまい、6年前に亡くなったのですが、その日がなんと、娘の命日と重なったんです」
その時、雷が鳴った。

「私は、特別な運命を感じました。すると幸運にも、また同じ日に、今度は、娘の死の真相が明らかになったんです」
「…真相ですか?」栄子は不思議そうに聞いた。

「いやー。すっきりしました」

「ええ。娘は、森の中で足を骨折していたんですが、どうしてだと思います?」
二人ともわからなかった。

「これがまあ、不運な事故と言いますか。娘は………落とし穴に落ちたんだ」
雷が鳴った。
まだ二人とも気づいていない。

「ちょうど、12年前の今日のことです。娘が落ちた穴は、自殺騒ぎのあった那須高原の合宿所の裏に、突然現れた穴です」
雷が鳴り、栄子の顔が照らされた。
栄子は動揺する。

「なぜあんなところに落とし穴があったのか、ずっと疑問に思っていました」
栄子も朱美も、運転手の言いたいことが理解できた。
運転手はバックミラーを見ながら話す。

「まさか、あなたたちが掘ったものとは…」
栄子は声が出ない。

「いやー。すっきりしました」
栄子が口を開く。

「あの…なんと申したらいいのか…」
栄子の言葉とともに、朱美は頭を下げた。

「これはまさに、シンクロニシティだ!」

栄子がタクシーの時計を見ると、23時56分59秒だった。

「私は、妻と娘の命日に合わせて、今日…死ぬつもりなんです」
驚く栄子。

「そんな日に、最後のお客さんとして、あなたたちを乗せた…。これで思い残すことなく、家族の元へ行けます」
そう言うと、運転手はアクセルを踏み込んだ。
速度メーターがグングン上がっていく。
雨で路面が滑るなか、スピードを上げる運転手。

「ごめんなさい、許して!」と朱美が謝る。
ガードレールが迫る。

「ごめんなさい!」と謝る栄子。
運転手はさらにアクセルを強く踏む。

「いやあ、こんな、こんな偶然もあるんですねえ」
「やめて!」
「お願いだから車を!」
80kmを超える。
運転手は笑顔で言う。

「これはまさに、シンクロニシティだ!」
その瞬間、運転手はハンドルを右に切った。
対向車線に入り、向こうからはトラックが向かってきていた。

「貼られる!」主演【成宮寛貴】

椎名毅…成宮寛貴
半田愛奈…三倉茉奈
半田辰夫…渡辺哲

エリートバンカー椎名

椎名毅(成宮寛貴)は、東都オーシャン銀行 丸の内支店・融資課主任のエリート銀行員。
”この俺に達成できない目標などあるわけがない”と思っている。

数字を間違えた和田には、「筋トレもいいが(頭を指して)ここのトレーニングも怠るなよ」と嫌味。
大迫に代わってクレーム処理をする。
そして、日下部には、稟議書のやり直しを指示。

”はっきり言おう。ここにいる連中はレベルが低い。計算の出来ない『脳筋プロテイン』、面倒ごとはすぐに押し付ける『媚び売り顔だけ女』、稟議一つ通せない『ゆとりコネ入社』。やれやれ、しばらく俺の苦労も続きそうだ。”

半田運送に来ている椎名

椎名は日下部と、半田運送に来ていた。
半田辰夫(渡辺哲)社長に融資を頼まれているのだ。

「どうかお願いします。他の銀行から融資を断られて、このままだとウチは潰れてしまいます」
「しかし、当行としても今の業績では融資はできません」
半田は床に手をついて土下座をする。

「そこをなんとかお願いします」
父の姿を娘の愛奈(三倉茉奈)は心配そうに見ている。

”かの文豪・夏目漱石はこう言った。『精神的に向上心のないものはバカ』だと。こんな風に簡単に頭を下げるから向上心をなくして業績が下がるんだ。まったく、『憐れな男』だ。”

「お願いします!」と何度も頭を下げる半田。
「半田さんの熱意には負けました。融資については一度、当行で検討したいと思います」

「…本当ですか?」
「ええ」

今月の目標達成、みんなお疲れー!

融資課。
日下部の担当している会社の融資が満額認可された。

「これで今月の目標達成、みんなお疲れー!」
みんなが拍手する。

「全部、椎名さんのおかげです」と日下部。
「そうだぞ、椎名さんのおかげです」と和田。
「褒めてもおごってやらねえぞ」と椎名が笑う。

そこへ、椎名の携帯に半田運送から電話がかかってきた。

「もしもし」
「椎名さん!」
「あー、例の融資の件ですか。いやー、検討したんですが、やはり難しいですねえ」
「そ、そ、そんな…」
「お力になれず、本当に申し訳ありません。では」
そう言って、椎名は電話を切った。
再び電話がかかってきたが、椎名は携帯をデスクに放り投げ、出ることはなかった。

