★雷門助六(八代目)代り目#70

雷門助六(八代目)

夫が酒を飲んでいると、何かおつまみが欲しいと催促し始めた。怒りながらも優しい妻は、やむを得ず夫の好きなおでんを買いに出かけた。

ところが途中で財布を家に忘れてきたことに気付き、裏口から忍び戻り財布を取りに行く。

夫はいらいらしながらもおでんを待ちわびており、酒をちびちびと飲み続けていた。そのうちに酔っ払ってしまい、妻が留守だと思い込み、普段は言えない本音を漏らす。

「直接は言えないけれど、いつも迷惑をかけている。こんな自分をいつも面倒見てくれて。本当に良い妻をもらった。感謝しているよ」と、出かけた妻に向けて手を合わせる。

妻は家に戻っており、夫の言葉を聞いていた。

そのとき、たまたまうどん屋が通りかかる。夫はうどん屋を呼び止めて酒を注文するが、うどん屋は酒だけでは困るとしてうどんの注文も求める。それに腹を立てた夫は、うどん屋を追い払う。

妻がおでんを買って戻ると、見慣れぬ酒瓶があった。

妻「このお酒はどうしたの?」
夫「うどん屋台が来たから、お酒を注文したんだ。」
妻「そう。じゃあ、うどんは?」
夫「うどん?注文してない。おでんが来るんだから。」
妻「そんな、うどん屋さんに申し訳ないわ。」

妻は罪悪感を感じ、うどんを注文するためにまだ近くにいたうどん屋を呼び止めようとする。

しかし、うどん屋には聞こえない様子。それを見た近所の人が代わりにうどん屋を呼び止める。

近所の人「うどん屋、ちょっと待って。あの奥さんが呼んでるよ。」
うどん屋「ん?どこの家だ?ああ、あの家は勘弁してくれ。」
近所の人「どうして?」
うどん屋「さっき酒だけでうどんを注文しなかったんだ。また酒だけを注文されると困るんだよ。」

そう言ってうどん屋は急いで立ち去った。

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