疝気の虫(せんきのむし)は古典落語の演目の一つ。原話は、寛政8年に出版された笑話本・「即答笑合」の一遍である『疝鬼』。
主な演者には、初代三遊亭遊三や5代目古今亭志ん生、桂雀々などがいる。
あらすじ
変な虫を見つけた医者。つぶそうとすると、なんと虫が口をきく。
虫の告白によると、彼は『疝気の虫』といい、人の腹の中で暴れ、筋を引っ張って苦しめるのを職業にしているという。
「実は、私どもは蕎麦が大好物でして…。口にすると、つい、力が出て暴れたくなってしまうのです」
「困った奴だな…」
「でも、実は私らには苦手なものがありましてね」
「苦手な物? 何だ、それは。教えないと…」
「唐辛子です! 蕎麦の薬味に入れる…。あれが体にかかると、腐って死んでしまうんです」
「なるほど。だから、蕎麦には唐辛子がつき物なのかな。それで?」
「腐ると困りますから、唐辛子が来たら別荘のほうへ逃げます」
「別荘? 何処だい?」
男性の、下のほうでブラブラしている奴…。それが別荘なのだとか。
「いいかい。お前たちは、人間の体に間借りしている借家人みたいなものじゃないか。それなのに、お…お? 夢か」居眠りの夢だった。
そこに丁度、疝気に悩んでいる人から往診の依頼が入り、「これはいいことを聞いた」と先生張り切って出かけていった。
「まず、蕎麦を用意してください。用意が出来たら、旦那様にその匂いをかがせながら、貴女が食べてくださいな」と患者の妻に伝える。
疝気の虫は蕎麦の匂いがするので、勇気百倍。
すぐ亭主からかみさんの体に乗り移り、腹の中で大暴れするので、今度はかみさんの方が七転八倒。
「イタ…イタタタタ…」
「おかみさん、唐辛子を溶かした水を飲んでください」
「そんな、金魚が目を回したんじゃないんだから…」
「いいから、早く!!」
唐辛子と聞いて仰天した虫は急いで逃げ込もうと、一目散に腹を下る。
「別荘…別荘…」
※そこで噺家は首をひねり、キョロキョロしながら退場する。
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