『難癖つけるクレーマー 村岡純』

椎名はタクシーで自宅に戻ってきた。

「3700円でーす」
「ええっ!?……いつもは3000円で着くんですけど…」

「お客さーん、疑ってるんですかあ?」
「お釣りはけっこうです」
そう言ってタクシーを降りた。

”小銭稼ぎドライバー…。”とつぶやく椎名。

マンションに入ろうとふと胸を見ると、白地に赤い縁取りのシールに『難癖つけるクレーマー 村岡純』と貼ってあった。

「ん!?なんだこれ?難癖つけるクレーマー、村岡純。村岡純?村岡…」
椎名は、さっきの運転手が村岡という名前だったことを思い出した。

「あっ!あのドライバ―…」
シールを剥がそうとするが剥がれない。

「なんで剥がれないんだ!?痛っ!こんなシール、いつの間に貼られたんだ?」

剥がれないシール

豪華マンションの自宅に戻った椎名は、さっきのタクシー会社に「おたくの運転手が変なシールを貼り付けたんですよ」と文句の電話をかけた。
しかし、会社側は「ドライバーは貼ってないと申しておりまして」と言い、「もういいですよ」と椎名は電話を切った。

上着を脱いでもその下に同じシールが、さらにはシャワーを浴びるために裸になっても同じシールが貼ってあり、「なんでここにもついてるんだよお!」と怒りながら剥がそうとするが剥がれない。

次の日、出勤途中、カバンでシールを隠しながら歩く椎名。

”なんなんだこのシールは?剥がそうとしても剥がれないし、着替えたらその服に移るし。それに…。”

椎名は和田を見つけて呼び止めた。
「おい、和田」
「椎名さん、おはようございます」
「お前、このシール見えるか?」
「シール?(和田はあちこち探し)何も貼ってないですよ」

”やっぱり見えてない…。”

会議室にて…

会議で、椎名は日下部から「半田運送の融資をもう一度考えてあげられませんか」と聞かれた。

「日下部、慈善事業がしたかったら銀行から去れ。業績は下がる一方、従業員を減らす努力もしない会社に融資をする意味がどこにある?」
「でも、このままだた来月には不渡りを出すことに…」

「そんなのは自己責任だ」
そう言うと、椎名の腕に『冷血クソ人間 日下部篤弘』とシールが飛んできて張り付いた。
そして、次から次へとレッテルシールが飛んできて張り付く。

『おだてないと拗ねる単純上司 大迫真悠子』『優しさの欠片もないナルシスト 和田玄太』『偉そうなクズリーマン 河北達樹』『顔面おにぎりフェイス 田上晴之』他にもたくさん。
体中に貼られたシールに困惑する椎名。

「椎名さん、どうかしましたか?」

”これってまさか……レッテル?”

日下部の正直な気持ち

椎名は、日下部をトイレに呼び出し、壁に押し付けた。

「日下部、正直に言えよ」
「な、なんですか?」
椎名は後ろ向きになって日下部に質問する。

「お前は、俺のこと…『冷血クソ人間』って思ってるよな!?」
「…えっ!?…いや、そんなことは」

「ウソをつくな!」と言って振り返った椎名は、「思ってるんだろうが!ええっ、どうなんだ!?」と日下部に壁ドンをする。

「僕は…」
「…」

「椎名さんのことを…」
「…」

「…」
「…」

「相当な、『冷血クソ人間』だって思ってます」
「…」(ショックで言葉が出ない椎名)

「失礼します」と言って、日下部はトイレから逃げ出した。
椎名は一人で、トイレの中で壁ドンをしていた。

飲み会にて…

融資課のみんなで飲み会に来ている。

「椎名さん、本当にさすがっすよ」と和田。
「椎名さんって、ほんっとに理想のリーダーですよね」と大迫。
その言葉を聞きながら、椎名は思っていた。

”こいつらみんな、上辺じゃ愛想よく振りまいてるけど、腹の中じゃひどいレッテルを貼っている。和田は『優しさの欠片もないナルシスト』というレッテルを、大迫は『おだてないと拗ねる単純上司』、他にも『話の長いウザいおっさん 武井真知子』、『調子こきゴミ野郎 広瀬明彦』、『意識高い系バカ 瀬川明』、こいつら……。”

「椎名さん、どうしました?」
「椎名さん?」
「椎名さん?」
「椎名さーん?」と顔の前で手を振る部下に、「うるさい!」と怒鳴る。
驚いてみんな椎名のほうを向いた。

「人にひどいレッテル貼りやがって…。俺はな、お前らをいっぱしのバンカーに育てようと一生懸命に俺なりに頑張ってきた。なのに……」
嫌な予感がして服を見る椎名。

『怒鳴る上司 和田玄太』『おだてないと拗ねる単純上司 大迫真悠子』『偉そうなクズリーマン 河北達樹』『調子こきゴミ野郎 広瀬明彦』と、再びレッテルが…。

「…すまない」と謝る椎名。

「そろそろ、お開きにしましょうか?一人4000円ずつでお願いします」と和田が言う。

「今日は俺に奢らせてくれ!」
「えっ!?いや、払いますよ」
「いや。今月みんな、よく頑張ってくれた。だから、今日は俺が払う」
「ごちそうさまです」

すると、赤い縁取りだった和田のシールが青い縁取りになり『太っ腹な先輩 和田玄太』に変わった。

”そうか!レッテルの内容は、行い次第で良いものに変えることができるんだ。”

次の日から、椎名の言動は変わっていった。

良いレッテルを増やしたい

日下部の仕事を手伝ってあげる椎名。
すると、赤い縁取りの『冷血クソ人間 日下部篤弘』シールが、青い縁取りの『意外と優しい上司 日下部篤弘』に変わった。
思わず微笑む椎名。

銀座の有名店のケーキを差し入れした椎名。
すると、悪いレッテルが、どんどん良いレッテルに変わっていった。

”良いレッテルを見ると、なんとも言えない幸福感に包まれる。もっと増やしたい。もっと良いレッテルを貼ってほしい。そんな風に俺は、レッテルが気になってたまらなくなっていった。”

