辻占いが通りで客を呼び込みます。最初にやってきたのが、田舎侍でした。侍の氏名をずばり当てます。「編み笠に名前を書いていますよ」と正直に易者が答えます。お侍の易が終わらないうちに、芝居好きの男がやってきました。
この男、延々と五段目をうなり始めたんです。歌詞を覚えるように当時は芝居のセリフを暗記していたんですな。
「ところでだ、定九郎は何に生れ変ったんだ?」と聞きますと、
「車を引く牛に生れたんですな。しっしっ(しし、猪)と追われる牛ですな」と易者は答えます。
「上手いことを言いますな、では、勘平は?」、易者は釜番をしていると答えます。
それまで黙って聞いていた侍が口をはさみます。「では、大石内蔵助は何に生まれ変わったのかの?」
「内蔵助さまはまだ誕生には仕かまつってはおりません」
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