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「新幹線殺傷・秋葉原通り魔・ブロガー刺殺」3つの理不尽な殺人に共通するもの

      2018/07/19

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どれも理不尽な事件だった「新幹線殺傷」「秋葉原通り魔」「ブロガー刺殺」。
これらの事件の共通点があると言います。

「新幹線殺傷」「秋葉原通り魔」「ブロガー刺殺」3つの事件の共通点

人を刺さないための「読解力」とは… 2018.07.02
伊藤 氏貴 明治大学准教授

理不尽なテロリズム

6月の東海道新幹線は呪われてでもいるというのだろうか。
しかもどちらも東京発上り、新横浜―小田原間でのことである。

3年前には71歳の男が自らかぶったガソリンに火を着け、近くにいた51歳の女性が巻き添えになり命を落とした。
これまでの人生の平穏無事のお礼参りに伊勢に参拝するところだったという。
この度は、22歳の男が、隣席の女性たちに刃物で襲いかかり、止めに入った38歳の男性が犠牲になった。

もちろんどんな殺人も許されるものではないが、とりわけこの類のテロリズムがなんともやりきれないのは、ここにはなんの合理性もないように見えるからである。
殺された側にはそもそもなんの落ち度もないばかりでなく、殺す方にもなんら得はない。

怨恨でも、物取りでも、性犯罪でもなく、政治や宗教の思想的背景もない。
殺された者とその遺族たちは、「なぜ自分/うちの家族が」という問を抱えたまま宙吊りにされる。
理不尽としか言いようがないが、理不尽の怖ろしさは、なにより対策の立てようがないということである。

しかし、もしそうだとすれば、われわれはいつか降りかかるかもしれないこの災厄に、つねに怯えつづけていなければならないということになる。
家族や自分がこうしたテロリズム巻き込まれはしまいか、家族が、あるいは自分自身が突然こうしたテロリストに変貌しはしまいか、と。

ある日突然、なんらかのかたちでこうした事件の関係者になってしまうことは、誰にでもありうる。
しかし、これはあくまで不慮不可避の事故ではなく、事件である。
しかも事前に凶器を購入するなど、どれもそれなりに周到に計画されていた。

ならばやはり、未然にその過程のどこかで防ぐことはできたのではないか。
起きてしまったときにどうやって身を守るかも大事かもしれないが、それよりも、後発事件を起こさないように、なにかできることはないかを考える方が重要にして有益ではないのか。

たとえばわれわれ一人ひとりが武装して、事が起きたときにはためらわず犯人を一個の獣として駆逐するのが前者ならば、事件に至るまでの犯人の動機の形成を探り、同じようなプロセスが生じないようにするのが後者である。
しかし果たして、この理不尽な犯罪に、われわれが理解できる余地などあるのだろうか。
知るべきは彼らの内面、彼らの動機である。

二人のつぶやき

まず、以下のつぶやきを先入観なしで読んでもらいたい。
ここから、どのような性格、どのような内面が読み取れるだろうか。

1 自分ひとり全く変わっているような、不安と恐怖に襲われるばかりなのです。自分は隣人と、ほとんど会話が出来ません
2 俺以外にこんな奴はいない だから誰にも理解されない

3 私は自身の容貌の可笑しさも知っている。小さい時から、醜い醜いと言われて育った。不親切で、気がきかない。それに、下品にがぶがぶ大酒を呑む。女に好かれる筈は無いのである。私には、それをまた、少し自慢にしているようなところも在るのである
4 顔以外にも女性に嫌われる要素がたくさんありますから、どんなに欲しくても彼女はできません

5 好かれる時期が、誰にだって一度ある。不潔な時期だ
6 人生にはモテ期が3度あるらしいけど、俺のモテ期は小4、小5、小6だったみたいだ

7 友はみな、僕からはなれ
8 やはり、何もかもが私の敵です/味方は一人もいない

9 学校で作る私の綴方も、ことごとく出鱈目であったと言ってよい。私は自身を神 妙ないい子にして綴るように努力した。そうすれば、いつも皆にかっさいされるのである。剽窃さえした。当時傑作として先生たちに言いはやされた「弟の影絵」というのは、なにか少年雑誌の一等当選作だったのを私がそっくり盗んだものである。先生は私にそれを毛筆で清書させ、展覧会に出させた。あとでひとりの生徒にそれを発見され、私はその生徒の死ぬ事を祈った
10 親が書いた作文で賞を取り、親が書いた絵で賞を取り、親に無理矢理勉強させられてたから勉強は完璧 俺の力じゃないけど