トイレ掃除をして、掃除のおばちゃんに喜んでもらう椎名。
「今日も奢ってもらっちゃっていいすか?」と部下に言われ「いいんだよ、いいんだよ」と廊下を歩いていると、半田運送の半田社長が受付に来ていた。

「お願いします、椎名さんに会わせてください!」
半田は警備員に両脇を抱えられていた。

「融資していただけるんですか?」

「半田さん!?」
そう言われて半田は振り返った。

「椎名さん!融資の件、もう一度考えてくれませんか?お願いします!」
半田は両手を床についた。

「ですからそれは…あの…」
「このままだと、ウチの会社は潰れてしまいます。倒産したら、みんなを路頭に迷わせてしまう!どうか!」
「ちょ、もう、いい加減にしてください!」
しがみつく半田を椎名は倒してしまった。

「いくら土下座されても、できないものはできない!」
すると、赤い縁取りの『心無い若者 半田辰夫』というレッテルが張り付いた。

「とにかく、もうお引き取りください」
そう言って去ろうとすると、どんどん良いレッテルから悪いレッテルに変わっていった。

「…わかりました。融資、考えなおします」
「ほ、本当ですかー!?」
「しかし、このままの業績では認可は下りないと思います。もう一度、御社の業績を上げる策を練りましょう。ね。もう、立ってください」
半田は椎名に立たされ、「ありがとうございます!」と深々と頭を下げた。

すると、悪いレッテルから良いレッテルに変わっていった。

半田運送に来ている椎名。

「融資していただけるんですか?」
「無事に審査が通りましたので」
「ありがとうございます」と、半田親子、従業員一同、みんな頭を下げた。

「おめでとうございます」と握手する椎名。

すると、上司から電話がかかってきた。

”そして俺は、誰も信じられなくなった。”

上司に呼ばれた椎名。
日下部が担当した会社が不渡りを出した。
日下部は経験が浅いので、椎名の監督不行き届きだと言われてしまう。

「私たちは君を助けたいんだよ」→『切り捨てるべき部下 倉持健吾』

「支店長は本社と掛け合って、君を守ると言ってくれてるんだ」→『銀行員としてじゃ終わった部下 真山総一朗』

融資課に戻ってきた椎名を部下たちが見る。
今までの良いレッテルが、みるみる悪いレッテルに変わっていく。
『左遷決定! 大迫真悠子』『終わったバンカー 松田健介』『島流しされる男』

椎名の元に日下部がやってきた。

「僕、クビですかねえ?」
「…」

「辞めたくないです。椎名さんのおかげで、少しずつ仕事が楽しくなってきたのに…」
「心配するな、俺がなんとかする」
「でも、誰かが責任をとらないと…」
「…」
「やっぱり、僕が…」
「部下を守るのも…上司の務めだ」
そう言って、椎名は日下部の肩を叩いた。
椎名がふと腕を見ると、『だまされやすい単細胞 日下部篤弘』とシールが貼ってあった。
唖然とする椎名。

「椎名さん、ありがとう…ありがとうございます」

”そして俺は、誰も信じられなくなった。”

落ちぶれたエリートバンカー

椎名は会社の面接に来ていた。

「10社目ですか…。こちらとしては大歓迎なんですけどね。どうして東都オーシャン銀行を辞めたんですか?」
「貴行のような、海外事業にも力を入れてるところで…」
言いかけた椎名にシールが貼られた。

『辞め方があいまいな信用ならない男 織田信二』
『いわくつきのエリート 松木亮太』

「どうしたんですか?」という声を遠くに聞きながら、「もう結構です…」と力なく言って椎名は立ち上がった。

雨の中、傘も差さずに走る椎名。

椎名は、弁当屋でバイトをしていた。
店長に「今日も余った弁当持って帰っていいですか」と聞く。
「いいぞ、どんどん持ってけ」と笑顔で言う店長、しかし、『憐れな男 楠本宏伸』というレッテルが椎名に貼られた。

豪華なマンションの部屋から、狭いアパート暮らしになった椎名。
悪いレッテルばかりの体を鑑に映し、「剥がれろ、剥がれろよ、なんで剥がれないんだよー!」と言いながらシールを剥がそうとするが剥がれない。
椎名は座りこんでしまった。
ふと、半田運送の半田社長のシールを見ると、黒い縁取りになっていた。

だから椎名さんは、父さんの恩人だ

椎名の足は、半田運送に向かっていた。
しかし、会社の前まで来てやっぱり引き返そうと振り向くと、背中から半田の娘・愛奈に声をかけられた。

「あの…、もしかして椎名さんですか?」
椎名は振り返り、「いや…」と言って帰ろうとする。

「私、娘の愛奈です。上がってってください」
「えっ…」

仏壇には、半田社長の笑顔の遺影が飾られていた。

「半田さんは、いつお亡くなりに?」
「3ヶ月前です。長いことガンを患っていて、1年くらいずっと入退院を繰り返していたんですけど」

「じゃあ、あの時にはもう…」
椎名は半田のことを思い出していた。

「すみませんでした。僕は半田さんにあんなひどいことを…」
「ひどいことなんてありませんよ。だってお父さん、椎名さんにすごく感謝してたんですから。椎名さんがこの会社を救ってくれたって」

