【マッドフラッド】私たちには隠されている歴史の真実・第一回~埋まった町、誰もいない街、孤児院の謎~【トリビア雑学・豆知識】

雑学・豆知識

この動画は「マッドフラッド」という陰謀論の一環として、私たちの知る歴史は偽りであり、過去に高度な文明が存在したが何らかの大災害(泥の洪水)によって滅び、その事実は隠蔽されていると主張しています。そして、その遺物である壮大な建築物を、後の時代の人々(19世紀など)が自分たちで建てたと偽っている、というものです。

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この主張に対して、論理的に反論できる点と、一部肯定・補強できる点を整理してみましょう。

反論(論破)できる点

  1. 地球平面説と科学への不信 (00:12~):
    • 主張の要点: 地球は平らであり、回転する球体であるという科学は「悪魔的」な嘘である。この認識が全ての前提となる。
    • 反論: 地球が球体であることは、古代ギリシャ時代から観測(船が水平線に隠れる様子、月食時の地球の影など)によって推測され、大航海時代、そして現代の宇宙開発によって直接的に証明されています。GPS、衛星通信、航空路など、現代文明の多くは地球球体説を前提に機能しています。科学は常に自己批判と検証を繰り返すプロセスであり、特定の科学者を「悪魔的」と断じるのは感情論です。
  2. 電動工具発明以前の「不可能な」建築 (01:16~04:28、04:28~06:41、06:41~08:49、15:18~29:31):
    • 主張の要点: 電動工具(1895年~)やダイナマイト(1867年発明)がない時代に、ピラミッド、巨大水路(エリー運河)、城、星形要塞、凱旋門、ペンシルバニア駅などの巨大で精密な石造建築物を作るのは不可能だった。これらは前文明の遺物である。
    • 反論:
      • 技術の過小評価: 古代・近世の技術を過小評価しています。人力や家畜の力を利用したクレーン、テコ、滑車、傾斜路(ランプ)、コロなどの技術は高度に発達していました。石の切り出しには、銅や青銅の道具だけでなく、より硬い石(ドレライトなど)で叩く、楔を打ち込む(木材を濡らして膨張させる)、研磨剤(砂など)を使うといった方法がありました。
      • 労働力と時間: ピラミッドや万里の長城のような巨大建造物は、数万人規模の労働力と数十年単位の時間をかけて建設されました。動画内で「わずか8年で完成」と驚くエリー運河も、当時の土木技術、組織力、そして多くの労働者(アイルランド移民など)の貢献によって実現可能でした。火薬(黒色火薬)はダイナマイト以前から存在し、発破に使われていました。
      • 設計技術: 星形要塞の幾何学的な設計は、ルネサンス期に発展した測量技術や幾何学の知識(ユークリッド幾何学など)の賜物です。上空から見る必要はなく、地上での測量で設計・建設可能です。その目的は、大砲の射線に対して死角をなくし、効果的な防御を行うための合理的なものでした。
      • 「歴史主義」建築: 19世紀に見られる古典様式やゴシック様式の壮大な建築物(動画内で「歴史主義」と紹介)は、当時の建築家が過去の様式を学び、模倣・発展させたものです。これは美術史・建築史で広く認められている潮流であり、隠蔽ではありません。ペンシルバニア駅のような建築物は、鉄骨構造などの新しい技術と伝統的な石材を組み合わせて作られました。
      • 再現性: 「現代技術でも再現不可能」という主張は誤りです。コストや美的価値観、必要性の問題で現代では同様のものは作られないかもしれませんが、技術的には可能です。
  3. 19世紀の写真に写る「人のいない街」 (11:00~15:18、30:38~32:49):
    • 主張の要点: 19世紀初頭~中頃のサンクトペテルブルク、モスクワ、サンフランシスコなどの写真に人がほとんど写っておらず、街が空っぽに見える。これは人口が少なかったか、何らかの異変があった証拠だ。
    • 反論:
      • 初期写真技術の限界: 當時初期の銀板写真(ダゲレオタイプ)や湿板写真は感光度が非常に低く、露光時間が数秒から数分、時にはそれ以上かかりました。そのため、動いている人物や馬車はブレて写らないか、全く写り込まないことが一般的でした。建築物のような静物を撮るのが主で、意図的に人通りの少ない早朝などに撮影することもあったでしょう。動画内で「ついに人が現れた」ロンドンやパリの写真も、よく見ると一部の人物はブレています。
      • 撮影意図: 建築物自体の記録や都市景観の紹介を目的とした写真では、人物は主題ではありませんでした。
  4. 「埋まった建物」と「泥の道」(32:49~44:48、44:48~51:16):
    • 主張の要点: 世界中の都市で、建物の1階部分が地面に埋まり、窓が地表近くにある。道路は泥だらけ。これは「マッドフラッド」という世界規模の泥の洪水があった証拠だ。
    • 反論:
      • 都市の成長とインフラ整備: 都市が発展する過程で、道路のかさ上げが繰り返し行われることは一般的です。下水道の敷設、路面舗装、洪水対策などのために、徐々に地表面が高くなり、元々の1階が半地下や地下室のようになるのです。これは「マッドフラッド」のような単一の破滅的な出来事ではなく、数十年から数百年かけて進行するプロセスです。特にアメリカのシアトルでは、大火後の再建で大規模な地盤のかさ上げが行われ、「アンダーグラウンド・ツアー」として観光名所にもなっています。
      • 地下室の文化: 昔の建物には、貯蔵、作業場、あるいは安価な住居として地下室や半地下(英語でbasementやcellar)が積極的に作られました。そのための採光窓が地表近くに設けられるのは自然な設計です。
      • 泥の道: 19世紀の多くの都市では、道路舗装が不十分で、雨が降れば泥道になるのは当たり前の光景でした。馬車の往来も泥濘化を促進しました。これは当時のインフラの限界であり、謎の洪水を示すものではありません。
      • 液状化現象: 動画で引用される地震による液状化現象は局地的なものであり、世界規模で同時に発生し、これほど広範囲の建物を均一に数メートル埋めるような現象は考えられません。また、液状化で建物が埋まる場合、多くは傾斜や倒壊を伴いますが、動画内の「埋まった建物」の多くは垂直を保っています。
      • 傾いた塔: ピサの斜塔など、世界各地の傾いた建造物は、地盤の弱さや不同沈下など、それぞれの局所的な地質学的・工学的理由によるものです。
  5. 「孤児産業」と人口リセット (51:16~1:09:25):
    • 主張の要点: 19世紀に膨大な数の孤児がおり、孤児院や「孤児列車」、未熟児保育器の見世物などが存在した。これは「マッドフラッド」で人口が激減した後、新たな住民を供給するための「人口調整」であり、文学作品はそれを正当化するプロパガンダだった。
    • 反論:
      • 19世紀の社会状況: 19世紀は産業革命による都市化、貧富の差の拡大、高い乳幼児死亡率、劣悪な衛生環境、戦争、移民などにより、実際に多くの孤児や捨て子が生まれました。未婚の母への社会的制裁も厳しく、子供を手放さざるを得ない状況がありました。これらは悲劇的な社会問題であり、歴史的に記録されています。「孤児列車」や慈善病院は、そうした子供たちを救済しようとする(必ずしも常に成功したわけではない)試みでした。
      • チャールズ・ディケンズなどの文学: ディケンズの作品などは、当時の過酷な社会状況や貧困、孤児たちの苦境をリアルに描き出し、社会改革を訴えるものでした。これを「プロパガンダ」と断じるのは作品の意図を誤解しています。
      • 未熟児保育器 (インキュベーター): マーティン・クーニーによる未熟児保育器の展示は、当時は画期的だった医療技術を一般に広め、資金を集めるための手段でした(倫理的な問題は現代の視点からは議論の余地がありますが)。これは医療技術の発展史の一幕であり、謎の人口供給とは結びつきません。
      • 人口統計: 19世紀から20世紀にかけて、世界の人口は減少ではなく、むしろ医療の進歩や衛生状態の改善(まだ途上でしたが)により増加傾向にありました。大災害による急激な人口リセットを示す信頼できる人口統計データはありません。

