★三遊亭圓生(六代目)やかん(薬缶)

三遊亭圓生(六代目)

あらすじ

この世に知らないものはないと広言する隠居。

長屋の八五郎が訪ねるたびに、別に何も潰れていないが、グシャ、グシャと言うので、一度へこましてやろうと物の名の由来を次から次へ。

ところが隠居もさるもの、妙てけれんなこじつけでケムにまく。

最初に、いろいろな魚の名前は誰がつけたかという質問で戦闘開始。

「おまえはどうしてそう、愚なることを聞く。

そんなことは、どうでもよろしい」

「あっしは気になるんで。誰が名をつけたんです?」

「うるさいな。あれはイワシだ」

イワシは下魚といわれるが、あれで魚仲間ではなかなか勢力がある、とゴマかす。

じゃ、イワシの名は誰がつけた、と聞くと、ほかの魚が名をもらった礼に来て、ところであなたの名はと尋ねると、「わしのことは、どうでも言わっし」

これでイワシ。

以下、まぐろは真っ黒だから。

ほうぼうは落ち着きがなく、方々泳ぎ回るから。

こちはこっちへ泳いでくるから。

ヒラメは平たいところに目があるから。

「カレイは平たいところに目が」

「それじゃヒラメと同じだ」

「うーん、あれはヒラメの家来で、家令をしている」

鰻はというと、昔はのろいのでノロといった。

あるとき鵜がノロをのみ込んで、大きいので全部のめず四苦八苦。

鵜が難儀したから、鵜、難儀、鵜、難儀、鵜難儀でウナギ。

話は変わって日用品。

茶碗は、置くとちゃわんと動かないから茶碗。

土瓶は土で、鉄瓶は鉄でできているから。

「じゃ、やかんは?」

「やでできて……ないか。昔は」

「ノロと言いました?」

「いや、これは水わかしといった」

「それをいうなら湯わかしでしょ」

「だからおまえはグシャだ。水を沸かして、初めて湯になる」

「はあ、それで、なぜ水わかしがやかんになったんで?」

「これには物語がある」

昔、川中島の合戦で、片方が夜討ちをかけた。

かけられた方は不意をつかれて大混乱。

ある若武者が自分の兜をかぶろうと、枕元を見たがない。

あるのは水わかしだけ。

そこで湯を捨て、兜の代わりにかぶった。

この若武者が強く、敵の直中に突っ込む。

敵が一斉に矢を放つと、水わかしに当たってカーンという音。

矢が当たってカーン、矢カーン、やかん。

蓋は、ボッチをくわえて面の代わり。

つるは顎へかけて緒の代わり。

やかんの口は、名乗りが聞こえないといけないから、耳代わり。

「あれ、かぶったら下を向きます。上を向かなきゃ聞こえない」

「その日は大雨。上を向いたら、雨が入ってきて中耳炎になる」

「それにしても、耳なら両方ありそうなもんだ」

「ない方は、枕をつけて寝る方だ」

[出典:落語あらすじ事典 千字寄席 http://senjiyose.cocolog-nifty.com/fullface/2004/11/post_35.html]

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