「それは違います」
「えっ?」

「同僚や部下からのレッテルを気にして、少しでも良いレッテルが貼られたくて、助けただけなんです。あの時、半田さんがどんな思いで頭を下げていたのかなんて、ちっとも考えていませんでした。きっと、半田さんは命がけで、必死にこの会社を守ろうとしていたのに…」
椎名は愛奈の前にひざまずいた。

「ほんとに…ほんとにすいませんでした…。僕は…ひどいレッテルを貼られても仕方がない、当然の人間です…。ほんとに…ほんとにすいませんでした…」
椎名は泣きながら愛奈に謝った。

「そんなことありません」
愛奈は椎名の顔を上げる。

「父さん、言ったんですよ。『この会社が潰れていたら、俺は死んでも死にきれなかった。椎名さんがいたから、ウチは助かった…。だから椎名さんは、父さんの恩人だ』」
その言葉に、椎名は号泣した。
すると、みるみる貼られたレッテルが剥がれていった。
椎名の体には、一つも残っていなかった。
仏壇の半田社長の遺影には、『あなたがいてくれて良かった 半田辰夫』と貼ってあった。

”この日を境に、レッテルは二度と見えなくなった。”

これからは、レッテルなんて気にしないで…

椎名は半田運送で働いていた。

”貼られたレッテルを気にして失ったものはたくさんある。仕事や部下や以前の生活…。でも、その代わりに得たものもある。”

「パパ、おかえり!」
「はい、ただいま!」

椎名は愛奈と結婚し、娘が生まれていた。

”これからは、このささやかな幸せを守っていきたい。レッテルなんて気にしないで…。”

娘が、欲しいものを「パパ買って」とせがんでいるが、「だめ、我慢しなさい」と椎名は言う。
娘はほっぺたをふくらましている。
すると、椎名の背中に、赤い縁取りのレッテルが貼られた。
椎名は体を震わせ、娘に告げる。

「まり、欲しいもの、何でも買ってあげるよ」
「ほんとに?」
「ああ。パパはまりのためなら何でもするよ」
「やった、ありがとうパパ!」と言ってまりは抱きついた。

椎名の背中に貼られた『ケチ! しいなまり』のレッテルが、『パパだいすき! しいなまり』に変わった。

「捨て魔の女」主演【深田恭子】

土岐田栞…深田恭子
土岐田夏希(栞の妹)…阿部純子
佐竹アリス(栞のライバルアナウンサー)…上野なつひ

何かを得たければ、何かを捨てねばならないのです

女性アナウンサー・土岐田栞(深田恭子)は、ロケで農園に来ている。
ディレクターに、「リアクションがワンパターン、もっと工夫してリポートしてよ」とダメ出しをされる。

栞が道を歩いていると、妹の夏希(阿部純子)から電話がかかってきた。
東京のアナウンサー学校を出て、せっかくアナウンサーになったのに、あまり仕事がない栞に「もう29なんだし、そろそろ別の道考えたら?」と提案する。
「ほっといてよ、説教するために電話してきたの?」と不満な栞。
もうすぐ母の7回忌なのでいつ帰ってくるのかという内容の電話だった。
「ちょっと待ってね」と栞は手帳を取り出してスケジュールを確認するが、予定はガラガラ。
それでも「スケジュールわかったらまた連絡する」と見栄を張って電話を切った。

ため息をつく栞の前に現れたのは寺だった。
表の看板には『捨てること即ち永遠の幸福』と書いてある。

栞が行こうとすると、僧侶が声をかけてきた。

「悩みがあおりのようですね。悩みとは、己の欲に執着する故に発するもの。この世の幸不幸はバランス。何かを得たければ、何かを捨てねばならないのです」
「何かを捨てる?」

「あなたの人生はそこからです。さあ、どうしますか?」
栞は怖くなって、足早に立ち去った。

お気に入りのシャツ

自宅に戻ると、彼氏がソファーで横になっていた。
明日から泊りのロケだから着替えを用意してと栞に頼む。
「わかった」と言って探す栞だが、目当てのものがなかなか見つからない。
「物多すぎなんだよ。少しは捨てて片付けろよ」と彼氏が言うが「まだ使えるもん」と反論する。

栞のシャツの背中が破れていることを指摘され、「久々のテレビだったからお気に入り着たのに…」とつぶやき、「仕方ない」と思いながらゴミ箱に捨てた。

その日、商店街の福引きで「特賞 松坂牛1kg」が当たった。
自宅に戻り、ゴミ箱の中のシャツを見る。

《何かを得たければ、何かを捨てねばならないのです》

僧侶の言葉を思い出すが、「まさかね」と思い直す。

お気に入りのキーホルダー

山梨甲府テレビ。
局内に貼ってあった「なでしこ選挙リポーター大募集!! 定員10人」のポスターの前で足が止まる栞。

”選挙特番…。リポーター…。10人かあ…。政治の知識もないしなあ。でも…”

栞は、お気に入りのシャツを捨てて松坂牛が当たったことを思い出していた。
そして、カバンの中からお気に入りのキーホルダーを取り出した。

”これ、レアものだったんだよなあ…。わあ、どうしよう…”

しばらく悩んだ末、「いらない」と言ってゴミ箱に捨てた。

栞は、選挙に当選した議員の選挙事務所に来ていた。
記者たちが当選議員に群がる中、栞は切り込んで質問した。
その後、「良かったよ、相当勉強したんだね、あそこで切り込むなんて大したもんだ。またよろしく!」とディレクターに褒められた。

”やっぱり捨てたら幸せになるんだ。”

どうしよう、捨てるものがない…

栞は、本棚から本を引っ張りだして紐でくくり、すべてゴミ置き場に捨ててきた。

栞は、「昼どきワンダー」のアシスタントになった。

部屋に飾ってあった小物類、洋服、キッチン用品など、大量にゴミ袋に入れゴミ置き場へ。
そのゴミたちの前で両手を合わせて拝む栞。

局内の片隅で座っていると、台風の中継を予定していたアナウンサーが倒れたと言う情報が耳に入った。
代わりのアナウンサーを捜しにスタッフが大騒ぎしている。

”全国ネットの台風中継!?…やりたい!”