一部肯定・論理の補強ができる点

  1. 歴史への疑問を持つ姿勢 (00:12~、01:16~):
    • 動画の主張: 「公式の歴史」は嘘で塗り固められている。
    • 肯定・補強: 歴史は常に勝者によって書かれる側面があり、また新しい発見や研究によって解釈が変わりうるものです。主流の歴史観に疑問を持ち、多角的に物事を見ようとする姿勢自体は、批判的思考として重要です。ただし、その疑問が陰謀論に飛躍するのではなく、証拠に基づいた検証へと向かうべきです。
  2. 過去の建造物の壮大さへの驚嘆 (随所):
    • 動画の主張: 過去の建造物は現代の我々から見ても驚くほど壮大で精巧だ。
    • 肯定・補強: ピラミッド、ローマ水道、ゴシック様式の大聖堂、19世紀の巨大建築物など、過去の人々が残した建造物のスケール、技術、芸術性には目を見張るものがあります。現代の我々が、当時の限られた道具や動力でこれらを成し遂げたことに畏敬の念を抱くのは自然な感情です。この「驚き」が、過去の技術や社会への探求心を刺激するならば有益です。
  3. 写真が伝える過去の雰囲気 (11:00~):
    • 動画の主張: 古い写真は何か特別な雰囲気を持っている。
    • 肯定・補強: 古い写真、特に19世紀のものは、現代の写真とは異なる独特の雰囲気(コントラスト、粒子感、写っている風景や人物の佇まいなど)を持っています。これらが我々に過去の時代への想像力をかき立て、ノスタルジアやミステリアスな感覚を与えることは確かです。
  4. 「埋まったように見える建物」の存在 (37:05~):
    • 動画の主張: 多くの古い建物が部分的に地面に埋まっているように見える。
    • 肯定・補強: 動画が指摘するように、世界中の古い都市部で、建物の1階部分が現在の地表面より低くなっている例は実際に多く見られます。これは前述の通り、道路のかさ上げや地下室の設計によるものですが、その「見た目の不思議さ」は多くの人が感じるところであり、興味深い都市の観察点と言えます。
  5. 19世紀の社会問題の深刻さ (51:16~):
    • 動画の主張: 19世紀には膨大な孤児がいた。
    • 肯定・補強: 19世紀の社会は、現代から見ると非常に過酷な側面を持っていました。貧困、病気、劣悪な労働条件などにより、多くの子供たちが親を失ったり、捨てられたりしたのは歴史的事実です。その規模の大きさを指摘している点は間違っていません。ただし、その原因の解釈が陰謀論的です。

総括

この動画は、いくつかの興味深い視覚的情報(壮大な建築物、人の少ない古い写真、埋まったように見える建物、孤児の記録など)を提示し、それらに対して「公式の歴史は嘘である」という前提のもとに、マッドフラッドという単一の陰謀論的解釈を与えようとしています。

しかし、提示された「謎」の多くは、当時の技術レベル、写真技術の特性、都市の発展プロセス、社会状況などを考慮すれば、より合理的かつ証拠に基づいて説明可能です。

「歴史に疑問を持つ」という出発点は重要ですが、その疑問を検証する際には、感情論や憶測ではなく、論理と証拠に基づいて多角的に検討する姿勢が求められます。この動画の主張は、その検証プロセスを省略し、飛躍した結論に至っていると言えるでしょう。

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