★古今亭志ん生(五代目)駒長(こまちょう)

古今亭志ん生(五代目)

ほうぼうに借金だらけの長兵衛とお駒の世帯。もうにっちもさっちもいかない。
長兵衛が一計があるという。

深川に住んでいる上方者の損料屋の丈八をおどして金を巻き上げ逃げ出してしまおうという。
計略とは、丈八がお駒に惚れているので、お駒に丈八への手紙を書かせる。
丈八と前から内緒で会っていることにし、また会いたいという内容だ。

その手紙をお駒が落としたところを長兵衛が拾い、丈八が損料を取り立てに来るのを見計らって夫婦喧嘩を始める。
丈八が来たら、間男の証拠の手紙を見せ脅して金品を巻き上げて遠くへとんづらをきめこむという寸法だ。

いやがるお駒を相手に稽古を始める。
「この女(あま)、太え女だ。男の面に泥を塗りやがって……」
「お前さん、ごめんなさい」
こんな調子だ。

そろそろ表に丈八が来たような足音で、本番の夫婦喧嘩を始める。
すると、「お稲荷さんのお札はいかがでございましょうか」
と拍子抜け。

また誰か来た。
今度は丈八のようだとまた喧嘩を始めたらこれが海苔屋の婆さん。
お駒は2度も殴られ損だ。

三度目の正直でやっと丈八がやって来た。
長兵衛がお駒を殴っているのを見て止めに入るが、自分も長兵衛から殴られる。
「この間男野郎、この始末をどうつけてくれるんだ」と長兵衛は脅しにかかる。

びっくりしている丈八に証拠の手紙を見せ、お駒との仲を取り持ってくれた親分の所へ行って、事の顛末を話してからてめえたち二人を重ねて四つ切りにしてくれるなんて息巻いて家を飛び出して行った。

後に残った二人、丈八はみすぼらしい着物を着、殴られてみじめなお駒に声をかけ、日頃からのあまりの長兵衛のやり方に見かねているという。
お駒も本当はあんな人とは別れたいのだが、長兵衛がいやがって離れない、丈八さんみたいな親切な人と夫婦になりたいと打ち明ける。

これを聞いた丈八も前からお駒のことを憎からず思っていたので、一緒に上方に逃げようということになる。
丈八はお駒に損物の着物、帯、羽織を着させる。
お駒は長兵衛に火鉢の上に置手紙をして、二人で手に手を取って「はいさよなら」

一方の長兵衛は、親分のところではなく、友達の家で一杯やって時間をつないで頃合を見計らって家に戻るつもりが、飲み過ぎてそこで寝込んでしまい夜が明けてしまった。
あわてて家へ飛んで帰るともぬけの殻だ。

火鉢の上に置手紙。
お駒が丈八をどこかに連れて行ったのでその連絡の手紙だなんてまだ呑気だ。

「嘘から出たまこと。丈八様をお慕い申しそうろう。それに引き換えお前の悪性。つくづくいやになりました。ああいやな長兵衛づら、ちいちいぱあぱあ数の子野郎。丈八さんと手に手を取り長の道中変わらぬ夫婦とあいなりそうろう…………書き残したき事数々あれど先を急ぐ旅ならば。あらあらめでたきかしこ」

手紙を読んだ長兵衛は出刃包丁を持って「こん畜生」と表へ飛び出す。

すると、向うの屋根のカラスが長兵衛の顔を見て

「あほう、あほう」

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