★三遊亭圓生(六代目)樟脳玉(しょうのうだま)

三遊亭圓生(六代目)

あらすじ

お人良しで気が弱く、正直者で愛妻家の捻兵衛(ねじべえ)さんが、女房に先立たれ落胆と悲しみのあまり仕事も手に着かない。家に籠りっきりで、朝から晩まで仏壇の前に座って泣きながら念仏を唱えている。

捻兵衛は金を相当貯め込んでいるという噂で、女房も元はお屋敷奉公していた衣装持ちで、これに目をつけて稼ごうと悪巧みを考えた兄弟分の二人組。捻兵衛の前に女房の幽霊を出して、着物と金に気が残っているから浮かばれずに幽霊となって出るのだと脅し、寺へ納めてあげようと言いくるめて、全部いただいてしまおうという策略だ。

その夜、二人は樟脳の長太郎玉に火を着けて青白い火の玉をこしらえ捻兵衛の家の天井の引き窓から糸を付けて垂らし、仏壇に手を合わせている捻兵衛の前に降ろしてゆらゆらと振った。捻兵衛さんは肝をつぶして作戦は大成功だ。

翌朝、弟分の八公が何食わぬ顔で捻兵衛の所へ行き、「あんな立派な葬式を出したからには仏さんもきっと浮かばれて成仏したことでしょう」と鎌を掛けると、捻兵衛は「まだ浮かばれていない、迷っている」と、昨日の火の玉幽霊の一件を話し出した。

八公は、「それはおかみさんが着物に気が残っているからだ」と筋書き通りに話を進め、寺へ納めてあげるからと、まんまと捻兵衛の思い出が詰まる高価な着物をごっそりとかすめ盗ってしまった。だが八公は上手く行過ぎて肝心の金を盗るのを忘れてしまった。

欲深い二人は、その夜また火の玉幽霊を出して振り回す。そして翌朝、八公は捻兵衛の家に行って、まだ金に気が残っているから幽霊が出るのだと持ちかける。すると捻兵衛さんは、「葬式で使って、もう一文もありません」と意外な答え。それでも八公は、「まだ大切にしていた物が残っているでしょう」としつこい。捻兵衛さんは少し考えてお雛様の箱を持って来て蓋を開けた。

捻兵衛 「あぁ、分かりました。女房はこれに気を残しています」

八公 「え!どうして分かりました」

捻兵衛 「今、蓋を開けたら昨夜の魂の匂いがいたしました」

[出典:http://sakamitisanpo.g.dgdg.jp/syounoudama.html]

豆知識

【樟脳】
特異な芳香のある無色透明の板状結晶。昇華しやすい。
融点 180℃、沸点 208℃の白色半透明のロウ状の昇華性結晶であり、強く刺すような樹脂系の香りを持つ。水に溶けず、アルコールなどの有機溶媒に溶ける。クスノキの木片を水蒸気蒸留して製する。
セルロイドや無煙火薬の製造原料、香料・防虫剤・医薬品などに用いる。分子式は C10H16O。カンフルあるいはカンファーと呼ばれることもある。

【樟脳玉】
樟脳を玉状にしたもの。水に浮かべて点火しても消えたり熱くなったりしないので、明治頃まで子供の玩具にされた。長太郎玉とも呼ばれる。
syounoudama

市販の樟脳を丸く削って手のひらに乗せ、マッチで火をつけます。じっとしているとやけどしますが、手のひらの上で絶えず転がしているとそれほど熱さを感じません。
[画像出典:http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/ypc/ypc982.htm]

【樟脳舟/樟脳船(しょうのう舟)】
樟脳を小さくカットして船尾に付けた木製もしくはセルロイド製の小船を水面に浮かべると、後方の水面に樟脳の成分が拡がり、表面張力の差によって前方に引っ張られ船が進む。時として予測できない動きもする。1970年代中期位までは縁日の露店等でよく売られていたシンプルで安価な玩具であった。

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