★柳家さん喬/肝潰し(肝つぶし)

柳家さん喬

『肝つぶし』(きもつぶし)は、上方落語の演目の一つ。主な噺家は二代目桂ざこば、六代目三遊亭圓生などがいる。

あらすじ

吉松が病で倒れているということで、友人がお見舞いに行くと、なんでも病は恋煩いからくるものらしい。
そうと決まれば、その女とくっつけようというのが手っ取り早い治療法ということで、友人は吉松がどういう経緯で恋をしたのか、事の成り行きを聞こうと考える。
事の発端というのは吉松がフンドシと布巾にしようとサラシ七尺ほどを呉服屋に買いにいったことから始まるそうだ。
それでそこのお嬢さんに恋をしたらしいのだが、その話には続きがあり、買い物をした晩、そのお嬢さんが吉松の家に飛び込んできたそうなのだ。
なんでもお嬢さんは父親に先立たれ、唯一の男手である番頭に切り盛りしてもらわなければ店の存続もままならないのだが、その番頭が自分が望みもしない結婚を取りつけてくるから、ここでかくまってほしいとのことだった。
吉松はどうしようもなく、かくまうことにするがそれを番頭が見逃すはずもなく、半刻も立たないうちに吉松の家に来て、戸を破壊してまでお嬢さんを連れて行き、吉松にもそのうち落とし前を付けてもらうという捨て台詞を残した…と思ったらいつの間にか昼になっていたとのこと。
すなわち、吉松が恋した相手のお嬢さんというのはこの世には存在しない夢の中の女性だったのだ。
それではどう解決することも出来ないと思いきや、ひとつだけ治療法はあるとのこと…その方法とは、『年月揃って生まれた女の生き肝を煎じて飲むこと』だそうだが、それには女を殺さねばならず、1人を生かし、1人を殺すというやり方は出来ないとのことで医者は方法だけ伝えて匙を投げてしまったらしい。
また、この『年月揃って生まれた女』というのも、例えば子年生まれならば『子月子日の子の刻』に生まれたということなので、十二支は不問とはいえ、身近にいるわけがない…と友人が半分あきらめかけて帰っていると、ふと亡くなった母の遺言に
「妹のお花の生まれた日だけは誰にも言ってはならない」ということがあったことを思い出す。
なんと皮肉にも、その年月揃って生まれた女というのが自分の妹であったのだ。
家に帰り、お花に吉松の病気のことは話せたが、その薬としてお花の生き肝が必要…すなわちお花を殺さなければならないことはさすがに話せないでそのまま何も知らないお花は眠ってしまう。
思えば、両親に早いうちに生き別れ、吉松とは兄妹同然に育った間柄で、中でも吉松の父には自分が盗みを犯した際には代わりに牢獄に入って地獄のような罰の身代わりになってくれたこともあるほどの恩がある…吉松には妹を殺してまで助ける義理がなくても、吉松の父が亡くなった今ではその恩を返す相手は吉松しかいない…やむを得ず、お花の生き肝を薬にし、吉松にそれを飲ませた後は効果の有無にかかわらず自分もお花の後を思うことを決意し、寝ているお花を包丁でひと思いに殺そうとするが、そこは兄妹の情でなかなか踏み出せない。
そうこうしているうちに頬から伝った涙がお花の顔にかかったことでお花は起きてしまう。
その場はごまかせたはいいが、あまりにも怖い思いをしたため、お花は
「もう目を覚ましたら兄さんが出刃包丁を振りかぶっているんですもの。私、肝が潰れましたわ…」

それを聞いた兄
「何!?肝が潰れた!?それじゃあ、薬にならんな…」

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