あらすじ
江戸時代、江戸の力士が上方へ、あるいは上方の力士が江戸へ来て修行をするということがよくあった。
ある関取、上方で三年の修行を積み、久しぶりに故郷の江戸へ帰ってきた。噂を聞いた町内の男が、関取の家にやってくるが、奥で休んでいるというので玄関先でおかみさんと立ち話。
「さぞかし大きくなったことでしょうなあ」と訪ねる男に、おかみさんは「ハイ、いま帰ったと声がするので、戸を開けましたが顔が見えません。
見ると、二階の屋根より上に関取の顔がありました」と亭主の自慢。
さらに
「格子戸を外して家に入った」
「顔は四斗樽、目は炭団ほどの大きさ」
「息をすると私の体が動く」
「布団が小さいので十枚も重ねて掛けている」
「道中で牛を三匹踏みつぶした」
と関取の大きさ立派さをしゃべりまくる。
男が感心して帰ると、奥から関取の声。
「いまおまえのやり取りを聴いていたが、あまり馬鹿馬鹿しいことを言うので、外に出そびれたわい。女房が亭主の自慢をしてみっともないとは思わんか」
とおかみさんへの小言。
そして、東海道・三島の宿に泊まったときの宿の女の台詞を言って聞かせる。
「宿屋の目の前に大きな富士の山。立派なものですなあと褒めると、宿の女は、朝晩見ているとさほどには感じません、それに半分は雪でございます」
と控えめに言った。
そう言われて富士の山を見ると、改めて立派に見えたものだ。
関取の教えにうなずいたおかみさん、しばらくしてやってきた次なる客人に、今度は関取の大きさを謙遜して話し始めるが……
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