栞はカバンの中を探した。

”どうしよう、捨てるものがない…”

ふと、ネックレスに気がつく。
それは、28歳の誕生日に彼氏がプレゼントしてくれたものだった。
しかし、栞はゴミ箱に捨ててしまった。

もう、いらないか…

そして栞は、台風16号の中継をした。
すると翌日、東京からタレント事務所のマネージャーが訪ねてきた。
台風中継をした栞のことが、ネットでも話題になっていたのだ。
今度、全国ネットの夕方のお天気キャスターのオーディションがあるので、受けてみないかということだった。

栞は「捨てなきゃ、何か捨てなきゃ」とつぶやきながら自宅に帰ってきた。
「捨てるもの、何か捨てるもの」と探すが、部屋の中にはほとんど物がなかった。

”はあー…、全国ネット、絶対やりたい…”

そこへ、彼氏がやってきた。
東京の話をしようとすると、彼氏は仕事のことでブツブツ文句をつぶやいて「ビール!」と言ってきた。
さらに「なんか、また物なくなったな。何もないじゃん」と言ってビールを飲む。
ゲップをして靴下を脱ぐ彼氏の姿を見て栞はつぶやく。

”もう、いらないか…”

「ん?何か言ったか?」と聞く彼氏に「別れて」と告げた。

そして彼氏は出て行った。

持ち過ぎた…。捨てなきゃ…

栞は、全国ネットのお天気キャスターになっていた。
東京の素敵なマンションに引っ越してきた。
妹の夏希も栞の部屋で大はしゃぎで喜んでいる。
棚には、亡き母と3人で撮った写真が飾られている。

アナウンス室で、「仕事ができない」と自分の悪口を耳にして、栞は落ち込んでしまう。
自宅に戻ってきて、部屋の中の家具を見渡す。

”持ち過ぎた…。捨てなきゃ…”

栞は、仕事がうまくいかないのは物を持ち過ぎたからだと思った。
そして、部屋の中のすべてのものを捨てた。
何もない部屋で壁際に座り、呪文のように天気の原稿を暗唱する栞。
横には、母と3人で撮った写真だけが残されていた。

「捨てなきゃダメなの」

栞は、朝の情報番組「モーニングトゥディ」に抜擢された。

人気急上昇だと、取材を受けている栞。
見せられた雑誌の『好きな女子アナランキング』では、同じ「モーニングトゥディ」に出ている佐竹アリス(上野なつひ)に次いで2位にランクインしている。

佐竹は、トップ女子アナとして別格の扱いだった。
そんな佐竹に栞は嫉妬する。

栞は本番の終わったあと、スタジオで倒れてしまい、夏希が心配して部屋に来ていた。
「それにしても、この部屋なに?全部捨てちゃったの?なんにもないじゃない」

栞は横になりながら、夏希が買ってきた買い物袋の中身を見ていた。
その中には、赤いリンゴと、それを切るための包丁が入っていた。

”捨てなきゃ…”

いきなり立ち上がった栞は、窓からその買い物袋を捨ててしまった。

「ちょっと、何すんの?」
「いらないから」
「…姉ちゃん…」

そして栞は、母と3人で撮った写真を持ち出して捨てようとする。
その手をつかみ、夏希が止めた。

「ダメ!お母さんと最後に撮った写真。大事な思い出でしょ!?」
夏希を見て栞は告げる。

「捨てなきゃダメなの」
「えっ!?」

そして、外に投げてしまった。
栞は夏希を見て「家族なんていらない」と言って微笑んだ。

代わりにメインよろしく!

栞がメイク室にいると、「土岐田くん、悪いけど急いでメインMCの準備して」と言われる。
見せられた週刊誌には、佐竹アリスが人気ミュージシャンと不倫愛でキスしている写真が載っていた。

「今日から謹慎になるから、代わりにメインよろしく!」
「…わかりました」

栞はメインMCとして、真ん中に立っていた。
そして、『好きな女子アナランキング』でも1位になっていた。

じゃあ……あなたもういらない

ディナーの席で栞は、今度立ち上げられる大型報道番組「News In One」の企画書を見せられていた。
メインキャスター候補に、栞の名前が挙がっているのだ。
もう一人の候補、佐竹アリスに取られないように、スキャンダルには注意しろと釘をさされる。

”絶対に渡さない…”

佐竹は、医療ITセミナーの司会の仕事に来ていた。
栞は、サングラスをして現れた。
駐車場に停めていた車に乗り込もうとする佐竹に声をかける栞。

二人は屋上にきた。

「相談ってなに?」
「私、アナウンサーとしてうまくやれてると思いますか?」

「もちろん。私が辞めた後の『モーニングトゥディ』、しっかり引っ張ってくれてると思ってるよ。それに、私が言うのもなんだけど、これからもっともっと、良いアナウンサーなるんじゃないかな」
「(栞は笑って)そうですか。じゃあ……あなたもういらない」

