富久(とみきゅう)は古典落語の演目の一つ。
初代三遊亭圓朝の創作落語で、主な演者には8代目桂文楽や5代目古今亭志ん生、8代目三笑亭可楽などがいる。
演者による違い
『富久』を語る上で欠かせない落語家といえば文楽と志ん生だろう。
文楽はすぐれた描写力で冬の夜の寒さと人情の温かさを的確に描写し、この噺を押しも押されもせぬ十八番にまで練り上げた。
もっとも当初は落語研究会で初演すると予告しながら「練り直しが不十分」という理由で何度も延期したので、
評論家の安藤鶴夫に「文楽は今日も富休」と揶揄されていた。
なお、文楽はこの噺の火事見舞いに来る客の名前を、高座で使うハンカチの中に書いて覗きながら演じていた。
対する志ん生は久蔵に写実性を求め、失業した幇間に「貧乏につぶされる事の無いバイタリティ」を与えるのに成功している。
「二人の対照性は『地』の語りでも明白であり、例えば火事で家に急ぐ場面でも文楽は「しょい、しょい、しょいこらしょっ」と様式的だが、「対する志ん生は「寒い寒い、寒いよォ。何だい、吠えるなぃ、犬め……」と、嘘も飾りもない裸の人間そのままを描いている。
また、酒にまつわる演目を得意とした8代目三笑亭可楽は、持ち前の渋い語り口と「酒乱の幇間」という久蔵のキャラクターを活かして、
「この欠点はあるが憎めない主人公とその周囲の善人たちを生き生きと描写している。
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