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「児童虐待」が日本からなくならない理由と対策

      2018/07/10

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子どもの虐待死のニュースを聞くたびに、胸が痛くなります。
なぜ児童虐待はなくならないのでしょうか?

日本から「児童虐待」が絶対なくならない理由といま必要な10の対策

結愛ちゃんと家族が求めていたもの 2018.06.15
井戸 まさえ

児童虐待はなぜ解決しないのか

東京都目黒区で虐待を受けたとされる船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5)が3月に死亡した事件を受け、東京都の小池知事は6月8日、都内の児童相談所の体制強化を指示。
具体的には都内11ヵ所にある児童相談所の児童福祉司、児童心理司や一時保護所の職員の人数を増やし体制を強化すること、また、東京都が警視庁と共有する虐待情報の範囲を広げる方向で、連携を強化するとの方針を示した。
小池知事だけではなく、国民民主党の玉木雄一郎共同代表は以下の5点を【必要な対応策】として明示している。

1. 児童相談所の人的拡充と機能強化
2. 親権の制限をより容易に
3. 児童相談所と警察の全件情報共有
4. 里親や特別養子縁組の支援
5. 児童養護施設やファミリーホームなど、一時保護施設の拡充

読んで考え込む。
これらは虐待事案が起る度に言われてきたことだからである。

問題は、なぜ今また同じことを言わなければならないか、政治の側の対応の遅滞にある。
一方で長年、子どもたちへの虐待や暴力が行き交う現場で活動している筆者としては、この内容では何年やっても虐待事案は止まないだろうとも思う。
つまり虐待現場は政治の想像を越えるもので、その認識の乖離こそ抜本的な解決策に至らない主因であるとも実感する。

公的機関をさける虐待親たち

まず、虐待家庭のほとんどは公的機関を「敵」だと思っているということを認識しなければならない。
実際に今回の船戸容疑者も「児童相談所がうるさかった」と香川県から東京とへの引っ越しの理由のひとつになったことを示唆している。

行政の目も手も入らない死角で、虐待は深刻化し、死に至る悲劇を生むのである。
ただし、当事者たちは最初から行政を敵視しているわけではない。
むしろ助けを求めて市役所や区役所に何度も足を運び、窮状を訴えているケースが多い。

そこで彼らが経験するのは「たらい回し」である。
あちこちの窓口に行かされては何度も同じ話をさせられたあげく、上から目線の言葉を浴びせられ、望む支援は拒絶される。まるで「厄介者」扱い。
「人としての尊厳を傷つけられる」「二度と味わいたくない」屈辱の時間なのだ。

もちろん行政や福祉の現場で働く人々の多くは、相談者の状況を改善しようと努力しようとしていることも重々知っている。
しかし、それはあくまで法律や条例、過去の運用等に照らして一定の基準をクリアした、言わば「一次予選」を通過した人たち。
最も助けを必要としている人々はその支援の網からも外れる(無戸籍者はその典型的な事例である)。

危機を目前とした人々でも「助けを求めること」は恥ずかしいことだという意識がある。
それでも勇気を出して役所に出向いたにも関わらず、冷笑され、結局は支援も受けられないとなったならば、その絶望は深い不信感になる。

彼らが二度と行政とは関わりたくないと思うのも無理はないのである。
そうした中で事態が深刻化するのだ。

父親が耐えられなかったこと

「ママ、もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんからきょうよりか もっとあしたからは できるようにするから。
もうおねがいゆるして ゆるしてください。
おねがいします。ほんとうにもうおなじことはしません」

結愛ちゃんが残したメモは衝撃をもって受けとめられた。
「きょうよりか もっと あしたからは」……就学前の子どもが書いた内容としては切なすぎる。

しかし船戸容疑者夫妻はなぜこれほどまで執拗に結愛ちゃんに字を教え、勉強させようとしたのか。
児童虐待に詳しいルポライターの杉山春氏は以下のように指摘をしている。

「結愛ちゃんが書いた反省文を読むと、家族から強いコントロールを受けていたと感じます。
社会的な力を失った親が、家族の中でも最も弱い者を標的にするという家族病理が現れたように思います。

父親は、香川では虐待で通報され、書類送検されています。
逮捕当時、無職でした。

そうした状況は、父親にとって、耐えられないほどのマイナス評価だったのではないかと想像します。
この家族はそうした評価を下された場所から逃げ出したようにも見えます」
(AERA.dot「結愛ちゃん虐待死「ひどい親」と批判しても事件は減らない 「評価」に追い詰められる親たち」)

