伊勢・油屋騒動!!歌舞伎になった江戸時代のドロドロ愛憎劇

スキャンダル日本史！歌舞伎になったドロドロ愛憎劇

女に入れ込んだ男が起こした事件

巨額の横領事件を起こし、チリ人妻に11億円貢いだ男や、タイで豪遊するため年金24億円を横領した男…
女に入れ込んだ男には、いつの時代にも悲しい結末が待っていますが、伊勢で起きた「油屋騒動」も、とある男と女の恋のもつれが引き起こした悲劇でした。

伊勢・油屋騒動とは！？

1976年、伊勢にあった遊郭「油屋」に、一人の男が訪れました。
（伊勢とは、現代の三重県、「油屋」は、江戸時代 伊勢古市（ふるいち）にあった遊郭の屋号（明治以降は旅館として営業）。）

男の名は「孫福 斎（まごふく・いつき）」と言い、そんな彼についた遊女が「お紺」でした。
美しいお紺を前に、孫福は一目惚れ状態だったのですが、当のお紺は何故か上の空でした。

実は、お紺が想いを寄せる男性が、先ほど遊郭にやってきていました。
その話を聞いたお紺は、目の前の客どころではなくなっていたのです。

するとお紺は、ありえない行動にでます。
お紺は「ちょっと失礼します」と言って席を立しました。

いなくなったお紺の後を追ってみる孫福。
すると、なんと客である孫福を放ったらかして、お紺は想いを寄せる男性の元に来ていたのです。

こんなことをされたら、男として黙っていられません。
ということで、ここからがスキャンダルのスタートです。

孫福が取った仰天の行動とは！？

呆然と立ち尽くす孫福。
側にいた別の遊女が「追っても無駄よ、お紺はあの方に夢中なんですから」と彼に説明します。

これに孫福はブチ切れてしまいました。
「バカにしやがって！」

怒りで錯乱状態になった孫福。
脇差を抜き、そばにいた遊女や客に、片っ端から斬りかかりました。

この騒動で、3人が斬り殺され、6人が負傷してしまいました。
お紺は、命からがら逃げだしましたが、犯人として追われた孫福は、逃げきれないことを悟り自害するという顛末に…。

モテない男がはずみで人を殺してしまった、簡単に言えばそれだけのことでした。
しかしその後、さらに驚くべきことが起こってしまいます。

名もない一般人が起こしたこの事件。
テレビもインターネットもない時代に、わずか10日で日本各地に広がっていたのでした。

油屋騒動が瞬く間に広まった理由とは！？

名もない一般人が起こした事件が、なぜ瞬く間に日本全体に広がったのでしょう。
この事件が、もし別の場所で起きていたら、こんなに早く当時の日本で広まっていたかどうかはわかりません。

なにしろ場所は「伊勢」で、当時の伊勢は、「お伊勢参り」で日本中からたくさんの人が来て、そしてまた帰っていきました。
しかも、伊勢と大坂は非常に近いです。

この話を基にした歌舞伎がすぐに作られ、それが「伊勢音頭恋寝刃」です。

[出典:油屋騒動　Wikipedia　https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%B9%E5%B1%8B%E9%A8%92%E5%8B%95]

当時、庶民の間では、「お蔭参り」と呼ばれる伊勢神宮への団体旅行が大流行していました。
日本全国の人口が3000万人という江戸時代にあって、伊勢を訪れた旅人は年間300万人とも言われています。
その口コミの効果は、計り知れないものがあったのです。
[出典:2017年7月23日（日）放送「林先生が驚く初耳学！」]