ゴルゴ松本 女子少年院で魂の授業
今回は女子少年院
少年院で言葉を熱く語る男、「ゴルゴ松本」。
5年前からボランティアで少年院を訪れ、講演活動を続けている姿を、以前、金スマで放送。
心が動く魂の授業に少年たちも涙した。
あれから1年たった2016年10月。
再び彼を追ってみると、今も変わらず少年院での講演活動を続けていた。
今回彼が訪れたのは、大阪府交野市にある女子少年院「交野女子学院」。
彼が女子少年院で話す機会は少ないという。
というのも…。
少年院は全国に52か所あるが、そのうち女子少年院はわずか9か所。
交野女子学院は、近畿・中部地区で唯一の女子少年院で、現在14~20歳の少女たちが54名収容されている。
どんな罪を犯してしまった少女たちなのか?
【在院者の非行名別人員】
1位 覚せい剤取締法違反
2位 窃盗
3位 ぐ犯(犯罪のおそれがある者)
4位 傷害
5位 その他
「ぐ犯」とは、犯罪のおそれがある者を言う。
つまり、罪は犯していないが、将来的に法を犯す恐れのある少年少女を保護するという意味合いを持っている。
非行名別の比率を全国規模で見ても、覚せい剤が上位に入るのが、女子少年院ならではの傾向だという。
昨年のデータを見ると…。
傷害 12名(26%)
覚せい剤取締法違反 12名(26%)
ぐ犯 7名(15%)
窃盗 5名(11%)
その他 10名(21%)
合計 47名
だが、女子の非行の多くを覚せい剤が占めるのは、一体なぜなのか?
それは、ガールズバーなどの店で働く女の子が、成人男性に誘われて使い始めるなどの場合が多い。
少女たちは、なぜ非行へと走ったのか?
かつて、少女自ら書いた作文を今回特別に読んでもらった。
★
今までの私の考えは、正しいことをして真面目に生きていくのは、ダサいし面白くないという考え方でした。
こんな考え方をしていた私の周りには、当然同じような考えを持った人ばかりになってしまい、これが私が不良交友を持つきっかけになりました。
不良交友との間で認め合う基準は、「どれだけ悪いことをした経験があるか」とか、「悪い知識をどれだけ持っているか」でした。
そこで認められてチヤホヤされるのは素直に喜べる心境ではなかったし、自分はこの先どんな人生を歩むんだろうと不安になりました。
★
危うさを感じながらも、犯罪を拒絶する意思を持てなかった少女たち。
きちんと更生するために、少女たちは決して自由とは言えない生活を送る。
一人のスペースはベッド1台分。
一人になってじっくり考える時間があるというのは大事なことなのだ。
交野女子学院での教育機関は、在院者の多くが11か月を目安に計画される。
起床から就寝まで、規則正しい集団生活を送る中で、それぞれに設けられた課題をクリアすることを日課とする。
そして、支援施設の力も借り、薬物依存から脱却させるための取り組みも行なっている。
今回ゴルゴは、そんな彼女たちに何を語りかけるのか?
「異性の男ですから、全面的に女性のことが分かる訳ではないですけど、大人として人生の足しになってくれればいいかなっていう、伝わって何かヒントにしてくれればいいかなって思ってます」
そして、ゴルゴ松本の授業が始まる。
《会って伝えること》の大切さ
ゴルゴが少女たちの前に登場。
「良かった、みんなに会えて。どうして会えたか知ってる?新幹線乗ってきたから」
みんな爆笑。
「今日はいろいろ質問していきます。はい。答えてください。何故かって言ったら、今日は会いにきたんだけど、みんなに…」
ホワイトボードに【会】という字を書く。
「会いに来ました。会っちゃいました。会うという字は、ひとやね、ひとがしらとも言いますね。人に何かを伝えると書きます」
【にんべん】を書く。
「皆さんに今日は、上のひとやねを、にんべんにして下は同じ…」
【伝】を書く。
「伝えにきました。何を伝えるかというと、おじさんはもう49歳さんです。来年50歳です。いろんなことを経験してきて、平成生まれのみんなに、何か届けられればいいかなと思って、いろんなことを今日、伝えます」
「何かを伝えるときは、やっぱり会わなきゃいけない」
「今は携帯電話で簡単に連絡もとれるし、ラインなんかスッと写真も送れたりしますけど」
「じゃなくて、大切なものを伝えるときは、直接会って、話をする…」
【会】の下に【話】を書く。
「会話。伝えにきました」
漢字は、《会って伝えること》の大切さを教えてくれている。
だからこそ、自分は会いに来た、そう語るゴルゴ。
そしてまずゴルゴは、《女性の凄さ》を、漢字を使った独自の解釈で伝える。
