桜の下でのんびり酒を飲むだけが花見じゃないのです。もしその場で、いきなり「親の仇、見つけたり」と叫ぶ声がして、止めに入るはずの男は来ないまま、まわりまで巻き込んで大騒ぎになったらどうでしょう。
落語「花見の仇討」は、そんな無茶な仕掛けが少しずつ崩れていく可笑しさを、耳だけで一気に楽しめる一席です。細かい説明は後回しでかまいません。まず一度聞いてみてください。
「同じ噺でも、語り手が変わるとこんなに違うのか」と、たぶんすぐにわかります。
落語「花見の仇討」を知るなら、先に長い解説を読むより、まず聞いたほうが早いです。
この噺のおもしろさは、筋書きそのものよりも、段取りが少しずつ狂っていく可笑しさにあります。しかも、その崩れ方の見せ方は演者によって印象が変わります。だからこそ、「花見の仇討」はひとつ聞いて終わりではなく、同じ演目を演者違いで聞き比べると一気に味わいが深くなります。
Writerzlabの「花見の仇討」タグには、三遊亭金馬(三代目)、金原亭馬生(十代目)、柳家小さん(五代目)、立川談志の4本がまとまっています。ここは、同じ噺を違う語り口で楽しむための、ちょうどいい入口です。
「花見の仇討」は、あらすじより先に聞きたい噺
「花見の仇討」は、花見の場で見物人を驚かせようと、仇討ちの芝居を仕掛けた仲間たちが、段取りの狂いによって収拾のつかない展開に落ちていく噺です。
設定だけ見ると大げさですが、やっていることはどこか抜けていて、そのズレが笑いになります。三遊亭金馬(三代目)の記事では、上野の山での仇討ち芝居の筋書きと、止めに入るはずの六部役が来ないことで場が崩れていく流れが紹介されています。立川談志の記事でも、飛鳥山を舞台にした同じ趣向が整理されています。
ただ、この噺は文字だけで追うと少しもったいないです。面白さの芯は、慌て方、間の悪さ、見物人を巻き込む空気、そして最後の脱力したオチにあります。つまり、読むより聞くほうが伝わりやすい。ここが、この4本を紹介するときにいちばん大事な視点です。
まずは三遊亭金馬(三代目)で聞く
最初の1本として入りやすいのは、三遊亭金馬(三代目)花見の仇討です。
このページでは噺の骨格も短く整理されています。二人の巡礼が親の仇に出会って果し合いを始め、そこへ六部が割って入り、実は芝居だったと明かすはずが、その六部役が現れない。結果として茶番がどんどん危うくなっていく。その基本形がつかみやすいので、「花見の仇討」を初めて聞く人にはちょうどいい入口になります。
要するに、この金馬版は「最初の1本」として強いです。決定版だと言い切る必要はありませんが、全体像をつかむための導入としてはかなり使いやすい。まずここから入るのが素直です。
次に立川談志で聞く
2本目にすすめたいのが、立川談志/花見の仇討です。
談志版の記事では、長屋の仲間が花見の趣向として仇討ちを計画し、飛鳥山の桜の下で仇役、巡礼役、六部役が芝居を打つはずだった流れが紹介されています。ところが、止め役の六部が叔父に引き止められて酒で寝込み、巡礼役は事情を知らない侍に本気で助太刀されそうになってしまう。こうした「段取り崩壊の転がり方」が見えやすいのが談志版の入口としての強みです。
金馬で噺の骨組みをつかみ、談志で崩れ方を味わう。この順番にすると、同じ「花見の仇討」でも聞き比べる意味がかなり見えてきます。落語にあまり詳しくない人でも、この2本を続けて聞けば違いの面白さが分かりやすいはずです。
金原亭馬生(十代目)は、聞き比べの軸になる
3本目として押さえたいのが、金原亭馬生(十代目)花見の仇討です。
落語は、一つの演目を複数の演者で聞いたときに急に立体になります。馬生版は、まさにその聞き比べの軸になる1本です。最初の導入というより、2本聞いたあとで「同じ噺なのに空気が違う」と感じるために触れたいページです。
柳家小さん(五代目)も、外せない1本
4本目は、柳家小さん(五代目)花見の仇討です。
こういう古典落語は、同じ題でも語り手が変わると印象がかなり動きます。だから小さん版も、“解説を読む”ためではなく、“聞き比べる”ために押さえるのが正しい使い方です。金馬、談志と聞いたあとに小さんへ進むと、同じ噺の別の輪郭が見えてきます。
おすすめの聞き方はこの順番
この4本は、ただ並んでいるだけではありません。順番をつけると、もっと楽しみやすくなります。
おすすめは、まず三遊亭金馬(三代目)花見の仇討。
次に立川談志/花見の仇討。
そのあとに金原亭馬生(十代目)花見の仇討、柳家小さん(五代目)花見の仇討へ進む流れです。タグ一覧の「花見の仇討」まとめページから順に辿っていくのも分かりやすいです。
この順番がいいのは、先に噺の骨格をつかみ、そのあとで演者差を楽しめるからです。いきなり比較から入ると、どこを聞き比べればいいのか分からずに終わりやすい。最初は金馬か談志で入口をつかみ、そのあと馬生や小さんへ広げるほうが、ずっと自然です。
まとめ
最初の1本として入りやすいのは三遊亭金馬(三代目)。
段取り崩壊の面白さをより意識して聞くなら立川談志。
そこから金原亭馬生(十代目)と柳家小さん(五代目)へ進めば、「同じ噺なのに、こんなに印象が変わるのか」が見えてきます。
春に聞く落語としても、「花見の仇討」はちょうどいいです。重すぎず、でも軽いだけでもない。段取りの狂いがそのまま笑いになるこの噺は、聞き比べるほど面白くなります。まずは気になった1本から、耳で入ってみてください。


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