「えっ!?」
するといきなり、栞は佐竹を突き落とした。

数字がほしい…数字が…

栞は、大型報道番組「News In One」のメインキャスターになっていた。

何もない自分の部屋の壁際に立ち、「ハハハハハ」と笑う栞。

栞は、メインキャスターとして番組の内容にも口を出していた。
「ネタのインパクトが弱い」と。
政治家の汚職ネタを「確証がない」と渋るスタッフに「攻めていきましょう」と強気に出るよう進言し報道した。
しかし、議員サイドから「誤報」だと抗議がきて大騒ぎになってしまった。
結局、翌日謝罪ニュースを読むことになり、視聴率が下がってしまった。

栞は報道局長から呼び出され、誤報を主導した責任をとって自宅謹慎するよう命じられた。

”数字がほしい…数字が…。スクープさえとれば…。やっとキャスターになれたのに、嫌だ…嫌だ…嫌だ…”

何もない部屋の真ん中に立ち「何か捨てなきゃ」と考える。
しかし、捨てるものは何もない。

「あった!捨てるもの…」

「何か捨てなきゃ」と考えながら、栞は朝を迎えた。
大きな窓いっぱいに、朝日が差し込んでくる。
そして「あった!捨てるもの…」と栞はつぶやいた。

何もない部屋の真ん中に座り、スマホで録画している。
栞は立ち上がり、全開に開けた大きな窓に向かっていった。
スマホの中の映像には、ただ風に揺れるカーテンだけが映っている。

その日の晩の「News In One」で、栞の自殺についてのニュースが流れた。
そこで、栞がスマホに残した動画が流れた。

「今晩は、土岐田栞です」

「車中の出来事」主演【北村一輝】

キザな男…北村一輝
優男…古川雄輝
猪首(いくび)の男…杉本哲太
売り子…太田莉菜

お茶ぐらい飲ませてあげたらどうですか?

時は昭和30年前半頃、舞台は走る列車の中。
最後尾に、猪首(いくび)の男(杉本哲太)と優男(古川雄輝)が隣同士に座っている。
手には手錠がしてあり、その上から布がかけられていた。

停車中の列車に、キザな男(北村一輝)が乗り込んできた。

売り子(太田莉菜)が弁当を売りにきた。
優男は「酒!」と言うが、猪首(いくび)の男に肘で小突かれる。
「じゃあ、お茶で」と言うと、扇子で頭を叩かれ「勝手なことすんな」と言われる。

「お茶ぐらい飲ませてあげたらどうですか?」
その声に猪首(いくび)の男が振り向くと、横にキザな男が立っていた。

「はっ、余計なお世話でしたか」とキザな男は笑う。
結局、猪首(いくび)の男はお茶を買って渡した。

「ありがとうございました」と言って、売り子はキザな男に軽く頭を下げて向こうに行った。

なあ、あんたも刑事なのか?

キザな男が行こうとすると、「あ、もし。切符を拝見」と車掌に呼び止められた。

「(お茶の)フタ、開けたいんですけど」と言うと、「ああ、勝手に開けろ」と猪首(いくび)の男が答える。
「いや、だって」と手錠されていることをアピールし、猪首(いくび)の男がフタを開けた。

「あなた刑事ですよね?」とキザな男は言った。
「同業者です」と内ポケットから警察手帳を見せて、キザな男は笑った。

「ここいいですか?」とキザな男が聞くと、「ダメだ。見ての通り、護送中だ」と猪首(いくび)の男は言う。

「なあ、あんたも刑事なのか?」と優男は聞く。
「えっ!?」
「なら聞いてくれ、人違いなんだ」
「黙ってろ」と猪首(いくび)の男が言う。

優男は「指名手配の犯人に間違えられている」とキザな男に訴えるが、「黙ってろって」と猪首(いくび)の男に釘をさされる。

「指名手配?…俣野昇?あんた、俣野昇だ」
「声が大きい」と猪首(いくび)の男が言う。

キザな男は隣の席に座った。

あなた、本当に刑事なんですか?

「手配書で見ましたよ。麻薬密売、警察官殺害の凶悪犯…」
「警官2名だ」

「確か5日前、事前に得た情報から大河原組のヤクザと麻薬密売グループとの取引現場を警察が抑えた。しかし、派手な銃撃戦がおっぱじまって、その結果、麻薬密売グループの一人が死亡、他の容疑者はその場で逮捕。ただ一人、密売グループの俣野昇は、警察官2人を殺してその場から逃走。しかも取引されるはずだった1億の金と麻薬の両方を持っていた。見かけによらず大それたことをしたもんだな」
「だから、違うんだって!」

「でも妙だなあ。これほどの大事件の犯人をたった一人で、しかも電車で護送だなんて…。それに、俣野が逮捕されたって話はまだ聞いてないし…」
「何が言いたい?」と猪首(いくび)の男。

「……あなた、本当に刑事なんですか?」
「…」
「えっ!?」と優男が隣を見る。

密売グループリーダー「カワウソ」

「どういう意味だ?」
「本気で疑ってるわけじゃないんですよ。まあ、暇つぶしのゲームだと思って聞いてください。街中に俣野の手配書が張り出されて、ここ数日は検問も厳しい」

