品川の遊郭を舞台にした噺である。前半では女郎と客の心中がテーマとなっているが、後半では自分を騙した女郎に客が仕返しを目論む展開となる。
現代では前半のみの話で終了させ、後半の下げの部分までの話をするやり手がほとんどいない。
『井関隆子日記』天保11年(1840年)の2月の条に、原話と思われる記述がある。
また、上方落語では桂文太が「松島心中」の題で松島遊廓を題材に改作し演じた。
あらすじ
品川の女郎「お染」は、行事の金が出来ないために下の女から馬鹿にされるので、死ぬことを決断する。
1人で死ぬのは嫌なので誰か道連れをつくることを考える。
なじみの客から道連れを選び、少々ぼんやりしている貸本屋の金蔵と一緒に死ぬことに決める。
早速金蔵を呼び出したお染は無理やり金蔵に心中を承知させる。
翌日の晩、いざ心中という時にカミソリで首を斬るのを金蔵が嫌がるので、外の桟橋から身投げをすることにする。
桟橋でなかなか飛び込もうとしない金蔵をお染が突き落とし、自分も飛び込もうとしたところに、店の若い衆が「金が出来た」という知らせを伝えに来る。お染は死ぬのが馬鹿馬鹿しくなって店へ戻ってしまう。
遠浅だったため死にそびれた金蔵は親方のところへ行くが、親方の家では博打をしており、戸を叩く音で「役人だ」と早合点して全員大騒ぎ。
尋ねてきたのが金蔵と分かり安心するが、1人びくともしない者がいた。
その者を褒めると「いやとっくに腰が抜けております」。
翌朝、金蔵が親方に経緯を話し、怒った親方は金蔵とともに、お染への仕返しを考える。
金蔵は、お染を尋ねていき、部屋で「白い団子が食いてえ」などと、気味の悪い話をする。しばらくして、お染を訪ねて来た人があると店の者が呼びに来る。出て行くと、親方と金蔵の弟という二人連れが来ており、金蔵の通夜に来てもらいたい、という。
驚いたお染が、そんなはずはない、と、親方を連れて部屋に戻ると金蔵の姿はなく、蒲団に金蔵の位牌が入っている。親方は金蔵が化けて出た、このままではお前は取り殺される、頭を丸めたほうがいい、と脅し、お染の髪を剃ってしまう。そこに金蔵が現れる。
悔しがるお染に
「お前があんまり客を釣るから、魚篭に(比丘尼)されたんだ」。
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