あらすじ
我孫子屋という安宿の番頭、酒が好きで客の前で飲んではならないと命じられたが、客室へ行って酒から目をそむけていたため、かえって好きなことを見抜かれ、とうとう飲んでしまう。
客は駒形という名で、世話になった宿の女・お蔦(つた)さんを捜しているという。
まるでこれは「一本刀土俵入り」だと、酒の入った番頭が芝居を熱演。
腹の減った駒形茂兵衛にお蔦が「この握り飯、持って行ってお食べ」と恵んでくれる。
やがて戻ってきた茂兵衛が……というところでお酒が亡くなると、番頭は自分のためのお代わりを催促に下へ降りる。
その番頭を捕まえて下の親子連れの客が出発したいと言い出す。
悪い奴にだまされ、借金を負わされて逃げているが、その高利貸しの手下が表を通ったというのだ。
同情した番頭は、逃げるための費用から弁当の握り飯まで用意してやる。
ところが、上の駒形さんが下の親子連れを捕まえた。実は駒形さんは刑事で、詐欺を働いているこの親子連れを追っていたのだ。
番頭は子供に握り飯を与え、
「大きくなったら、父ちゃん母ちゃんに親孝行出来るようにするんだぜ。この握り飯持っていって食いねえ」
「番頭さん、出来たな。一本刀土俵入りだな」
「なあに、結びの一番でさ」
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