「それで?」
「たとえば、警察に逮捕されて護送途中だってことにすれば、手配書で俣野の顔を見た人間に見つかっても、通報されることはない。そうでしょ?」

「…面白い話だな。だがそのためには、刑事のふりをする協力者がいなきゃ話にならん」
「たしか、密売グループには、表に出てきていないリーダーがいるって話でしょ!?」

「…」
「グループ内で唯一捕まった男も、それを認めてたはず」

★回想シーン★

取調室。

「お前らのリーダーは誰だ?」
「…」

「カワウソ…。お前らのリーダーはカワウソって奴だろ?」
「…カワウソのことしゃべったら、殺されちまう…」

「私も噂を聞いたことがある。裏切者は決して許さない。残酷無比な男。その男は体のどこかに、カワウソの入れ墨を入れてるという。そのカワウソが考えた逃亡策が、刑事と犯人の2人連れというシナリオだった」
「つまり、俺がそのカワウソってわけか?」
キザな男は黙って笑っている。

あんたこそ、刑事じゃないだろ?

「待てよ、お前ら2人とも警察なんじゃないのかよ?」
優男の言葉に、猪首(いくび)の男は扇子を広げて笑った。

「傑作だな。確かに逮捕された児島はリーダーの存在を認めた。だが本当にカワウソとは、会ったことがないらしい。密売グループで、カワウソと面識があるのは、射殺された永田次男だけだった」
「そんな都合の良い話がありますかねえ」

「俺たちも最初は、責任を逃れるためのウソだと思った。でも、児島がそんなウソをつく必要はどこにもない。リーダーが永田で、全部命令されたと言えば『死人に口なし』、真偽も確かめようがないんだからな。つまりこいつは、カワウソの顔も名前も知らない、助けてもらいたくても連絡のとりようもないんだからな」
「あ、確かに…。いや、その前に人違いだから」

「カワウソのほうが先に見つけて、助けに来たっていう…。」
「こんなチンピラを、危険を犯してまで助ける価値があるのか?」

「そりゃあるでしょう。1億の現金と大量のヤクを持って逃げちまったんだから…。ただ、カワウソが噂通りの男なら、金とヤクの在り処を聞き出したら、俣野を始末するでしょうねえ」
「待て、始末って…。(隣りを見て)冗談じゃねえよ!あんた本当に刑事じゃないのか?」
「わめくんじゃねえ!」と、扇子で優男の頭を叩く。

「こいつはただのゲームをしてるだけだ。暇つぶしのゲームをな。そうだろ?」
「ふふ、もちろん」

「ただ一つ、腑に落ちないことがある。あんたなんで、変な芝居したんだ?」
「芝居って?」

「最初にここの席に座った時に、こいつが誰だか気づかないふりをしただろ」
「…」

「捜査員と同じくらい事件に詳しい人間が、すぐに俣野だと気づかないはずがない」
「…なにが言いたいんです?」

「あんたこそ、刑事じゃないだろ?」

あんたがカワウソだからだ!

「面白いですね。私が刑事じゃないとしたら、何をしにここへ?」
「隙を見て、俣野を奪おうっていう魂胆だろうな。こいつから、金とヤクの在り処を聞き出して手に入れるためにだ」

「どうして私がそんなことを?」
「それは…(立ち上がり)あんたがカワウソだからだ!」
「えっ!?」と優男は驚く。

「カワウソの入れ墨は、さしずめその包帯の下とかな」
「残念ながら、痛々しい傷跡があるだけですよ。もし私がカワウソだとしたら、たった1人で来ますか?仲間を連れてきて強引に俣野を奪ったほうが早い」

「あんたの身なりを見る限り、相当な洒落者だ。たとえば、たらしこんだ女を、この電車の中に送り込んでいるとかな」
優男は、さっきの売り子の女を思い出し、口に含んだお茶を噴き出した。

「きったねえな!」
「だって、お茶に毒入ってるかも…」
「だとしたらとっくに死んでるよ。何度も言わせんな。これは暇つぶしのゲームなんだって」

「そうですよ。私は本当に刑事だし、こちらも本物の刑事。そしてあんたも本物の俣野でしょ」
「いやあの、俺は違うって」

「ようやく信じることにしたってわけか。俺が刑事だって」
「信じるも何も、あなたのことはもとから知ってますよ。水神署の平田巡査部長」

「…ほう。深夜の電車に乗ったら、たまたま顔を知ってる刑事がたまたま護送中だったんで、ゲームを始めたってわけか」
「いけませんか?」

「いけなかないが、怪しまれても仕方がない」
「あなただって十分怪しい。相棒も連れずに一人で犯人を護送だなんて…」

「相棒がいないってのは、そんなに不思議か?」
「不思議というよりは、不自然ですね」

「理由は簡単だ。相棒が5日前に、死んだばかりだからさ」
「あんたの相棒ってのは?」

「こいつに射殺された警察官の一人、佐藤光男だ」
「…」

「そういう意味で言うと、こいつを殺したいっていう気持ちは、カワウソよりも強いかも知れんな」
「だから俺じゃないんだって…」

「相棒ってことは、あなたも現場にいたんですね?」
「ああ、いたさ」

「では、相棒が撃たれるとこ、見てたんですね?」
「…いいや。とにかく、現場は入り乱れていてな」

キザな男のおとぎ話

「一つ、おとぎ話をしてもいいですか?」
「さっきからしてるのがそうだと思ったが」

「ある刑事がいます。丸暴担当で、刑事としては非常に優秀だった。しかし、彼はある悩みを抱えてた」
「悩み?」

「7歳になる一人息子さんが、難病に侵されてた。病気の治療には、相当のお金がいる。お金に困った結果、その刑事は自分の立場を利用することにしたんです。知りあいのヤクザにガサ入れ情報を流して、その見返りに小遣いをもらう。ま、ここまでならよくいる汚職警官の一人だ。しかし、彼はもう少し欲が出た。自分も麻薬取引に手を出すことにしたんですよ」
「刑事が麻薬取引?おとぎ話にしちゃ、とんでもない話だな」