11 そこで考え出したのは、道化でした
12 いい人を演じるのには慣れてる みんな簡単に騙される 大人には評判の良い子だった大人には

13 だいいちに私は私の老母がきらいである。生みの親であるが好きになれない
14 もし一人だけ殺していいなら母親を もう一人追加していいなら父親を

15 刺す。そうも思った
16 死ねよ

17 生まれて、すみません
18 否定されることで自分を維持しているのだと思います/つまり、悪いのは俺なんだね

このつぶやきたちは二人の人間から漏れたものである。
1と2、3と4……と奇数番―偶数番とでペアになるよう、内容が似通ったものを集めてきた。

17で気づかれた方も多いと思うが、これは太宰治のものとされる有名なことばである。
奇数番は皆、彼の作品のあちこちから引っ張って来たものだ。
ちょうど70年前の6月に、女性と一緒に入水するという不穏な死を遂げたが、ただしこれは合意の上の心中であり、理不尽なテロリズムとは異なる。

一方、偶数番は、無差別殺人者のことばである。
ちょうど10年前の6月に、秋葉原で大量殺傷事件を起こした犯人が、事件までの間に掲示板に書き込んだとされることばから拾ってきた。

もちろん、片や小説からの引用で、片や自身を吐露する掲示板からという差はあるが、それでも両者の間の思考にかなり相通ずるものがあるのは明らかだろう。
となると問題は、なぜ片方は「刺す」と言いつつ刺さなかったのに対し(これは自作を芥川賞で落とした川端康成に向けたものだった)、「死ねよ」と言った方はほんとうに大勢の人を無差別に殺めるに至ったのか、ということである。

つぶやく者の気持ちを読む

17、18からわかるとおり、両者ともに、非常に自己否定的である。
(ただし、17は実のところ太宰自身が考えたことばでなく、9にあるような一つの剽窃だったのだが、太宰の精神を表わすものとして、自他ともに認めるところであったということは言える)。
しかし、その否定が、偶数番の方は自殺でなく、他殺へと向かった。

両者ともに1、2のようなコミュニケーション不全の状態にあり、3、4のような醜貌恐怖に囚われ、7、8のような孤独感に苛まれていた。
5、6のように、一度でもモテていたという記憶があればなおさら孤独は深まっただろう。

しかし、二人とも、孤高を貫く、あるいは孤独を愛するタイプではなかった。
人一倍、他人に好かれたいと思うタイプだった。
だからこそ、剽窃してでも賞をとり、また演技することで他人の気を惹こうとした。

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どちらも子どもの頃の成績はよかった。
太宰と犯人とは奇しくも同郷にして同窓(旧制青森中学―青森高校)だが、それはまったくの偶然としても、県内随一の学校で、つまりは一つの正解のある問に答える能力は高かったということになる。

しかし、そこまでの道のりで、親のスパルタ教育が力を及ぼしていたところも大きく、犯人は14で親への殺意を露わにしている。
太宰もまた、諸々の理由で15にあるような親への嫌悪を示す。

しかし、ここから二人の人生が分かれるのは、11、12にあるような演技の種類の差にあったように思われる。
太宰は「道化」という他人より下の役、犯人は「いい人」という他人より上の役柄を選択した。

『人間失格』などを読めばわかるとおり、太宰はあえて剽軽なこと、みっともないことをして周囲を笑わせようとした。
少なくともそうしている間は孤独を解消できているように思えた。

一方、犯人は「いい人」を演じようとする。
成績において優等生で、人格的にも「いい人」。
これは誰にとっても維持するのが難しい「像」だろう。

非常な努力が必要とされるが、しかも、「いい人」が実はそうではなかった、ということが露見したときの周囲の反応はいつでも非常に厳しい。
秋葉原の犯人の場合は、いったん綻びが出てからは、積極的に自分自身で破壊しようとしたように見える。

そもそも犯人は選択を誤った。
成績もよく人格的に優れた人間など、仰ぎ見られることはあっても、なかなか近寄りがたい人物だ。
むしろ警戒さえされるかもしれない。

孤独やコミュニケーション不全を解消するには向かない。
しかも、ちょっと気を抜けばそこから転落し、今度はひどい蔑みのまなざしを向けられる。

太宰のように、成績はよいが、剽軽な人間、という方がよほどバランスのとれた、親しみやすい人物だろう。
とにかくあらゆる面で尊敬されたい、という自身の無理な欲望を優先させた選択をするという時点で、犯人は他人の心を読めない人物だったと言うことができる。
他者から注目されたいという願いを人一倍抱きながらも、他者がどう考えるか、という想像力の働かない人間だった。

「読解力」の訓練

実際、拾い集めてきたことばが載っていたのは掲示板なのであり、ブログでもTwitterでもない。
つまり、多くの人が集い、自由にことばを交わすべき場だったのである。

