ストレスはあったほうがいい!? ストレスを力に変える方法
スタンフォード式 ストレスを力に変える方法
60万部を突破したベストセラー「スタンフォードの自分を変える教室」の著者で、ストレス研究の第一人者、スタンフォード大学 健康心理学者のケリー・マクゴニガル先生が教えてくださいます。
図解でわかるスタンフォードの自分を変える教室 [ ケリー・マクゴニガル ]
【問題】
水族館で、イワシの水槽に「ある生き物」を、入れたところ、イワシが長生きするようになりました。いったい、どんな生き物を入れたのでしょうか?
【正解】サメ。
イワシの天敵であるサメを入れることで、イワシに適度なストレスがかかり、運動量が増えて、およそ1.5倍長生きするようになったのです。
”ストレスは上手く使えば、逆に長生きできたり、受験や仕事で良い結果が出せます”(ケリー・マクゴニガル先生)
先生は、世界中の第一線で活躍する人物が講演した「TEDプレゼンテーション」でストレスの秘密を語ると、YouTubeでの再生回数が、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズを抑え、1000万回を越えました。
その衝撃的な内容とは……「ストレスの真実」
アメリカで、3万人を対象にした調査では、
「ストレスは体に悪い」と思い込むだけで、死亡リスクが43%も高くなり、
「ストレスはむしろあった方が良い」と前向きに思い込むと、
死亡リスクの上昇が全く見られないということが判明しました。
実は、ストレス自体が悪者ではなく、悪いのは、「ストレスが健康に良くないと思い込む事」だったのです。
では、どうすればストレスを前向きにとらえることが出来るのでしょうか?
先生の最新作、「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」から、具体的な方法を伝授していただきます。
”学校のテストや仕事にかかるストレスをプラスに変える方法を教えます!”(ケリー・マクゴニガル先生)
思い込むだけで痩せる!!
「ストレスはむしろ、あった方が良いと思い込み、受け入れることが大切なんです。それを心理学の世界ではマインドセットと言います。思い込む力を侮ってはいけません。」(ケリー・マクゴニガル先生)
【ハーバード大学の実験】
あるホテルの女性客室係は、1時間に300キロカロリーも消費するハードな仕事をしているのに、ふくよかな体型の人が多かったのです。彼女たちにアンケートをとると、三分の一の人が「日頃まったく運動をしていない」と回答。
残りの三分の二の人も、「定期的な運動をしていない」と回答。
つまり、全ての人が、「運動をしていない」と答えました。
そこで、「自分たちの仕事が立派な運動である」ことをポスターや朝礼などで教えたのです。
すると4週間後、仕事内容は全く変えていないのに、なんとそれだけで、体重と体脂肪率が減少しました。
人は思い込むだけで痩せるんです。(ケリー・マクゴニガル先生)
思い込みで体が反応する
【アメリカで行われた「思い込みと寿命の研究」】
歳をとることを、「知識や経験が豊富になる」など、ポジティブに思い込む人と、「自分は役立たず」など、ネガティヴに思い込む人の寿命を比べました。
すると、ポジティブに考える人の方が、寿命が8年も長いという結果が出たのです。
ネガティブな人は、「どうせ歳をとれば健康になれない」と思い込み、運動をしなくなります。
一方、ポジティブな人は、「やればできる」と、素直に医師のアドバイスに従い、健康のために運動をした人が多く、それが長生きにつながったようです。
では、ストレスを受けると、体はどんな反応をするのでしょうか?
ストレスを感じると、心拍数が上がり、心臓の血管が「ギュウ~」っと収縮します。
それで苦しくなるのです。
しかし、ハーバード大学の研究では、
「ストレスが人間にとって大切なものである」と思い込ませると、
ストレスを感じても、心拍数は上がったままですが、心臓の血管の収縮が見られなくなったのです。
思い込みを変えるだけで、体がちゃんと反応してくれることが証明されました。
ストレスに強いのは「男性」「女性」どっち?
ストレスに強いのは「女性」。
女性は社会的につながる事で、気持ちを楽にする本能があります。
ストレスがあると、女性は友達とよく喋ります。
女性は、喋ることで心臓をダメージから守り、免疫機能を高めるという研究データもあります。
ストレスは上手に使えばプラスになる
【アメリカ・ニューオリンズ大学の研究】
スカイダイバーを使って、ストレスの研究をしました。
ベテランと初心者の、ダイビング中の心拍数を計測したのです。
【問題】
ベテランと初心者、どちらがスカイダイビング中に心拍数が高かったでしょうか?
