『ハヤブサ消防団』は、池井戸潤による小説で、主人公が東京から移住し消防団に入団するところから始まる田園ミステリーです。物語は、主人公三馬太郎が東京の生活に見切りをつけ、亡き父の故郷である八百万町ハヤブサ地区に移住し、消防団に入団するところから始まります。彼はのどかな田舎生活を送るはずが、連続放火事件や太陽光発電開発、新興宗教といった謎に巻き込まれていきます。
この物語の核心は、連続放火の背後にあるソーラーパネル販売業者と新興宗教団体オルビス・テラエ騎士団との関係にあります。火事に遭った家々が、金に困って土地をソーラーパネル販売業者に売却していたことが判明します。さらに、この販売業者は新興宗教の資金集めのために活動していました。物語は展子という人物とその過去、そして彼女と新興宗教団体との関係にも焦点を当てています。
この作品は、閉鎖的な田舎が舞台の土着ミステリーとして描かれており、自然の美しさや消防団との交流など牧歌的なエピソードと、サスペンス要素が組み合わさっています。特に、ハヤブサ地区の自然が太陽光パネルに侵され、新興宗教によって住民が浸食される描写が印象的です。また、登場人物が皆怪しく描かれており、田舎生活のリアリティと荒唐無稽な真相が融合している点が評価されています。
ドラマ版では、中村倫也が主演を務め、川口春奈が共演します。その他のキャストには満島真之介、古川雄大、岡部たかし、梶原善、橋本じゅん、山本耕史、生瀬勝久などが名を連ねています。さらに、重要な役割を担う江西佑空役には麿赤兒、映子役に村岡希美、山原展子役に小林涼子、賀来武彦役に福田転球、村岡信蔵役に金田明夫などが出演しています。
時短.ネタバレあらすじ.イッキ要約
八百万町(やおろずちょう)ハヤブサ地区の静かな風景の中、物語は幕を開ける。主人公はスランプに陥ったミステリー作家、三馬太郎(みまたろう)。彼は子供時代を過ごした、亡き父から受け継いだ古い屋敷「桜屋敷」に戻ることになる。長年東京での生活に慣れ、その屋敷の存在を忘れていた太郎だったが、不動産会社からの通知を受けて、久しぶりに足を踏み入れる。その瞬間、彼は周囲の美しい田園風景と家の雰囲気に心を奪われ、東京のマンションを解約し、ここに移住する決心を固める。
太郎の新生活は、地元の自治会主催の飲み会への参加から始まる。この飲み会で太郎は、ハヤブサ地区の温かい歓迎を受け、あっという間に消防団への加入が決まる。しかし、その加入式の最中に不審火が発生し、太郎はこの地域に隠された秘密に気づく。最近になって不審火が頻発しており、今回が3件目だったのだ。地元の不良、山原浩信に疑いの目が向けられるが、太郎は真の放火犯は別にいると確信する。
放火事件はエスカレートし、重要な村人たちの家も次々と被害に遭う。そして、山原浩信の遺体が発見される。太郎は、この謎を解き明かすため、地元の映像クリエイター立木彩、消防団員山原賢作、寺の住職江西佑空(えにしたすく)らと協力し、調査を進める。彼らはやがて、ソーラーパネル会社の営業マン、真鍋明光が怪しいと目をつける。しかし、真鍋には完璧なアリバイがあった。
深い調査の末、彼らは真鍋の会社が実はカルト教団と繋がっていることを発見する。この教団は、教団の残党によって運営されており、ハヤブサ地区での放火事件に深く関与していた。教団はこの地域を「聖地」と見なし、そこに施設を建て布教活動を再開しようとしていたのだ。
太郎たちは、教団がなぜハヤブサ地区の土地を欲しがるのか、その理由を探る。教団の目的は、かつての信者である山原展子の出身地であるこの地に、彼女をまつる施設を建てることだった。そして、真の放火犯は真鍋であり、村の不良・山原浩信は無実だったのだ。
物語はクライマックスに近づくにつれ、太郎は教団に目をつけられ、彼と映像クリエイターの立木彩は教団の標的になる。太郎は彩を救い、最後の戦いに挑むことになる。そして、消防団員たちの支援を受けながら、真鍋や他の信者たちに法の裁きが下されるという解決へと導かれる。
太郎たちの物語は、いよいよ壮大なクライマックスへと突入する。
教団が企てる皆既日食の日に彩を聖母に祭り上げる儀式を阻止すべく、太郎とその仲間たちは行動を開始する。しかしこの重要な時、彩は教団に完全に洗脳され、聖母としての役割を喜んで受け入れてしまっていた。
太郎は江西住職と映子さんから、山原展子の過去や教団の暗部についての知識を深め、その知識を武器に、一晩で小説『聖母アビゲイルと呼ばれて~山原展子の生涯~』を書き上げる。この小説を読ませることで、彩の洗脳を解くことが太郎の目的だった。
そして皆既日食の日がやってくる。小説を読んだ彩は、太郎と教団との間で激しい葛藤に陥る。答えを見つけられずにいた彩は、教団のイベント会場へ向かうが、途中で山原展子の幻影に遭遇する。彼女の悲しい過去を知った彩は、ハヤブサ地区で太郎と共に平穏な生活を望むようになり、儀式を放棄して役所へ向かい、放送を通じて教団の罪を暴露する。
この行動により、教団は解散状態に追い込まれるが、追い詰められた真鍋が彩を襲撃する。太郎は彩を庇い、ショットガンで重傷を負う。一方、教団のトップである杉森弁護士は、居酒屋で名物料理を堪能した後、逮捕される。
……時は流れ、太郎はベストセラー作家に。
彼の新刊『翠色の鍵』を手にした女性が現れるが、彼女は教団の新たな聖母「アビー」として活動しており、教団は東京へと拡大していた。彩は罪を隠蔽したために拘置所に送られ、太郎には謎の手紙が届く。
太郎は消防団の訓練に参加し、平和な日常を送る。彼はこの穏やかな日々が永遠に続くことを信じて、物語は幕を閉じる。
コメント