あらすじ
借金で首が回らなくなった夫婦。
なかでも難物は、五十両という大金を借りている深川の丈八という男だ。
この男、実は昔、この家の女房、お駒が深川から女郎に出ていた時分、惚れて通いつめたが振られて、今の亭主の長八にお駒をさらわれたという因縁がある。
ははあ、野郎、いまだに女房に未練があるので、掛け取りに名を借りて、始終通って来やがるんだ、と長八は頭にきて、
それなら見てやがれと、渋るお駒を無理やりに説き伏せ、一芝居たくらむ。
お駒に丈八へ恋文を書かせ、それが発覚したことにして、丈八が来る時を見計らってなれ合いの夫婦げんかをする。
慌てる丈八にどさくさに二、三発食らわして、こんな女は欲しいならてめえにくれてやる、とわざと家を飛び出す。
その間に、今度は本当にお駒を丈八に口説かせ、でれでれになったころ合いを見計らって踏み込む。
「不義の現場押さえた」とばかり出刃包丁で脅しつけ、逆に五十両をふんだくった上に裸にむいてたたき出すという、なかなか手の込んだもの。
序幕はまったく予定通り。
「こんな女ァてめえにくれてやるが、仲へ入った親分がいるんだから、このままじゃあ義理が立たねえ。これから相談してくるから、帰るまでそこ動くな」
尻をまくって威勢よく飛びだした長八だが、筋書きがうまくいって安心したか、間抜けな奴もあるもの、親分宅で酒を飲みながら時間をつぶすうち、ぐっすりと夜明けまで寝込んでしまった。
さて、第二幕。
こちらは長八の家。
丈八は上方者で名うての女たらし。差し向かいでじわじわ迫る。
「わいと逃げてくれれば、この着物も、これもあんたのもん」
とやられると、お駒も昔取った杵柄。
つくづく貧乏暮らしが嫌になり、あんな亭主といては一生うだつが上がらない、この上は、と急きょ狂言を書き直し、長八が帰らないのを幸い、丈八といつしか一つ床に。
あげくに夜が明けぬうち、家財道具一切合切かき集め、手に手を取ってはいさようなら。瓢箪から駒。
翌朝、長八が慌てふためいて家に駆け込んでみると、時すでに遅く、モヌケのカラ。
火鉢の上に書き置き一通。
「遂には、うそがまことと相なりそろう。おまえと一緒に暮らすなら、明くればみその百文買い、暮るれば油の五勺買い。朝から晩まで釜の前。そのくせヤキモチ焼きのキザ野郎。意気地なりの助平野郎」
「丈八さんと手に手を取り、二世も三世も変わらぬ夫婦の楽しみを……」
あのあまァ、どうするか見てやがれッ、と出刃を持って飛びだすと、鴉が上で
「アホウ、アホウ」
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