『火喰鳥を、喰う』とは?
2022年11月に角川ホラー文庫から刊行された、原浩の長編ホラー小説。舞台は長野県の旧家・久喜家。ある日、墓石が破壊され、戦死したはずの久喜貞市の名前が削り取られる。さらに、彼が従軍中に残した日記が届き、それを境に“現実が書き換わっていく”という異常が始まる。
この物語は、ホラーとミステリーの境界を曖昧にしながら、さらに「現実とは何か」という哲学的な問いを読者に突きつける。怖いのに、ページを閉じられない“読書沼”に落ちる一冊だ。
作品の魅力
1. じわじわ侵食する恐怖
幽霊がドカン!と出てくる定番ホラーじゃない。日常のディティールが、気づけば少しずつズレていく。墓石の名前が削られたり、修復されたり。人が“いたはず”なのに、痕跡ごと消えていく。こういう違和感が一番怖いって、それな。
2. “思い”が現実を壊す
戦地で死んだはずの貞市が、強烈な「生きたい」という思いを残していた。それが日記を通じて現実に干渉する。ホラーのはずが一気にSFっぽくなって、頭バグる。執着が現実を書き換えるなんて、人間の闇のエモさが爆発してる。
3. ラストの衝撃
ラストは「主人公たちは勝ったのか?」という問いが残る。完全勝利ではなく、曖昧さを抱えたまま終わるからこそ、読後感がずっとまとわりつく。SNSでも「読後のザワザワ感がやばい」とバズったのも納得。
ネタバレ注意ゾーン
ここからネタバレ注意!
久喜家で起こる異変は、幽霊の仕業ではなく「現実の書き換え」だった。つまり“戦死したはずの久喜貞市が生きていた世界”が、徐々に実体化していく。日記に「火喰鳥を喰う」という言葉が勝手に付け加えられたのは、世界改変のスイッチだった。
主人公・雄司は自分の存在すら否定されそうになり、世界から消されかける。だが超常現象に詳しい北斗総一郎の協力を得て抗う。しかし結末では、どちらが“正しい現実”かは決しない。生きたいと願う執念と、現実を守ろうとする理性。読者はその狭間に放り込まれる。
登場人物一覧
- 久喜雄司:主人公。久喜家に生まれ育ち、異変に巻き込まれていく。
- 久喜夕里子:雄司の妻。冷静で強い支え役。現実感覚を保ちながら共に戦う。
- 久喜貞市:大伯父。戦死したはずが、日記を通して“生き続ける”。
- 久喜保:雄司の祖父。異変の中で失踪。
- 北斗総一郎:超常現象に詳しい相談役。真相に迫るキーマン。
人物相関図(テキスト版)
久喜雄司──夫婦──久喜夕里子
久喜雄司…久喜保(祖父と孫)
久喜保…久喜貞市(兄弟)
久喜貞市×久喜雄司(現実を侵食する対立)
久喜雄司⇔北斗総一郎(協力者・師弟的関係)
SNSや口コミの反応
- 「じわじわ現実が侵食される恐怖が新しい」
- 「ラストの解釈が人によって違ってて語れるのが熱い」
- 「戦争の残酷さと現代ホラーがつながってて深い」
現実すらバグる感覚は、まさにSNS時代のホラー。わかりみ深すぎる。
誰に刺さる?
- 「リング」「残穢」みたいな“じわ怖”が好きな人
- SFホラーや都市伝説系のゾクゾク感を求める人
- 歴史や記憶の不確かさに興味ある人
文責:黒羽レイジ
(闇属性映画&小説オタ。@rei_black #ホラー沼)
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