★柳家喬太郎/赤いへや

柳家喬太郎

ありとあらゆる、道楽にも倦み果てた連中たちが、赤いもうせんを敷き詰めた真っ赤な部屋に、集まっている。

この話を「告白」するためだけに、自分は、ここへ入会したのだと、一人の落語家が、ポツリポツリと語りだす……

ある夜、ホームレスの老人をうっかり引っかけてしまったと、タクシーの運転手が、あわてて駆け寄ってきた。迷わず、町内でもヤブ医者で有名な医院を紹介する。
すぐ近くの著名な外科医が居る病院の代わりに。
まもなく、ホームレスの老人の死を知る。
それ以来、落語家は、いわゆる「プロバビリティ(確率)の殺人」に病みつきになるのだ。

電線の被覆の剥げた部分に、立ち小便している少年をけしかけて、
「坊や、そこにかけてごらん……」と、罪のない子供を、感電死させたり、水面のすぐ下に大きな岩が潜んでいるのを、わざと、黙っていて、そこに友人をダイビングさせたり、線路を渡ろうとしている老婆を、「あぶない!」と、声を掛けることによって、わざとセカしたり……

こうして、99人まで、無差別の完全犯罪を成功させてきた。
だが、この殺人ゲームにすら、もう、飽きてきた……

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