★三遊亭圓生(六代目)猫怪談

三遊亭圓生(六代目)

あらすじ

深川蛤町の裏長屋に与太郎が住んでいたが、育ての親の親父が死んでしまった。
線香も買えなく、その支度準備が未だ出来ていないが、早桶だけは準備出来ていた。

大家さんの所の菜漬けの樽で、人の樽を勝手に使うなと言うと、「ヒト樽だからいい」。
借りるのではなく、買って一段落。

大家さんが一通りの手配をして、お寺の場所を確認すると、谷中の瑞林寺(ずいりんじ)だという。
お金がないから早々に通夜も済ませ、与太郎が後棒、月番のラオ屋の甚兵衛さんが前棒、大家さんが提灯持ちという出で立ちで、四つ、今の時間で夜10時、担ぎ出した。

上野、いとう松坂に差しかかったのが、もう12時、当時の九つ。
そこを右に曲がって、三枚橋、池之端にかかり、七軒町を通って谷中に抜けるのが近道です。
旧暦の11月、寒く霜柱を踏みしめながら、池之端を抜けるころ、ものすごく恐がりの甚兵衛さんは、時間が時間なので恐くてしょうがない。
与太郎に脅かされながら担いでいたが、肩に食い込む痛さに肩を変えてくれと頼んだ。

与太郎さん、加減を見て持ち上げれば良かったのを、思いっきり放り上げるように持ち上げたので、縄がヤワになっていたのか、底が抜けて仏様が飛び出してしまった。

その上、桶が壊れてしまったので、直そうとしたが、タガまで切れてバラバラになってしまった。
近くの仲町ではダメなので、公徳寺前まで早桶を買いに行く事になった。

一人残された与太郎さん、仏様を寝かせその隣にぼんやりと座っていた。
前は不忍池、その後ろは上野の森、夜の水は不気味なものですが、その奥に黒くたたずむ弁天堂が見えようと言う場所です。

そこに風が吹いて、枯れアシがガサガサと音を立てる、その風が上野の森に渡っていき、ゴ~~っと唸っているが、馬鹿の与太郎でもいい心持ちはしない。

死んだ親父に語りかける与太郎さんですが、5,6間先に何か黒い物が横切った。
そのとたん、仏様が動き始め正座をして与太郎に向かって「イヒヒ」と声を発した。
ビックリして、殴ってしまったら、仏様は横になってしまった。
何か言い足りない事があったら聞くから、もう一度起きあがってくれと頼んだ。

今度は立ち上がって、ピョンピョンと跳びはねたので、「お父っつぁんは上手」と手囃子して騒いでいた。
その時、強い風が吹いてきて、風に乗って行ってしまった。

大家さんと甚兵衛さんはその声に気づいて与太郎さんの元に帰ってきた。
事の顛末を聞いてあきれる大家さんですが、甚兵衛さんはふるえが止まらず
「抜けてしまいました」の言葉だけ。

「何が、抜けてしまったのだ。今、買ってきたばっかりじゃないか」と大家さん。

甚兵衛さん
「今度は私の腰が、抜けてしまいました」。

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