連れ子がいる女性と再婚することは今ではそう珍しい話ではない。
婚姻は人生を新たに出発するという意味ではリセットである。
良き父、良き母としての評価は、子どもの振る舞いにかかっている。

これは船戸容疑者だけでなく、たとえばお受験に夢中になる親の中にも垣間見える場合がある。
つまり世間の評価と自分の位置に著しい相違を見た場合、それを否定するために子どもを使う。
注目すべきはそれが「学力」という点だったということだ。

それはこの夫婦がコミュニティから抜け出てしまうきっかけになったものなのかもしれない。
だからこそ、年齢にそぐわない度を越した「しつけ」を行い、それができないと謝らせる。
「親」としての威厳が、彼にとっては最後に残ったプライドを唯一満たすものだったかのように。

欠損した「親」という役割を演じること

結愛ちゃんと船戸雄大容疑者との関係を考える時、昨年12月、拙著『無戸籍の日本人』の文庫化に伴う対談を収めるために行なった是枝裕和監督との対談内容が思い出される。
文庫化の中には収められなかった『海街diary』に関してのやりとりである。

『海街diary』は脚本等全て手がける是枝作品には珍しく、吉田秋生の漫画を原作とした作品である。
綾瀬はるか、広瀬すず等、人気女優が登場する映画としても注目されたが、実は是枝監督はこの作品で「家族の欠損と、欠損した役割を補うよう変化して行く個人を描きたかったのだ」と言った。

「欠損した役割」とは何か。
『海街diary』の姉妹で言えば、父もいなくなり、母も家を出た後、長女が母の役割を担い、一家の仕切り役となる。
また末っ子として甘えて来た三女は、父の再々婚相手との間に生まれた四女が同居することで「姉」を演じるようになる。

四女は異母妹である。
通常の物語であれば「シンデレラ」のように確執が起るはずだが、『海街diary』の登場人物はそれぞれの「役割」を当たり前に受け入れて行く。

そこに衝突や葛藤がない。
是枝監督はそれを「豊かだと感じた」と言う。

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結愛ちゃんの養育環境について欠損した「父」という役割を船戸雄大容疑者は補おうとしたのであろうか。
母である船戸優里容疑者はそれまでのつらい記憶を封印して、欠損を埋めた新しい「家族」として再生して行くことを願ったのかもしれない。
「母」として空白となっている結愛ちゃんの「父」、家族の欠損を埋めることがまるで役割のように。

その気持ちは、子連れ再婚の経験者として想像に難くない。
しかし、期待された役割を自分の思い描いたようには果たすことができないと知ったとき、どうしたらよいのであろうか。

是枝監督は、自身の体験として、父が死に、自分に子どもができ「父」のポジション、役割を自分が担うことでしか、家族の中での自分の立ち位置が、役割が先へ進まなくなったとも吐露している。
自分の中に全く父性なんてないと思っていたが、子どもが生まれたらそんなこと言ってる場合じゃなくなり、父性があるなしの問題ではなく「そう振る舞わないといけなくなる」。

別に自分の中の父性を探さなくても、子に手を引っ張られれば出てくるものだと。
それは「血縁」があるから、あると信じているから、なのだろうか。

血がつながらない子どもと自他ともに自覚し、それでも「父」として育てる葛藤。
手を引っ張られても出てこなかったならば「父」としての振る舞いを単純化し先鋭化させて表さねばならない。
それが暴力、虐待として暴走したとしても。

妻であり、母である船戸優里被告も、彼の葛藤に寄り添ったとは言えないだろう。
前述の杉山氏の指摘通り、「父」として否定されることへの反証は小さな子どもを傷つけ、謝罪や懇願を得ることで得られないものだったのかと思うと胸が痛む。

家族と社会との接点は「仕事・職場」

結愛ちゃんとこの家族を救うために何ができたのであろうか。
あらためて考える。
政治の現場で出る施策に欠けているのは「雇用」という視点である。

報道でもある通り、船戸雄大容疑者は以前は仕事ぶりも認められ、退職時には慰留される人材でもあった。
しかし、事件前後は失業中であった。

是枝監督の最新作『万引き家族』でも描かれたように、行政ともつながりたがらない複雑で深刻な問題を抱えた家族と社会との接点は「仕事」であり「職場」である。
必然的にそれぞれが抱えた「事情」は見え隠れすると同時に、何より経済的な自立は親自身の自己肯定にもつながる。