【正解】
慣れているはずのベテランダイバーの方が、実はドキドキして、心拍数が高いという結果がでました。
実はこれ、決して悪いことではないのです。
スカイダイビングのベテランに話を聞くと、「飛びたいと思うほど、ワクワクドキドキして、集中力も上がってきますね」
ベテランはストレスを集中力に変え、困難に上手く対処できる状態を作り出しています。
【アメリカ・スタンフォード大学の研究】
子ザルを母親から引き離し、ストレスを与えてみました。
すると、母親から引き離された子ザルは、過保護に育てられた子ザルより、物怖じしなくなることがわかりました。
脳科学者に話を聞くと、
「ストレスが前頭前野を発達させたのでしょう。前頭前野が不安をおさえたので、サルたちは物怖じしなくなって活発に活動するようになったんだと思います」
ストレス体験から、強く成長することができるのです。(ケリー・マクゴニガル先生)
ストレスは無い方が危険
実は、ストレスは無い方が危険と言われています。
ストレスの無い、リラックスした退職後の生活を送ると、「うつ病」を発症するリスクが40%も高くなるというデータがあるのです。
医師によれば、
「リラックスすることで、自律神経の中でも副交感神経が上がります。そうすると血管が開いたままで血流が悪くなります。
それにプラス、運動もしなくなるので自律神経の総合力も落ちてきて、より血流が悪くなり、うつ病になってしまいます」
ストレスでドキドキすることは、逆にテストで良い結果を生む
【アメリカの中学・高校・大学で、生徒たちに実験】
テスト中に、アドレナリンの量を計測したのです。
ストレスで興奮すると、アドレナリンが出るので、興奮した生徒たちと、リラックスした生徒たちのテストの成績を比べました。
当然、リラックスした生徒たちの方が成績が良いと思いきや、
なんと、ストレスで興奮し、アドレナリンの量が急増した学生の方が、成績が良かったことがわかりました。
アドレナリンは、五感を研ぎ澄ませ、意識を集中させる作用があるからです。
もし不安でドキドキしたら、
「今日はストレスがあるから上手くいく」と思えば大丈夫です。
高梨沙羅の、ストレスを力に変えたベストジャンプ
それは、総合優勝がかかった、2016年2月19日、フィンランド・ラハティ大会 第15戦。
悪天候で、満足な練習が出来なかったという高梨選手。
1本目のジャンプは、96.5メートルでトップになりました。
2本目を成功すれば、2シーズンぶりのワールドカップ総合優勝が決まるというプレッシャーがのしかかります。このとき、高梨選手はコーチに不安を漏らしました。
「1本目と同じジャンプができるかな?」
実は、前回のスロベニア大会では、総合優勝のかかる2本目のジャンプで、距離を伸ばせず、4位という結果だったのです。
今回は、1本目でいきなりの大ジャンプ、総合優勝は目の前。
しくじるわけにはいかず、大きなプレッシャーがかかった2本目。
このとき、高梨選手は、「絶対成功するんだ!」「緊張するのは当たり前」「プレッシャーを力に変えよう!」、前向きに、ひたすら成功するジャンプをイメージしました。
結果は、1本目を超える、99.5メートル。
自分に打ち勝ち、見事、総合優勝を果たしたのです!
ストレスはチャレンジ精神を生みます。これをストレスのチャレンジ反応と言います。
アスリートだけでなく、チャレンジする人は、血管の収縮が無く、鼓動が早くなり、全身にエネルギーが送られます。アドレナリンが大量に分泌し、高揚します。
チャレンジ反応に持っていく最も効果的な方法は、自信を持つこと。
どうすれば自信を持てるか、それは、自分の個人的な強みを認識することです。
どれだけ準備を重ねてきたか、過去に問題を乗り越えた経験などを思い出してください。そのとき、ストレスがチャレンジ反応に変わるのです!
(ケリー・マクゴニガル先生)
ストレスから早く立ち直る方法
辛い事があって大きなストレスを抱えたとき、「ある事」をすると早く立ち直る事ができるのですが……
それは、ボランティア活動
”自分がつらい時こそ、人のために何かをする”
2013年4月、アメリカ・ボストンマラソンで、テロ事件が起きました。
ゴール付近で突如爆発がおき、3人が亡くなり、144人が負傷しました。
実はこの時、無事だったランナーたちの多くは、自主的にボランティア活動を行ないました。
フルマラソンで疲れ果てているうえに、テロが起き、相当なストレスを抱えているなか、ランナーたちは病院に続々とかけつけてきたのです。
そこで、被害者のためになんと、「献血」をしていたのです。
ほかにも、地元の人は、身動きがとれなくなったランナーに、毛布や寝る場所を提供、食事を与える人もいました。
さらに、パニックで現場に置き去りになったメダルを回収し、持ち主に返す人も。
実は、こうしたボランティア活動をした人のPTSD(心的外傷後ストレス障害)が、早く回復するというデータがあります。
人はボランティア活動をすると、オキシトシンという良いホルモンが分泌されます。
オキシトシンは、恐怖を鈍らせ、勇気をわかせます。
自分が苦しい時こそ、ボランティアなどで誰かを助けると、自分も早く立ち直ることで出来るのです。
ストレス状態にある人がボランティアの経験で、その後どうなったかを調べると、
ボランティアをしていなかった人の死亡率は30%も増加していたのに対し、
ボランティアをしていた人の死亡率の増加は、なんとゼロ!
ボランティアをすると、寿命も延びるようなのです。
前を向いて、ストレスと友達になってください!
(ケリー・マクゴニガル先生)
[出典:2016年4月2日放送「世界一受けたい授業 男性VS女性スペシャル」]
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