代脈(だいみゃく)は、古典落語の演目の一つ。
原話は、元禄10年(1697年)に出版された笑話本「露鹿懸合咄」の一編である「祝言前書」。
主な演者には、6代目 三遊亭圓生や3代目 古今亭志ん朝、3代目 桃月庵白酒、上方では6代目 笑福亭松鶴や3代目 笑福亭仁鶴などがいる。
あらすじ
江戸・中橋の古法家(漢方医)である尾台良玄は名医として知られていたが、弟子の銀南は、師に似つかわぬ愚者で色情者。
ある日のこと。
良玄が、病に伏せている蔵前の大店・伊勢屋のお嬢さまのもとに代脈に行くよう、銀南に命じた。
銀南は、代脈を材木と聞き違え「かついでまいりますか、しょってまいりますか」と、尋ねるほどの間抜けぶり。
良玄「この間のこと、お嬢さまはどういう具合かひどく下っ腹が堅くなっておった。しきりに腹をさすって、下腹をひとつグウと押すと、なにしろ年が十七で」
銀南「へえ」
良玄「プイとおならをなすった。お嬢さまがみるみるうちに顔が赤くなって恥ずかしそうだ。そこは医者のとんちだ。そばの母親に『陽気のかげんか年のせいで、この四、五日のぼせて、わしは耳が遠くなっていかんから、おっしゃることはなるたけ大きな声でいってくださいまし』と話しかけて、お嬢さまを安心させた。そんなことにならぬよう、下腹などさわるでないぞ」
良玄は十分に注意を与え、銀南を若先生ということにして、代脈に行かせた。
銀南は伊勢屋でしくじりを重ねたあげく、手、舌などを見る。
しまいには、お嬢さまの下腹を押してしまう。
「プイッ」
お嬢さまが、みるみる赤い顔に。
銀南は良玄をまねて「どうも年のせいか四、五日耳が遠くなって」と、やったはいいが、手代に
「大先生も二、三日前にお耳が遠いとおっしゃってましたが、若先生も……」
といわれ、銀南は
「いけないとも。ちっとも聞こえない。いまのおならさえ聞こえなかった」
コメント