あらすじ
さる殿様のお城に使える三太夫は、来る度に殿に胡散臭いものを売りつける古商人の吉兵衛のことが気に入らないでいる。
すると、そこへその吉兵衛が懲りずにやってきて、今度は「初音の鼓」という品を持ってきたという。
初音の鼓といえば、源九郎狐の親の雄狐雌狐の皮が張られており、源義経が静御前に与えたとされる本物であれば何百金にもなる由緒正しい品であるのだが、今までの例から考えても三太夫はどうも本物とは思いがたい。
そこで吉兵衛に聞いたところ、「正真正銘本物の…贋物でございます」と答え、これを本物だと思い込ませるために三太夫に一芝居打ってもらうよう頼み込む。
その内容というのは、初音の鼓には「『ポン』と一つ打つと、傍らにいるものに狐が乗り移り『コンッ』と鳴く」というものであり、もしやってくれるのであれば1回鳴くごとに1両さしあげることにすると三太夫は意外にも承諾する。
さて、そんなわけで殿のところへこれを持っていき、三太夫が一芝居打ったことで殿は本物だと確信し、100両で買うことを約束する。
だが、その前に吉兵衛が鼓を打って自分にも狐が乗り移るかやってみてくれと頼まれたため、吉兵衛は焦りを覚える。
ところがいざ吉兵衛が鼓を打ってみると殿が「コンッ」と鳴いたのである。
その後、何度打っても殿が鳴くため、この鼓は贋物だと思っていたが本物だったのかと感動すると同時に今までの自分の行いに恥ずかしさを覚える。
と、それはさておき肝心のお勘定をしてもらうと、殿からもらった包みには1両しか入っていない。
吉兵衛がお代は100両だと確認をすると、殿は
「よいのじゃ。余と三太夫の分の鳴き賃が差し引いてある」
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