「女」と「男」
「全てはじまりは、女の人です。女の人が土台になってんだよっていうこと」
【始】を書く。
「全ての始まりは女性。日本語ってすごいだろ?」
「だから女の人がしっかりと土台を作ってくれたら、男はどうだ?男運が良いと思う人?」
3人が手を挙げた。
「男運が悪いと思う人?」
ほとんどが手を挙げた。
「ちょっと多くねえか?なんでそんなに手挙げんの?」
「男なんてのは、みんな知ってるな?田んぼの力だ」
【男】を書く。
「働け!っていうこと。働かねえ男はダメだよ」
「何を言ってる、わしは侍じゃ、武士じゃ!」
「武士という字は…」
【士】を書く。
「士も男という字です。にんべんつけたら…」
【仕】を書く。
「仕事の仕だ、働け!っていうこと」
みんな爆笑。
「だから、働かねえ男っちゅうのはダメなんだ。夢と希望言ってるだけの男はダメなんだ。夢と希望言いながらもアルバイトは出来るはずだ。働かねえ男はダメだ」
さらにゴルゴは、女性にまつわる漢字を使って、あるメッセージを伝える。
好きは奇跡を起こす心
ホワイトボードに【子】と書いてあり、横に女をつけて【好】と書く。
「好き!」
ホワイトボードに【兼】と書いてあり、横に女をつけて【嫌】と書く。
「嫌い!」
「さあ、好きという言葉と嫌いという言葉、女へんです。女の人の言葉です。女の人は、子どもが好きなんです」
「赤ちゃんを産みます。育てます。だから子どものことを好ましく思うんです。かわいいんです。だから好きという字」
★
授業前。
【好き】という漢字を使い、ゴルゴが彼女たちに伝えたかったことがあった。
その理由は、ある少女が書いた作文。
”私はこの7年間、非行をすることでしか自分に自信を持つことが出来ず、「人に嫌われたくない」「一人になりたくない」という思いからも、非行をやめることができませんでした。私は今まで、自分のことが大嫌いで、自分を人に押し付けて人に認めてもらうことに必死でした。”
彼女たちはそもそも、生きることに肯定感がない。
「もう死んでしまいたい」「消えてなくなりたい」とか思っていた子もいる。
「そんなことしたら死ぬじゃん!」というようなことを平気でやったりする。
「生きることへの肯定感のなさ」
そんな気持ちを抱える少女たちに、ゴルゴが送るメッセージは…。
★
「好き、何が好き?」と聞くゴルゴ。
「柴犬」「三浦翔平」「味噌ラーメン」「塩ラーメン」「醤油ラーメン」
次々と「好きなもの」を想像させていくゴルゴ。
いったい、何を伝えようとしているのか?
「好きな食べ物とか、好きな事とか、好きなものを考えている時って、見るからにみんな笑顔になってるんですよ。好きな事を考えると幸せなんだね」
【幸】と書く。
「幸せになるんだ。心の中が満たされるんだ。だからね、みんな幸せな気分になりたい時は、好きな事を考えるんだ」
好きな事を考えると、笑顔になり幸せになれる。
それを少女たちに体感させたゴルゴ。
そのうえで、突然自らの身の上について語り始めた。
「おじさんは東京に出て芸能界目指して、自分の稼いだお金で食えるようになって、風呂付きに住めるようになったのが10年です。その間、ずっとアルバイトしていました」
「桃栗三年、柿八年、ゴルゴ十年」
みんな大爆笑。
「だけど、自分では下積みじゃないわけ。好きな事をやりたいと思ってたから、興味があったから、周りが辛いだろうなと思ってても、飯食えなくても、すげえ頑張れたわけ。おじさんよりすごいのはいるぞ。お笑い界に。すぎちゃん18年、ワイルドだろうまで18年ですよ。もっとすごいのがいますよ。ラッセンが好き!の永野、20年です」
「なんでもそう。その人の良いタイミングで、実がなるんだ」
10年経って売れた時、「奇跡」を感じたというゴルゴ。
それを、ある漢字が教えてくれているという。
「好きでいると、すごい事が起こるんだ。好きでいると…」
【好】の下に【奇】と【心】を書く。
「【好】きでいると、【奇】跡が起こる【心】が【好奇心】だ」
「好きじゃないと、幸せじゃないと、心の中が幸せじゃないと、奇跡は起こらないということ」
「嫌いな中じゃ奇跡なんて起こらない、もうわかるね。好きで満たされてると、一生懸命そこに集中して、頑張ることが出来るから、苦痛じゃなくなるぐらい集中できるから、何かが起こるわけ」
好きは奇跡を起こす心、だから好奇心。
「もし好きなことができたら、とことん追求した方が良い」と、ゴルゴは伝えたかった。
自らの体験を交えて、少女たちに「好きなことの力」「笑顔の力」を説いたのだった。
