★柳家権太楼(三代目)佐野山(谷風の人情相撲)

柳家権太楼(三代目)

あらすじ

江戸時代の大横綱で谷風梶之助は名人を通り越して人格者でもあった。
生涯一回だけ八百長相撲をヤッタという噺です。

十両の筆頭に上がってきた佐野山は小兵ながら親孝行であった。
しかし、母親が大病を患って看病したが治らず、貧乏であったので食べ物を減らして土俵に上がったが、お粥だけでは力が出なかった。仕切だけで疲れて、負けるのも当たり前であった。

その為、今期限りで引退だろうと、パッと噂が立った。
辞めたら収入もなく悲惨な事になるし、相撲界の恥だと感じた谷風は千秋楽の一番を佐野山戦にして欲しいと願って出た。

翌日のワリに谷風-佐野山と書き出された。谷風と言えば小野川と千秋楽対戦するのが習わしだったので、ずっと勝ち進んでいる谷風とず~っと負けている佐野山では相手にならない。

これには訳があって、女を取り合った仲だからとか、引退相撲だとウワサが飛んだ。判官贔屓のひいき連は佐野山が片方の廻しを取れば5両、もろ差しになったら10両の祝儀の約束。

魚河岸や大旦那連中は100両、200両、花柳界のお姉さんまで佐野山に祝儀約束をした。
そのはず、勝てる見込みは皆無だったから、言いたい放題、無責任に言っていた。

千秋楽結びの一番。谷風~っと声が掛かるのに、この日だけは佐野山~、佐野山~の大合唱。
土俵上谷風は佐野山に孝行に励めよとにっこり笑って、その心が解った佐野山はホロリと涙が流れた。
それを見ていた方は遺恨相撲が出来ると笑っているし、佐野山は親孝行も出来なくなると泣いているよ。
泣くな~~、佐野山~。

木村庄之助の軍配で立ったが、谷風は変に触ると佐野山が飛んでしまうので、身体ごと抱え込んでしまった。
見ている方は、もろ差しになったと大歓声。10両の祝儀が必要になったと大騒ぎ。ここで佐野山押せば、ジリジリと谷風が下がって土俵際まで行くのが、佐野山そんな余力はとっくに無く、押せない。

しょうがなく谷風押されているように土俵際まで引きずった。でも、ここで足を出したら横綱の名誉に傷が付くと、グッと力を入れた。佐野山抱えられているだけで息が上がっているのに、力を入れられたので、腰砕けになってずり落ちそうになった。ずり落ちたら今までの事が台無しになると、谷風全力を出して引き上げた。谷風の身体が紅色にパッと輝いた。

しかし、見ている方はその様には見えなかった。佐野山がもろ差しで横綱を土俵際まで追い込んで、金剛力でこらえる谷風を、腰を落として下から谷風を押し上げたように見えた。この状態で谷風かかとをチョット出したのを木村庄之助見逃さず、軍配を佐野山にあげた。

谷風が勝つとばかり思っていた見物は佐野山が勝ったので大騒動。座布団は投げるは羽織は投げるは財布は投げるは、大変だった。

「最後の押しはスゴかったな」

「押しは効くはずだ。名代のコウコウ者だ」

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