1959年(昭和34年)11月30日録音
原話は、文化年間に桜川慈悲成が出版した笑話本・『落噺常々草』の一遍である「腹曲馬」。
主な演者として、3代目桂三木助や7代目立川談志などがいる。
⇒立川談志:鉄拐
あらすじ
舞台は上海に店を構える廻船問屋・『上海屋』。毎年、創業記念日に豪華絢爛な余興を見せていたが、あまりにもいろいろとやりすぎたせいでとうとう今年はネタが無くなってしまった。困った主の唐右衛門は、番頭に《珍しい芸人》を探してくるように厳命。
番頭も張り切って捜索に出るが、何しろあらかたの芸は既にやっているためなかなか珍しい芸人が現れない。
そんなある日の事…。山中で迷子になってしまった番頭は、息をフーッと吐くことで、自らの分身を生み出す鉄拐という仙人に助けられる。
これぞ珍しき芸能! そう直感した番頭は、仙人に頼み込んで上海屋の余興に出演してもらった。
鉄拐が得意の分身の術を披露すると、これが大評判となって近郷近在はもとより、近隣諸国からお客が大挙して見学に来る大騒ぎに。
こうなると流石の仙人もすっかり乗せられてしまい、興業師にマネジメントをしてもらい、弟子を雇って芸を仕込むなどすっかり増長してしまった。
…と、ここであまりにも人気者となった鉄拐をねたみ、彼の向こうを張るような秘術を持った者を呼んでこようという興業師が出現。
あちこちと探した結果、瓢箪から自在に馬を出す張果老という仙人をスカウトした。
これがまた馬鹿な評判で、段々と鉄拐の人気が落ちてくる。
頭にきた鉄拐は、ある晩、張果老の家に忍び込み、瓢箪の中の馬を自分の腹に吸い込んでしまった。
おかげで張果老の人気は下落。また鉄拐が人気者になってくる。
今度は【自分の分身を馬に乗せて出現させる】と宣言したが、何故か巧くいかないため、お客を腹の中に吸い込み、そこで見学させることにした。
ところが、客のなかに酔っ払いがいて、腹の中で喧嘩を始めて大暴れ。
鉄拐先生腹痛を起こし、薬を飲んでその酔っぱらいを吐き出してみると…?
概要
中国を舞台とした珍しい話で、オチは李白と陶淵明が大の酒豪であったことを考えて初めて理解出来る「考え落ち」。
原話から内容がほとんど変化しておらず、昔の落語を知る格好の手がかりとなっている。
昭和期に3代目桂三木助が速記本を参考に口演するようになり、その型が7代目立川談志を通じて現在に受け継がれている。5代目圓楽は舞台を日本の長崎に置き換えて演じていた。
二人の仙人について
鉄拐と張果老はともに道教の『八仙』のメンバー。
ともに秘術を持っていた事で有名であり、江戸時代は二人の術をネタにした話が多数作られていたらしい。
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