笑顔でいたら幸せは寄ってくる
ホワイトボードに【咲く】と書く。
「咲く。この字、口へん、なぜ口へんですか?」
「花が咲いている姿って、人間の表情で言ったら何かな?」
【笑顔】と書く。
「笑顔だ。笑ってる笑顔だ。花が咲くことを、昔は花が笑うって言ってた」
「笑顔で、顔が晴れると書いて…」
【顔】の下に【晴れ】と書く。
「顔晴れ(がんばれ)。色々と頑張れと言われると思うけど、何を頑張ったら良いかって言ったら、まず笑顔になれば良いんだ」
「みんなが笑顔になるって言うことは、『花を咲かせてる』って言うこと」
「『笑う門には福来たる』と言います。笑っていると、笑顔でいると、自然と福がやって来るってことわざ」
「なんかキツイなあってときも、笑顔でいたら、だんだんその笑顔に、幸せは寄ってくるんだ。これ不思議だ、なあ!」
最後にメッセージ
「これからも、ここにいる間は、【更】に【生】きると書いて【更生】です」
「【更生】っていう字を一つにすると【甦】(よみがえる)っていう字だ」
「自分をよみがえらせるために今、います」
「未来はいろんなことを作れるから」
「今日出会ったみんなが、笑顔という花を咲かせて、出会った人たちを笑顔に出来るような、素晴らしい人生になることを願って、祈って、終わりにしたいと思います」
「今日はみなさん、ありがとうございました。あっ、いのち!」
授業を受けた少女は…
「すごい途中、感動して泣きそうになって。ゴルゴさんが10年かかって、ああやって這い上がって行って。私も、ここでちゃんと更生して、這い上がって行きたいなって思います」
「しんどい時に、なんで生きているんやろとか、考える時があるから、その時に思い出して、しんどい事から逃げんと頑張りたいなって思いました」
心を動かす漢字の授業。
ゴルゴ松本は、これからも熱く語り続ける。
スタジオでの特別授業
【アマチュア漢字研究科・松本彦之丞】
今我々が住んでいる日本はすごい国。
先祖がすごい。
漢字は今から3400~3500年前に中国で発明されたと言われている。
日本に渡ってきたとき、我々の先祖は大切なことを残した。
役に立つ事だったり、過去の過ちに対する教訓。
漢字はまさに、神様からの贈り物「神字(かんじ)」である。
神の領域を知ること「神知(かんじ)」。
【謝】は、「感謝」と「謝罪」のときに使われるが、この二語は反対の言葉である。
しかし、両方に使われているのである。
ごんべんに射ると書く。
これは、言葉で射るという意味。
「ありがとう」「ごめんなさい」という言葉を、矢を射るように、相手にしっかりとはっきりと届けなさいという意味がある。
「ありがとう」「ごめんなさい」は、心で思っているだけでは伝わらない、言葉に出して伝えなさいという意味。
【寿命】人が死んだら悲しいのに、なぜ、寿という字を使うのか?
人の一生は、命に始まって命に終わる。
命名・運命・宿命・使命・天命・寿命
様々な困難を乗り越えて命が終わるという、その時点で、周りの人は「寿ぶ命」おめでとうと言ってあげる言葉である。
【短命】天寿を全うできずに終わる、短い命がある。
いつ命がわからない私たちはどう生きるべきか?
【一生懸命】自分の一生に命を懸ける。
しかし、大切な命を懸けて良いものか?
「命を懸ける」のではなく「命に対して心をかける」という意味。
「懸」の心を外して「かける」、意味は「つなぐ・つながる」。
つまり、「自分の命に対して、自分の心を注いでいく」ということ。
「命がけ」より「心がけ」なのだ。
命に対して心をかけてやることで、助かる命はたくさんある。
一生懸命とは、命をかけるのではなく、その命に対して自分の心・気持ちを注いでいくということ。
【氏名(しめい)】=【使命(しめい)】
「中居正広」
《父親がつけてくれた正広という名前の意味》
【正】は、上の棒をとると【止まれ】になる。
止まることによって正しい道を見つけられる。
もし何か思い悩む時があれば、一歩止まってみなさいと言われたのだそう。
”何か迷ったときは、一歩止まって、周りを確認して、正しいかどうかを見極めて前に進みなさい”
【居】…リビング
”「中居正広」とは、【居】間の【中】心になって、【正】しいことを【広】める”
「お茶の間の中心になって、正しいことを世に広める」
《名は体を表す》というように、あなたの名前もきっと意味があるはず!
(了)
[出典:2016年11月25日(金)放送、「金スマ」より]
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