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漫画家で「エホバの証人」の元信者女性が自分の体験を漫画にした、その理由とは?

      2018/02/23

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憲法において信教の自由が保障されている日本において、信仰を持つことは自由です。
しかし、親が信仰を持っていると、自動的に子どもも持つようになります。
漫画家のいしいさやさんは、親が「エホバの証人」だったおかげで様々な体験をしました。
その証言からは想像もしなかった内容が浮かび上がってきます。
「エホバの証人」元信者女性が自分の体験を漫画にした理由

漫画『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』公式ページ

「エホバの証人」元信者女性が自分の体験を漫画にした理由 1/5(金) 13:00配信

「子供の頃、母に連れられて「勧誘」に行くのは、とても憂鬱でした。
いい顔されることはまずないですから……。
それでも、まだ幼い私がパンフレットを差し出すと、それだけは渋々受け取ってくれる。
すると、母や兄弟姉妹が「えらいね」って言ってくれるんです。
子供ですから、褒められるとやっぱり喜んじゃうんですよね。

「エホバの証人」は争いを禁じているので、伺ったお宅でいくらなじられても、喧嘩になることはありません。
それに、本人たちは「自分たちが唯一正しい宗教」と信じています。
どれだけ拒否されても「あの人は楽園にいけないね」と、むしろ心配に思っているんです――。」

そう話すのは、漫画家のいしいさやさん。
エホバの証人の信者である母のもと、「二世信者」として育ったいしいさんは、幼い日の体験を8ページの漫画で描き、ツイッター上で公開した。

その漫画は瞬く間に話題を呼び、3万5000回以上のリツイートを記録。
「応援してます!」「続きが読みたい!」や「私も同じ経験をしました」など多くのメッセージがよせられ、その続きが「ヤングマガジン サード」で連載されることになった。

この度、いしいさんの連載をまとめた『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』が発売。
元エホバの証人のいしいさんに、この漫画を描くにあたった経緯とともに、宗教団体「エホバの証人」について語ってもらった。

取材・文/伊藤達也

普通でありたかった

自分の体験を漫画にしたきっかけは、「認知行動療法」でした。
会社務めをしているときに、身体的にも、精神的にも具合が悪い時期があり、その時に一冊の本を手に取ったんです。
それが、人の認知に働きかけて不安を取り除く「認知行動療法」という心理療法の本でした。

本にはこう書かれていました。

「感情を文章や絵などで表現できるようになることが大切です」

「不快な感情になったときのこと、そのときどんな感情になったか書いてみましょう」

それを読んで、絵を描くのが昔から好きでしたから、自分の「子供の時のこと」を漫画にしてみようと思ったんです――。

私は、熱心なエホバの証人の信者である母のもとで育てられた、いわゆる二世信者でした。
いまは信者ではなく、家族とも離れて暮らしています。
最近、ようやく冷静に、子供の頃のこと、エホバの証人について考えられるようになってきたところです。

エホバの証人は、正式には「ものみの塔聖書冊子協会」と言います。

エホバの証人といえば世間的には「輸血が禁じられている」「なんだかいろいろと問題になる宗教」というふうに認識されているようです。

でも、信者の生活はそういった危険なイメージとはいたって無縁です。

エホバの証人では信者同士のことを「兄弟姉妹」と呼ぶのですが、兄弟姉妹で集まって毎週集会を行い聖書の勉強をしたり、「奉仕」と呼ばれる布教活動を行ったりするくらいです。
争いや政治参加が禁止されているので、他の宗教団体と比べて派手な活動を行っていないし、有名な方もいないので、いたって地味な宗教です。

実際には、漫画で描いた通り、今思えばさまざまな「普通でない」ことがありましたが、小さい頃は、母の言うことにただ従っていたのでそれが「普通」だと思っていました。

でも、学校に通ってクラスメートと話したり、外の社会に触れ合う機会が増えたりするにつれ、私の生活がどうやら「普通でない」ということがわかってきました。
家での「普通」と社会での「普通」の間に挟まれた私は、次第に苦しい日々を過ごすことになったんです――。

小さい頃から絵を描くことは大好きでした。
エホバの証人では、漫画そのものは禁じられていません。
だから、家にも母の本棚に『キャンディ・キャンディ』のような古い漫画がありました。
好きだった漫画は、父の持っていた『ドカベン』です(笑)。
野球はよくわからないんですけど、熱さが伝わってくるんですよね。

ちなみに父は信者ではありませんでしたが、母の活動を止めることはしませんでした。

ただ、漫画でもダメなものはあります。
エホバの証人の教義では、「競争禁止」「政治参加禁止」など、禁止されていることがいろいろあります。

『ドラゴンボール』や『ポケモン』みたいな、戦いがある漫画はダメ。
さらに厳格に「婚前交渉禁止」なので、その誘発をしかねない恋愛漫画もほとんど読めない。
だから「りぼん」や「ちゃお」は読ませてもらえなくて、小さい頃クラスメートの女の子の会話に混ざれませんでした。

年を重ねた母親はもう漫画に触れることもないでしょうし、私が漫画を描いていることは話してないので、気づいていないと思います。

なにより、エホバの証人の信者は、「世の人」――信者以外のことをこう呼びます――がエホバの証人について書いたものを読んではいけないとされています。
だからこの漫画の存在を知ることもないと思います。