小さな子どもを抱えた家族が暮らしていくに十分な収入を仕事から得ていくことはとても大事であると思うし、ある程度の将来見通しが得られるか否かで、子育てに向き合う上での精神的な余裕は全く違う。
雇用のマッチングは難しい。
しかし、児童手当や就学費援助といった子育て支援策に留まるのではなく、雇用の観点からも子育て中の失業家庭等についてのインセンティブを持たせる他の雇用施策は打てないものだろうか。

船戸雄大容疑者が香川県からの引っ越し先に東京都を選んだのは、東京で大学生活を送っていて土地勘もあったという報道がなされていた。
東京に行けばなんとかなると思っていたかもしれない。
しかし、自分の不遇は改善されず、職もなく、明日が見えない暮らしを続けることは、理不尽だと思っていたに違いない。

5点の追加対応策

こうしたことを踏まえながら、私は玉木国民民主党共同代表の5点に加えてさらに5点を提案したい。

6. 役所の窓口の対応に対して対抗できる知見を持った民間団体との連携
7. 子どもを持つ家庭の失業対策
8. 地方自治体が独自で施策を行なうことを国や都道府県が妨げないこと

実は、地方自治体が独自判断で相談者を救おうと思っても、国や都道府県に確認を取った段階で「NO」となるケースがあるのだ。
例えば現在筆者が関わる荒川区に在住する7月で50歳になる無戸籍者のケースはその典型でもある。
先般NHKの「おはよう日本」でその姿が放映されたので見た方もいるであろう。

両親が出生届を出さないまま死亡し、49歳に至るまで無戸籍のまま、建設現場等で働きながら生き延びてきた男性に対して、当初相談に行った足立区では区内に空きがなく荒川区の施設を紹介し、男性はそこに住むこととなった。
しかし、荒川区は住民であることを認識しているにもかかわらず男性を住民登録しない。
マイナンバーカードが導入され、番号の提示がなければアルバイトさえ難しい現状を踏まえ、住民登録を望む当事者に対して、総務省の回答や東京都が示す問答集にはそうした手続きを可としていないというのが理由である。

総務省に聞けば、区は独自判断して住民登録をしてもなんら違法ではない、と言う。
しかし荒川区はそれが明文化されて示されない限り、独自で判断はできないと言う。

総務省は明文化するまでもなく、地方分権一括法が成立以来「通知」は単なる指導的意味があるだけで、あくまで判断は自治体。
そもそも法律にそう明記してあると言い張る。

だが、現実には国の通知や、東京都が定めた施行マニュアルを飛び越えて、福祉現場の担い手である地方自治体が動くことはなかなか難しい。
現場の人がいくら手助けをしたくとも、管理職が揃った会議では「前例がない」と言ったことで、支援は見送られるのだ。

そして死亡事故が起ってはじめてこうしたことも可視化される。
逆に、事前に、未然に最悪の事態が回避されていれば、死者が出ていなければ「大したことはない」と問題は見て見ぬ振りをされ、解決策も示されない。
つまりは解決したかったら、「死ね」ということとも取れる。

9. 「個別ケース」こそ大事。この困窮者ひとりをいかに助けられるかを考える

役所は「原則」と「例外」を持ち出し、この人だけの「個別ケース」で対応はできないと言う。
しかし、実は「個別ケース」は問題の典型であり、それを解決できれば多くの人が救われることは多い。

10. 「家族」の再生のための周辺縁者をつくる

行政の目から「今日生きるため」に逃れようとする家族。
彼らには「役職」で接する以外の、ある意味濃厚な人間関係を築ける「家族」的存在が必要だったりする。

支援をしていてつくづく感じることだが、相談者と「遠い親戚」的な関係を築けたら、その支援は成功である。
つまりは「本当に困った時に至る一歩手前で相談できる」という関係だ。

「家族」の再生は夫婦や親子といった成員だけで可能となるわけではないことを見て来た。
ちょっとした距離を持った周辺縁者がいることがポイントでもある。

逆に言えばその周辺縁者がいないと、家族の再生はまず成功しない。
縁者は血縁には閉じていない。
ある意味誰でもやろうと思えば関われるとも言える。

つまりはそれこそ「社会」。
結愛ちゃんと家族が求めていたものかもしれない。

[出典:日本から「児童虐待」が絶対なくならない理由といま必要な10の対策(井戸 まさえ)現代ビジネス(講談社 > http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56079 ]

昔はおじいちゃんおばあちゃんが側にいて協力してもらえましたが、今は難しい世の中ですね。
簡単に人を信じる事が難しいのに、助けてほしいと言えないのが日本の現状です。

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