気の長い長さんと、むやみに気短な短七の二人は幼なじみ。
性格が正反対だが、なぜか気が合う。
ある日長さんが短七の家に遊びに来て、
「ゆうべええ、よなかにいい、しょんべんが、でたく、なって、おれがあ、べんじょい、こおう、よろうと、おもって、あまどをお、あけたら……うーん、はえええ、はなしがあ」
とスローテンポで始めたから、短七、ちっとも早かねえと、早くもイライラ。
星が出ていなくて空が真っ赤だったから、明日は悪くすると雨かなと思ったら、とうとう今日は雨が降っちゃったと、ただそれだけのことを言うのに、昨夜の小便から始めるのだからかなわない。
菓子を食わせれば食わせたで、いつまでもモチャモチャやっているから、じれた短七、腐っちまうと、ひったくって自分で丸のみ。
長さん、煙草を吸いだしたはいいが
「たんしっつぁんは、きが、みじかい、から、おれの、することが、まどろっこしくて、みて、られない」
言いながら、悠然と煙管に煙草を詰めてから、火玉を盆に落とすまで、あまりに間延びしているので、それじゃ生涯かかっても煙草に火がつきゃしないと
「煙草なんてもなァ、そう何服も何服もね、吸殻が皿ん中で踊るほどのむもんじゃないんだよ。
オレなんか、急ぐときなんざ、火をつけねえうちにはたいちまうんだ」
と、短七、あっという間に一動作やってしまう。
気のいい長さんが感心してると、あまりせっかちすぎて、火玉が自分のたもとに入ってしまうが、そそっかしいので一向に気がつかない。
これを見た長さん、
「これでたんしっつぁんは、きがみじかいから、しとにものォおそわったりすると、おこるだろうね」
「ああ、大嫌いだ」
「おれが、おしえても、おこるかい?」
「おめえとオレとは子供のころからの友達だ。オレに悪いとこがあったら教えてくれ。怒らないから」
「……ほんとに、おこらないかい? そ、ん、な、ら、いうけどね、さっき、たんしっつぁんが、にふくめの、たばこを、ぽんとはたいた、すいがらね、たばこぼんのなかィはいらないで、しだりのたもとんなかィ、すぽおっと、はいっちまやがって、……だんだんケムがつよくなってきたが、ことによったら、けしたほうが」
「ことによらなくたっていいんだよ。何だって早く教えねえんだッ。みろ、こんなに焼けっ焦がしができちゃった」
「それみねえ、そんなにおこるからさ、だからおせえねえほうがよかった」
[出典:落語あらすじ事典 千字寄席]
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