新興宗教には、メディアに厳しく目を光らせている団体も多いようですけれど、エホバの証人ではそもそも争うことが禁じられているため、作品や報道に対して、抗議することもありません。
政治活動が禁止なので、どこかの政党を応援することもない。

ただし、「奉仕活動」と呼ばれる勧誘だけは熱心に行います。
その活動を支えているのは、一人でも多くに正しい聖書の教えを知ってもらい、一緒に楽園に行く仲間を増やしたいという、信者にとって本当の意味での「善意」なんです。
それが良いか悪いかはわかりませんが。

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エホバの証人とは何なのか

エホバの証人の「エホバ(ヤハウェ)」は全知全能の神。
イエス・キリストはその息子であり、代弁者である。
エホバという神以外は崇拝してはいけません。
教えの出典はすべて聖書です。
エホバの証人とは、つまり「エホバが正しいと証明する人」ということです。

教えを簡単に言うとこうなります。
いずれ来るハルマゲドン(世界の終末)の後に楽園がやってくる。
楽園を支配するのはイエス・キリスト。
その楽園に行けるよう現世ではエホバの教えに従って生きましょう、というものです。

このハルマゲドンには歴史があって、最初は創始者によって1914年に起きると予言されていました。
その年にたまたま第一次世界大戦が起きてしまったので、信者が拡大したんです。
世紀末思想や、冷戦の核戦争危機、最近だとミサイル問題などを見て「ハルマゲドンが近い」と信者の人は思うんですね。

ハルマゲドンが起こると、地球が崩壊する。
その後、信者らが生き残る。
エホバの証人の教えに反対した人たちは生き残れません。
だから毎週、地域を訪問して勧誘をするのは、生き残るチャンスを与えるため、彼らを救うため、という理屈なんです。

すみません、よくわからないかもしれませんが、とにかくそういう教えです(苦笑)。
エホバの証人では、生きている間の義務は、教えを守るだけ。
反対されても、「迫害を受けているのはハルマゲドンが近いからだ」と喜ばないといけません。

信者をたくさん獲得しなさい、とか、いくらお金を収めなさい、とも言われないので、他の宗教とは違って社会問題にならず、「被害者の会」がないんです。

また、教祖はおらず、信者の集いというかたちです。
正式名称が「ものみの塔聖書冊子協会」なのもその現れです。
だから、権力闘争がないんですね。
他の宗教のように、聖書を解釈した人が聖人になる、ということもありません。
みんなが聖書研究者と呼ばれています。

自分で選択して信者になっている人に、デメリットはないと思います。
実際に、母はすごく幸せそうです。

小さい頃の私が、「ウチって普通じゃないんだ」と気づいたのは、学校に通うようになってからでした。
なぜなら、国歌、校歌を歌ってはいけないんです。
エホバの証人では「偶像崇拝」が禁じられていますから。

ただ、校歌を歌っていけない、というのは正確ではなく、実際には「エホバの教えに従って、あなたも納得したから、歌わないのはあなたの意思ですよね?」と常に確認させられます。
だから、「無理やり命令されているのではない」という論理です。
……ちょっとブラック企業みたいですね(笑)。

入学式の時にはもう、先生に「証言」――聖書の教えに従ってできないということを伝えること――をしないといけませんでした。
伴奏が流れても、起立もせず、座ったまま歌わず。
周りの生徒は、具合が悪いのかな、程度にしか思ってなかったと思いますけど。

争うことも禁止なので、もちろん運動会も参加しません。
誕生を祝うことも禁じられていますし、異教の行事への参加も禁止されているので、ひな祭りや七夕やなどの季節のパーティ、誕生会も不参加です。
クリスマスもキリストの誕生日のお祝いなのでできません。

入信するのはこんな人

入信し洗礼――バプテスマといいます――を受けた人には、厭世的で、世の中が嫌になってしまった人が多い。
エホバの証人の世界は、争いや政治もない、キレイな世界に見えますから。

エホバの教えを知っている自分たちが賢くて、反対している人は教えを知らない可哀想な人たちだと思っている。
だから善意で勧誘するわけですけれど、熱心に奉仕活動をするためには、普通には働けません。

正社員として働いてしまうと活動、奉仕の時間がとれないので、就職しない人が多かったです。
だから、パートやアルバイトで生活費をまかなっています。
奉仕は時間を報告しなければいけなくて、長く奉仕をしている人には特権が与えられます。
奉仕は平日にもあるので、正社員には難しいんです。

私は、高校の時に母に、「本当は全部嫌だったー!」と打ち明け、集会や奉仕などの活動にも行かなくなり、卒業後に正社員として就職しました。
就職したことで、エホバの証人から離れたと兄弟姉妹にも認識されたんです。

その時には、「この世が嫌になったらいつでも戻ってきて良いんだよ」という手紙をもらいました。

漫画のことは内緒ですけれど、今も母と連絡はとりますよ。
時々連絡が来て、「聖書にはこんないい話があるよ」と紹介してきたり。
ありがとう、とは言いますし、気遣いへの感謝はありますけど、その話を読むことは少ないですね(苦笑)。
いしいさや

[出典:「エホバの証人」元信者女性が自分の体験を漫画にした理由(いしいさや)現代ビジネス(講談社 > http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54011 ]

親が信仰を持っていると、子どもにも押しつけることは多々あるでしょう。
本人は「良かれ」と思っているわけですから。
しかし、子どもは別人格だということを忘れないでほしいなと思います。

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