★柳家小さん(五代目)粗忽の釘

柳家小さん(五代目)

5代目柳家 小さん(やなぎや こさん、1915年〈大正4年〉1月2日 – 2002年〈平成14年〉5月16日)は、長野県長野市出身の落語家。
本名、小林 盛夫(こばやし もりお、4代目桂三木助の本名と同姓同名)。出囃子は『序の舞』。
1995年、落語家として初の人間国宝に認定された。
剣道家としても知られ、段位は範士七段。
息子は落語家の6代目柳家小さん。
娘は元タレントの小林喜美子。孫は元バレエダンサーで俳優の小林十市と、その弟で落語家の柳家花緑(二人の母が喜美子)。

●来歴・人物
生い立ち
実父は、東京都五日市町出身で養蚕家であったが、長男ではなかったため家を出る。
長野市で紡績業、次いで金融業を営むも破産し、東京・浅草に戻った。
学校卒業後、法律事務所の事務員として働きながら、落語家を目指した。

●二・二六事件
前座時代の1936年(昭和11年)、陸軍歩兵第3連隊に徴兵され、二等兵となる。
同年2月26日に起こった二・二六事件では、反乱部隊の兵卒として警視庁占拠に出動した。
小さんはクーデター計画を知らず、上官の命令のまま警視庁に機関銃を向けていた。

反乱部隊の屯所に畑和(後の埼玉県知事)らとともに詰めており、上官命令で落語を一席させられた。
『子ほめ』を演じたが、反乱の最中で緊張でピリピリしている兵士達が笑うわけがない。
「面白くないぞッ!」のヤジに、「そりゃそうです。演っているほうだって、ちっとも面白くないんだから」と返した。

●落語
滑稽噺を専ら得意とし、巧みな話芸と豊富な表情で、1979年に6代目三遊亭圓生が死去してからは落語界の第一人者となる。
特に蕎麦をすする芸は有名であり、日本一であるとの声も多い。
本人も蕎麦を実際に食する際には、職業柄周囲の目を意識して落語の登場人物さながら汁を蕎麦の端にのみ付けていたらしく、最晩年になってから、「汁を最後まで付けてみたかった」とこれまた登場人物さながらの後悔を語った。

性格は非常に穏やかなもので、真打昇進の制度を作ったのも「落語家の生活がよくなるように」 と言う願いからであった。
そのため真打制度への見解の相違から6代目三遊亭圓生らが落語協会を脱退した時は「話し合いにも来ないで」と感じていた。
また、弟子が居ない時は一人で掃除や洗濯をするなど苦労を拒まない性格でもあった。
永谷園即席みそ汁「あさげ」のテレビCMで発売当初から人気を博した。

また、墓所・墓石業の須藤石材のテレビCMと広告でも長らく活躍した。
永谷園のCFも、須藤石材のテレビCM・広告も、死後、孫の柳家花緑が跡を継いでいる。
墓の案内看板に「これより二つ目 柳家小さん」と書かれていたため、これをネタにした落語家もいた(現在は「二基目」と書き直されている)。
息子の6代目柳家小さんは、「初々しくて良いのではないか」というニュアンスの発言を著書で行っている。

●剣道家として
13歳の頃から剣道を学んだ。
職業剣道家を目指すも中耳炎で断念したが、生涯を通じて剣道を続け、範士七段まで昇段した。
剣道専門誌の『剣道日本』に度々掲載され、「落語と剣道、どっちが好きかって聞かれたら、剣道って言いますよ」と語っていた。
財団法人東京都剣道連盟の顧問を務め、また、自宅を改装して道場を作り、弟子たちに剣道を教えた。
弟子の一人、柳家小団治は現在剣道七段である。
剣道の他にも居合道や二天流剣術をも学んでおり、造詣が深かった。

●エピソード
本名が同じ「こばやし もりお」である縁で、8代目三升家小勝(表記は小林守巨)に稽古をつけたことがある。
同じく人間国宝である3代目米朝と「落語国宝二人会」を開催したり、息子の柳家三語楼(現:6代目柳家小さん)・孫の柳家花緑と親子三人会をやったことがある。

米朝が人間国宝に認定されたとき、記念番組で「落語界の今後のために、互いに精進していこう」と祝いのコメントを出した。
その後、前述の落語会やいくつかの番組で共演をしている。
1996年、高座の合間に上野広小路でマッサージを受けている最中に脳梗塞を発症した。

この時、たまたま同室の客が東京大学の医師で迅速な対処を受けることができたため、後遺症が比較的軽く済んで高座に復帰することができた。
弟子の鈴々舎馬風は新作落語『会長への道』でこの一件に触れ、「ツイてる男は違う」と評している。

死去前夜に「ちらし寿司が食いたい」と言い出して、贔屓の寿司屋から取り寄せたすしを夕食に食べた後、「明日は稲荷寿司が食いたい」と言って寝所に入った。
翌朝起きてこないので家族が見に行くと、眠ったまま死去していた。
大往生であった。

●あらすじ

粗忽な男が長屋に引っ越して来た。
掃除をしたあと、箒を掛けるために釘を打ってくれと女房に頼まれ、長い瓦釘を壁に打ち込んでしまった。
壁を通して隣家の箪笥にでも傷つけてちゃいけないから、隣に謝って来いと女房に指示されて謝りに出掛ける。
「壁に釘を打込んだので家具でも傷つけてないか、見てください」と問うが、「何の音もしなかったので問題ない、ところであなたの家はどちら?」「おっと、筋向こうだったから、釘が届くはずがないか」 改めて隣家に尋ねてみると、瓦釘が仏壇を突き抜けていた。
ここで粗忽男がつぶやく「ありゃりゃ、ここまで箒を掛けに来るのは不便なもんだ」「冗談じゃないよ、あなた」 家族構成を問われて、元の家に父親を置き忘れたことに気が付く。
「親を忘れるとは何ということか」「親どころか、酒を飲むと我を忘れる」

※『落語400文字ストーリー』より引用
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