その掲示板には、はじめのうちこそ、犯人のネガティヴな発言に誠実に反応し、慰めのことばをかける者も少なからずいた。
しかし、犯人の尖ったことばは、他者の関心を引くどころか、呆れられ、捨てられ、最後には犯人のことばだけが蜿蜒と連ねられる個人のブログの様相を呈していた。

要は、2で自ら嘆いたように、「誰にも理解されない」ことを、ここで犯人は追認することになったのである。
そして犯行予告をつぶやき、誰にも相手にされないまま秋葉原でことに及んだ。

報道されたとおり、親や会社の人間からの処遇に対する恨みが募っていたのなら、なぜ秋葉原を選んだのか。
根底には、自分のことばが理解されないことへの苛立ちがあった。

しかし、自分のことばを他人に伝えるためには、それに先立って他人がどう考えるかを想像する力がなくてはならない。
それが太宰にはあって犯人に欠けていたものだ。

この度の新幹線の事件は、秋葉原と同じ6月8日に起きている。
こちらの容疑者もまた、成績はよく、しかし父親の証言によれば、「幼いころから、人の言うことを言葉通りにしか理解できなかった。変わった子だった」という。

父親にすら「理解されない」哀れな子だったということになるが、本人の側に欠けていたのは「人の言うこと」の「言葉」の裏にある意図を読む能力である。
子ども時代のテストで高得点をとれたとしても、他人の気持ちを読む「読解力」がなかったのだ。

たしかに、こうした力には差があり、もしかするとそれは生まれつきの脳の問題がいくぶん関わっているのかもしれない。
しかし、そのこと自体が犯罪にまで直結するのではないだろう。

他のさまざまな能力と同様に、訓練によって伸ばすことができるはずである。
たとえば、タレントの栗原類は、子どものときからの同様の苦労を、母親による「読解力」の訓練によって克服してきたと述べている。

「読書で筆者の伝えたいことを読み取り、描かれている世界を細かく想像する。ドラマや映画を見て気になる動きや表情を一時停止し、“この表情は何を表しているか”を考え、母の説明を聞いて理解し覚える。日常的にこんな訓練を繰り返しているのですが、コミュニケーション能力の向上はもちろん、俳優の仕事にもおおいに役立っています」

こうした「読解力」は絵本、小説等で鍛えることができるものだ。
対面のコミュニケーションに関しては、ドラマや映画が役に立つだろうが、SNSでは表情や語調を削ぎ落とした文字によるコミュニケーションの割合が最も大きい。
すぐに炎上騒ぎになるのは、文字の「読解力」の訓練が足りないのかもしれない。

そしてカリスマブロガーも刺された

こうした訓練は誰にとっても必要だ。
自分は人を刺そうと思ったことなどないから関係ない、とは言えない。

仮に人を刺そうと思ったことが人生で一度もない、という幸せな人間がいたとしても、自分は関係ない、と言い切ってしまうなら、人を刺さずにいられない人間の気持ちを「読む」力を不要だとして放棄することになるからである。
自分は刺さない側だと自信を持てるとしても、刺される側にならないためには、刺す者の気持ちが読めた方がよいだろう。

この原稿を書いているまさにさなかに、ネット上のことばのやりとりが発端となって、というか、それだけが原因で相手を刺殺したという事件の報が入ってきた。
お互いが相手のことばの裏にある気持ちを「読む」ことができないのであれば、社会からこれまでのような惨劇を拭い去ることはできない。

私は、刺す側と刺される側とに生まれつきの根本的な差があるとは思わない。
自分のことばが「読んで」もらえない、という思いが秋葉原事件の引き金を引いたように、「読解力」が弱いゆえに他者に伝わることばを紡ぎえず、「誰にも理解されない」と思うときに、誰しも人は刺す側にまわりうる。

「読む」ことと「読まれる」こととは表裏一体である。
刺す側にまわらないため、また自分の周囲に刺す者を生み出さないために、誰しもがつけるべきなのが、相手のことばを深く読む「読解力」である。

しかし一方で、祖父母からは切り離され、親は忙しく、しかも学校現場からは文学が大幅に削られようとしている。
こうした状況下で、他者に対する「読解力」をどう養っていけばいいのかは、喫緊かつ大きな課題となるだろう。

[出典:「新幹線殺傷」「秋葉原通り魔」「ブロガー刺殺」3つの事件の共通点(伊藤 氏貴)現代ビジネス(講談社 > http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56307 ]

現代のようなストレス社会では、いつ自分が加害者になったり被害者になるかわかりません。
常に危機意識を持って生活する必要があると思います。

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