あらすじ
長屋に一軒の空き家があり、みんなで物置代りに使おうということで、誰かが借りに来たら、一番古株の杢兵衛さんが差配になりすまして怖い話をして追い返すことにした。
話の筋はこうだ。
あの空き屋には以前後家さんが一人で住んでいたが、ある夜、強盗が押し入って胸を刺されて、部屋は一面血の海となり、後家さんは殺されてしまった。
それ以来、新しい借り主が住み込むと、三日目の雨の夜に化けて出て来るのだと。
一人目は気弱そうな男で、怪談話をして怖がらせたところで冷たい濡れ雑巾で頬をなでると、驚いて一尺も飛び上がり、財布を落として逃げて行った。
うまくいったと喜んで、二人目にも同じように怪談話をするが、威勢のいい職人でちっとも怖がらない。
逆に面白がって、店賃が只ならすぐに引っ越して来ると言い残して帰っちまった。
「ところで財布を落さなかったかい」
「あれれ、前の財布を持って行っちゃった」
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