恐怖の覚せい剤!麻薬!危険ドラッグ!薬物犯罪と闘う男たちに聞く
危険な罠
空港に貼られている、麻薬密輸の注意喚起のポスターをご存知ですか?
”あんた、「運び屋」したら 人生終わりやで!”
他人から預かった荷物でも、携行した荷物については責任を問われます。
「知らなかった」、「分からなかった」では、すまされません。
と書いてあります。
実は、この警告の背景には、私たちに忍び寄る、
危険な罠が隠されているのです。
運び屋にされた
2012年8月 関西空港。
この日、夏休みを利用し、アフリカを旅行した女子大生が帰国。
彼女は、税関で止められてしまいました。理由は、お土産に持ち帰ったコーヒー豆。
なんと中から、約1.8キロの覚せい剤が発見されたのです!!
末端価格は、1億5000万円。
女子大生は、覚せい剤の存在など、全く知らなかったと主張。
ネットで知り合った友人から、「海外で書類を預かり持ち帰ってほしい」と頼まれ、渡航した彼女は、現地で書類を預かり、「お土産を知人に渡してほしい」と言われ、コーヒー豆の袋を預かったといいます。
しかし、必死の説明もむなしく、彼女はその場で、覚せい剤取締法違反で逮捕!
新聞でも大きく報道されました。
裁判での検察の求刑は、なんと懲役9年。
同様に、中国で薬物が発見され、身に覚えがないと主張する日本人が、死刑を求刑されたケースもあります。
薬物と自分は関係ないと思っているあなた、危険はすぐそばに迫っています!
伝説のマトリ
密輸関連のみならず、多発する薬物犯罪。危険ドラッグの摘発件数は年々増加。去年は、一昨年の5.6倍まで急増。
日本列島は、クスリにまみれてしまっているのか?
小中学生にまでクスリの魔の手が!
主婦に広がる麻薬ダイエット!
芸能界の薬物汚染の実態は?
そんなクスリに関する犯罪に立ち向かうのが、麻薬取締官、通称「マトリ」と呼ばれる人々。
今回スタジオに来られたのは、伝説のマトリ3名。
麻薬取締官歴37年、元関東信越厚生局 浦上 厚(72歳)。
麻薬取締官歴37年、元関東信越厚生局 小林 潔(72歳)。
麻薬取締官歴36年、元九州厚生局 高濱良次(67歳)。
特に、海外は怖い
6月26日は、国連が主催する、「国際麻薬乱用撲滅デー」です。
危険なクスリの種類として、
麻薬・・・コカイン、ヘロイン、LSD、MDMA他
大麻・・・マリファナ、ハシッシュ
覚せい剤・・アンフェタミン、メタンフェタミン
危険ドラッグ・・2千種類以上
それぞれ法律が違い、細かく厳しく決められています。
海外旅行者が運び屋にされるケース、関西空港の女子大生は、無罪になりましたが、海外では重い量刑になる場合が。
東南アジアでは、麻薬を持ち込んだり、持ち出したりすると、1キロくらいの大量になると、死刑を宣告されます。
外国で捕まった場合、無実を立証するのは難しいです。
ラブコネクションとは?
ラブコネクションとは、恋人を装うこと。
現地の外国人が、日本女性と仲良くなり、遊びに来させて、帰りにお土産を持たせ、缶詰、果物などいろいろ、スーツケースに縫い付けて、スーツケースごとプレゼントする場合も。
本人は知らないので、おどおどすることもなく、1回目は税関を通ることができるそうですが、2回、3回となると、ヤバくなるそうです。
税関で摘発された、驚愕の薬物密輸方法
よくある隠し場所として、スーツケースの二重底、靴底の中、お土産の中。
驚きの隠し場所として、「ギター」
一見普通のギターですが、ボディを切ると、約3キロ、末端価格で約4億円のコカインが。
「辞書」
薬物がピッタリはまるように、綺麗にくり抜いていました。
「アボカド」
中身をくり抜いて、中に詰め込んでいました。
アボカドの匂いで、麻薬犬の鼻をごまかそうとしたのです。
「薬物を液体にして瓶詰」
覚せい剤を溶かして赤く着色し、ラー油の瓶につめて密輸。
約10キロ、末端価格で約7億円の覚せい剤。
「女性ならではの隠し方」
コカインを袋詰めにし、女性の胸に、豊胸手術で隠していました。
挙動不審な女性を尋問して発覚。
空港から病院に直行して摘出。
「マトリ史上最大規模の押収」
ロードローラーの、ローラーの中に、約110キロ、末端価格で約90億円の覚せい剤。
「体の中」
大阪税関で、ナイジェリア人が所持していた、ビニールに小分けにされた覚せい剤。
約1.3キロ、末端価格で約1億円の覚せい剤を、飲み込んで体の中に入れ、密輸。
トイレに同行した税関職員が、被告から排泄された覚せい剤を発見。
空港ではどうやって見つける?
