Z世代は、人生相談を「人」にしなくなった。
代わりに話しかけているのがAIだ。
友達でもない。親でもない。カウンセラーでもない。
スマホの中にいる無機質な対話相手。
それが、Z世代にとっては一番安全で、一番正直になれる相談相手になりつつある。
この現象は、単なる流行でも、一時的なブームでもない。
行動心理と社会構造が重なった結果として、かなり合理的に起きている。
まず前提をはっきりさせる。
Z世代は「人に相談しない世代」ではない。
正確には「リスクのある相談を避ける世代」だ。
誰かに悩みを打ち明けると、どうなるか。
評価される。噂される。スクショされる。
良かれと思った助言が、マウントや説教に変わる。
最悪の場合、人間関係が壊れる。
Z世代は、この地雷原をよく知っている。
だから相談先を選ぶ基準がシビアだ。
・否定されない
・秘密が漏れない
・正解を押しつけられない
・何度でも同じ話ができる
この条件をすべて満たす存在。
それがAIだった。
特に使われているのが、ChatGPTのような対話型AIだ。
検索ではなく「会話」ができる。
正論を振りかざさない。
感情をぶつけても引かない。
しかも24時間無料で対応する。
これを「依存」と切り捨てるのは簡単だが、ズレている。
むしろこれは、現代版の壁打ちだ。
人は考えを言語化した瞬間に、思考を整理できる。
心理学ではこれを外在化という。
Z世代はその相手に、人間を選ばなかっただけだ。
ここで重要なのは、相談内容だ。
恋愛や進路だけではない。
・将来が不安
・自分に価値があるかわからない
・人と比べてしまう
・SNSを見るのがつらい
・何もしていないのに疲れる
いずれも、他人に話すと重たい。
下手をすると「甘え」「考えすぎ」で切られる。
AIは切らない。
ただ受け止めて、整理して返す。
この構造は、Z世代の育った環境とも深く関係している。
彼らは常に評価されてきた。
いいね数、フォロワー数、再生数。
数字で人格が測られる世界。
その中で唯一、評価しない存在。
それがAIだ。
さらに、Z世代は「正解」を疑う世代でもある。
親世代の成功モデルが通用しない現実を見ている。
だから「こうしろ」と言われる助言を信用しない。
AIは断定しない。
選択肢を並べ、可能性を示す。
この距離感が、妙に心地いい。
一方で、危うさもある。
AIは責任を取らない。
共感はできても、人生は代わりに歩かない。
それでもZ世代が使うのはなぜか。
理由は単純だ。
「人よりマシ」だから。
これは人間関係の敗北ではない。
むしろ、現代社会の設計ミスの露呈だ。
本来、人が人に安心して相談できる余白があったはずだ。
それがなくなった結果、AIがその穴を埋めている。
ここで面白いデータがある。
Z世代はAIの回答を「絶対正解」とは思っていない。
参考意見の一つとして扱っている。
人より冷静に、距離を保っている。
つまり、依存しているようで、していない。
使いこなしている。
この姿勢は、今後さらに広がる。
なぜならAIは進化するが、人間関係は急に優しくならないからだ。
近い将来、
「人生相談=AI」
は当たり前の選択肢になる。
それは冷たい未来ではない。
むしろ、人が人らしく悩むための緩衝材だ。
AIに相談するZ世代は、弱いのではない。
リスク管理が異常にうまいだけだ。
人間に期待しすぎない。
でも孤独にはならない。
このバランス感覚こそ、彼らの強さかもしれない。
文責:夜更かしロジック
SNSと心理の交差点を観察するタイプ。深夜の思考整理が趣味。
X:@logic_midnight #Z世代考察


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