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【新刊】『隙自語の時代――ネットスラングはなぜ他人を裁き、共同体を語るのか』/小谷地市朗【Kindle出版】

✨️Kindle出版
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小谷地市朗、初の社会評論。

これまでモキュメンタリーホラー、心理サスペンス、パロディと多彩なジャンルを渡り歩いてきた小谷地市朗が、今回は社会評論という新しい領域に踏み込んだ。テーマはネットスラング。「隙自語」「お気持ち」「承認欲求」「老害」——私たちが毎日誰かに貼っている、あの短いラベルだ。

本書の核心命題

タイムラインを開いて10秒。長い投稿を見て「隙自語」と思い、怒りの連投を見て「お気持ち」と分類し、年配者の説教に「老害」を貼り、自撮り付きの報告を「承認欲求」と片づける。カップ麺を待つ間に、12人は処刑できる計算だ。

そうやって使うラベル。一見、便利で軽くて、だいたい通じる。だがそのラベルを投げるたびに、私たちは自分たちの価値観をかなり雄弁にしゃべっている。何を不快に思い、何を嫌い、どんな語りを許さないか——ラベルの裏で、共同体がまるごと自分語りをしているのだ。

相手の話を遮って自分の話を差し込むことを「隙自語」と呼ぶなら、ラベルを投げるその行為こそ、共同体による巨大な隙自語ではないのか。

これが本書の結論である。

構成

約3万字。町田康寄りの軽やかな文体で、ぐいぐい読ませる。社会評論にありがちな学術的な硬さは排して、読者の肩を叩くような距離感で書かれている。

  • 第一章 三文字の判決 — 深夜の廊下で子育ての悩みを投稿した女性のリプライ欄から始まる
  • 第二章 自分の話をするな、という暴力 — 介護離職者がコメント欄で切られる話
  • 第三章 なぜラベルはやめられないのか — 先週は機能したラベルが今週は武器になるDiscordサーバー
  • 第四章 短い言葉に道徳が宿る — ファンコミュニティで同じ自己開示が「愛」にも「隙自語」にもなる不思議
  • 第五章 ネットスラング自体が隙自語である — 本書の中心命題
  • 第六章 ラベルが住みつく内面 — 「自分語りすみません」と先回りする自己検閲のこと
  • 第七章 では私たちはどう話せばいいのか — 実践的な5つの提案
  • 終章 あなたは誰の代わりに語っているのか

特別章の仕掛け

終章のあとに、ちょっと変わった章が入っている。タイトルは「ある架空の反論——HN:IQ137の仕掛人

本書に噛みついてくる架空の痛い人物の反論文を、そのまま掲載した特殊な章だ。IQ自慢、収益自慢、コンサル自慢を全盛りにした「仕掛人」が、論理で殴っているつもりで著者に論破を試みる。だが読み進めるうちに、この人物の感情がどんどん漏れ出してくる。成功者への嫉妬呼ばわり、対話拒否宣言、そして最後は自分の月額980円の有料noteの宣伝まで挟み込んでくる。

読者はやがて、この反論者自身が本書の命題を全身で体現していることに気づく。 本書が7章かけて論じてきた「ネットスラング自体が隙自語である」という命題を、この反論者は反論のつもりで完璧に実演してしまっているのだ。

この仕掛けがあることで、本書は単なる社会評論ではなく、一種のメタ構造を持つ作品になった。

巻末コラムと参考文献

巻末には心理学の知見から本書の論点を整理するコラムを収録。ラベリング理論(ベッカー)、内集団バイアス(タジフェル)、認知的倹約家モデル(フィスク&テイラー)、道徳基盤理論(ハイト)、沈黙の螺旋(ノエル=ノイマン)、フィルターバブル(パリサー)、エコーチェンバー(サンスティーン)、集合的ナルシシズムなど、関連する社会心理学・認知心理学の概念を体系的に整理している。

参考文献も国内外の書籍・論文を網羅。本書を入口にさらに思考を深めたい読者にとっても使える仕様になっている。

こんな人に読んでほしい

  • ネットスラングを日常的に使っている人
  • SNSでのやりとりに少し疲れている人
  • 「自分語りすみません」と前置きしてから書くクセがついている人
  • 誰かにラベルを貼られて傷ついた経験がある人
  • 最近、他人を三文字で処刑した記憶がある人(全員該当)

小谷地市朗の既刊との関係

これまで小谷地市朗はホラー・心理サスペンスの分野で読者を集めてきた。『美影町についての一切の記録』『波紋は嘘をつかない』『大人のための哀愁算数』。どの作品にも共通するのは、読者を「観察する側」のつもりにさせておいて、最後に「いや、お前も同じ側の人間だろう」と足元をすくう構造だ。

本書はその手つきを社会評論に移植した作品と言える。ラベルを投げている側の一人として読者を巻き込み、巻き込んだまま最後まで連れていく。読み終わったあと、次にラベルを投げようとする瞬間、ほんの一秒、手が止まる。その一秒こそ本書が狙っているものだ。

書誌情報

項目内容
書名隙自語の時代――ネットスラングはなぜ他人を裁き、共同体を語るのか
著者小谷地市朗
編集ササハラセイスケ
発行セイスケクリエイティブラボ
価格Kindle版 ¥99
形式Kindle電子書籍(横書き)
文字数約3万字

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次にラベルを投げる瞬間、一秒だけ手を止めてみてほしい。その一秒で見えるものがある。

(セイスケクリエイティブラボ)

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