スーツケースを受け取る裏側で、麻薬犬が走って、匂いを嗅ぎ、おかしいものに関しては、X線にかけて調べます。
また、ベテランの検査官は、乗客の挙動、話し方、動作を見て、判断するそうです。
麻薬犬は、麻薬中毒になる?
日頃訓練で、麻薬を吸い込むので、中毒になるそうです。
寿命がきますので、3年から5年くらいで、他の人生を歩むようになります。
麻薬取締官が驚いた事件簿 その1
中学生を覚せい剤中毒にする驚愕の手口
今年、東京都内で実際に起きた事件。
学校帰りに、カラオケボックスに寄った中学生のA君。
キャンディーを無料でサービスするなど、このカラオケ店は、ちょっとしたサービスで、中高生たちに人気でした。
ある日、いつものように訪れた、A君と友人たち。無料の飴がなくなっていました。
店員に、飴がないか尋ねると、「飴はないけど、これなら」と言って、店員が、錠剤のサプリを渡しました。
実は、これが覚せい剤だったのです。
いかにも怪しい錠剤、しかしA君たちは、いつもの飴と同じように、口に入れてしまいました。
これがきっかけで、A君は覚せい剤にはまってしまうことに。
この事件では、一見、たまたま口にした覚せい剤に、A君たちがはまってしまったと思われがちですが、実は、本当の恐怖は別にありました。
もともと無料で置いていたあの飴玉に、微量の覚せい剤を付着させて、常習性をつけさせていたのです。
このケースの場合は、カラオケ店の店員、もしくは、カラオケ店とつながっている人物が、売人というケースがほとんどだそうです。
最初は、飴玉で常習性を身に着けさせ、タイミングを見計らって、本物が出てくるのです。
本物を常習させて、親の財布から抜き取ったり、いろんなことをしてお金を集めさせて、麻薬の常習者に仕立て上げていくそうです。
親の知らない間に、子どもに薬物の魔の手が!!
麻薬取締官が驚いた事件簿 その2
覚せい剤の魔の手から息子を助けようとした父親の悲劇
香川県の小学校で、教頭を務めるBさんは、息子が覚せい剤の常習者でした。
見つけては何度も注意しましたが、やめさせることができませんでした。
そんななか、事件が。
家に着くと、覚せい剤を注射する息子を発見。
激しく怒るBさん、いいか、これが人間をだめにするんだ。これで絶対に最後にしろ!と言い、意を決したBさんは、信じられない行動に!
俺も打つから、男同士の約束で、これで最後にしようと言って、自分の腕に注射してしまいました。
その結果、自分も覚せい剤中毒になったBさん。
この、うそのような事件は、”たった一度の摂取が、人生を狂わせる”
典型的な例として、新聞でも大きく取り上げられました。
麻薬取締官が驚いた事件簿 その3
あなたの奥さんは大丈夫?主婦に蔓延する覚せい剤の恐怖
2009年、宮城県で、覚せい剤取締法違反容疑で、ごく普通の主婦3名が、逮捕されました。
仲間うちの一人が、電話で密売人に申込み、県内の駐車場で待ち合わせて、購入していたといいます。
なぜ、普通の主婦たちが、手を染めてしまったのでしょうか?
主婦たちがクスリにはまる理由は、ダイエット!
