描かれたメッセージを暴け! 本当は怖い!世界の名画ミステリー
著書「怖い絵」シリーズがベストセラーの美術評論家の中野京子先生。
中野先生が、名画に込められた様々なメッセージを解き明かします!
聖ルチアの絵には必ず描かれている「ある怖いもの」
今から1700年前に実在したとされるキリスト教の聖人・聖ルチア(283-304年)。
彼女が生きたのは西暦200年代後半の時代。
たくさんの画家が彼女を描いていますが、そのほとんどの絵に「あるもの」が登場します。
聖ルチアの絵に、必ずと言っていいほど描かれている「怖いもの」それは「目玉」。
[出典:https://ameblo.jp/asonde-spain/entry-11110014341.html]
増え続けるキリスト教徒に脅威を感じたローマ帝国は、キリスト教徒を激しく迫害しました。
数々の拷問を受けたにもかかわらず、信仰を貫き通した聖ルチアは、最後は両目をえぐられ処刑されました。そのため彼女の絵には、悲しげな目が描かれた絵が多いです。
没落した貴族が家を出ていく絵
イギリス・ヴィクトリア朝 マルティノーが描いた「懐かしい我が家での最後の日」という絵があります。
[出典:http://nagisa20080402.blog27.fc2.com/blog-entry-373.html]
描かれているのは、資産家の貴族が破産して、これから家を出なくてはいけない場面です。
祖母に執事が鍵を返し、たった5ポンドしか渡せないことを泣いています。
右下には有名なオークション会社の目録が落ちていて、差し押さえを意味する品番ラベルが椅子や絵画などに貼られています。
この絵の中には一家が没落した原因が描かれているのですが、それは左下に描かれている「馬の絵画」。
つまりこの絵が暗示しているのは、主人が競馬などのギャンブルにのめり込んで全財産を失ったということ。
「破天荒にお金を使うとこうなる」という教訓画なのです。
画家がこの絵を描く際に、ある貴族の家を使わせてもらったのですが、この絵が描かれてしばらくしてから、その貴族が破産しました。
破産の理由はおそらくギャンブルではないか、と言われています。
ローマ史上最悪の暴君・ヘリオガバルスの楽しみ
イギリスの写実画家アルマ=タデマの「ヘリオガバルスの薔薇」という絵。
[出典:http://free-artworks.gatag.net/2013/09/11/090000.html]
薔薇の花びらが美しく舞う様を楽しんでいるように見えるのは、ローマ皇帝ヘリオガバルスと取り巻きたちです。
実はこれ、「人が窒息するのを鑑賞している」場面なのです。
ヘリオガバルスたちは、大量の薔薇の花びらを乗せた巨大な幕を、客席の頭上に張って客を招きました。
そして、招いた客がやって来るとその幕を下ろし、客が薔薇の花びらに溺れ窒息死する姿を見て楽しんだと言います。
ヘリオガバルスは、ローマ史上最悪の暴君と言われていて、14歳で皇帝になり、18歳で暗殺されました。
ヘリオガバルスは、第5代ローマ皇帝・ネロと並ぶ暴君として有名です。
美しく死ぬためにクレオパトラがしたこと
フランスを代表する歴史画家・カバネルが、古代エジプト王朝最後の女王・クレオパトラ7世を描いた作品。
[出典:http://art.pro.tok2.com/C/Cabanel/caba009.htm]
彼女の視線の先には、「ある怖い光景」が描かれています。
作品の題名は「死刑囚に毒を試みるクレオパトラ」。
クレオパトラは「毒殺されている死刑囚」を見ていたのです。
実は彼女は、人体実験で毒の効果を試していました。
その理由は「美しく死ぬ」ためです。
クレオパトラは、見苦しい死にざまを見せずに短時間で死ぬことができる毒を求め、死刑囚に様々なヘビの毒を試していたと言われています。
そのエピソードを基に描かれたのがこの絵で、最終的に彼女は、コブラに胸を咬ませて自殺したと伝えられています。
顔の見えない人物を描く画家の人生
ベルギーの国民的画家「ルネ・マグリット」は、まるで夢の中のような独特な世界を描くシュールレアリスムの巨匠として知られています。
芸術家というと破天荒なイメージですが、彼は銀行に勤めていた庶民派で、アトリエは構えず家の食堂で絵を描いていました。
しかし、そんなマグリットの作品の中には、人の顔に布が被せられていたり、顔を花で隠されていたり、顔の見えない不気味な人物が登場します。
実はその背景には、マグリットの少年時代に起きた「ある出来事」が、深く影響していると言われています。
マグリットが顔の見えない絵を描くきっかけとなった出来事とは「愛する母親の自殺」。
彼が13歳の時のある夜、精神を病んでいたマグリットの母が、家を抜け出して行方不明になりました。
見つかったのはそれから2週間後の事で、近くの橋から川に身を投げたマグリットの母は、着ていたガウンが首に絡みつき、顔が覆われた状態で発見されたのです。
幼い子どもが見るにはあまりにもショッキングな姿で、そのときの印象が強烈に残ってしまったためか、マグリットの作品には顔の見えない人物が度々登場します。
死を連想する暗いイメージが多いのは、この事件が影響したためと言われています。
子どもは、親の不幸を自分のせいだと思ってしまうところがあるので、すごいトラウマになったのかも知れません。
[出典:2017年2月18日放送の「世界一受けたい授業」]
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