★古今亭志ん生(五代目)お血脈(おけちみゃく)

古今亭志ん生(五代目)

お血脈(おけちみゃく)は古典落語の演目の一つ。
会話劇の形態をとる落語の中にあって、セリフがほとんどなく、演者の地の語りを中心に進めるタイプの噺を『地噺』と言うが、これはその代表格。
かつては10代目桂文治が得意とし、現在は6代目三遊亭円楽が十八番としている。

なお背景描写や時代背景、くすぐりは地獄八景亡者戯に似ている。
本編自体が比較的短い噺ということもあり、大抵の演者は本筋に入る前に、舞台となる信濃国は善光寺の縁起を入れて、一席の噺としている。
大筋は一般に流布している善光寺縁起を踏んでいるが、落語であるから、本当かどうかわからない誇張だらけになる。

女性を『外面如菩薩内面如夜叉』などと言う物凄い酷評をしたお釈迦様が、修行の末に開いた仏教が日本に伝来したのは遠く飛鳥時代のころ。
当時、日本は『神国』と呼ばれており、突然やって来た仏教は神道を信仰していた当時の人々にとってはカルチャーショックで拒否反応も出る。

中でも怒ったのが物部守屋と言う男で、仏教と一緒に渡ってきた《閻浮檀金(えんぶだごん)》の仏像を「こんな物居らん!」と言って鍛冶屋を雇い破壊しようとしたのだ。
ところが、この閻浮檀金(えんぶだごん)と言うのが現在で言うプラチナだったせいかなかなかぶっ壊れず、ヤケになった守屋は仏像を簀巻きにして難波ヶ池に放り込んでしまった。

それから幾年、ある晩本田善光と言う男が難波が池のそばを通った際、水中から自分の名を呼ぶ声を耳にする。何だろうと思い、引き上げてみるとこれがなんと白金製の仏像。
お釈迦様が、『信州に行きたい』と言ったのを聞いた善光が、仏像を信州に運んで建立したのが善光寺。

あらすじ

善光寺に【お血脈】と言う名のハンコがあった。
これは一種の免罪符で、浄財百疋(一疋=二十五文)を払って額にスタンプしてもらうと、どんな罪を犯していても極楽往生ができるという大した代物。
「極楽行き大安売り」のお血脈が大流行したおかげで、世の亡者は猫も杓子も極楽へ行ってしまう。
地獄は開店休業状態、鬼どもが喰うに困って往生しそうな不景気に、頭を抱えた閻魔大王は緊急会議を招集した。

そこで見目嗅鼻(みるめかぐはな)なる知恵者の鬼が、【お血脈】の件をご注進する。
「こいつを盗んでしまえば、地獄にまたお客が来るでしょう」
閻魔大王、すっかりその気になってしまい、【お血脈】奪取の為の人材集めを開始した。

幸い、ここは地獄であるから泥棒の人材ならごまんと所属している。あれは駄目、これは駄目と協議した結果、白羽の矢が立ったのがかの有名な大盗賊・石川五右衛門。
生前、豊臣秀吉の生首欲しさに伏見城へ忍び入り、鴬張り(千鳥の香炉とも)のお陰で捕縛された五右衛門は、その最期を終えた油の煮立った釜で、地獄に来てからも汗を流しつつ「石川や~」とかなんとか唸っている。

大王の使いが事の次第を伝えると、五右衛門先生風呂から上がり、張り切って黒の三枚小袖、朱鞘の大小、素網を着て、重ね草鞋(わらじ) 、月代(さかやき)を森のごとくに生やし、六方を踏みながら大王のもとに乗り込んできた。

話を聴き、『見事盗んで見せましょう』と請け負った五右衛門、娑婆に出てくると早速闇夜に乗じて善光寺に浸入。宝物殿に入って【お血脈】の捜索を開始した。ところが探しても探しても見つからない、とうとう諦めて帰ろうとすると、頭上の棚になにやら小さな箱がある。
開けてみるとまた箱、開けてみるとまた……と言うマトリョーシカみたいな箱を開け、中身を見るとまごう事なき【お血脈】。

そのまま盗んで消えればよかったものの、元々芝居好きだった五右衛門先生、有職鎌倉山の泥棒権平のノリで――

「アァありがてえ、かっちけねえ。まんまと善光寺の奥殿へ忍び込み、奪い取ったるお血脈の印。これせえあれば大願成就、アァありがたや、かっちけなやァァ!」

と押し頂いたもんだから、自分が極楽へ、スーッ……

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