★金原亭馬の助(初代)棒鱈(ぼうだら)・一分茶番(権助芝居)

金原亭馬の助(初代)

棒鱈

熊五郎と寅吉が料亭で酒を飲んでいると、隣の座敷から騒がしい声が漏れてくる。隣室の客は訛りのきつい田舎侍で、芸者を大勢呼び、はしたなく騒いでいる。酒癖の悪い熊五郎は次第に不機嫌になり、やがて隣へ苦情を言いに行こうとするが、温厚な寅吉に「無粋な真似はよせ」と厳しくたしなめられて思いとどまる。

しかし熊五郎は、田舎侍の顔を見てみたくなり、便所に立ったついでに隣室を覗こうとする。襖を少しだけ開けて隙間から覗き込むつもりが、酔いのため体勢が崩れ、襖を押し倒して隣室の中に転がり込んでしまった。熊五郎は非礼を詫びるが、馬鹿にするようなことを田舎侍に言われて逆上し、ついに喧嘩をはじめてしまう。

熊五郎と田舎侍の喧嘩を止めようと店の者が大勢駆けつける。その中には料理人もいた。この料理人は「鱈もどき」という料理の仕上げに胡椒を振っていたところだったので、胡椒の瓶を手にしたまま部屋に来てしまい、喧嘩に割って入ったはずみに胡椒をまき散らしてしまう。

くしゃみや咳で喧嘩どころではなくなり、喧嘩は立ち消えとなった。まき散らしたのが胡椒だけに、まさに「喧嘩に故障が入る」(=邪魔が入る)形となった。

柳家さん遊は「いま板前が入ったから、上手くさばいてくれるだろう」と現代でも通じるよう工夫して演じている。

一分茶番(権助芝居)

町内恒例の素人芝居の当日だが、なかなか幕が開かない。伊勢屋の若旦那が役不足で仮病を使って来ないのだ。

世話役は飯炊きの権助を代役にと考え、伊勢屋の番頭に権助を呼びに行かせる。番頭が権助に芝居をやったことがあるか聞くと、村の鎮守の芝居で「ちょうちんぶら」に出たことがあるという。よく聞くと「忠臣蔵」で七段目の一力茶屋の段でおかるの役だったという。相手の勘平はどんどろ坂の茂十で、むろんどたばたの舞台だったようだが、この際せいたくなことは言っておれず、番頭は権助に一分渡し代役を頼む。

今日の出し物は『有職鎌倉山』で、権助の役は「まんまと宝蔵に忍び込み」、鏡を盗み出し、捕まって縛られ、首を斬られるという非人の権平だ。役回りを聞きながら権助は何度も断って一分を返そうとするが、全部芝居のこと、長いセリフも鏡の裏側に書いておくから心配ないと、何とか納得させる。

やっと舞台の幕が開くが、役者がなかなか出てこない。そこへ押されて宝蔵の壁から転げ出てきた権助さん、「・・・まんま、まんま・・・」と叫んでいるのが、伊勢屋の若旦那ではなく、飯炊きの権助と分かると客が「どうした権ちゃん、まんま焦がしたか」とはやし立てる。すると自尊心を傷つけられたか権助さん、「始めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いても蓋とるな」なんて飯の炊き方を講釈しはじめる。

ついに捕まって後ろ手に縛られた権助さん、客が「権ちゃんどうした、縛られたな」とやじると、「本当は縛られてねえ、ほらこのとおり」なんて両手を前に出す有様だ。捕り手役は怒って本当に縛り、刀でキリキリと絞り上げる。

捕り手役 「誰に頼まれた、白状しろ」

権助 「番頭さんに一分もらって頼まれた」

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