多くの場合、初めは「薬物」と知らずに手にし、途中で違法だと気づいても、
痩せる効果に目がくらみ、やめられなくなります。
食べようと思っても食べれない。食べないのではなく、喉を通らない。
一週間で体重が、5~6キロ落ちるそうです。
痩せて目がギョロギョロになり、1年もかからないうちにボロボロになります。
クスリに手を染めた主婦が、友人に次々と勧める1番の動機は?
自分がクスリに染まるとお金がかかります。
売人に新しいお客さんを連れて行くと、紹介料としてクスリをもらえます。
また、客を増やしてグループ買いすれば、安く手に入るからです。
1回口にするとやめられない?
1回すると、なかなかやめられないそうです。体が軽くなり、何でも出来るように錯覚するからです。
麻薬の値段は?
種類によって値段は違います。
一番安くて、一回5000円くらい。
だいたい普通の人が買うのは、2~3回分で1万円くらい。
麻薬捜査官は、舐めて判断できる?
昭和40年くらいから、味覚捜査はやめているそうです。
アメリカの捜査官が、舐めて具合が悪くなって以来、日本でもすることはなくなったそうです。
舐めて、判断したら瞬時に吐き出します。体内に回る前に出すんですね。
麻薬捜査官は、麻薬常習者を見て判断できる?
現役の頃はわかったそうです。
肌の色、やせかた。独特の汗のにおいがし、冬でも冷たい飲み物を飲むなどの特徴が。
麻薬捜査官の、暴力団潜入捜査のヒミツ
小林さんの体験談から・・・
まず、組員が集まる飲食店へ客として潜入。
密売の情報を掴むためには、暴力団の仲間にならなければならない。
暴力団に向くような恰好をして潜入。自分からターゲットに接触はしない。
店に通い、話しかけられるのを待つ。
前科なしでは、組への潜入ができないので、刑務所への服役回数を聞かれてもいいように、ウソのプロフィールを暗記しておく。
そうやって、幹部との距離を縮めてからも、潜入捜査は気が抜けない。
帰宅する時は、タクシーを何台か乗り継ぐ。
家族にも任務は極秘。
幹部に気に入られ、組事務所に潜入することに成功しても、様々な危険が待っています。
組事務所内での暴力は日常茶飯事。
お前もやれと言われ、暴力行為を強要されても、公務員なので、手を出すことは絶対に許されない。
しかし、断れば信頼を得られないので、うまくその場を、ハッタリで切り抜ける演技力が必要です。
その後、数か月後、覚せい剤の売買をしてみるかと言われ、今から覚せい剤をやるかと勧められたとき、昔はさんざんやったけど、今はやらない、クスリには手を出さないって、昔の組長と約束したと、任侠映画のような仁義で回避したとか。
この一件で、覚せい剤の存在を確信、その後、覚せい剤の証拠を掴み、組織を大規模に摘発し、解散に追い込んだそうです。
潜入捜査やおとり捜査で、覚せい剤が本物か偽物かを見分ける方法は?
水を入れたコップに落として、覚せい剤の良い物であれば、表面を泳ぐそうです。悪い物は沈むそうです。
小林さんが、潜入捜査を辞めざるを得なくなったきっかけは、1980年に、ポール・マッカートニーが、成田に大麻を持ち込み、逮捕された時、小林さんの顔が新聞に大きく出てしまったので、潜入捜査を辞めることになったそうです。
もう潜入しなくと良いんだと、ホッとしたのと、寂しい思いがあったそうです。
芸能人のタレこみは誰から?
芸能人は、目立つので、一種のみせしめ、麻薬防止の宣伝になります。
捜査は秘密裏にやるので、直近の人でないとわかりません。
その芸能人の周りにいて、親しい人からの情報が多いのです。
マネージャーや付き人など、給料の不払いや嫌がらせ、逆恨みなど、いろいろな理由が。
また、そのタレントの将来のことを思って、言う人もいるそうです。
薬物は、人生を破壊します。けっして、手を出さないようにしましょう。(S.A.)
[出典:2015年6月26日(金)放送「ダウンタウンなう」]
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