子別れ(こわかれ)は古典落語の演目の一つ。
柳派の初代春風亭柳枝の創作落語で、3代目麗々亭柳橋や4代目柳家小さんの手を経て磨かれた人情噺の大ネタである。
別題は「子は鎹」「強飯の女郎買い」「子宝」「逢戻り」等多数。
主な演者には、5代目古今亭志ん生や6代目三遊亭圓生、5代目柳家小さんなどがいる。
上方では2代目桂ざこばが演じている。
下・あらすじ
あれから三年の月日がたった。
あの日以来、眼が覚めた熊さんは断酒をし、一生懸命になって働いた。元々腕が良いこともあり段々信用もついて、なんとか身を持ち直していた。
八月のある日。出入り先の番頭さんに「木口を見に」と乞われ、熊さんは番頭さんと一緒に木材の選定をしに木場へと出かけていく。
その途中、とある街角に差し掛かったとき…「オヤ」といち早く気がついた番頭さんが熊さんをうながす。
「あっ!ありゃあうちの亀です!」
三年前、自分の過ちで放り出してしまったわが子が友達と遊んでいる。
番頭さんに時間をもらい、熊さんは亀に声をかけた。
「お父っつぁんじゃないか!」
話を聞くと、あれ以来、お光は女の身とて決まった仕事もなく、炭屋の二階に間借りして、近所の仕立て物をしながら亀坊を育てているという。再婚話に耳も貸さず、母子二人でつましく暮らしている様子だ。
面目ない思いでいっぱいになった熊さんは、せがれに五十銭の小遣いをやって「明日、もう一度会って鰻をご馳走する」と約束してその場を去った。
別れ際に、『俺と会った事はおっかあには内緒にしろよ』と告げて…。
一方、家に帰った亀坊は、もらった五十銭を母親に見つかり、厳しい詰問を受ける事になった。
親父と『男の約束』をしている亀は本当のことが言えず、「知らないおじさんにもらった」とごまかすが、もの堅い母親は聞き入れようとしない。
とうとう思いつめてしまい、夫の『形見』である金槌を振り上げ、「貧乏はしていても、おっかさんはおまえにひもじい思いはさせていない…これでぶてば、おとっつあんが叱るのと同じ事だよ。さ、どこから盗ってきたか言わないか」
泣いてしかるものだから、亀は隠しきれずに父親に会ったことを白状してしまう。
それを聞いたお光、『ぐうたら亭主が真面目になった』ことを知り、こちらもうれしさを隠しきれないが、やはり、まだよりを戻すのははばかられる。
その代わり、翌日亀坊に精一杯の晴れ着を着せて送り出してやるが、自分もいても立ってもいられず、そっと後から鰻屋の店先へ…。
「お光…さん」
「お久しぶりでございます」
「本当だな」
相撲の取り組み見たい見詰め合ったまま、お互いは動こうとしない。
とうとしびれを切らした亀が、「もう一度一緒に暮らそう…そういいたいんでしょ?仲直りしておくれよ」。それがきっかけで、ようやく二人は話し出す。
「昔から、『子は鎹』と言うが本当だな」
「えぇ」
しみじみとなる夫婦に、横で見ていた亀が一言こう言った。
「『子は鎹』…か。道理で、おいらの事、トンカチで打つって言ったんだ」
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