★古今亭志ん生(五代目)素人相撲

古今亭志ん生(五代目)


ある男が相撲に出てみないかと勧められて、オレは大関だと豪語している。

こういうのに強い奴はいたためしがなく、この間、若い衆とけんかをしてぶん投げたと言うから

「病人じゃなかったのか」

「ばかにするねえ」

「血気の若えもんだ」

「いくつくらいの?」

「七つが頭ぐれえで」

こういう手合いばかりだから、いざ本番で少しでも大きくて強そうな奴が相手だと、尻込みして逃げてしまう。

「向こうはばかに大きいからイヤだ」

「本場所は小さい者が大きい者と取るじゃねえか」

「おやじの遺言で、けがするのは親不孝だから、大きい奴と取ったら草葉の陰から勘当だと言われてる」

「てめえのおやじはあそこで見てるじゃねえか」

「なに、ゆくゆくは死ぬからそのつもりだ」

与太郎も土俵に上がれとけしかけられるが、伯母さんから、相撲を取ってけがしたら小遣いをあげないと言われてるんで、いいか悪いか横浜まで電報を打って、とひどいもの。

そこに、やけに小さいのが来て、私が取ると言うので

「おい、子供はだめだ」

「あたしは二十三です」

どうしても、と言うから、しかたなくマワシを付けさせて土俵に上げると、その男、大男の前袋にぶら下がったりしてチョロチョロ動いて翻弄し、引き落としで転がしてしまう。

「それ見ろ。小さいのが勝った。煙草入れをやれ、紙入れも投げろ。羽織も放っちまえ」
「おい、人のを放っちゃいけねえ。てめえのをやれ」

「しみったれめ」

「おまえがしみったれだ、しかし強いねえ。あれは誰が知っているかい?」

「あれは勧工場の商人だ」

「道理で負けないわけだ」

※勧工場(かんこうじょう)
明治・大正時代、一つの建物の中に多くの店が入り、いろいろな商品を即売した所。デパートの進出により衰えた。明治11年(1878)東京にできた第一勧工場が最初。勧商場。

※志ん生:サゲ

「あいつは、誰だ。いやに押しが強いね」

「強いはずだ、漬物屋のせがれだ」

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