★古今亭志ん生(五代目)文違い

古今亭志ん生(五代目)

あらすじ

内藤新宿の女郎お杉には馴染み客として日向屋の半七、田舎客の角蔵が贔屓にしており、半七からは
「お父っあんが(二十両も)無心してきて…」
と偽って用意させた十両のうち五両とお足代の金子を、その隣の部屋に案内された角蔵からは当日行われる馬の取引のための預かり金を
「おっ母さんが病いだから…」
と偽って十五両もの金子を脅したりすかしたりして手に入れたが、その理由はというとお杉が間夫の芳次郎から
「眼病でこのままじゃあ目が見えなくなくなるので、薬代として二十両が要るんだ。」
と手紙で頼まれていたからである。

お杉は別室で待つ芳次郎に、長の無沙汰をつい咎めたせいで今度は逆に脅されたりすかされたりした後で芳次郎に金子を渡す。
芳次郎がそそくさと帰ったあとに手紙が置き忘れていることにふと気づき、何気なく読んだ内容には小筆なる女郎から芳次郎への金子の催促。
しかもお杉をだましてしまえと書かれている。

お杉が「畜生。あたしをだましやがって…」
と悔し涙に呉れている丁度そのころ、半七も部屋の中で、芳次郎からお杉への手紙を見つけ、だます相手に自分の名が書かれていることを知り悔しがる。

互いにだまされ合って気が立っている二人は、お杉が半七の部屋に戻るや否やすさまじい口論になる。
それを隣の部屋にいて聞いていた角蔵は、若い衆を呼びつけて
「間夫から金子を受け取ったとか渡したとかで、お杉が殴られているだ。止めてこ!」
(あの金子はお杉の親の病いのために俺が出したものだ)とも言うように頼もうとするが、
(いや、やめておこう。それじゃ俺が間夫とわかっちまうでねえかな。)
己惚れで目が曇った角蔵は自分が一番の被害者であるとも知らずに一人ほくそ笑んでいた。

概論

今の新宿にあった内藤新宿は、千住、品川、板橋を入れて「四宿」と呼ばれる江戸有数の遊里であるが、都心部から離れているので吉原とはワンランク落ちていた。
中山道の要所として多くの旅人でにぎわい女郎屋が軒を並べていた。
廓噺の傑作の一つであるが、内藤新宿を舞台としたのは意外と少なく、この噺と、八代目桂文治が得意とした「縮上がり」くらいである。

純情な遊女、軽薄な遊び人、色悪の間夫、どこかとぼけた田舎の客と登場人物も変化に富み、だまされる人間の心理を巧く表現している。
戦後は、3代目三遊亭小圓朝、6代目三遊亭圓生、5代目古今亭志ん生8代目三笑亭可楽などが得意とした。

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