★古今亭志ん生(五代目)安兵衛狐

古今亭志ん生(五代目)

あらすじ

六軒長屋があり、四軒と二軒に分かれている。
四軒の方は互いに隣同士で仲がよく、二軒の方に住んでいる「偏屈の源兵衛」と「ぐずの安兵衛」、通称グズ安も仲がいい。
ところが、二つのグループは犬猿の仲。
ある日、四軒の方の連中が、亀戸に萩を見に繰り出そうと相談する。

同じ長屋だし、グズ安と源兵衛にも一応声をかけようと誘いに行くが、グズ安は留守で、源兵衛の家へ。
この男、独り者であだ名の通りのへそ曲がり。

人が黒と言えば白。
案の定、「萩なんぞ見たってつまらねえ。オレはこれから墓見に行く」と、にべもない。
四人はあきれて行ってしまう。

源兵衛、本当は墓など面白くないが、口に出した以上しかたがないと、瓢の酒をぶら下げて、谷中・天王寺の墓地までやってきた。
どうせ墓で一杯やるなら女の墓がいいと「安孟養空信女」と戒名が書かれた塔婆の前で、チビリチビリ。
急に塔婆が倒れ、後ろに回ってみると穴があいている。
塔婆で突っ付くと、コツンと音がするので、見ると骨。

気の毒になって、何かの縁と、酒をかけて回向(えこう)してやった。その晩、真夜中に「ごめんくださいまし」と女の声。
はておかしいと出てみると、大変にいい女。

実は昼間のコツで、生前酒好きだったので、昼間あなたがお酒をかけてくれて浮かばれたから、ご恩返しにきたと言う。
あとはなりゆきで、源兵衛、能天気にも、この世ならぬ者を女房にした。
この幽霊女房、まめに働くが、夜明けとともにスーッと消えてしまう。

さて、グズ安。
ゆうべ源兵衛の家の前を通ったら、女の酌でご機嫌に一杯やっていたので、翌朝、嫌みを言いに行くと、実はこれこれだという。
ノロケを聞かされ、自分も女房を見つけようと、同じように酒を持って天王寺へ。
なかなか手頃な墓が見当たらず、奥まで行くと、猟師が罠で狐をとったところ。

グズ安、皮をむいちまうと聞いて、かわいそうだと無理に頼み、一円出して狐を逃がしてやる。
その帰り、若い娘が声をかけるので、グズ安はびっくり。
聞いてみると、昔なじみのお里という女の忘れ形見で、おコンと名乗る。
実はこれがさっきの狐の化身。
身寄りがないというので、家に連れていき、女房にした。

騒ぎだしたのが長屋の四人。
最近、偏屈とグズが揃って女房を貰ったのはいいが、片方は昼間見たことがない。
もう片方は、口がこうとんがって、言葉のしまいに必ず「コン」。

これはどう見ても魔性の者だと、安兵衛が留守の間に家に押しかける。

「まあ、安兵衛は用足しに出かけたんですよ。コン」

やっぱり変。

思い切って
「あなたはいい女だけど、ひょっとして何かの身では」と、言いも果てず、狐女房、グルグル回って、引き窓から飛んでいってしまった。
こうなると、亭主の安兵衛も狐じゃねえかと疑わしい。

そこで、近所のグズ安の伯父さんに尋ねるが、耳が遠くて一向にラチがあかない。

思い切り大きな声で
「あのね、安兵衛さんは来ませんかね?」

「なに、安兵衛? 安兵衛はコン」

「あ、伯父さんも狐だ」

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