「彼には考えがあった。賄賂のやりとりをしてた中で知り合った永田という男とつながり、仲間を集めさせ、麻薬密売グループを作ったんだ。そして自分は陰から支持を出すだけ。その刑事によって、警察の動きはすべて筒抜け。麻薬密売グループは、徐々に取引の規模を拡大させていった。だが、相棒が気づきはじめたので、グループを解散させようとするが、永田は言うことを聞かなかった。刑事にとっては、永田が邪魔な存在になってきた。そんなときだった。大河原組とのでかい取引の話が舞い込んできたのは。これは刑事にとってチャンスだった。その情報を警察に流し、自らも刑事として取引現場に向かった。まずは、邪魔者だった永田を殺し、さらに、自分と麻薬密売グループのつながりを疑ってた相棒の刑事も、銃撃戦のどさくさに紛れ殺したあと、金とヤクを持った俣野だけをその場から逃がした」
「逃がしたのは、なんでだ?」と聞く優男。

「金だろうな。その場で殺すか、捕まえたとしても1億は警察に押収される。俣野が逃走して1憶を隠したあと、刑事として俣野の前に現れ、身柄を押さえる。そして、事情聴取のふりをして、隠し場所を聞き出すつもりだった。あとは、俣野にすべての罪を着せて、葬るだけ…」
「…ふざけんな…。てめえだったのか!?」

「ああ!?」
「永田に指示を出してたんだろ?…てめえがカワウソなんだろ!?」と優男が立ち上がる。

「だからこれはおとぎ話だって…」
「うるさい、これ以上てめえの好きにはさせねえ!」と言って、優男は猪首(いくび)の男の首を手で絞める。

「やめろ、こんなのはでまかせだ。真に受けるな!」
「仲間の敵をとってやる!」

「やめろ!落ち着け!」

「おとなしくするんだ!」と、キザな男は拳銃を猪首(いくび)の男に突き付けた。
俣野が猪首(いくび)の男に飛び掛かる。

「俣野!もうやめろよ」
「…はい…」

「こいつの上着から銃を取り出すんだ」
俣野は拳銃を取り出し、猪首(いくび)の男に銃口を向けたと思った瞬間、キザな男に銃口を変えた。

「…俣野、お前!?」
「悪いが、俺は俣野じゃないんだ」

あんたをおびき出すための計画だよ

「俣野じゃない?」
「たまたま顔が似てるせいで、こんな胡散臭い計画に駆り出されたんだ」

「計画?」
「あんたをおびき出すための計画だよ」
猪首(いくび)の男はキザな男から拳銃を奪った。

「平田さんはたった一人で俣野を逮捕したんだ。そして、俣野を餌にすれば、カワウソも顔を出すんじゃないかと考えた。そしたら、まさか本当に現れるとはね」
「ふっふっふ」

「何がおかしいんだ?」
「面白いアイディアだ。感服しました。だが…」
突然、火のついた発煙筒が転がってきた。
煙の中、キザな男は逃げて行った。

「待て!」と叫ぶ優男の足を、キザな男の仲間が拳銃で撃った。

「詰めが甘かったな」と言って、キザな男と仲間は列車から降りた。

銃声がして、「わあー!」という叫び声と共に仲間が倒れた。
キザな男が振り向くと、駅員が拳銃を構えていた。

「危険物の持ち込みは困りますね。こちらにいただきましょうか?」

本当のカワウソは…

売り子が弁当を売りにきた。
キザな男は手錠をはめられ、猪首(いくび)の男と向かい合って座っている。
キザな男はウイスキーを注文した。

「じゃあ、俺も」
「いいんですか、護送中に」

「問題ない。東京に着いたら捜査員たちがお前を待ち構えているからな。それに今は、祝杯を挙げたい気分なんだ」
「あんあたが…やっぱり…」

「ありがとうございました」と、売り子がウイスキーのグラスを2個置いた。

「じゃ、乾杯でもするか?」
グラスを重ねようとするが、キザな男は拒んだ。
お互いウイスキーを飲んだ。

駅員が電話をしている。

「ええ、平田刑事がカワウソを護送中です」
「ちがう!あの人はなあ…」と、キザな男の仲間が言う。

「そうだ、伝説の入れ墨とやらを見せてもらおうか」
キザな男は黙って包帯をとった。
しかし、入れ墨はなく、本当にケガの傷跡だった。

「お前は…」
「カワウソじゃない。大河原組の人間だ」

猪首(いくび)の男はグラスを落とし、その場に倒れ込んだ。
キザな男も眠そうにしながら、ウイスキーのグラスを見た。
そこへ、売り子がやってきた。
売り子の足首には、カワウソの入れ墨がしてあった。

(了)

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