★三笑亭可楽(八代目)石返し

三笑亭可楽(八代目)

あらすじ

少しばかり頭が薄明状態の松公は、夜なきそば屋のせがれ。
親父の屋台の後を、いつもヘラヘラして付いて回っているだけだが、今夜は親父が、
「疝気(せんき)が起こって商売に出られないから、代わりにおまえがそばを売って来い」と、言い渡す。

そばのこしらえ方や「お寒うございます」というお愛想の言い方を一通りおさらいし、屋台のそば屋はなるたけさびしい場所の方が客が捕まる、火事場の傍だと野次馬が大勢集まっているからもうかりやすいなどといった秘訣を、いちいち教えられた。

「じゃ、お父っつぁん、道具ゥ置いといて火ィつけてまわろうか」

「馬鹿野郎ッ」

頼りないながらも、最後に「そばあうううい」という売り声をなんとか親父が教え込み、松公は商売に出かけた。
さあ、それからが大変。

なかなか「そばあうううい」と出てこないので、暗い所で練習しておけば明るい所でも大丈夫だろうと、立小便の真っ最中の職人にいきなり「(そ)ばあー」とやってケンツクを食わされたり、客が一杯くれと言うのに、明るいとこじゃ売れない、オレのそばが食いたきゃ墓場へ来いとやったりして、相変わらず頭のネジは緩みっぱなし。

そのうちに、馬鹿にさびしい所に出たので、一段と声を張り上げると、片側が石垣、片側がどぶとなっている大きな屋敷の上の方から侍が声を掛けた。

「総仕舞いにしてやるからそばと汁を別々に残らずここに入れろ」と、上から鍋と徳利が下がってきたので、松公喜んで全部入れ、お鍋の宙乗りだ、スチャラかチャンチャンと囃すうちに、そばは屋敷の中に消える。

代金をくれと言うと、石垣に沿って回ると門番の爺がいるから、それにもらえとのこと。
ところがその門番、あそこには人は住んでいない、それは狸で、鍋は金玉。

きさまは化かされたのだからあきらめろ、という。
狸が多分引っ越しそばでもあつらえたんだろうから、そんな代金を人間が払う義理はない、帰れ帰れと、六尺棒で追い立てられ、松公は泣きべそで戻って報告した。

親父は「あすこは番町鍋屋敷という所だ」と、屋台の看板を汁粉屋に書き換え、松公と一緒に現場へ急行。
「しるこォ」と声を張り上げると、案の定呼び止められ、鍋が下がってきたので、親父、そいつに石を入れ

「お待ち遠さま」

侍、引き上げて驚き

「おいっ、この石はなんだッ」

「さっきの石(意趣)返し」

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